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q超幾何級数のqモーメント3

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前の記事 その前の記事 で, 2つの定理を示した. それらをまとめると以下のようになる.

μ(w):=0n(a,b;q)n(c,q;q)ntn1wqn
とする. このとき, 0Nに対し,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(wq/a,wq/b;q)N(cqabt)N(μ(w)1cqn=0N1(wq/a,wq/b;q)n(wq/c,w;q)n+1(abtcq)np(wqn))μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(c/w,q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(q2t)np(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(cqtab+wq((ctab)qn+(a+b)tcq))(a,b;q)n(c,q;q)ntn
である. 特にt=cqabのとき,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(wq/a,wq/b;q)N(μ(w)+wqc(c/a,c/b;q)(c,cq/ab;q)n=0N1(wq/a,wq/b;q)n(wq/c,w;q)n+1qn)μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(c/w,q/w;q)N(cqab)N(μ(w)(c/a,c/b;q)(c,cq/ab;q)abwcn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(abc)n)
が成り立つ. 加えてw=cのとき,
μ(cqN)=(cq/a,cq/b;q)(c,cq/ab;q)(c,q;q)N(cq/a,cq/b;q)Nn=0N(c/a,c/b;q)n(c,q;q)nqn
が成り立つ.

今回はこの定理を特殊化して様々な系を得ることを考える. 定理1の最初の2つの式においてb0とすると以下を得る.

μ(w):=0n(a;q)n(c,q;q)ntn1wqn
とする. このとき, 0Nに対し
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(wq/a;q)N(catw)Nq(N2)(μ(w)1cqn=0N1(wq/a;q)n(wq/c,w;q)n+1(atwc)nq(n2)p(wqn))μ(wqN)=(a/w;q)N(c/w,q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w;q)n+1(q2t)np(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(cqwq(cqn+atcq))(a;q)n(c,q;q)ntn
である.

この系においてさらにa0とすると以下を得る.

μ(w):=0n1(c,q;q)ntn1wqn
とする. このとき, 0Nに対し
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(ctw2)NqN2(μ(w)1cqn=0N11(wq/c,w;q)n+1(tw2c)nqn2p(wqn))μ(wqN)=1(c/w,q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(c/w,q/w;q)n(q2t)np(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(cqwq(cqncq))tn(c,q;q)n
である.

定理1の最初の2つの式においてはttbとしてからbとして, 次のt=cqabと特殊化した式についてはbとすると以下を得る.

μ(w):=0n(a;q)n(c,q;q)n(t)nq(n2)1wqn
とする. このとき, 0Nに対し,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(wq/a;q)N(cqat)N(μ(w)1cqn=0N1(wq/a;q)n(wq/c,w;q)n+1(atcq)np(wqn))μ(wqN)=(a/w;q)N(c/w,q/w;q)N(tw)Nq(N2)(μ(w)1wtn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w;q)n+1(wq2t)nq(n+12)p(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(cqta+wq((cta)qn+tcq))(a;q)n(c,q;q)n(t)nq(n2)
である. 特にt=cqaのとき,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(wq/a;q)N(μ(w)+wqc(c/a;q)(c;q)n=0N1(wq/a;q)n(wq/c,w;q)n+1qn)μ(wqN)=(a/w;q)N(c/w,q/w;q)N(cqaw)Nq(N2)(μ(w)+(c/a;q)(c;q)acn=0N1(c/w,q/w;q)n(a/w;q)n+1(awc)nq(n+12))
が成り立つ. 加えてw=cのとき,
μ(cqN)=(cq/a;q)(c;q)(c,q;q)N(cq/a;q)Nn=0N(c/a;q)n(c,q;q)nqn
が成り立つ.

この系において, 最初の2つの式についてはttaとしてaとして, t=cqaと特殊化された式については単にaとすると以下を得る.

μ(w):=0n1(c,q;q)ntnqn2n1wqn
とする. このとき, 0Nに対し,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(cqt)N(μ(w)1cqn=0N11(wq/c,w;q)n+1(tcq)np(wqn))μ(wqN)=1(c/w,q/w;q)N(tw2q)NqN2(μ(w)+1tn=0N1(c/w,q/w;q)n(w2qt)nqn2p(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(cqt+wq((ct)qncq))tnqn2n(c,q;q)n
である. 特にt=cqのとき,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(μ(w)+wqc1(c;q)n=0N1qn(wq/c,w;q)n+1)μ(wqN)=1(c/w,q/w;q)N(cw2)NqN2(μ(w)1(c;q)wcn=0N1(c/w,q/w;q)n(w2c)nqn2n)
が成り立つ. 加えてw=cのとき,
μ(cqN)=(c,q;q)N(c;q)n=0Nqn(c,q;q)n
が成り立つ.

系3においてa0として以下を得る.

μ(w):=0n1(c,q;q)n(t)nq(n2)1wqn
とする. このとき, 0Nに対し,
μ(wqN)=(wq/c,w;q)N(cwt)Nq(N2)(μ(w)1cqn=0N11(wq/c,w;q)n+1(wtc)nq(n2)p(wqn))μ(wqN)=1(c/w,q/w;q)N(tw)Nq(N2)(μ(w)1wtn=0N1(c/w,q/w;q)n(wq2t)nq(n+12)p(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(cq+wq(cqn+tcq))(t)nq(n2)(c,q;q)n
である.

定理1においてc0として以下を得る.

μ(w):=0n(a,b;q)n(q;q)ntn1wqn
とする. このとき, 0Nに対し,
μ(wqN)=(w;q)N(wq/a,wq/b;q)N(wq2abt)Nq(N2)(μ(w)+1wq2n=0N1(wq/a,wq/b;q)n(w;q)n+1(abtwq2)nq(n2)p(wqn))μ(wqN)=(a/w,b/w;q)N(q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(q/w;q)n(a/w,b/w;q)n+1(q2t)np(wqn1))
が成り立つ. ここで,
p(w)=0n(tab+wq(tabqn+(a+b)tq))(a,b;q)n(q;q)ntn
である.

定理1においてb=cとすると,
μ(w):=0n(a;q)n(q;q)ntn1wqn
として
μ(wqN)=(w;q)N(wq/a;q)N(qat)N(μ(w)1qn=0N1(wq/a;q)n(cwqn+1)(w;q)n+1(atq)np(wqn))μ(wqN)=(a/w;q)N(q/w;q)NtN(μ(w)+1w2tn=0N1(q/w;q)n(a/w;q)n+1(1cqn/w)(q2t)np(wqn1))p(w)=0n(c(qta)+wq(c(1ta)qn+(a+c)tcq))(a;q)n(q;q)ntn
である. ここで, c=0とするとq二項定理より,
p(w)=wq(atq)0n(a;q)n(q;q)ntn=wq(atq)(at;q)(t;q)=wq2(at/q;q)(t;q)
となるから, これを代入すると,
μ(wqN)=(w;q)N(wq/a;q)N(qat)N(μ(w)(at/q;q)(t;q)n=0N1(wq/a;q)n(w;q)n+1(atq)n)μ(wqN)=(a/w;q)N(q/w;q)NtN(μ(w)qwt(at/q;q)(t;q)n=0N1(q/w;q)n(a/w;q)n+1(qt)n)
を得る. ここで, さらにt=qaとすると,
μ(wqN)=(w;q)N(wq/a;q)Nμ(w)μ(wqN)=(a/w;q)N(q/w;q)N(qa)Nμ(w)
を得る. 実は直接Heineの和公式より,
μ(w)=0n(a;q)n(q;q)n11wqn(qa)n=11w0n(a,w;q)n(q,wq;q)n(qa)n=11w(wq/a,q;q)(wq,q/a;q)=(wq/a,q;q)(w,q/a;q)
と求めることもできる. これらをまとめると以下を得る.

μ(w):=0n(a;q)n(q;q)ntn1wqn
とする. このとき, 0Nに対し,
μ(wqN)=(w;q)N(wq/a;q)N(qat)N(μ(w)(at/q;q)(t;q)n=0N1(wq/a;q)n(w;q)n+1(atq)n)μ(wqN)=(a/w;q)N(q/w;q)NtN(μ(w)qwt(at/q;q)(t;q)n=0N1(q/w;q)n(a/w;q)n+1(qt)n)
が成り立つ. 特にt=qaのとき,
μ(wqN)=(w;q)N(wq/a;q)N(wq/a,q;q)(w,q/a;q)μ(wqN)=(a/w;q)N(q/w;q)N(qa)N(wq/a,q;q)(w,q/a;q)
が成り立つ.

定理1はHeineの和公式によって係数がq-Pochhammer記号で表される場合が得られたが, 系7はq二項定理によってそれが得られている. このように, 何かしらの和公式がある場合は綺麗にq-Pochhammer記号で表されるという現象がより広く成り立っているかもしれない.

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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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