こんにちは、或いは初めまして。Melidです。
光栄なことに、先日
匿(Tock)
氏の主催で行われた幾何コンテスト「第6回匿式図形問題エスパー杯 (T-GUESS Cup 6)」に問題を2問ばかり提供させて頂きました。問題D1については、高難易度でありながらも、解けた方からは好評であったと聞いております。一方、問題D2は
解説記事
を見て分かる通り、かなり危険な難易度でした。
さて、本記事では先述の解説記事のConjecture 3.4の証明を書き綴ります。ああ、ちょっと待ってください。ブラウザバックする前に主張だけでも読んで頂ければ……そこを何とか……
本記事では先述の記事の補題等を参照するため、混同を避ける目的で本記事の補題等のナンバリングは途中から始まっています。
本記事は厳密でない議論(有向角を用いた二辺比夾角相等による三角形の相似の証明)を含みますが、証明の大筋に変わりは無いので、勘弁してください……
基準三角形$ABC$の内接円を$\omega$,内心を$I$とする.また,$\angle A$内の傍接円を$\omega_{A}$,傍心を$I_{A}$とし,$\omega_{A}$が作る接触三角形を$D_{A}E_{A}F_{A}$とする.$\angle B,\angle C$についても同様に$\omega_{B},\omega_{C},I_{B},I_{C},E_{B},F_{B},D_{B},F_{C},D_{C},E_{C}$を定める.
$\angle E_{A}D_{A}F_{A}$の内角・外角の二等分線が$E_{A}F_{A}$とそれぞれ$K_{A},L_{A}$で交わるとし,同様に$K_{B},L_{B},K_{C},L_{C}$を定める.このとき,5点$A,D_{A},I_{A},K_{A},L_{A}$を通る直角双曲線$\mathcal{H}_{A}$,5点$B,E_{B},I_{B},K_{B},L_{B}$を通る直角双曲線$\mathcal{H}_{B}$,5点$C,F_{C},I_{C},K_{C},L_{C}$を通る直角双曲線$\mathcal{H}_{C}$が常に定義されるので,これらの中心をそれぞれ$O_{A},O_{B},O_{C}$とする.
三角形$O_{A}O_{B}O_{C}$の$\angle O_{A},\angle O_{B},\angle O_{C}$内の傍心をそれぞれ$J_{A},J_{B},J_{C}$とし,線分$BC,O_{B}O_{C}$の中点をそれぞれ$N_{A},N_{A}'$とする.また,$O_{A}$に関して$D_{A}$と対称な点を$D_{A}'$,$O_{B}$に関して$E_{B}$と対称な点を$E_{B}'$,$O_{C}$に関して$F_{C}$と対称な点を$F_{C}'$とする.
基準三角形$ABC$について,$X(9)=Mi$とする.一般に,$X_{n}$で基準三角形$ABC$の$X(n)$($n$番目の三角形の中心)を表すことにする.
図形を図形に送る写像$f$を以下のように定義する.
$$
f(x)=(\text{$\angle AMiO_{A}$の二等分線に関して図形$x$を対称移動した後,$Mi$を中心に$\frac{MiO_{A}}{MiA}$倍に拡大した図形})
$$
また,$f$の逆写像を$f^{-1}$と表記する.
たくさんの定義が並んでいて気圧されてしまいそうですが、これらは全て匿氏による定義と同じですから、改めて読み込む必要はありません。
それでは、本記事で証明を目標とする主張に移りましょう。
$f^{-1}(N_{A})=P$とする.このとき,三角形$PE_{B}F_{C}'$と三角形$PF_{C}E_{B}'$は正の向きに合同である.
円$X_{1145}E_{B}F_{C}$と円$X_{1145}O_{B}O_{C}$が再び交わる点を$Q$とする.このとき,$Q$は三角形$J_{A}J_{B}J_{C}$の$J_{A}$-Humpty pointである.
Lemma 1.1.1' より$\triangle E_{B}'D_{B}E_{B}\sim \triangle E_{B}'I_{B}F_{B}$及び$\triangle F_{C}'D_{C}F_{C}\sim \triangle F_{C}'I_{C}E_{C}$となる.簡単な角度計算から$\measuredangle D_{B}E_{B}'E_{B}=\measuredangle (I_{B}D_{B}, F_{B}E_{B})=\measuredangle (I_{C}D_{C}, F_{C}E_{C})=\measuredangle D_{C}F_{C}'F_{C}$であり,また$E_{B}'D_{B}:E_{B}'E_{B}=I_{B}D_{B}:F_{B}E_{B}=I_{C}D_{C}:F_{C}E_{C}=F_{C}'D_{C}:F_{C}'F_{C}$となるから,$\triangle E_{B}'D_{B}E_{B}\sim \triangle F_{C}'D_{C}F_{C}$が判明する.さらに,$\triangle QE_{B}O_{B}\sim \triangle QF_{C}O_{C}$であるため, Theorem 1.1.6 より$J_{A}O_{B}:J_{A}O_{C}=I_{A}B:I_{A}C=\sin \angle I_{A}CB:\sin \angle I_{A}BC=D_{B}E_{B}:D_{C}F_{C}=E_{B}O_{B}:F_{C}O_{C}=QO_{B}:QO_{C}$となり,四角形$J_{A}O_{B}QO_{C}$は調和四角形であると分かる.$X_{1145}$が三角形$J_{A}J_{B}J_{C}$の垂心であることに留意すれば,Lemma 5.1.1が示された.$\square$
突如謎の点$Q$が現れましたね。一見本題とは関係が無さそうですが、今は気にせず進めましょう。
$Q, N_{A}, I_{A}$は共線である.
$O_{B}D_{B}:O_{C}D_{C}=O_{B}E_{B}:O_{C}F_{C}=O_{B}Q:O_{C}Q$及び$\measuredangle D_{B}O_{B}Q=\measuredangle D_{B}O_{B}E_{B}+\measuredangle E_{B}O_{B}Q=\measuredangle D_{C}O_{C}F_{C}+\measuredangle F_{C}O_{C}Q=\measuredangle D_{C}O_{C}Q$より$\triangle QO_{B}D_{B}\sim \triangle QO_{C}D_{C}$であるから,回転相似を考えて$\triangle QD_{B}D_{C}\sim \triangle QO_{B}O_{C}$である.従って, Theorem 1.1.6 及び Lemma 5.1.1 より$\measuredangle QN_{A}D_{B}=\measuredangle QN_{A}'O_{B}=\measuredangle O_{B}N_{A}'J_{A}=\measuredangle I_{A}N_{A}D_{B}$となり,Lemma 5.1.2が示された.$\square$
線分$I_{B}I_{C}, J_{B}J_{C}, E_{B}F_{C}$の中点をそれぞれ$U_{A}, U_{A}', R$とし,$BC$と$E_{A}F_{A}$の交点を$M_{A}$とする.このとき,$Q, R, N_{A}, M_{A}, U_{A}, U_{A}'$は共円である.
等しい長さに注意して,Menelausの定理より$\dfrac{AF_{A}}{F_{A}B}\times \dfrac{BM_{A}}{M_{A}C}\times \dfrac{CE_{A}}{E_{A}A}=\dfrac{AF_{A}}{E_{B}A}\times \dfrac{BM_{A}}{M_{A}C}\times \dfrac{AF_{C}}{AF_{A}}=\dfrac{AF_{C}}{F_{C}B}\times \dfrac{BM_{A}}{M_{A}C}\times \dfrac{CE_{B}}{E_{B}A}=1$であるから,Menelausの定理の逆より$M_{A}, E_{B}, F_{C}$は共線である.また,
Lemma 1.1.2
の証明より$M_{A}, J_{B}, J_{C}$は共線である.
$\triangle QD_{B}D_{C}\sim \triangle QE_{B}F_{C}$より$\measuredangle QN_{A}M_{A}=\measuredangle QRM_{A}$となる.加えて,有名事実より$U_{A}E_{B}=U_{A}F_{C}$であるから,$\measuredangle U_{A}RM_{A}=\measuredangle U_{A}N_{A}M_{A}=90^{\circ}$が成立する.さらに,$\triangle I_{A}BC\sim \triangle J_{A}J_{B}J_{C}$に注目して, Lemma 5.1.1 及び Lemma 5.1.2 より$\measuredangle QU_{A}'M_{A}=\measuredangle J_{A}U_{A}'J_{C}=\measuredangle I_{A}N_{A}C=\measuredangle QN_{A}M_{A}$が得られる.以上より,Lemma 5.1.3が示された.$\square$
$Q$についての有用な補題が得られたので、これらを踏まえて本題の証明へ行きましょう。
結果から逆算すれば、$P$は線分$E_{B}F_{C}$を線分$F_{C}'E_{B}'$に移す回転相似の中心になるということが直ぐに分かります。この回転相似の中心を$P'$として、$P'$と$P$が一致することを示す方針でいきましょう。
$\triangle RO_{B}O_{C}\sim \triangle P'F_{C}E_{B}$が成り立つ.
Lemma 5.1.1 の証明より$J_{A}O_{B}:J_{A}O_{C}=E_{B}'E_{B}:F_{C}'F_{C}$となり,これと
Lemma 1.1.2
から$\triangle J_{A}E_{B}E_{B}'\sim \triangle J_{A}F_{C}F_{C}'$である.回転相似を考えて,$\triangle J_{A}E_{B}F_{C}'\equiv \triangle J_{A}E_{B}'F_{C}$となり,$E_{B}F_{C}'=F_{C}E_{B}'$が成立する.従って,$RO_{B}=RO_{C}$及び$P'F_{C}=P'E_{B}$が得られる.
$E_{B}F_{C}$と$E_{B}'F_{C}'$の交点を$S$とする.$P', S, E_{B}, F_{C}'$及び$P', S, F_{C}, E_{B}'$はそれぞれ共円であることに留意して,$\measuredangle O_{B}RO_{C}=\measuredangle (F_{C}E_{B}', E_{B}F_{C}')=\measuredangle F_{C}E_{B}'F_{C}'+\measuredangle E_{B}'F_{C}'E_{B}=\measuredangle F_{C}P'S+\measuredangle SP'E_{B}=\measuredangle F_{C}P'E_{B}$と計算できるため,前の結果と併せてLemma 5.2.1が示された.$\square$
$\triangle QE_{B}O_{B}\sim \triangle RP'N_{A}'$が成り立つ.
$Q$は三角形$U_{A}E_{B}F_{C}$を三角形$U_{A}'O_{B}O_{C}$に移す回転相似の中心であること及び Lemma 5.2.1 から,$QE_{B}:QO_{B}=E_{B}F_{C}:O_{B}O_{C}=P'R:RN_{A}'$である.また,$P', R, U_{A}$及び$N_{A}', R, U_{A}'$はそれぞれ共線であることにも留意して,$\measuredangle E_{B}QO_{B}=\measuredangle U_{A}QU_{A}'=\measuredangle U_{A}RU_{A}'=\measuredangle P'RN_{A}'$となるため,Lemma 5.2.2が示された.$\square$
$P$は$IN_{A}$と$MiN_{A}'$の交点に一致する.
Lemma 1.2.2 の証明より,$N_{A}, N_{A}', X_{1145}$は共線であったため,$f^{-1}(N_{A}), f^{-1}(N_{A}'), f^{-1}(X_{1145})$つまり$P, N_{A}, I$も共線である.また,$f^{-1}(MiN_{A})=MiN_{A}'$(任意の直線を同一の直線に関して2回対称移動した像は元の直線に等しいため)より$P$は$MiN_{A}'$上にある.よって,Lemma 5.2.3が示された.$\square$
$P, R, U_{A}$は共線である.
$\triangle U_{A}PN_{A}\sim \triangle U_{A}'N_{A}N_{A}'$より,$\measuredangle PU_{A}N_{A}=\measuredangle N_{A}'U_{A}'N_{A}=\measuredangle RU_{A}'N_{A}=\measuredangle RU_{A}N_{A}$であるから,Lemma 5.2.4が示された.$\square$
さあ、仕上げといきましょう。 Lemma 5.2.2 より$\measuredangle MiN_{A}'R=\measuredangle U_{A}N_{A}Q=\measuredangle U_{A}U_{A}'Q=\measuredangle P'N_{A}'R$と計算でき、また、$P'R\perp E_{B}F_{C}\perp U_{A}R$より、$Mi, N_{A}', P'$及び$U_{A}, R, P'$はそれぞれ共線であると分かります。 Lemma 5.2.3 及び Lemma 5.2.4 からこのような点$P'$は$P$に他ならないため、本命題が示されました。$\square$
ところで、作問のために考察している最中に、以下のような性質を発見しました。こちらの証明は演習問題とします。
円$ABC$と円$E_{B}F_{C}X_{1145}$の根軸は$O_{B}O_{C}$である.
最後に私からもコンテストのコメントを残しておきましょう。
問題D1は問題D2の制作に奮闘している合間に1日で作った問題であり、短時間で作ったのもあって見た目は他の問題よりやや劣る気もしますが、内容はそこそこであったと自負しています。失礼、傲慢でしたね。
問題D2は匿氏との共作ということで、私としても大変充実した初等幾何生活を送ることができました。大変な苦悩と共に私の春休みは溶けていきましたが、何とか証明が間に合いました。氏から共有された双曲線を傍心に拡張したところ、ここまで問題の難易度が跳ね上がるとは……
ここまで読んでいる方がいるかは分かりませんが、もし間違い等を見つけたらコメントで指摘頂ければ幸いです。それでは。