さてここ数回の記事において
離散直交多項式の一つであるKrawtchouk多項式を導入しその性質を述べた。
特に興味深い性質は
2階の差分方程式を満たすということであり、2階ODE型直交多項式の類似の性質が見られた。
ここからしばらくは
2階の差分方程式を満たす直交多項式の分類を目標に記事を進める。
その前に、Krawtchouk多項式の極限として得られる直交多項式を1つ導入する。
ポアソン(Poisson)分布という確率分布がある。
以下
ある時間内に平均
例えば、1時間に平均3.6通メールが来る人が、次の1時間に
意外と使われている。
こういう確率をどうやって導こうか。
どのタイミングで事象が起こるかが全くわからないのがことをややこしくしている。
とりあえず時間を
各時間ごとに起こる確率は
がこの時間内に
さて、
となり求めることができた。
さて、今やった二項分布の極限操作は、次のように言い換えられる:
「
この極限操作をKrawtchouk多項式に対しても行う。
Poisson分布に直交する直交多項式として、次の多項式列
このように定めた直交多項式を シャーリエ(Charlier)多項式 と言う。
まず一般項の式を確かめる。Krawtchouk多項式
であった。ここで
となるので題意の式が示された。
これは
次に Poisson分布に関して直交していることを証明したい。
しかし、Krawtchouk多項式の二項分布の直交性は有限和を考えていたので、
それを極限を飛ばして無限和にするのは(できなくはないが)議論が面倒になる。
Krawtchouk多項式同様に、母関数の値を計算しよう。
Charlier多項式
今上で計算したCharlier多項式の超幾何表示
からの導出を試みる。
母関数としては、通常型母関数ではなく指数型母関数を計算することに注意。
以上のようにCharlier多項式の母関数を計算することができた。(証明終わり)
さて、式変形途中に用いた二項係数の指数型母関数について。
これは
左辺の
のように示すことができる。(証明終わり)
興味深いのは、Krawtchouk多項式では通常型母関数を考えていたが、
その極限として書き表されるCharlier多項式では指数型母関数を考えているという点である。
さて、本題に戻って、Charlier多項式がPoisson分布に関して直交していることを示したい。
上で使った母関数の式を用いて証明する。
Charlier多項式の内積に関する母関数を次のように計算していく。
のように計算できることから、Charlier多項式の直交性及び二乗ノルムの式が
のように計算できることが確かめられた。(証明終わり)
他の性質についても、Krawtchouk多項式の性質の極限として得られるものが多い。
それらについて述べる。
Charlier多項式
dualtiyに関しては一般項の超幾何表示からも自明であるので、三項間漸化式から証明をする。
まずKrawtchouk多項式
であることが前々回の記事の内容から従う。
さて、まず
である。ゆえに
という漸化式を得る。(証明終わり)
こちらも同様にKrawtchouk多項式の差分方程式から始める。
の差分方程式を得る。(証明終わり)
差分方程式の同値変形についてはほぼ自明なので省略する。
この場合も、Krawtchouk多項式の場合どうなっていたかを見る。そのときは
と書かれていた。(正規化されたRodriguesの公式の方を用いた)
ここで
となる。ここで
などと極限が計算できる。以上を踏まえてRodriguesの公式は
のように導出することができる。(証明終わり)
これも同様にKrawtchouk多項式の特殊値の極限として得ることができる。
Krawtchouk多項式の場合を復習すると
これらの式の特殊値に同様の極限操作をする。
の式を得ることができる。そして、上で示した極限の値を代入することで
の両式を得ることができる。(証明終わり)
と、Krawtchouk多項式同様の性質が成り立っていることがわかる。
なお、これらは全てKrawtchouk多項式同様に、Charlier多項式の超幾何関数による表示からも得られる。
次に、Charlier多項式とGLP(Generalized Laguerre多項式、第六回参照)の間の関係式を述べる。
Charlier多項式
これは超幾何表示の一般項の式から直接示すことができる。
この定理の意味するところは、左辺のCharlier多項式の分母を払うよう適切に
GLPの定義を思い出す。
のように書くことができていた。値を代入することで右辺のGLPは
のように書けている。次に項数が
のように書くことができることに注意をして、上のGLPの値は
と変形ができる。以上から題意が示された。(証明終わり)
さて、今度は
Charlier多項式の次のような極限を取るとHermite多項式になる。
この定理から、「Krawtchouk→Charlier→Hermite」が極限として表せる系列であることがわかる。
ここでHermite多項式の定義を復習しておくと
のRodrigues型の式で定義され、性質が調べられていた。
今回の記事では、Krawtchouk多項式の極限として定められた、
Charlier多項式についての性質をまとめた。
Charlier多項式についての応用などはいくつか知られているが、
とりあえずこの記事としてはこの辺りで止めておく。
次回はHahn多項式系の名前の由来になっている、Hahn多項式についての性質を述べていくことにする。