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現代数学解説
文献あり

Bressoudの反転公式

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aに関するBailey対(αn,βn)
βn=k=0nαk(q;q)nk(aq;q)n+k
を満たすものとして定義される. それは
αn=1aq2n1ak=0n(a;q)n+k(1)nkq(nk2)(q;q)nkβk
を満たすことと同値であることを 前の記事 で示した. 無限次行列(An,k)n,k0n<kのときAn,k=0であるとき三角行列という. 任意の0mnに対して
mknAn,kBk,m=δn,m
が成り立つとき, (Bn,k)n,k0(An,k)n,k0の逆行列であるという. 上のBailey対に関する反転公式は
An,k=1(q;q)nk(aq;q)n+kBn,k=1aq2n1a(a;q)n+k(1)nkq(nk2)(q;q)nk
がそれぞれ逆行列の関係にあることを意味している. それを一般化したのが次のBressoudの反転公式である.

Bressoud(1983)

0n,kに対して,
Dn,k(a,b):=1aq2k1a(b;q)n+k(b/a;q)nk(aq;q)n+k(q;q)nk(ba)k
とする. このとき(Dn,k(a,b))n,k0の逆行列は(Dn,k(b,a))n,k0によって与えられる.

0mnとする.
mknDn,k(a,b)Dk,m(b,a)=k=mn1aq2k1a(b;q)n+k(b/a;q)nk(aq;q)n+k(q;q)nk(ba)k1bq2m1b(a;q)k+m(a/b;q)km(bq;q)k+m(q;q)km(ab)m=1bq2m1bk=0nm1aq2k+2m1a(b;q)n+m+k(b/a;q)nmk(aq;q)n+m+k(q;q)nmk(ba)k(a;q)k+2m(a/b;q)k(bq;q)k+2m(q;q)k=1aq2m1a1bq2m1b(b;q)n+m(b/a;q)nm(a;q)2m(aq;q)n+m(q;q)nm(bq;q)2mk=0nm1aq2k+2m1aq2m(bqn+m,qmn,aq2m,a/b;q)k(aqn+m+1,aq1+mn/b,bq2m+1,q;q)kqk
ここで, Rogersの6ϕ5和公式 より, Kroneckerのデルタを用いて
k=0nm1aq2k+2m1aq2m(bqn+m,qmn,aq2m,a/b;q)k(aqn+m+1,aq1+mn/b,bq2m+1,q;q)kqk=(aq2m+1,qmn+1;q)nm(aq1+mn/b,bq2m+1;q)nm=δn,m
と表されるからこれを代入して定理を得る.

定理を言い換えると
1a1aq2kDn,k(a,b)(ab)k=(b;q)n+k(b/a;q)nk(aq;q)n+k(q;q)nk
1aq2n1aDn,k(b,a)(ba)n=1aq2n1a1bq2k1b(a;q)n+k(a/b;q)nk(bq;q)n+k(q;q)nk(ba)nk
は逆行列の関係にあることが分かる. 特にb0とするとaに関するBailey対の反転公式を得る. 一般に,
βn=k=0n(b;q)n+k(b/a;q)nk(aq;q)n+k(q;q)nkαk=(b,b/a;q)n(aq,q;q)nk=0n(qn,bqn;q)k(aq1n/b,aqn+1;q)k(aqb)kαk
によって関係する数列の組(αn,βn)はWP-Bailey対と呼ばれている.

参考文献

[1]
D. M. Bressoud, A Matrix Inverse, Proceedings of the American Mathematical Society, 1983, 446-448
投稿日:21日前
更新日:18日前
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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