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ガウス記号[x]の不定積分

1137
0
xを超えない最大の整数をxと表す。

x dx

方針

ガウス記号を含んだ関数の積分の基本的な解法は積分区間を分けることです。
試しにx1から12刻みで表を作ると次のようになります。

x 1  32  2  52  3  72  4  92 
x 1  1  2  2  3  3  4  4 
0xt dt 0  12  1  2  3  92  6  8 

x=1, 2, 3, 4のときの積分の値に注目すると、0, 1, 3, 6となっています。xのグラフを見れば明らかですが、これは階差数列になっていることが分かります。これを利用して積分していきます。

解説

(i) 1xのとき

0xt dt=0xt dt+xxt dt
式変形後の前半の積分は前のセクションで書いた階差数列の総和を取ることが出来るので
0xt dt
=k=0x1kk+1t dt
=k=0x1kk+1k dt
=k=0x1k
=12(x1)x(1)

後半の積分はxx<x+1より
xxt dt
=xxx dt
=x(xx)(2)

(1), (2)より
0xt dt=12(x1)x+x(xx)=xx12x12x2

(ii) 0x<1のとき

0xt dt=0x0 dt=0

(iii) x<0のとき

区間を無視して積分するのでx(0, 12)で点対称と見なせる。これより以下の等式が成り立つ。

点対称による等式

12x+12t dt+x+1212t dt=0

0xt dt=x0t dt=(x0t dt+012t dt)=(x12t dt)  (012t dt=0)
先程の等式を用いて
=12x+1t dt=012t dt+12x+1t dt=0x+1t dt
x<0より1<x+1だから(i)より
=(1x)1x121x121x2
1x=1+x=x (x0)より
=(1x)x+12x12x2
=xx12x12x2


(i), (ii), (iii)より
x dx=xx12x12x2+const.

面白い性質?

微分してみる

微分の定義から計算すると
ddxx=limh0x+hxh
=limh0x+(xx+h)xh
=limh0xx+hh

xx0のとき

xx+h=( xの小数部分)+h
またh0より
hは十分に小さい値を取るので
0xx+h<1とすることができるから
ddxx=limh0xx+hh=limh00h=0

xx=0のとき

ddxx=limh0hh
limh+0hh=0, limh0hh=

よって xが整数でないときのxの微分は0です。


では、確認として前のセクションで求めた積分を微分してみましょう。
f(x)=xとする。
f(x) dx=xf(x)12f(x)12f(x)2+const.
両辺を微分して
f(x)=f(x)+xf(x)12f(x)f(x)f(x)
f(x)(x12f(x))=0
xn+12 (nZ)のとき f(x)=ddxx=0
x=n+12 (nZ)のときx=nより ddxx=0

ddxx={0(xZ)Indefinitive(xZ)

積分が一致しない問題

ddxx=0を認めると
xxの微分は
ddxxx=1x+x0=x
となって、積分しなおすと
x dx=xx+const.

このとき
limxn+0xx=n2, limxn0xx=n2n
となり、左右の極限が一致しないことになります。


const.12x12x2+const.と置きなおすことで前セクションで求めた積分の値が得られます。積分の値が一致しなかった原因は定数にxが含まれてしまったことだと思われるので、微分すると0になる関数が定数以外にxが登場することに注意しなければいけません。

類題

同じような解き方をするってだけで前でやった内容はほとんど使わないのですが、ガウス記号を含む積分を布教したいのでもう一問解きます。

その1

01x1x dx
(出典: Maths 505 )

解法1

01x1x dx
y=1xとおく。dy=1x2dx, x:01y:1より
=1yy3 dy
前の問題と同様に積分区間を分けると
=n=1nn+1yy3 dy
=n=1nn+1ny3 dy
=n=1n2(1n21(n+1)2)
=12n=12n+1n(n+1)2
部分分数分解して
=12n=11(n+1)2+12n=1(1n1n+1)
=12(π261)+121=π212

解法2

n1x<n+1 (nN+)を満たすとき、不等式をxについて解くと1n+1<x1nとなるから
01x1x dx
=n=11n+11nx1x dx
n1x<n+1より1x=nだから
=n=11n+11nnx dx
=n=1n12(1n21(n+1)2)
あとは解法1と同様の内容なので
=π212

その2

1xx2x3sinπx2 dx

1xx2x3sinπx2 dx
=n1nn+1xx2x3sinπx2 dx

n<x2<n+1よりx2=n
=n1nnn+1xx3sinπx2 dx

n=m2からn=(m+1)21の和で分けると

=m1k=02m(m2+k)m2+km2+k+1xx3sinπx2 dx

このとき、mm2+k<x<m2+k+1(m+1)2よりx=mだから

=m1k=02mm2+km3m2+km2+k+1xsinπx2 dx
=12πm1k=02mm2+km3m2+km2+k+1(ddxπx2)sinπx2 dx
=12πm1k=02mm2+km3[cosπx2]m2+km2+k+1
=12πm1k=02mm2+km3{cosπ(m2+k)cosπ(m2+k+1)}

m2+k, m2+k+1は整数なので

=12πm1k=02mm2+km3{(1)m2+k(1)m2+k+1}
=12πm1k=02mm2+km32(1)m2+k
=1πm1(1)m2m3k=02m(1)k(m2+k)
=1πm1(1)m2m3{i=0m(m2+2i)j=1m(m2+2j1)}
=1πm1(1)m2m3{(m3+2m2+m)(m3+m2)}
=1πm1(1)m2m3(m2+m)

m, m2の偶奇は一致するから

=1πm1(1)m(1m+1m2)

それぞれの級数を求めると
m1(1)m1m=log2
m1(1)m1m2=m1(112)1m2=π212
これより
=log2ππ12


あとがき: ガウス記号の積分の有用性はほぼないと思いますが、テクニカルな積分の問題が出来そうなので、思いついたらまた記事を書くと思います。

投稿日:2024328
更新日:2024519
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