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ガウス記号[x]の不定積分(と弱微分)

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導入

ガウス記号, 床関数

xを超えない最大の整数をxと表す.
x1<xx
を満たす.

この記事は不定積分xdxを求めて, そこから床関数入りの積分について軽く掘る内容になっています.

床関数の不定積分

床関数の不定積分

I=xdx

方針建て

ガウス記号を含んだ関数の積分の基本的な解法は積分区間を分けることです.
試しにx1から12刻みで表を作ると次のようになります.

x 1  32  2  52  3  72  4  92 
x 1  1  2  2  3  3  4  4 
0xt dt 0  12  1  2  3  92  6  8 

x=1, 2, 3, 4のときの積分の値に注目すると, 0, 1, 3, 6となっています.xのグラフを見れば明らかですが, これは階差数列になっていることが分かります.これを利用して積分していきます.

解説

  1. 1xのとき
    0xtdt=0xtdt+xxtdt
    式変形後の前半の積分は前のセクションで書いた階差数列の総和を取ることが出来るので
    0xtdt=k=0x1kk+1tdt=k=0x1kk+1kdt=k=0x1k=12(x1)x(1)
    後半の積分はxx<x+1より
    xxtdt=xxxdt=x(xx)(2)
    (1), (2)を合わせて
    0xtd t=12(x1)x+x(xx)=xx12x12x2
    となる.

  2. 0x<1のとき
    このときxの整数は0なので
    0xtdt=0x0dt=0

  3. x<0のとき
    区間をxが整数になる点で分けているが, 端的を無視して積分することができるのでx(0, 12)で点対称と見なせる. これより以下の等式が成り立つ.

点対称による等式

12x+12tdt+x+1212tdt=0

0xtdt=x0tdt=(x0tdt+012tdt)=(x12tdt)(012tdt=0)
先程の等式を用いて
=12x+1tdt=012tdt+12x+1tdt=0x+1tdt
x<0より1<x+1だから(i)より
=(1x)1x121x121x2
xZのときは[1/2,x){x}で分けて積分をするので, [1/2,x)で積分するのと変わらず, 1x=1+x=x(xZ)を用いて変形ができて
=(1x)x+12x12x2
=xx12x12x2


(i), (ii), (iii)より
I=x dx=xx12x12x2+C

x dx=xx12x12x2+C

床関数の微分は0か否か

床関数入りの積分をする上で導関数はある方が便利なので求めてみましょう.

導関数

導関数の定義から計算します.
ddxx=limh0x+hxh
xの小数部分を括り出す.
=limh0x+(xx+h)xh
分けた整数部分を外に出して
=limh0xx+hh
を得る.

  1. xx0(xZ)のとき
    xx+h=( xの小数部分)+hであり, h0xx+h<1となるhを取れて
    ddxx=limh0xx+hh=limh00h=0

  2. xx=0(xZ)のとき
    ddxx=limh0hh
    左右の極限を考えると
    limh+0hh=0, limh0hh=
    左右の極限が一致しないので, このときの導関数は存在しない.


よってxが整数でないときのxの導関数は0であり, 整数のとき導関数は存在しない.

ddxx={0(xZ)Undefinable(xZ)

疑問点

今, 求めた床関数の導関数を整数を含まない区間で積分すると
x=C(一定)
が成り立つ. C=xのみで整合性が取れますが, 多くの床関数の積分では整数を含む区間で積分をするのでこのままでは使うものになりません. そこで次に弱微分というものを導入して広い範囲で導関数が取れるようにします.

床関数の弱微分

別記事で 床関数の弱微分 を求めたのでここに掲載します.

xの弱微分

ddxx=comb1(x)=nZδ(xn)

comb1(x)はくし型関数combT(x)T=1のときであり, 関数δはディラックのデルタ関数となります.

ディラックのデルタ関数(Rough Form)

関数δ
δ(x)={if x=0,0otherwise.
を満たし, 0[a,b]ならば
abδ(x)dx=1
を満たすものとして定められる.

また, t[a,b]ならば
abf(x)δ(xt)dx=f(t)
を満たす.

今定義したこれを超関数といい, 関数を元に取る関数で汎関数とも呼ばれます.
δは明確にこの式で表されるということはなく, デルタ関数に関数fを作用させるとδ(f)=f(0)を返す作用素です.

使用例に類題1の解法2で部分積分を使った解法として使っています.

類題

その1

01x1xdx
(出典: Maths 505 )

解法1

01x1xdx
y=1xとおく.dy=1x2dx, x:01y:1より
=1yy3dy
前の問題と同様に積分区間を分けると
=n=1nn+1yy3dy
=n=1nn+1ny3dy
=n=1n2(1n21(n+1)2)
=12n=12n+1n(n+1)2
部分分数分解して
=12n=11(n+1)2+12n=1(1n1n+1)
=12(π261)+121=π212

解法2

01x1xdx=1yy3dy=[y2y2]1+112y2nZδ(yn)dy
残りの積分について下限は1でこの積分は広義積分なので右極限を取り
=12+12n=21n2=n=11n2=π212

その2

1xx2x3sinπx2dx

1xx2x3sinπx2dx
=n1nn+1xx2x3sinπx2dx

n<x2<n+1よりx2=n
=n1nnn+1xx3sinπx2dx

n=m2からn=(m+1)21の和で分けると

=m1k=02m(m2+k)m2+km2+k+1xx3sinπx2dx

このとき, mm2+k<x<m2+k+1(m+1)2よりx=mだから

=m1k=02mm2+km3m2+km2+k+1xsinπx2dx
=12πm1k=02mm2+km3m2+km2+k+1(ddxπx2)sinπx2dx
=12πm1k=02mm2+km3[cosπx2]m2+km2+k+1
=12πm1k=02mm2+km3{cosπ(m2+k)cosπ(m2+k+1)}

m2+k, m2+k+1は整数なので

=12πm1k=02mm2+km3{(1)m2+k(1)m2+k+1}
=12πm1k=02mm2+km32(1)m2+k
=1πm1(1)m2m3k=02m(1)k(m2+k)
=1πm1(1)m2m3{i=0m(m2+2i)j=1m(m2+2j1)}
=1πm1(1)m2m3{(m3+2m2+m)(m3+m2)}
=1πm1(1)m2m3(m2+m)

m, m2の偶奇は一致するから

=1πm1(1)m(1m+1m2)

それぞれの級数を求めると
m1(1)m1m=log2
m1(1)m1m2=m1(112)1m2=π212
これより
=log2ππ12


あとがき: ガウス記号の積分の有用性はほぼないと思いますが, テクニカルな積分の問題が出来そうなので, 思いついたらまた記事を書くと思います.

追記(2025/05/16): 弱微分を使って色々できないか模索しましたが, どうにも一般の関数には上手くいかず, 途中で終わるような形になりました.

投稿日:2024年3月28日
更新日:11日前
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