aに関するBailey対(αn,βn)はβn=∑k=0nαk(q;q)n−k(aq;q)n+kを満たすものとして定義される. それはαn=1−aq2n1−a∑k=0n(a;q)n+k(−1)n−kq(n−k2)(q;q)n−kβkを満たすことと同値であることを 前の記事 で示した. 無限次行列(An,k)n,k≥0はn<kのときAn,k=0であるとき三角行列という. 任意の0≤m≤nに対して∑m≤k≤nAn,kBk,m=δn,mが成り立つとき, (Bn,k)n,k≥0は(An,k)n,k≥0の逆行列であるという. 上のBailey対に関する反転公式はAn,k=1(q;q)n−k(aq;q)n+kBn,k=1−aq2n1−a(a;q)n+k(−1)n−kq(n−k2)(q;q)n−kがそれぞれ逆行列の関係にあることを意味している. それを一般化したのが次のBressoudの反転公式である.
0≤n,kに対して,Dn,k(a,b):=1−aq2k1−a(b;q)n+k(b/a;q)n−k(aq;q)n+k(q;q)n−k(ba)kとする. このとき(Dn,k(a,b))n,k≥0の逆行列は(Dn,k(b,a))n,k≥0によって与えられる.
0≤m≤nとする.∑m≤k≤nDn,k(a,b)Dk,m(b,a)=∑k=mn1−aq2k1−a(b;q)n+k(b/a;q)n−k(aq;q)n+k(q;q)n−k(ba)k1−bq2m1−b(a;q)k+m(a/b;q)k−m(bq;q)k+m(q;q)k−m(ab)m=1−bq2m1−b∑k=0n−m1−aq2k+2m1−a(b;q)n+m+k(b/a;q)n−m−k(aq;q)n+m+k(q;q)n−m−k(ba)k(a;q)k+2m(a/b;q)k(bq;q)k+2m(q;q)k=1−aq2m1−a1−bq2m1−b(b;q)n+m(b/a;q)n−m(a;q)2m(aq;q)n+m(q;q)n−m(bq;q)2m∑k=0n−m1−aq2k+2m1−aq2m(bqn+m,qm−n,aq2m,a/b;q)k(aqn+m+1,aq1+m−n/b,bq2m+1,q;q)kqkここで, Rogersの6ϕ5和公式 より, Kroneckerのデルタを用いて∑k=0n−m1−aq2k+2m1−aq2m(bqn+m,qm−n,aq2m,a/b;q)k(aqn+m+1,aq1+m−n/b,bq2m+1,q;q)kqk=(aq2m+1,qm−n+1;q)n−m(aq1+m−n/b,bq2m+1;q)n−m=δn,mと表されるからこれを代入して定理を得る.
定理を言い換えると1−a1−aq2kDn,k(a,b)(ab)k=(b;q)n+k(b/a;q)n−k(aq;q)n+k(q;q)n−kと1−aq2n1−aDn,k(b,a)(ba)n=1−aq2n1−a1−bq2k1−b(a;q)n+k(a/b;q)n−k(bq;q)n+k(q;q)n−k(ba)n−kは逆行列の関係にあることが分かる. 特にb→0とするとaに関するBailey対の反転公式を得る. 一般に,βn=∑k=0n(b;q)n+k(b/a;q)n−k(aq;q)n+k(q;q)n−kαk=(b,b/a;q)n(aq,q;q)n∑k=0n(q−n,bqn;q)k(aq1−n/b,aqn+1;q)k(aqb)kαkによって関係する数列の組(αn,βn)はWP-Bailey対と呼ばれている.
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