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集合 ①

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はじめに


こちら ① に、これまでに作成した数学ノートをシリーズとしてまとめています(※)。
※ 読み進める順番は、ページ下部(古い記事)から上部(新しい記事)へです。
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こちら ➁ に、証明を進めるうえでのポイントを随時まとめています。必要に応じて参照してください。
こちら ③ に、数学における基本用語を随時まとめています。必要に応じて参照してください。
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Def.

定義 (直観的)

ある対象がその集まりに属するかどうかが明確に判断できるような対象の集まりを集合という。
集合 $A$ に属する対象 $a$$A$ の元(要素)という。

「明確に定まる」という部分が数学的には未定義で、これだけで集合概念を公理的に確定できない。
これは素朴集合論の説明であり、厳密に定義を与えるには$ZF$集合論などの公理系に基づく。

集合は通常、大文字のアルファベット $A,B,C,\cdots$ などで表す。

定義

集合$U$$1$つ固定し、$A$$U$の部分集合(集合$U$の一部)とする。
$a$ は集合 $A$ の元である」ことを
$$ a\in A $$
または
$$ A\ni a $$
と書く。
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$a$ は集合 $A$ の元でない」ことを
$$ a\notin A $$
または
$$ A\not\ni a $$
と書く。

集合は必ず要素を含むとも限らない。要素を$1$つも含まない空の集合を考えることができる。
(この空の集合の存在を認めることは$ZF$公理系の$1$つに含まれる ※空集合公理(空集合の存在を保証する公理))。

定義

集合$U$$1$つ固定し、$A$$U$の部分集合(集合$U$の一部)とする。
集合$A$が空集合であるとは、$U$の中に$A$の元が$1$つも存在しないことをいう。すなわち
$$ A=\varnothing\ :\Leftrightarrow\ \neg\bigl(\exists x\in U \ \text{s.t.}\ (x\in A)\bigr) $$
で定義する。

別の記号

空集合を$\emptyset$で表すこともある。

同値な言い換え

上の定義は次の形とも同値である。
$$ A=\varnothing\ :\Leftrightarrow\ \forall x\in U\ (x\notin A) $$
実際、一般に
$$ \forall x\in U,\ \neg P(x)\ \Leftrightarrow\ \neg\bigl(\exists x\in U \ \text{s.t.}\ P(x)\bigr) $$
が成り立つから、ここで$P(x)$$x\in A$とすれば
$$ \forall x\in U\ (x\notin A)\ \Leftrightarrow\ \neg\bigl(\exists x\in U \ \text{s.t.}\ (x\in A)\bigr) $$
を得る。

定義 【全体集合 と その部分集合】

ある数学的議論において、考える対象となる元が取り得る範囲を表す集合$U$$1$つ固定する。
このとき$U$を全体集合という。
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集合$A$$U$に対する部分集合であるとは、
$A$の任意の元が$U$の元でもあることをいう。すなわち
$$ A\subseteq U\ :\Leftrightarrow\ \forall x\in A\ (x\in U) $$
が成り立つことをいう。

別の呼称

全体集合は、普遍集合や議論領域、宇宙と呼ばれる事もある。

全体集合$U$は、その議論で固定する$1$つの集合に過ぎず、あらゆる“すべての集合” を意味する訳ではない。
詳しくはラッセルのパラドックス(自身を要素として持たない集合全体からなる集合の存在を認めると矛盾が導かれる)で調べると良い。

全体集合を明確にすることの重要性

数学において、しばしば考えている集合$A$を含む全体集合$U$が何であるかを明確にする事は重要である。
ここでは、二次方程式の解を例に考える。
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係数が実数である二次方程式
$$ x^2+1=0 $$
を考える。いま、全体集合$U$$1$つ固定し、このとき方程式$x^2+1=0$の解集合を
$$ A_U=\{x\in U\mid x^2+1=0\} $$
で定める。ここで、全体集合$U$をどれに取るかで、$A_U$の扱いが大きく変わる。
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まず全体集合を実数全体
$$ U=\mathbb R $$
とする。このとき、$x^2\ge 0$が任意の実数$x$で成り立つので、任意の$x\in\mathbb R$に対して$x^2+1>0$である。
したがって$\mathbb R$の中にはこの方程式を満たす元が存在せず、
$$ A_{\mathbb{R}}=\varnothing $$
となる。一方、全体集合を複素数全体
$$ U=\mathbb C $$
とする。このとき、虚数単位$i$を用いると
$$ i^2=-1 $$
であるから、$x=i$$x=-i$
$$ x^2+1=0 $$
を満たす。したがって$\mathbb C$の中では解が存在し、
$$ A_{\mathbb{C}}=\{i,-i\} $$
となる。このように、同じ式
$$ x^2+1=0 $$
に対しても、全体集合$U$$\mathbb R$に取るか$\mathbb C$に取るかで、解集合$A_{U}$$\emptyset$になったり$\{i,-i\}$になったりする。

定義【集合の外延的表現】

全体集合$U$$1$つ固定する。また、$A$$U$の部分集合とする。
集合$A$を、その元を直接に列挙することで表す記法を外延的記法という。
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すなわち、元$a_1,a_2,\cdots,a_n\in U$を用いて
$$ A=\{a_1,a_2,\cdots,a_n\} $$
と書くとき、これは
$$ \forall x\in U\ \bigl(x\in A\ \Leftrightarrow\ x=a_1\lor x=a_2\lor\cdots\lor x=a_n\bigr) $$
を意味する。

外延的記法のデメリット
  1. 多くの場合で有限個しか列挙できない
    外延的記法$A=\{a_1,a_2,\cdots,a_n\}$は元を列挙する形であるため、
    無限集合$\mathbb{C}$$\mathbb{Q}$のような集合は、有限個を直接列挙する外延的記法では表せない。
    (しかし自然数全体の集合などを外延的記法で定義する事はある。後述)
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  2. 記述が長くなりやすい
    元の個数が多いと$\{1,2,3,\cdots,1000\}$のように長くなり、可読性が下がる。
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  3. 規則性が伝わりにくい
    例えば$\{2,4,6,8,10\}$は偶数の集合の一部であるが、
    外延的記法だけでは「偶数全体」という規則を直接表しにくく、どこまで続くのかが曖昧になりやすい。
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  4. 同じ集合かどうか判定しづらい場合がある
    外延的記法では並び順が違っても同じ集合として扱われる。
    例えば$\{1,2,3\}=\{3,2,1\}$である。
    また重複があっても同じ集合として扱われる(これは別で証明する)。
    例えば$\{1,2,2,3\}=\{1,2,3\}$である。
    このように、表記だけを見ると同一性が分かりにくいことがある。
定義

集合$U$と変数$x$を考える。変数$x$が取り得る値の集合を$U$として指定するとき、$U$$x$の定義域という。
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さらに、$P(x)$を変数$x$を含む文とする。
定義域$U$に対して、任意の$a\in U$を代入して得られる文
$$ P(a) $$
が常に命題(真または偽のいずれかが定まる文)となるとき、$P(x)$$U$上の条件という。

定義【集合の内包的表現】

集合$U$$1$つ固定する。また、$P(x)$$U$を定義域とする条件とする。
条件$P(x)$を満たす$U$の元全体からなる集合を、内包的記法により
$$ \{x\in U\mid P(x)\} $$
と書く。

内包的記法のメリット
  1. 無限集合を自然に表せる
    外延的表記では元を列挙できない無限集合も、内包的表記なら条件で一括して指定できる。
    例えば偶数全体は
    $$ \{n\in\mathbb{Z}\mid \exists k\in\mathbb{Z}\ (n=2k)\} $$
    のように書ける。
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  2. 規則性や定義が明確になる
    どのような元を集めた集合なのかが条件として直接書かれるため、集合の意味が明確になる。
    例えば
    $$ \{x\in\mathbb{R}\mid x^2<2\} $$
    は「$x^2<2$を満たす実数全体」という規則をそのまま表している。
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  3. 議論領域を指定(明示)できる
    $\{x\in U\mid P(x)\}$の形にすると、背景となる集合$U$が明示されるため、量化や同値変形を行うときの前提が整理される。
    特に
    $$ x\in\{y\in U\mid P(y)\}\ \Leftrightarrow\ (x\in U\land P(x)) $$
    のように「定義に戻す」操作が機械的に行える。
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  4. 証明の型と相性がよい
    集合の等式や包含を示すとき、内包的表記は「元で言い換える」証明と直結する。
    例えば
    $$ A=\{x\in U\mid P(x)\},\ B=\{x\in U\mid Q(x)\} $$
    とおけば、$A\subseteq B$
    $$ \forall x\in U\ (P(x)\Rightarrow Q(x)) $$
    に還元でき、論理式の証明に帰着できる。
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  5. 複雑な集合を短く書ける
    条件を使うことで、元を大量に列挙せずに簡潔に表現できる。
    例えば「$10$以下の自然数」は
    $$ \{n\in\mathbb{N}\mid n\le 10\} $$
    と書ける。

このように主張 $P(x)$ が真である $x$ の集まりを考える事で、命題論理と集合との間に対応がつく。

背景となる集合 $U$ が文脈上明らかなときに限り
$$ \{x\mid P(x)\} $$
と略記することがある。

定義

以下の集合は以後よく用いるので、特定の記号で表す。

  1. 自然数全体の集合を
    $$ \mathbb{N}:=\{1,2,3,\cdots\} $$
    で定める(補足を参照)。
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  2. 整数全体の集合を
    $$ \mathbb{Z}:=\{\cdots,-2,-1,0,1,2,\cdots\} $$
    で定める。
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  3. 有理数全体の集合を
    $$ \mathbb{Q}:=\left\{\frac{p}{q}\,\middle|\,p,q\in\mathbb{Z},\ q\ne 0\right\} $$
    で定める。
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  4. 実数全体の集合を
    $$ \mathbb{R}:=\{x\mid x\ \text{は実数である}\} $$
    で定める(補足を参照)。
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  5. 複素数全体の集合を、虚数単位 $i$
    $$ i^2=-1 $$
    を満たす数として導入した上で
    $$ \mathbb{C}:=\{a+bi\mid a,b\in\mathbb{R}\} $$
    で定める。
自然数$\mathbb{N}$$0$を含める流儀について

自然数全体の集合$\mathbb{N}$の定義には流儀があり、$0$を含める場合と含めない場合がある。
本稿では
$$ \mathbb{N}:=\{1,2,3,\cdots\} $$
を採用するが、文献によっては
$$ \mathbb{N}:=\{0,1,2,3,\cdots\} $$
と定めることもある。
どちらを採用しているかにより、例えば「最小の自然数」や「$n$が自然数のとき$0\le n$が成り立つ」といった記述の意味が変わる。
したがって、$\mathbb{N}$の定義は議論の冒頭で明示し、以後はその定義に従って扱う。

実数$\mathbb{R}$の定義が他と比べて等閑に見える理由

整数$\mathbb{Z}$や有理数$\mathbb{Q}$は、すでに扱える対象を用いて具体的に記述できる。
例えば$\mathbb{Z}$は自然数に符号を付けることで得られ、$\mathbb{Q}$$\mathbb{Z}$を用いた分数$\frac{p}{q}$で表せる。
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一方で実数$\mathbb{R}$は、有理数だけでは表せない数を含む集合である。
例えば
$$ x^2=2 $$
を満たす正の数は有理数ではないが、実数としては存在するものとして扱う。
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このような数を含めて実数全体を厳密に定義するには、単に記号で列挙したり分数の形で表したりするだけでは不十分である。
実数を厳密に構成する代表的な方法として、有理数のデデキント切断による構成や、有理数列のコーシー列を用いる構成がある。
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しかしこれらは準備が必要であり、初学段階でただちに導入すると議論が重くなりやすい。
そこで本稿では、まず$\mathbb{R}$を実数全体の集合として記号で導入し、必要に応じて後に「実数の構成」や「実数の公理的性質」を別途扱う。

Prop & Proof

集合$U$$1$つ固定し、$P(x)$$U$を定義域とする条件とする。
このとき任意の$x\in U$について
$$ x\in\{y\in U\mid P(y)\}\ \Leftrightarrow\ P(x) $$
が成り立つ。

任意の$x\in U$を取る。集合
$$ \{y\in U\mid P(y)\} $$
の定義より、次が成り立つ。
$$ x\in\{y\in U\mid P(y)\}\ \Leftrightarrow\ \bigl(x\in U\land P(x)\bigr) $$
ここで$x\in U$を仮定しているので、命題論理より
$$ x\in U\land P(x)\ \Leftrightarrow\ P(x) $$
が成り立つ。従って推移律により
$$ x\in\{y\in U\mid P(y)\}\ \Leftrightarrow\ P(x) $$
が成り立つ。
$x\in U$は任意であったから、結論が従う。
$$ \Box$$

この帰結は当然のようにも感じられるが、今後の証明で頻繁に用いる「論理式に戻すための変換規則」である。
例えば、今後触れる集合演算を、論理演算との対応として
$$ x\in A\cap B\ \Leftrightarrow\ (x\in A\land x\in B) $$
$$ x\in A\cup B\ \Leftrightarrow\ (x\in A\lor x\in B) $$
$$ x\in A\setminus B\ \Leftrightarrow\ (x\in A\land x\notin B) $$
のように論理式に戻して結論へと導く事が度々現れる。

$ZF$集合論において、分出公理は、特定の条件を満たす部分集合を構成することを許可する重要な公理である。

投稿日:12日前
更新日:3日前
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投稿者

集合論の勉強から再度始める事にしました。自分自身がいつ読み返しても理解できるようなノート作りをコンセプトにしています。証明や命題に誤りなどがありましたら、ご指摘いただけると幸いです (2025年12月28日)。

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