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直交多項式と超幾何関数(11)〜Hahn多項式系(その1): Charlier多項式〜

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さてここ数回の記事において
離散直交多項式の一つであるKrawtchouk多項式を導入しその性質を述べた。
特に興味深い性質は
2階の差分方程式を満たすということであり、2階ODE型直交多項式の類似の性質が見られた。

ここからしばらくは
2階の差分方程式を満たす直交多項式の分類を目標に記事を進める。

その前に、Krawtchouk多項式の極限として得られる直交多項式を1つ導入する。

Charlier多項式

二項分布とPoisson分布

ポアソン(Poisson)分布という確率分布がある。

以下a>0は実数、kは非負の整数とする。
ある時間内に平均a回起こる事象が、特定の時間にk回起こる確率pa(k)を与えたいと思う。

例えば、1時間に平均3.6通メールが来る人が、次の1時間にk通メールが来る確率p3.6(k)みたいに
意外と使われている。

こういう確率をどうやって導こうか。
どのタイミングで事象が起こるかが全くわからないのがことをややこしくしている。
とりあえず時間をn個に区切る。nは十分大きいとする。
各時間ごとに起こる確率はa/nであるとみなせるので、二項分布の式を用いて
(nk)(an)k(1an)nk
がこの時間内にk回起こる確率だと思うことができる。
さて、nを無限大に飛ばす。こうやって[一瞬の間の]事象としてみなしていく。
limn(nk)(an)k(1an)nk=limnn!k!(nk)!aknk(1an)n(1an)k=akk!limnn!nk(nk)!(1an)n(1an)k=akk!limn{1(11n)(12n)(1k1n)}(1an)n(1an)k=eaakk!
となり求めることができた。
p(X=k)=eaakk!で与えられる確率分布XをPoisson分布という。

Charlier多項式の一般項

さて、今やった二項分布の極限操作は、次のように言い換えられる:
np=aと置いて、nに飛ばす」
この極限操作をKrawtchouk多項式に対しても行う。

Charlier多項式

Poisson分布に直交する直交多項式として、次の多項式列{CN(X:a)}0Nが取れる。
CN(X:a):=limnNn{k~N(n)(X)|p=a/n}=k0(N)k(X)kk!(1a)k
このように定めた直交多項式を シャーリエ(Charlier)多項式 と言う。

まず一般項の式を確かめる。Krawtchouk多項式k~N(n)(X)の定義は
k~N(n)(X)=k0(N)k(X)kk!(n)k1pk
であった。ここでp=a/nと置いて極限を取ると
limnNn{k~N(n)(X)|p=a/n}=limnNnk0(N)k(X)kk!(n)knkak=limnNnk0(N)k(X)kk!nnnn+1nn+k11ak=k0(N)k(X)kk!(1)kak
となるので題意の式が示された。
これは2F0型の超幾何級数として表すことができる、ということである。

Charlier多項式の母関数と直交性

次に Poisson分布に関して直交していることを証明したい。
しかし、Krawtchouk多項式の二項分布の直交性は有限和を考えていたので、
それを極限を飛ばして無限和にするのは(できなくはないが)議論が面倒になる。

Krawtchouk多項式同様に、母関数の値を計算しよう。

Charlier多項式の母関数

Charlier多項式CN(X:a)の(指数型)母関数は次のように計算できる。
N=0CN(X:a)YNN!=eY(1Ya)X

今上で計算したCharlier多項式の超幾何表示
CN(X:a)=k0(N)k(X)kk!(1a)k
からの導出を試みる。
母関数としては、通常型母関数ではなく指数型母関数を計算することに注意。
N=0CN(X:a)YNN!=N=0k0(N)k(X)kk!(1a)kYNN!=k0(1a)k(X)kN=0(N)kk!YNN!=k0(X)kakN=0(Nk)YNN!=k0(X)kakeYYkk!(次の補題より)=eYk0(Xk)(Ya)k=eY(1Ya)X(二項定理)
以上のようにCharlier多項式の母関数を計算することができた。(証明終わり)

さて、式変形途中に用いた二項係数の指数型母関数について。
これはexのTaylor展開がそのまま出現しているだけなのだが、簡単にまとめておく。

k0に対し、等式N=0(Nk)YNN!=eYYkk!が成立する。

左辺のの中は、N<kの時は値が0だとしておくことに注意をして、Nkのみ考えれば良い。
N=0(Nk)YNN!=N=k(Nk)YNN!=N=0(N+kk)YN+k(N+k)!(NN+k)=N=0YN+kN!k!=Ykk!N=0YNN!=eYYkk!
のように示すことができる。(証明終わり)

興味深いのは、Krawtchouk多項式では通常型母関数を考えていたが、
その極限として書き表されるCharlier多項式では指数型母関数を考えているという点である。


さて、本題に戻って、Charlier多項式がPoisson分布に関して直交していることを示したい。
上で使った母関数の式を用いて証明する。

Charlier多項式の内積に関する母関数を次のように計算していく。
M,N=0{X=0CM(X:a)CN(X:a)eaaXX!}Y1MM!Y2NN!=X=0eaaXX!{M=0CM(X:a)Y1MM!}{N=0CN(X:a)Y2NN!}=X=0eaaXX!eY1(1Y1a)XeY2(1Y2a)X(Charlier多項式の母関数の値より)=eY1+Y2aX=01X!{a(1Y1a)(1Y2a)}X=eY1+Y2aexp{a(1Y1a)(1Y2a)}(ex の Taylor 展開より)=exp(Y1Y2a)(整理するとこの項以外は全て消える)=M=01N!Y1NY2NaN=M,N=0δM,NN!aNY1NM!Y2NN!
のように計算できることから、Charlier多項式の直交性及び二乗ノルムの式が
X=0CM(X:a)CN(X:a)eaaXX!=δM,NN!aN
のように計算できることが確かめられた。(証明終わり)

Charlier多項式のその他の性質

他の性質についても、Krawtchouk多項式の性質の極限として得られるものが多い。
それらについて述べる。

Charlier多項式の性質

Charlier多項式CN(X:a)は以下の性質を持つ。

  • duality CN(X:a)=CX(N:a)
  • 三項間漸化式 aCN+1(X:a)=(N+aX)CN(X:a)NCN1(X:a)
  • 差分方程式 aCN(X+1:a)=(X+aN)CN(X:a)XCN(X1:a)
  • 上の差分方程式は XΔCN(X:a)+(Xa)ΔCN(X:a)=NCN(X:a)と書ける
  • Rodriguesの公式 CN(X:a)=(aXX!)1N[aXX!]
  • 昇降演算子 ΔCN(X:a)=NaCN1(X:a),[aXX!CN1(X:a)]=aXX!CN(X:a)

dualtiyに関しては一般項の超幾何表示からも自明であるので、三項間漸化式から証明をする。

三項間漸化式

まずKrawtchouk多項式k~N(n)(X)の三項間漸化式は
p(Nn)k~N+1(n)(X)={X+p(Nn)N(1p)}k~N(n)(X)+N(1p)k~N1(n)(X)
であることが前々回の記事の内容から従う。
さて、まずp=a/nとしてpの文字を消すと
an(Nn)k~N+1(n)(X)|p=a/n={X+an(Nn)N(1an)}k~N(n)(X)|p=a/n+N(1an)k~N1(n)(X)|p=a/n
である。ゆえにnの極限を取ることで
aCN+1(X:a)=(XaN)CN(X:a)+NCN1(X:a)
という漸化式を得る。(証明終わり)

差分方程式

こちらも同様にKrawtchouk多項式の差分方程式から始める。
p(Xn)k~N(n)(X+1)={N+p(Xn)X(1p)}k~N(n)(X)+X(1p)k~N(n)(X1)
p=a/nとおきnの極限を取ることで
aCN(X+1:a)=(NaX)CN(X:a)+XCN(X1:a)
の差分方程式を得る。(証明終わり)

差分方程式の同値変形についてはほぼ自明なので省略する。

Rodriguesの公式

この場合も、Krawtchouk多項式の場合どうなっていたかを見る。そのときは
(nX)pX(1p)nXk~N(n)(X)=N[(nNX)pX(1p)nX]
と書かれていた。(正規化されたRodriguesの公式の方を用いた)
ここでp=a/nとおくと
(nX)aXnX(1an)nXk~N(n)(X)|p=a/n=N[(nNX)aXnX(1an)nX]
となる。ここでnの極限を取る。それぞれの極限については
limn(nX)aXnX=limnn(n1)(nX+1)X!aXnX=axX!limn(1an)nX=limn(1an)n(1an)X=ea1=ealimn(nNX)aXnX=limn(nN)(nN1)(nNX+1)X!aXnX=axX!
などと極限が計算できる。以上を踏まえてRodriguesの公式は
CN(X:a)=(eaaXX!)1N[eaaXX!]=(aXX!)1N[aXX!]
のように導出することができる。(証明終わり)

昇降演算子

これも同様にKrawtchouk多項式の特殊値の極限として得ることができる。
Krawtchouk多項式の場合を復習すると
Δk~N(n)(X)=Nnpk~N1(n1)(X)[(n1X)pX(1p)nX1k~N1(n1)(X)]=(nX)pX(1p)nX1k~N(n)(X)
これらの式の特殊値に同様の極限操作をする。p=a/nとおくと
Δk~N(n)(X)=Nak~N1(n1)(X)[(n1X)aXnX(1an)nX1k~N1(n1)(X)]=(nX)aXnX(1an)nX1k~N(n)(X)
の式を得ることができる。そして、上で示した極限の値を代入することで
ΔCN(X:a)=NaCN1(X:a)[aXX!CN1(X:a)]=aXX!CN(X:a)
の両式を得ることができる。(証明終わり)

と、Krawtchouk多項式同様の性質が成り立っていることがわかる。
なお、これらは全てKrawtchouk多項式同様に、Charlier多項式の超幾何関数による表示からも得られる。


次に、Charlier多項式とGLP(Generalized Laguerre多項式、第六回参照)の間の関係式を述べる。

Charlier多項式とGLP

Charlier多項式CN(X:a)とGLPの間には次の関係式がある。
(a)NN!CN(X:a)=LN(XN)(a)

これは超幾何表示の一般項の式から直接示すことができる。
この定理の意味するところは、左辺のCharlier多項式の分母を払うよう適切にaべきを掛けて、aの多項式と見たときにそれがGLPとして書き表されるという主張である。

GLPの定義を思い出す。Ln(α)(x)の一般項は
Ln(α)(x)=(n+αn)k=0n(n)kk!(α+1)kxk
のように書くことができていた。値を代入することで右辺のGLPは
LN(XN)(a)=(XN)k=0N(N)kk!(XN+1)kak=(XN)k=0N(N)Nk(Nk)!(XN+1)NkaNk(kNk)
のように書けている。次に項数がNkの上昇階乗を、N個とk個に分けていく。
(N)Nk=(N)(N+1)(k1)=(1)NkN!k!(XN+1)Nk=(XN+1)N(Xk+1)k=X!/(XN)!(1)k(X)k(Nk)!=N!N(N1)(Nk+1)=N!(1)k(N)k
のように書くことができることに注意をして、上のGLPの値は
LN(XN)(a)=(XN)k=0N(N)Nk(Nk)!(XN+1)NkaNk=X!N!(XN)!k=0N{(1)NkN!k!}(1)k(N)kN!(1)k(X)kX!/(XN)!aNk=(a)NN!k=0N(N)k(X)kk!(1a)k=(a)NN!CN(X:a)
と変形ができる。以上から題意が示された。(証明終わり)

さて、今度はaの多項式として見る、とかではなく、Xの多項式のまま言える有名な性質を1つ述べておく。

Charlier多項式の極限

Charlier多項式の次のような極限を取るとHermite多項式になる。
lima(2a)N/2CN((2a)1/2X+a:a)=(1)NHN(X)

この定理から、「Krawtchouk→Charlier→Hermite」が極限として表せる系列であることがわかる。

ここでHermite多項式の定義を復習しておくと
Hn(x)=(1)nex2dndxnex2=m=0[n/2](1)mm!(n2m)!(2x)n2m
のRodrigues型の式で定義され、性質が調べられていた。

証明が思いつかないので文献を漁るか...後日分かり次第追記

まとめ

今回の記事では、Krawtchouk多項式の極限として定められた、
Charlier多項式についての性質をまとめた。

Charlier多項式についての応用などはいくつか知られているが、
とりあえずこの記事としてはこの辺りで止めておく。
次回はHahn多項式系の名前の由来になっている、Hahn多項式についての性質を述べていくことにする。

投稿日:20241023
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投稿者

整数論を研究中。 本音は組合せ論がやりたい。 最近は直交多項式・超幾何級数にお熱。 だけど幾何と解析は鬼弱い。

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