前回[1]の続き.準同型を表す下付きのは省略する.
序
を体,をを持つ半群とする.が生成する自由ベクトル空間に,の積を線形拡張して得られる結合的代数をで表す.に対し,の係数をで表す;
ただし有限個のを除いてである.このときに対し,積を具体的に書くと
である.次の命題は容易にわかる.
をを持つ半群,をを保つ半群準同型とする.は代数準同型,
を導く.この対応は関手的である.
[1]においてを持つ半群の間の準同型を定義した.準同型については一般に命題1のように定めても代数の準同型は得られない.この記事ではを持つ半群の間の新しい射を準同型を用いて導入して,代数準同型を構成する.またそうして得られる代数準同型が,命題1によりを保つ半群準同型から得られるものを含むことを示す.
特別な準同型
全域準同型
をを持つ半群とする.準同型は,任意のに対し,であるとき常にであるとき全域的であるという.
全域的準同型はと定めることでを保つ半群準同型に拡張される.従って命題1によって代数準同型が定まる.
をを持つ半群,をを保つ半群準同型とする.このときは空でないイデアルであり,, , は準同型を定める.なるに対し,ゆえは全域的である.
整然準同型
準同型が固有であるとは,すべてのに対してが有限集合であることをいう.固有準同型に対し,線形写像が
により定まる.これが代数準同型となる(i.e.積を保つ)ための条件を調べる.に対し,
である.そこで,次の概念を導入する.
を準同型とする.このとき各に対して写像
が定まる.ただしは積を与える写像である.
すべてのに対して写像が全単射であるとき,は整然であるという.
言い換えると,準同型が整然とは,任意のと任意のなるに対し,なるで, をみたすものがただ一つ存在することをいう.
- をを持つ半群,を空でないイデアルとする.このとき () は準同型を定める.は単射ゆえ固有である.または整然である.実際,がと書かれるとき,はイデアルであるからである.よって, である.一意性はが単射であることから従う.
- 集合に対し,は演算
によりを持つ半群である.集合とその間の写像に対し,, は準同型となる.この対応によりは忠実充満関手を定める.は整然である.実際,任意のに対し,, だから,は全単射である.
性質
を整然,固有または全域的のいずれかとする.
(1) をみたす準同型の合成はをみたす.
(2) 下図のpullbackにおいて,がをみたすときもをみたす.
- 略
- [1]の命題6によりであった.
[全域的] 任意のをとる. or である.であるから,の全域性を示すにはを仮定したときが示されればよい.のとき,は全域的ゆえ
である.従って,[1]の補題2によりを得る.
[固有] 任意のに対し,
[整然] 任意のを固定する.示したいことは,写像
が全単射であることである.任意のなるに対し,である.は整然であるから,なるがただ一つ存在して,, が成り立つ.従ってであり,上の写像が全単射であることが分かった.
許容スパン
圏はpullbackを持つから,スパンの圏を考えることができる.すなわち,対象はを持つ半群であり,射はスパンの同値類である.ここで,同型があって,下図を可換にするとき,二つのスパン, は同一視される:
スパンを含む同値類をで,あるいはを省略してで表す.二つのスパン, に対し,射の合成はpullbackを用いてで定義される:
スパンが許容であるとは,が固有整然,が全域的であることと定める.補題5と命題3(1)から,許容スパンと同値なスパンは許容である.従ってが許容であることが矛盾なく定義される.命題3により,許容スパンの合成は許容スパンであるから,スパンの圏の射を許容スパンに制限したものは部分圏をなす.これをと表す.が固有であることから,圏はlocally smallである.
前節から,許容スパンに対して代数準同型が定まる.同型に対し,補題5により
であるから,この代数準同型は類に対して定まる.これをで表す.
, を許容スパンとする.
を示すため,を示せばよい.基底の行き先を見ればよい.任意のに対し,
であるから,
を得る.従ってが示された.
は明らかである.
をを持つ半群,をを保つ半群準同型とする.このとき例1, 例2(1)により許容スパンが定まる.
対応は,を持つ半群とを保つ半群準同型の圏からへの関手を定める.さらに,任意のを保つ準同型に対し,が成り立つ.
からはO.K.
, をを保つ準同型とする.
であるから,, は同型を与える.
このとき任意のに対し,
である.よってである.以上により関手性が示された.
を示す.任意のに対し,
よってが示された.
を保つ半群準同型からは得られない許容スパンの例
, , , ,とする., である.許容スパン, を考える.対応する代数準同型はである.一方で,を保つ準同型は, , のいずれかのみである.対応する代数準同型はそれぞれ, , である.
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