本記事は
級数・積分bot
の次の問題
の計算結果を代数的な計算の帰結として得ることを目的としている。
なお、「比較的簡潔だが初等的とは言えない方法」と
「比較的初等的だがとてもじゃないが簡潔とは言えない方法」
の2つをご紹介したいと思う。
積分を区分求積法の極限としてとらえ、以下を考える。
(
この和の計算をどう処理するかで2通りの方法をとる
この表示を利用すると
と出来るので
が計算出来ればよさそうだとわかる。以下これの計算を考える。
※なお、上記の(複素)対数関数の和を引数の積に直す操作は
この対数関数を主値を取ったものではなく(よく知られた)ある種のリーマン面上で
考えることを必要とするため、その意味でこの方法は全く初等的ではない。
「比較的簡潔だが初等的とは言えない方法」となる
の計算には
ド・モアブルの定理
の左辺を2項展開すると
虚部だけ取り出すと
右辺は
また左辺は
右辺はこれらを根に持つので
左辺は2項定理から
両辺
これより
などから
1項目と4項目しか残らないので
ゆえ
ここからは、「比較的初等的だがとてもじゃないが簡潔とは言えない方法」として、複素対数関数の利用を避けることを考える。
なので、改めて
となるから、
これは
左辺を展開することで
前々項での計算から
とおくと
以上から
となる。(右辺には虚数単位が含まれているが実数値である。)
よって
と書ける。ここで
(ここでは
となるが、右辺1項目、
がわかる。
と表示されるこの
まず
右辺第1項の値が
右辺第1項
右辺第1項は
ゆえ
(右辺第1項が上限
このとき右辺第2項は第1項と
右辺第1項が
右辺第2項は
つまりここで
以降、同様に
このとき右辺第2項は
到達しようかというところで一転
という挙動を取ることになる。
これはつまり右辺第2項の引数が
という挙動を取っていることを表している。
すなわち右辺第2項の引数
が
右辺第2項を構成している
右辺第2項がその
以上から
右辺第2項引数の極を通過するときであると言え、次のように書ける。
積分計算がある範囲内での多項式の実根の数を数えるということに帰着した。
とは言え、
であるので、解くべき方程式は
である。
そのまま解けるものではなさそうな形なので、後から
方程式左辺各項の絶対値を考えると
となり、2,3番目の項は
なので
が主要な部分といえるのでこれをまず考える。
※なお、この方程式は2n次だが、元の方程式は最大時の項の係数が
キャンセルするので2n-1次であることを注意しておく。
元の方程式にない余計な解が1個出てくると思われるが
いったん無視して議論を進めさせて頂きたい。
これは因数分解ができる形なので正攻法でも勝負できるが
少し後知恵を投入して
より
同様に
より
よって
ただし
ゆえ、方程式は
となり、
今考慮すべきなのは正の解なので
ここまでの議論で、上記の解が
の
これで
の時、
(※左辺と右辺の
いま
かつ
だったので、不等式各辺を
となり
より
が得られる。
今この議論では
はギリギリセーフ(アウトかも?)だが、
上記の議論で用いた方法でもう少しよくできるので、少なくとも
は問題なく示すことができる。(と考えている。)
実際は
の成立にsの大きさがかかわることはないはずなので
(実際複素対数表示の議論ではそんな話は出てこない)
ここまでの議論には改善の余地が大いにあると思われるが
これ以上のとっかかりを筆者が持っていないため、
「比較的初等的だがとてもじゃないが簡潔とは言えない方法」の説明は一旦ここまでとしたい。
前回の投稿から4か月もたってしまった。
もっと簡単に計算できる予定だったのに何でこんなことに…。
とは言え、複素対数表示での計算には簡潔さの意味でまぁまぁ満足でき
一般にそうなる話なので、なかなか興味深いと感じるのだが
これが実際に積分計算に役立つというのは、今回取り扱った問題と
かなり近しい類題でなければならないのではないかと思う。
実際
級数・積分bot
には今回の問題に似た問題として
があるが、今回の方法で議論を進めると根本的な困難を抱えることになり
本題と全く違うところで大議論を進めることになると思われる。
(筆者は回答を得られていない。)
なら今回の議論で解決できる類題になるはずである。
また今回、方程式の指定範囲にある解の数を数えるということをやったが
このお題目だと当然
スツルムの定理
が脳裏をよぎる。
方程式族に対してうまく列を構成できる気がしないので
そちらには進まなかったのだが、あるいはうまくやる方法が
あるかもしれない。
級数・積分bot
の問題と戦うシリーズ
第一弾
∫[0,π]log(t+cos(x))dxとチェビシェフ多項式
第二弾 ∫[0,π/2]arctan(s^2tan^2(x))dxとある方程式の解の分布(本記事)