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【相対論】Goldberg-Sachsの定理

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 相対論で有名な定理の一つであるGoldberg-Sachsの定理を証明します。この記事はPetrov分類、Newmann-Penrose formalismを前提知識としています。

Goldberg-Sachs

4次元Einstein時空の近傍Uにおいて、shearfree geodesic null congruenceが存在することとU上でWeylテンソルがalgebraically specialであることは同値である。

 この記事ではshearfree geodesic null congruenceとNewman-Penrose formalismを簡単に復習してからGoldberg-Sachsの定理をもう少し精密化して証明します。

Newman-Penrose formalism

  Newman-Penrose formalism 3 の内容を使いますが、Goldberg-Sachsの定理に必要な事項だけここにまとめます。

 4次元時空(M,g)のnull tetradを{m,m¯,l,k}とします。このときスピン係数を
α=12[g(m¯k,)g(m¯m¯,m)]β=12[g(mk,)g(mm¯,m)]γ=12[g(k,)g(m¯,m)]ε=12[g(kk,)g(km¯,m)]μ=g(m,m¯),  λ=g(m¯,m¯)ν=g(,m¯),  π=g(k,m¯)σ=g(mk,m),  ρ=g(m¯k,m)τ=g(k,m),  κ=g(kk,m)
で定義します。

 ワイルテンソルW
Wabcd=Rabcd+gadPcbgacPdb+gbcPdagbdPcaPab=12Rab112Rgab
で与えられ、実10次元の自由度を持ち、Weylスカラーと呼ばれる5つの複素数
Ψ0=W(k,m,k,m),Ψ1=W(k,l,k,m),Ψ2=W(k,m,l,m¯)Ψ3=W(l,k,l,m¯),Ψ4=W(l,m¯,l,m¯)
を使ってWeylテンソルの任意の成分は表されます。 Petrov分類1 で解説してますが、Ψ0=Ψ1=0のとき、その時空、または近傍、または時空点はalgebraically specialと呼ばれます。

 このとき単純な計算により以下が成り立つことが分かります。
(f1)  [m,k]=(ρ¯+ε¯ε)m+σm¯+κl+(α¯+β+π¯)k(f2)  kβ=mεα¯εβε¯γκκμεπ¯βρ¯ασ+πσΨ1(f3)  mρ=m¯σ+κμ¯κμ+α¯ρ+βρ3ασ+β¯σρ¯τ+ρτΨ1P14(f4)  kτ=lκγ¯κ3γκ+π¯ρ+πσστ¯ε¯τ+ετρτΨ1+P14(f5)  mΨ1=lΨ0kP11+mP144γΨ0+μΨ0+2βΨ13σΨ2+4τΨ12κP13+2εP112ε¯P112βP142π¯P14+λ¯P44ρ¯P11σP12+σP34(f6)  kΨ1=m¯Ψ0kP14+mP44+4αΨ0+πΨ0+2εΨ13κΨ24Ψ1ρ+κ¯P11+κP12+2εP14κP342α¯P442βP44π¯P442ρP142σP24(f7)  lΨ1=mΨ2+kP13mP34+νΨ0+2γΨ12μΨ12σΨ33τΨ2πP11π¯P12+2ε¯P13+μP14+λ¯P24+κP33+π¯P34+ρ¯P13+σP23(f8)  mΨ¯1=kΨ¯2+kP12m¯P14+λ¯Ψ¯0+2α¯Ψ¯1+2π¯Ψ¯1+2κ¯Ψ¯33ρ¯Ψ¯2+κP23+π¯P24+κ¯P13+2αP14+πP14μ¯P44+ρP12ρP34+σ¯P11(f9)  lΨ2=mΨ3+lP12m¯P13+2νΨ13μΨ22βΨ3+2τΨ3+σΨ4+λP11+μ¯P122β¯P13+νP14+ν¯P24ρP33μ¯P34+τP23+τ¯P13(f10)  kΨ3=m¯Ψ2+lP24m¯P342λΨ13πΨ22εΨ3+κΨ42ρΨ3+λP14+ρP232γ¯P24+μ¯P24+νP44+σ¯P13τP22τ¯P12+τ¯P34

Shearfree geodesic null congruence

 kはnullベクトル場なのでその積分曲線はnull curveの束となり、これはnull congruenceと呼ばれます。さらに
kk=(ε+ε¯)k+κ¯m+κm¯
が成り立つので、κ=0のとき、kの積分曲線は測地線になります。このような状況をkgeodesic null congruenceを定めると言います。

 またσ=g(mk,m)kshearと呼ばれます。この量はkの作るnull congruenceのspacelikeな2次元断面がどのように“へしゃげる”かを表しています(詳しくはnull congruenceのshearについての記事)。
shear shear

 σ=0のとき、このnull congruenceは断面が変形せずに進んで行き、shearfreeであると言います。。κ=σ=0のとき、kshearfree geodesic null congruenceを生成すると言います。

精密化されたGoldberg-Sachsの定理

 Einstein metricならば
P11=P14=P44=P13=P22=P23=P24=P33=P12P34=0
となりますが、この条件のうちで必要最小限の条件のみ仮定したものが以下の定理です。

精密化されたGoldberg-Sachsの定理

(M,g)4次元時空とする。
(1)P11=P14=P44=0かつκ=σ=0であるとき、Ψ0=Ψ1=0である。
(2)gがEinsteinでありかつ共形平坦でないとき、Ψ0=Ψ1=0ならばκ=σ=0である。

(1)
mκ=kσ+α¯κ+3βκ+κπ¯3εσ+ε¯σ+ρσ+ρ¯σ+κτ+Ψ0
よりκ=σ=0よりΨ0=0である。

また
mΨ1=lΨ0kP11+mP144γΨ0+μΨ0+2βΨ13σΨ2+4τΨ12κP13+2εP112ε¯P112βP142π¯P14+λ¯P44ρ¯P11σP12+σP34kΨ1=m¯Ψ0kP14+mP44+4αΨ0+πΨ0+2εΨ13κΨ24Ψ1ρ+κ¯P11+κP12+2εP14κP342α¯P442βP44π¯P442ρP142σP24
よりP11=P14=P44=κ=σ=0のとき
mΨ1=2βΨ1+4τΨ1kΨ1=2εΨ14Ψ1ρ
である。よって
[m,k]Ψ1=2m((ε2ρ)Ψ1)2k((β+2τ)Ψ1)
であり、
(f1)  [m,k]=(ρ¯+ε¯ε)m+σm¯+κl+(α¯+β+π¯)k
を使うと
2(ρ¯+ε¯ε)(β+2τ)Ψ1+2(α¯+β+π¯)(ε2ρ)Ψ1=2m((ε2ρ)Ψ1)2k((β+2τ)Ψ1) (2m(ε2ρ)2k(β+2τ)+2(εε¯ρ¯)(β+2τ)2(α¯+β+π¯)(ε2ρ))Ψ1=0

また
(f2)  kβ=mεα¯εβε¯γκκμεπ¯βρ¯ασ+πσΨ1(f3)  mρ=m¯σ+κμ¯κμ+α¯ρ+βρ3ασ+β¯σρ¯τ+ρτΨ1P14(f4)  kτ=lκγ¯κ3γκ+π¯ρ+πσστ¯ε¯τ+ετρτΨ1+P14

kβ=mεα¯εβε¯επ¯βρ¯Ψ1mρ=α¯ρ+βρρ¯τ+ρτΨ1kτ=π¯ρε¯τ+ετρτΨ1
となるから、これらを代入して微分項を消去すると、Ψ1以外の項はちょうど消えて
10Ψ12=0
となり、Ψ1=0が分かる。

(2)
Einstein条件
P11=P14=P44=P13=P22=P23=P24=P33=P12P34=0
Ψ0=Ψ1=0が成り立つとする。

(f5)mΨ1=lΨ0kP11+mP144γΨ0+μΨ0+2βΨ13σΨ2+4τΨ12κP13+2εP112ε¯P112βP142π¯P14+λ¯P44ρ¯P11σP12+σP34(f6)kΨ1=m¯Ψ0kP14+mP44+4αΨ0+πΨ0+2εΨ13κΨ24Ψ1ρ+κ¯P11+κP12+2εP14κP342α¯P442βP44π¯P442ρP142σP24
より
σΨ2=κΨ2=0
が得られる。
κ=σ=0なら証明は終わりなので、κまたはσが0でない開集合上で考える。
このときΨ0=Ψ1=Ψ2=0である。

(f7)lΨ1=mΨ2+kP13mP34+νΨ0+2γΨ12μΨ12σΨ33τΨ2πP11π¯P12+2ε¯P13+μP14+λ¯P24+κP33+π¯P34+ρ¯P13+σP23(f8)mΨ¯1=kΨ¯2+kP12m¯P14+λ¯Ψ¯0+2α¯Ψ¯1+2π¯Ψ¯1+2κ¯Ψ¯33ρ¯Ψ¯2+κP23+π¯P24+κ¯P13+2αP14+πP14μ¯P44+ρP12ρP34+σ¯P11
より
0=mP342σΨ3=2σΨ30=kP12+2κ¯Ψ¯3=2κ¯Ψ¯3
なので、
σΨ3=κΨ3=0
である。
κ=σ=0なら証明は終わりなので、κまたはσが0でない開集合上で考える。
このときΨ0=Ψ1=Ψ2=Ψ3=0である。

(f9)lΨ2=mΨ3+lP12m¯P13+2νΨ13μΨ22βΨ3+2τΨ3+σΨ4+λP11+μ¯P122β¯P13+νP14+ν¯P24ρP33μ¯P34+τP23+τ¯P13(f10)kΨ3=m¯Ψ2+lP24m¯P342λΨ13πΨ22εΨ3+κΨ42ρΨ3+λP14+ρP232γ¯P24+μ¯P24+νP44+σ¯P13τP22τ¯P12+τ¯P34
より
σΨ4=κΨ4=0
である。共形平坦でないことを仮定しているからΨ40である。よってσ=κ=0である。

定理2の

定理1(Goldberg-Sachs)
4次元Einstein時空の近傍Uにおいて、shearfree geodesic null congruenceが存在することとU上でWeylテンソルがalgebraically specialであることは同値である。

4次元Einstein時空の近傍Uにおいて、shearfree geodesic null congruenceが存在するならば、algebraically specialであることは定理2(1)より分かる。

逆に、4次元Einstein時空の近傍Uにおいて、もし共形平坦でなければ、定理2(2)より、algebraically specialならばshearfree geodesic null congruenceが存在することが分かる。
共形平坦の場合は、Minkowski時空と共形同値となり、自明にalgebraically specialである。またMinkowski時空のgeodesic null congruenceは明らかにshearfreeである。さらに共形変換によってshearfree geodesic null congruenceという性質は不変なので、Minkowski時空と共形同値な時空はshearfree geodesic null congruenceを無数に持つ。

参考文献

A. ROD GOVER, C. DENSON HILL, AND PAWEL NUROWSKI SHARP VERSION OF THE GOLDBERG-SACHS THEOREM

B.O'Neill, Geometry of Kerr Black Holes

投稿日:113
更新日:114
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Submersion
Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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