1
大学数学基礎解説
文献あり

被覆の自己同型について

122
0

被覆の自己同型

 この記事は参考文献 [1] 第 2 章 Fundamental groups in topology を参考にさせていただきました。

 以下、X を局所連結位相空間(任意の xX は連結部分集合からなる基本近傍系を持つ)、Y を位相空間とします。また、群 GY への作用による軌道を G(y) (yY) と書くことにします。

(1) 自己同型写像
 (Y, p)X 上の空間とする。 被覆について の定義 1 の「3. X 上同型」において、特に Y1=Y2=Y, p1=p2=p のとき、X(Y, p) から (Y, p) への同型写像を X(Y, p) の自己同型写像という。すなわち f:YYX(Y, p) の自己同型写像であるとは、f が同相写像でかつ p=pf を満たすことをいう。

YfpYpX


(2) 自己同型群
 (Y, p)X 上の被覆とする。X(Y, p) の 自己同型写像全体が写像の合成に関してなす群を X(Y, p) の自己同型群といい、Aut(Y/X) と書く。簡単に 被覆 Y/X の自己同型群ともいう。

 自己同型写像の定義より、任意の xX に対して Aut(Y/X) はファイバー p1(x) に作用する。

 (Y, p)X 上の被覆、xX とする。Vx の被覆近傍、{Ui}iIV のシートの族とする。このとき、任意の σAut(Y/X) と任意の iI に対して、pσ(Ui) への制限は σ(Ui) から V への同相写像である。

全単射
 p(σ(Ui))=p(Ui)=V より pσ(Ui) への制限は、σ(Ui) から V への全射である。また、任意の u1, u2Ui に対して p(σ(u1))=p(σ(u2)) ならば、p(u1)=p(u2) となり、pUi への制限は単射であるから u1=u2 となる。
連続
 TV の任意の開集合とする。qpσ(Ui) への制限とし、S:=q1(T) とおくと、S=p1(T)σ(Ui) となる。よって p の連続性より Sσ(Ui) の開集合である。
開写像
 Wσ(Ui) の任意の開集合とする。W:=σ1(W) とおくと p(W)VV の開集合である。自己同型写像の定義より p(W)=p(σ1(W))=p(W) であるから p(W)V の開集合である。

 次の補題は参考文献 [1] Lemma 2.2.1 を参考にさせていただきました。

 (Y, p)X 上の被覆、Y を連結位相空間とする。このとき、σAut(Y/X) が固定点を持つならば σ=idY である。

 補題 2 はこれを一般化した次の命題 3 からしたがいます。次の命題は参考文献 [1] Proposition 2.2.2 を参考にさせていただきました。

 (Y, p)X 上の被覆、Z を連結位相空間とし、連続写像 f, g:ZYpf=pg を満たすとする。このとき、f(z)=g(z) となるような zZ が存在するならば、f=g である。

概略

 f(z)=g(z) となるような zZ 全体の集合 SZ の開かつ閉集合である。よって Z の連結性から Z=S となる。

詳細

 S:={zZf(z)=g(z)} とおくと仮定より S である。 SZ の開かつ閉集合であることを示す。
開集合であること
 任意の zS に対して y:=f(z)=g(z) とおく。Vp(y) の被覆近傍、{Ui}iIV に対するシートとする。yUi とする。f, g は連続であるから f(W)Ui かつ g(W)Ui となるような zZ における開近傍 W が存在する。任意の wW に対して p(f(w))=p(g(w)) であり、pUi への制限は同相写像であるから f(w)=g(w) となる。よって WS となるから SZ の開集合である。

閉集合であること
 Z=S ならば SZ の閉集合である。ZS とする。任意の zZS に対して a:=f(z), b:=g(z) とおく。Tp(a)=p(b) の被覆近傍、{Sj}jJT のシートとする。aSj, bSk (jk) とする。f, g は連続であるから、f(P)Sj となるような zZ における開近傍 P と、 g(Q)Sk となるような zZ における開近傍 Q が存在する。f(PQ)Sj かつ g(PQ)Sk より、PQZS となる。よって ZSZ の開集合である。

 X は初めに局所連結としたが、この命題 3 においてその仮定は不要である。局所連結性が必要なのは次の命題 4 であり、この局所連結性より自己同型群はシートの族に作用する。

 次の命題 4 によって (Y, YY/Aut(Y/X))Y/Aut(Y/X) 上の被覆になります。この命題は参考文献 [1] Proposition 2.2.3 を参考にさせていただきました。

 (Y, p)X 上の被覆、Y を連結位相空間とする。このとき Aut(Y/X)Y への作用は even である。

概略

 シートの族 {Ui}iIσ1, σ2Aut(Y/X) に対して σ1σ2 ならば、補題 2 より σ1(Ui)σ2(Ui)= である。

詳細

 任意の yY に対して Vp(y) の連結な被覆近傍、{Ui}iIV のシートの族とする。y を含むシートを Ui とする。任意の σAut(Y/X) に対して p(σ(Ui))=V より σ(Ui)iIUi となる。
 各 jI に対して Wj:=σ(Ui)Uj とおき、I:={jIWj} とおくと、p(Wj)X の開集合であり
V=jIp(Wj), p(Wj)p(Wk)= (j,kI, jk) となるから、V の連結性よりただ一つの jI が存在して V=p(Wj) となる。よって σ(Ui)Uj である。一方、任意の kI, kj に対して Wk= であるから σ(Ui)Uj となる。したがって σ(Ui)=Uj である。
 もし σidY ならば、補題 2 より ij となる。よって、任意の σ1, σ2Aut(Y/X) に対して σ1σ2 ならば σ1(Ui)σ2(Ui)= となる。

 次の命題はこの逆が成り立つことを主張します。pG:YY/G を標準全射とします。この命題は参考文献 [1] Proposition 2.2.4 を参考にさせていただきました。

 位相群 G が連結位相空間 Y に連続かつ even に作用しているとする。このとき、Y/G 上の被覆 (Y, pG) の自己同型群 Aut(Y/(Y/G))G と群同型である。

概略

 G の作用は G から Aut(Y/(Y/G)) への群同型写像を誘導する。

詳細

 gG に対して φg:YY, ygy と定義すると、φg は作用の連続性より連続写像であり φg1φg の逆写像である。よって φg は同相写像である。また、ygy は同じ G 軌道に含まれるから pG(gy)=pG(y) となる。よって φgAut(Y/(Y/G)) である。このことから単射群準同型写像
φ:GAut(Y/(Y/G)), gφg が定まる。
 φ が全射であることを示す。任意の σAut(Y/(Y/G)) をとる。任意の yY に対して pG(σ(y))=pG(y) であるから σ(y)G(y) となる。よって σ(y)=gy となるような gG が存在する。したがって補題 2 より σ=φg となる。

  被覆の群作用について の命題 1 や上記命題 5 では、Y に「連続に」作用する「位相」群を考えた。なぜならば位相群の各元 g から同相写像 YY, ygy が生じるからである。その結果、商位相空間上の被覆を得ることができた。
 一方 σAut(Y/X) は既に Y から Y への同相写像であるから、p:YY/Aut(Y/X) とすると、同様に (Y, p)Y/Aut(Y/X) 上の被覆となる。

Note

 (Y, p)X 上の被覆、G:=Aut(Y/X) とする。p は次のように標準全射 pGp が引き起こす連続写像 pG に分解する:

YpGpY/GpGX

 上記の pG は次のような写像である:
pG:Y/GX, G(y)p(y)
 G(y)=G(y) ならば σ(y)=y となるような σG が存在する。よって p(y)=p(σ(y))=p(y) となるから pGwell-defined である。pG の連続性であるが、WX の開集合とすると pGpG=p より pG1(pG1(W))=p1(W) となることからしたがう。さらに UY/G の開集合とすると p(pG1(U))=pG(pG(pG1(U)))=pG(U) となるから pG は開写像である。

参考文献

[1]
Tamás Szamuely, Galois Groups and Fundamental Groups, Cambridge University Press, 2009
投稿日:2023513
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

pha
25
5220
初めまして!ファ♪です☺️ よろしくお願いします🤲🐹

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 被覆の自己同型
  2. 参考文献