[2]の証明を紹介したかったのですが,穴が埋められなかったので諦めました.(2024/11/03:解決しました.)
準備:稠密集合で添字づけられた増大列
を集合とする.稠密部分集合で添字づけられたの被覆について
が成り立つとする.いまより,任意のに対して
であるから,写像を
で定めることができる.
- 写像の定義より
が成り立つ. -
- とし,とする.このときより,であってなるものが存在するので,
が成り立つ.よってを得る. - とする.もしであるとすると,の稠密性より,であってなるものが存在する.このとき仮定よりであるが,
となって不合理である.
を位相空間とし,その被覆が以下のいづれかを満たすとする:
- は開集合であり,
が成り立つ; - は閉集合であり,
が成り立つ.
このとき,写像
は連続である.
の準開基の元のによる逆像がの開集合であること,すなわち任意のに対して,
が開集合であること,および
が閉集合であることを示せばよい.
-
- 補題1より
は開集合である. - まづ
が成り立つことに注意する.逆に,とし,とすると,であってなるものが存在するので,
が成り立ち,したがってを得る.よって補題1より,
は閉集合である.
-
- まづ
が成り立つことに注意する.逆に,とすると,であってなるものが存在するので,であってなるものを取れば
が成り立つ.よって補題1より
は開集合である. - 補題1より
は閉集合である.
各に対して
とおき,
とおく.このときは可算稠密部分集合である.
とする.このときであって
なるものが存在する.いま
であるから,であって
を満たすものが存在する.よってとおくと,
が成り立つ.
任意のに対して
が成り立つ.実際,は明らかであり,とすると,よりであって
なるものが存在するが,よりは奇数である.
本題:Tietzeの拡張定理とUrysohnの補題
を位相空間とする.このとき次は同値である:
- は正規空間である,すなわち互いに交わらない任意の閉集合に対して,それぞれの開近傍であってを満たすものが存在する;
- 任意の閉集合とその開近傍に対して,の開近傍であってなるものが存在する;
- 任意の閉集合とその開近傍に対して,の閉近傍であってなるものが存在する.
(i)(ii)
とおくと,は互いに交わらない閉集合なので,であってを満たすものが存在する.このとき
より,
が成り立つ.
(ii)(iii)
とおけば
が成り立つ.
(iii)(i)
とおくと,これはの開近傍なので,の閉近傍であってを満たすものが存在する.このとき,
より,はの開近傍であってを満たす.
以下,は補題3で定めたものとする.
Tietzeの拡張定理
を正規空間,をその閉集合とし,を連続写像とする.このとき,連続写像であってを満たすものが存在する.
証明は
こちら
(Theorem 2.53(p. 32))にあるものを大いに参考にした.
Step. 0
各に対して
とおく.は閉集合であることに注意する.また,
とおくと,
が成り立つ.最後に,
とおき,
と定める.
Step. 1
をの元の数え上げとする.の開集合族であって
- ;
- ;
を満たすものを,次のようにして定める:
- に対して,補題4より,開集合であって
を満たすものが存在する. - まで定まったとする.そこで
とおいて,閉集合と開集合を
で定める.明らかにであり,任意のに対して
が成り立つので,を得る.また,とすると,
であり,任意のに対して,より
が成り立つので,を得る.以上より
が成り立つので,補題4より,開集合であって
を満たすものが存在する.の定め方より,開集合族は明らかに所期の条件を満たす.
Step. 2
の閉被覆を
で定める.このとき
- ;
- ;
が成り立つことを示す.
Step. 2-1
とする.
であるから,としてよい.の稠密性より,であってなるものが存在する.このとき,より,
が成り立つ.一方,
であった.そこでとすると,より
が成り立つ.よって,
となるので,
が成り立つ.
Step. 2-2
とする.
であるから,としてよい.
- 任意のに対して
が成り立つので,
を得る. - 逆に,
が成り立つが,の稠密性より,
も成り立つ.
以上より
が成り立つ.
Step. 3
写像を
で定めると,補題2より,これは連続写像である.あとはを示せばよい.そこでとする.
- 任意のに対して,
より,となるので,
が成り立つ. - もしであるとすると,の稠密性より,であってなるものが存在するが,このとき
より
となり不合理である.
を同相写像とする.正規空間の閉集合上の連続写像に対して,の連続拡張をとおくと,はの連続拡張である.実際,とすると
が成り立つ.
Urysohnの補題
を正規空間,を交わらない閉集合とする.このとき,連続写像であって
を満たすものが存在する.
写像を
で定めると,これは連続であるから,定理1より,連続写像であってを満たすものが存在する.明らかに
が成り立つ.
を正規空間,をその閉集合とし,を連続写像とする.このとき,連続写像であってを満たすものが存在する.
連続写像を
で定めると,これらは互いの逆写像である.そこで
とおくと,定理1より,連続写像であってを満たすものが存在する.いま,
はと交わらない閉集合であるから,定理2より,連続写像であって
を満たすものが存在する.このとき,任意のに対して
が成り立つので,連続写像を
で定めることができる.このがの連続拡張を与えている.実際,とすると,より,
が成り立つ.
補遺:Urysohnの補題の直接証明
(Tietzeの拡張定理に依らない)よく見る証明もついでに書いておく.
開集合族であって
を満たすものを,となるに関して帰納的に定める:
- 閉集合の開近傍に対して,補題4より,であって
を満たすものが存在する.そこで
とおく. - とする.いま
であるから,補題4より,であって
を満たすものが存在する.そこで
とおくと,
が成り立つ.
改めてとおくと,の開被覆はやはり
を満たすので,補題2より,写像
は連続である.
- のとき,より
が成り立つ. - のとき,
より
が成り立つ.
疑問:Ossaの論文の証明について
[2]では,次の補題を用いて閉被覆を構成している:
を正規空間とし,をその閉集合とする.さらに,との閉近傍がを満たすとする.このとき,の閉近傍であって
を満たすものが存在する.
に対して,補題4より,の閉近傍であってを満たすものが存在する.ここで
とおくと,
より,が成り立つ.したがって,に対して,補題4より,の閉近傍であってを満たすものが存在する.このについて
が成り立つことに注意する.そこでとおくと,
よりはの閉近傍であり,
および
が成り立つ.よって,
とおくと,
よりはの閉近傍であり,
および
が成り立つ.
閉被覆を
- ;
- ;
を満たすように構成したい.に対しては
とおけばよい.とする.このとき
とおくと,は閉集合でであり,
より,はのにおける閉近傍である.[2]では,補題5より,の閉近傍であって
を満たすものが存在するので,
とおけばよい,としている.ところが,補題5を適用するために必要な条件
が成り立つとは限らず,証明が回っていないように思う.
修正の要不要あるいは可否など,お気づきの点があればコメントしてくださると助かります.
解決:Ossaの論文の証明について
コメント欄にて,[2]の証明のギャップを埋める方法(補題8)を教えていただきました.
ナンブキトラさん
,ありがとうございました.
ここにそれを紹介するとともに,[2]の方法に沿ってTietzeの拡張定理を再証明します.上述の証明(定理1)や,Urysohnの補題の系として得るよく見る証明と読み比べてみてください.
Key Lemma
を位相空間とし,とする.このとき次は同値である:
- であって
を満たすものが存在する; - であって
を満たすものが存在する.
(i)(ii)
より
すなわち
が成り立つ.
(ii)(i)
とおけばよい.
を位相空間とし,とする.閉集合の(増大)列であって
を満たすものが存在するとき,をの集合という.また,が集合であるとき,をの集合という.
を正規空間とし,をの集合とする.このとき,
が成り立つならば,であって
を満たすものが存在する.
任意のに対して,
との正規性より,であって
を満たすものが存在する.同様に,任意のに対して,
との正規性より,であって
を満たすものが存在する.そこでの開集合を
で定めると,任意のに対して,
および
が成り立つので,
を得る.さらに,
より,
も成り立つ.
を正規空間,をその閉集合とし,とする.また,の開集合と閉集合が
を満たしているとする.このとき,の集合について,
が成り立つならば,の閉近傍であって
を満たすものが存在する.
- よりはの閉近傍なので,補題5より,の閉近傍であって
を満たすものが存在する. - いまが閉集合なので,の閉集合の合併であるはの集合で(も)ある.さらにより
であるから,の集合について,
および
が成り立つ.よって,補題7より,の開近傍であって
を満たすものが存在する.このとき
が成り立つことに注意する. - がの閉近傍であったので,
もの閉近傍である.
- 明らかにが成り立つ.
- の取り方より
が成り立つ. - より
が成り立つ.
Tietzeの拡張定理の(再)証明
Step. 0
改めて記号を確認しておく:
いまは連続なので,はの開集合であり,はの閉集合である.
Step. 1
閉集合族であって
- :連続写像を得るための条件(補題2);
- :がの拡張であるようにするための条件;
- :構成の帰納法が回るようにするための条件;
を満たすものを,となるについて帰納的に定める:
- とおけばよい.
- まで定まったとし,とする.いま
であり,
と帰納法の仮定より,
が成り立つ.さらに,
より,はの開集合であり,
より,はの閉集合である(自明でない方の包含関係を示すときにの稠密性を用いる).よりの閉集合はの閉集合でもあることに注意すると,の集合について,
および
が成り立つことがわかる.よって,補題8より,の閉近傍であって
を満たすものが存在する.そこで
とおくと,
および
が成り立つ.
Step. 2
以上より,の閉被覆であって
を満たすものが得られた.よって,補題2より,写像
は連続である.あとはを示せばよい.そこでとする.
- 任意のに対して,
より,となるので,
が成り立つ. - もしであるとすると,の稠密性より,であってなるものが存在するが,このとき
より
となり不合理である.