0
大学数学基礎解説
文献あり

被覆の自己同型について

97
0
$$$$

被覆の自己同型

 この記事は参考文献 [1] 第 2 章 Fundamental groups in topology を参考にさせていただきました。

 以下、$X$ を局所連結位相空間(任意の $x\in X$ は連結部分集合からなる基本近傍系を持つ)、$Y$ を位相空間とします。また、群 $G$$Y$ への作用による軌道を $G(y) \ (y\in Y)$ と書くことにします。

$(1)$ 自己同型写像
 $(Y,\ p)$$X$ 上の空間とする。 被覆について の定義 1 の「3. $X$ 上同型」において、特に $Y_1 = Y_2 = Y,\ p_1 = p_2 = p$ のとき、$X$$(Y,\ p)$ から $(Y,\ p)$ への同型写像を $X$$(Y,\ p)$ の自己同型写像という。すなわち $f:Y\to Y$$X$$(Y,\ p)$ の自己同型写像であるとは、$f$ が同相写像でかつ $p = p\circ f$ を満たすことをいう。

$$ \xymatrix{ \large{Y} \ar[rr]^-{\Large{f}} \ar[rdd]_-{\Large{p}} & & \large{Y} \ar[ldd]^-{\Large{p}}\\ & \ar@{}[]^{\LARGE\circlearrowright} & \\ & \large{X} & \\ } $$


$(2)$ 自己同型群
 $(Y,\ p)$$X$ 上の被覆とする。$X$$(Y,\ p)$ の 自己同型写像全体が写像の合成に関してなす群を $X$$(Y,\ p)$ の自己同型群といい、$\text{Aut}(Y/X)$ と書く。簡単に 被覆 $Y/X$ の自己同型群ともいう。

 自己同型写像の定義より、任意の $x\in X$ に対して $\text{Aut}(Y/X)$ はファイバー $p^{-1}(x)$ に作用する。

 $(Y,\ p)$$X$ 上の被覆、$x\in X$ とする。$V$$x$ の被覆近傍、$\lbrace U_i\rbrace_{i\in I}$$V$ のシートの族とする。このとき、任意の $\sigma\in \text{Aut}(Y/X)$ と任意の $i\in I$ に対して、$p$$\sigma(U_i)$ への制限は $\sigma(U_i)$ から $V$ への同相写像である。

$\blacksquare$ 全単射
 $p(\sigma(U_i)) = p(U_i) = V$ より $p$$\sigma(U_i)$ への制限は、$\sigma(U_i)$ から $V$ への全射である。また、任意の $u_1,\ u_2\in U_i$ に対して $p(\sigma(u_1)) = p(\sigma(u_2))$ ならば、$p(u_1) = p(u_2)$ となり、$p$$U_i$ への制限は単射であるから $u_1 = u_2$ となる。
$\blacksquare$ 連続
 $T$$V$ の任意の開集合とする。$q$$p$$\sigma(U_i)$ への制限とし、$S:=q^{-1}(T)$ とおくと、$S = p^{-1}(T)\cap \sigma(U_i)$ となる。よって $p$ の連続性より $S$$\sigma(U_i)$ の開集合である。
$\blacksquare$ 開写像
 $W$$\sigma(U_i)$ の任意の開集合とする。$W':=\sigma^{-1}(W)$ とおくと $p(W')\subset V$$V$ の開集合である。自己同型写像の定義より $p(W') = p(\sigma^{-1}(W)) = p(W)$ であるから $p(W)$$V$ の開集合である。

 次の補題は参考文献 [1] Lemma 2.2.1 を参考にさせていただきました。

 $(Y,\ p)$$X$ 上の被覆、$Y$ を連結位相空間とする。このとき、$\sigma\in \text{Aut}(Y/X)$ が固定点を持つならば $\sigma = \text{id}_Y$ である。

 補題 2 はこれを一般化した次の命題 3 からしたがいます。次の命題は参考文献 [1] Proposition 2.2.2 を参考にさせていただきました。

 $(Y,\ p)$$X$ 上の被覆、$Z$ を連結位相空間とし、連続写像 $f,\ g:Z\to Y$$p\circ f = p\circ g$ を満たすとする。このとき、$f(z) = g(z)$ となるような $z\in Z$ が存在するならば、$f=g$ である。

概略

 $f(z) = g(z)$ となるような $z\in Z$ 全体の集合 $S$$Z$ の開かつ閉集合である。よって $Z$ の連結性から $Z=S$ となる。

詳細

 $S:= \lbrace z\in Z \mid f(z) = g(z)\rbrace$ とおくと仮定より $S\neq \emptyset$ である。 $S$$Z$ の開かつ閉集合であることを示す。
$\blacksquare$ 開集合であること
 任意の $z\in S$ に対して $y:=f(z)=g(z)$ とおく。$V$$p(y)$ の被覆近傍、$\lbrace U_i\rbrace_{i\in I}$$V$ に対するシートとする。$y\in U_i$ とする。$f,\ g$ は連続であるから $f(W)\subset U_i$ かつ $g(W)\subset U_i$ となるような $z$$Z$ における開近傍 $W$ が存在する。任意の $w\in W$ に対して $p(f(w)) = p(g(w))$ であり、$p$$U_i$ への制限は同相写像であるから $f(w) = g(w)$ となる。よって $W\subset S$ となるから $S$$Z$ の開集合である。

$\blacksquare$ 閉集合であること
 $Z=S$ ならば $S$$Z$ の閉集合である。$Z\neq S$ とする。任意の $z'\in Z\setminus S$ に対して $a := f(z'),\ b := g(z')$ とおく。$T$$p(a) = p(b)$ の被覆近傍、$\lbrace S_j\rbrace_{j\in J}$$T$ のシートとする。$a\in S_j,\ b\in S_k\ (j\neq k)$ とする。$f,\ g$ は連続であるから、$f(P)\subset S_j$ となるような $z'$$Z$ における開近傍 $P$ と、 $g(Q)\subset S_k$ となるような $z'$$Z$ における開近傍 $Q$ が存在する。$f(P\cap Q)\subset S_j$ かつ $g(P\cap Q)\subset S_k$ より、$P\cap Q\subset Z\setminus S$ となる。よって $Z\setminus S$$Z$ の開集合である。

 $X$ は初めに局所連結としたが、この命題 3 においてその仮定は不要である。局所連結性が必要なのは次の命題 4 であり、この局所連結性より自己同型群はシートの族に作用する。

 次の命題 4 によって $(Y,\ Y\to Y/\text{Aut}(Y/X))$$Y/\text{Aut}(Y/X)$ 上の被覆になります。この命題は参考文献 [1] Proposition 2.2.3 を参考にさせていただきました。

 $(Y,\ p)$$X$ 上の被覆、$Y$ を連結位相空間とする。このとき $\text{Aut}(Y/X)$$Y$ への作用は $\text{even}$ である。

概略

 シートの族 $\lbrace U_i\rbrace_{i\in I}$$\sigma_1,\ \sigma_2\in \text{Aut}(Y/X)$ に対して $\sigma_1\neq \sigma_2$ ならば、補題 2 より $\sigma_1(U_i) \cap \sigma_2(U_i) = \emptyset$ である。

詳細

 任意の $y\in Y$ に対して $V$$p(y)$ の連結な被覆近傍、$\lbrace U_i\rbrace_{i\in I}$$V$ のシートの族とする。$y$ を含むシートを $U_i$ とする。任意の $\sigma\in \text{Aut}(Y/X)$ に対して $p(\sigma(U_i)) = V$ より $\sigma(U_i) \subset \displaystyle \bigcup_{i\in I}U_i$ となる。
 各 $j\in I$ に対して $W_j:= \sigma(U_i)\cap U_j$ とおき、$I':=\lbrace j\in I \mid W_j\neq \emptyset \rbrace$ とおくと、$p(W_j)$$X$ の開集合であり
$$ V = \displaystyle \bigcup_{j\in I'}p(W_j),\ p(W_j) \cap p(W_k) = \emptyset\ (j, k\in I',\ j\neq k)$$ となるから、$V$ の連結性よりただ一つの $j\in I'$ が存在して $V = p(W_j)$ となる。よって $\sigma(U_i)\supset U_j$ である。一方、任意の $k\in I,\ k\neq j$ に対して $W_k = \emptyset$ であるから $\sigma(U_i)\subset U_j$ となる。したがって $\sigma(U_i) = U_j$ である。
 もし $\sigma\neq \text{id}_Y$ ならば、補題 2 より $i\neq j$ となる。よって、任意の $\sigma_1,\ \sigma_2\in \text{Aut}(Y/X)$ に対して $\sigma_1 \neq \sigma_2$ ならば $\sigma_1(U_i) \cap \sigma_2(U_i) = \emptyset$ となる。

 次の命題はこの逆が成り立つことを主張します。$p_G:Y\to Y/G$ を標準全射とします。この命題は参考文献 [1] Proposition 2.2.4 を参考にさせていただきました。

 位相群 $G$ が連結位相空間 $Y$ に連続かつ $\text{even}$ に作用しているとする。このとき、$Y/G$ 上の被覆 $(Y,\ p_G)$ の自己同型群 $\text{Aut}(Y/(Y/G))$$G$ と群同型である。

概略

 $G$ の作用は $G$ から $\text{Aut}(Y/(Y/G))$ への群同型写像を誘導する。

詳細

 $g\in G$ に対して $\varphi_g:Y\to Y,\ y\to gy$ と定義すると、$\varphi_g$ は作用の連続性より連続写像であり $\varphi_g^{-1}$$\varphi_g$ の逆写像である。よって $\varphi_g$ は同相写像である。また、$y$$gy$ は同じ $G$ 軌道に含まれるから $p_G(gy) = p_G(y)$ となる。よって $\varphi_g\in \text{Aut}(Y/(Y/G))$ である。このことから単射群準同型写像
$$\varphi:G\to \text{Aut}(Y/(Y/G)),\ g\mapsto \varphi_g$$ が定まる。
 $\varphi$ が全射であることを示す。任意の $\sigma\in \text{Aut}(Y/(Y/G))$ をとる。任意の $y\in Y$ に対して $p_G(\sigma(y)) = p_G(y)$ であるから $\sigma(y) \in G(y)$ となる。よって $\sigma(y) = gy$ となるような $g\in G$ が存在する。したがって補題 2 より $\sigma = \varphi_g$ となる。

  被覆の群作用について の命題 1 や上記命題 5 では、$Y$ に「連続に」作用する「位相」群を考えた。なぜならば位相群の各元 $g$ から同相写像 $Y\to Y,\ y\mapsto gy$ が生じるからである。その結果、商位相空間上の被覆を得ることができた。
 一方 $\sigma\in \text{Aut}(Y/X)$ は既に $Y$ から $Y$ への同相写像であるから、$\overline{p}:Y\to Y/\text{Aut}(Y/X)$ とすると、同様に $(Y,\ \overline{p})$$Y/\text{Aut}(Y/X)$ 上の被覆となる。

Note

 $(Y,\ p)$$X$ 上の被覆、$G:=\text{Aut}(Y/X)$ とする。$p$ は次のように標準全射 $p_G$$p$ が引き起こす連続写像 $\overline{p}_G$ に分解する:

$$ \xymatrix{ \large{Y} \ar[rr]^-{\Large{p_G}} \ar[rrdd]_-{\Large{p}} & & \large{Y/G} \ar[dd]^-{\Large{\overline{p}_G}}\\ & \ar@{}[r]^{\LARGE\circlearrowright} & \\ & & \large{X} \\ } $$

 上記の $\overline{p}_G$ は次のような写像である:
$$ \overline{p}_G:Y/G\to X,\ G(y)\mapsto p(y)$$
 $G(y) = G(y')$ ならば $\sigma(y) = y'$ となるような $\sigma\in G$ が存在する。よって $p(y) = p(\sigma(y)) = p(y')$ となるから $\overline{p}_G$$\text{well-defined}$ である。$\overline{p}_G$ の連続性であるが、$W$$X$ の開集合とすると $\overline{p}_G \circ p_G = p$ より $p_G^{-1}(\overline{p}_G^{-1}(W)) = p^{-1}(W)$ となることからしたがう。さらに $U$$Y/G$ の開集合とすると $p(p_G^{-1}(U)) = \overline{p}_G(p_G(p_G^{-1}(U))) = \overline{p}_G(U)$ となるから $\overline{p}_G$ は開写像である。

参考文献

[1]
Tamás Szamuely, Galois Groups and Fundamental Groups, Cambridge University Press, 2009
投稿日:2023513

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

pha
24
3189
初めまして!ファ♪です☺️ よろしくお願いします🤲🐹

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中