「ある恒等式と部分分数分解」はこちら
引き続き、を任意の体とします。との定義を再掲しておきます。
また、この記事ではは以上の整数とします。のとき、
と約束します。
前回の記事では、
という式を示しました。前回はとしていましたが、の場合もと約束すれば成り立つことが確かめられます。
前回はこの等式においてとおくことにより目的の式を得ましたが、他の値を代入して得られる式をいくつか見ていきたいと思います。
を以上以下の整数とし、の場合を考えます。この場合も、の定義に現れる行列式がになることが容易に分かり、従って、前回の結果と合わせて
を相異なる元とし、を以上以下の整数とする。このとき
が成り立ちます。さらに、の線形性から
を相異なる元とし、を高々次の係数多項式とする。このとき
も成り立ちます。これにより、前回よりも一般的な状況での部分分数分解に対応できます。例えばとして
など。
の場合を考えます。この場合は、の定義から
であることが分かり、したがって
が成り立ちます。
が公差の等差数列
この節では、結果の見栄えのため、添え字をとします。すなわち、は以上の整数で、等式
を利用します。また、体の標数はであるか十分大きいとします。
任意にをとり、にを代入します。各に対してを計算すると、
となるので、
が成り立ち、さらに両辺にをかければ
となります。
ここで、先ほどと同じようにを代入すると、
が得られます。
二項係数の重み付き交代和の公式が得られました。まとめると、
を自然数とする。を任意の元とし、が相異なると仮定する。このとき
例えば、以下のような式が成り立つことが分かります。