前の記事からかなり時間が経ってしまった。
ぼちぼち再開していきたい。
さて、今までに述べた大きく4種類の直交多項式
の4つはそれぞれ共通点がある。
それはRodriguesの等式があること。
あとは、二階微分方程式を満たす正則関数である多項式として定義できること。
以下のようであった。
似ているのはわかる。(他にも共通している性質はある)
ただ、この事実はどこまで一般化できるのだろうか。
その前に、Bessel多項式について、少し復習と補足をしておく。
実は上で与えていたBessel多項式はパラメータが特別な値のBessel多項式である。
一般化されたBessel多項式$y_n^{(\alpha, \beta)}(x)$は次の性質を満たす多項式とする。
ただし$\alpha$は0以下の整数ではなく、$\beta\neq0$とする。
このように定められたものもRodriguesの公式を満たしていることから、
今後Bessel多項式はこちらの一般化された場合を考えるものとする。
なお、上の$y_n(x)$は$\alpha=\beta=2$のときに等しい。
さて、一般的にRodriguesの公式は、重さ関数$w(x)$に対し
\begin{align*} P_n(x)=w(x)^{-1}\frac{d^n}{dx^n}\{\phi(x)^nw(x)\} \tag{1} \end{align*}
と定数倍を除いてこの形であると・・・あるといいなぁと思うのである。
$\phi(x)$は多項式としておく。
Jacobiの場合は$1-x^2$、Laguerreが$x$、Hermiteが$1$でBesselが$x^2$である。
(1)式にいくつか値を放り込んでみる。
$n=0$のとき、
$P_n(x)=w(x)^{-1}\cdot \phi(x)^0w(x)=1$
示すことがなかった。
$n=1$のとき、
$P_n(x)=w(x)^{-1}\frac{d}{dx}(\phi(x)w(x))$
さてこれが1次多項式$ax+b$になると仮定する。すると
\begin{align*}
&w(x)^{-1}\frac{d}{dx}(\phi(x)w(x))=ax+b \\
&\Leftrightarrow
\frac{d}{dx}(\phi(x)w(x))=(ax+b)w(x) \\
&\Leftrightarrow
\phi'(x)w(x)+\phi(x)w'(x)=(ax+b)w(x) \\
&\Leftrightarrow
w'(x)=\frac{ax+b-\phi'(x)}{\phi(x)}w(x)
\end{align*}
重さ関数$w(x)$はこのような微分方程式の解であるはずである。
以下$\tau(x)=ax+b-\phi'(x)$とおくと
上の微分方程式は$\displaystyle \frac{w'(x)}{w(x)}=\frac{\tau(x)}{\phi(x)}$と書ける。
$n=2$のとき
後から必要になるので、$w''(x)$を計算しておく。
\begin{align*}
w''(x)
&=\frac{d}{dx}w'(x) \\
&=\frac{d}{dx}\left\{\frac{\tau(x)}{\phi(x)}w(x)\right\} \\
&=\left\{\frac{\tau'(x)\phi(x)-\tau(x)\phi'(x)}{\phi(x)^2}w(x)+\frac{\tau(x)}{\phi(x)}w'(x)\right\} \\
&=\frac{\tau'(x)\phi(x)-\tau(x)\phi'(x)+\tau(x)^2}{\phi(x)^2}w(x)
\end{align*}
$P_1(x)$のときと同様に$P_2(x)$を計算すると
\begin{align*}
P_2(x)
&=w(x)^{-1}\frac{d^2}{dx^2}(\phi(x)^2w(x)) \\
&=w(x)^{-1}\frac{d}{dx}\{2\phi'(x)\phi(x)w(x)+\phi(x)^2w'(x)\} \\
&=w(x)^{-1}\{
2\phi''(x)\phi(x)w(x)+2\phi'(x)^2w(x)+4\phi'(x)\phi(x)w'(x)+\phi(x)^2w''(x)\} \\
&=w(x)^{-1}\left\{
2\phi''(x)\phi(x)w(x)+2\phi'(x)^2w(x)+4\phi'(x)\phi(x)\frac{\tau(x)}{\phi(x)}w(x)
+\phi(x)^2\frac{\tau'(x)\phi(x)-\tau(x)\phi'(x)+\tau(x)^2}{\phi(x)^2}w(x)
\right\} \\
&=
2\phi''(x)\phi(x)+2\phi'(x)^2+4\phi'(x)\tau(x)
+(\tau'(x)\phi(x)-\tau(x)\phi'(x)+\tau(x)^2) \\
&=
2\phi''(x)\phi(x)+2\phi'(x)^2+3\phi'(x)\tau(x)+\tau'(x)\phi(x)+\tau(x)^2 \\
&=
2\phi''(x)\phi(x)+2\phi'(x)^2+3\phi'(x)\{ax+b-\phi'(x)\}+\{a-\phi''(x)\}\phi(x)
+\{ax+b-\phi'(x)\}^2 \\
&=
2\phi''(x)\phi(x)+2\phi'(x)^2+3(ax+b)\phi'(x)-3\phi'(x)^2+a\phi(x)-\phi''(x)\phi(x)
+(ax+b)^2-2(ax+b)\phi'(x)+\phi'(x)^2 \\
&=
\phi''(x)\phi(x)+(ax+b)\phi'(x)+a\phi(x)+(ax+b)^2
\end{align*}
意外と簡単になった。
ここで$\deg\phi=m$とおこう。すると上に出てくる式の次数は
\begin{align*}
\deg(\phi''(x)\phi(x))&=2m-2 \\
\deg((ax+b)\phi'(x))&=m \\
\deg(a\phi(x))&=m \\
\deg((ax+b)^2)&=2
\end{align*}
のようになる。もし仮に$m\ge3$なら、$2m-2$は4以上になってしまい、かつ$2m-2>m$より
$P_2(x)$の次数は$2m-2$となってしまい、$P_2(x)$が2次式であることに反す。
よって、次の事実が示された。
Rodriguesの公式$\displaystyle P_n(x)=w(x)^{-1}\frac{d^n}{dx^n}\{\phi(x)^nw(x)\}$が機能するためには、$\phi$は2次以下の多項式であることが必要。
やった!高々2次式以下だって。もう限られてきた。
なおかつ、$\tau(x)=ax+b-\phi'(x)$であったことから$\tau(x)$は高々1次式。
ゆえに重さ関数$w(x)$は
\begin{align*}
w'(x)=\frac{(\text{高々1次式})}{(\text{高々2次式})}w(x)
\end{align*}
の形の微分方程式を満たしている、ということがわかる。
上の4つの直交多項式において、$\frac{w'(x)}{w(x)}$を計算しておく。
すなわち$\displaystyle \frac{w'(x)}{w(x)}$の式の形の違いによって直交多項式の違いが特徴づけられている。
以下では、(高々1次式)/(高々2次式)と表される有理式の分類をしていく。
$\phi(x)=S\neq0$が定数のとき
この場合、$\tau(x)=ax+b$は1次式になっている。$w(x)$の満たす微分方程式は
\begin{align*}
\frac{w'(x)}{w(x)}=\frac{ax+b}{S}=:px+q \quad (p\neq0)
\end{align*}
の形で書けている。この微分方程式を解くと、$C$は積分定数として
\begin{align*}
w(x)=C\exp\left(\frac{p}{2}x^2+qx\right)
\end{align*}
のように書くことができる。
ゆえにRodriguesの公式から従う多項式$P_n(x)$は
\begin{align*}
P_n(x)
&=C^{-1}\exp\left(-\frac{p}{2}x^2-qx\right)
\frac{d^n}{dx^n}\left\{S^nC\exp\left(\frac{p}{2}x^2+qx\right)\right\} \\
&=S^n\exp\left(-\frac{p}{2}x^2-qx\right)
\frac{d^n}{dx^n}\exp\left(\frac{p}{2}x^2+qx\right) \\
&= S^n\exp\left(-\frac{p}{2}x^2+\frac{q^2}{2p}\right)
\frac{d^n}{dx^n}\exp\left(\frac{p}{2}x^2-\frac{q^2}{2p}\right)
\quad \left(x\mapsto x-\frac{q}{p} \text{と軸をずらした}\right) \\
&=S^n\exp\left(-\frac{p}{2}x^2\right)
\frac{d^n}{dx^n}\exp\left(\frac{p}{2}x^2\right)
\quad (\text{定数項は相殺}) \\
\end{align*}
例えば$p<0$のとき、$x$のところを$x\sqrt{\frac{-2}{p}}$に置き換えることによって
\begin{align*}
P_n(x)= C_ne^{x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{-x^2}
\end{align*}
と書けるので、$P_n(x)$は 適切な1次変換でHermite多項式に一致 することがわかる。
例えば$p>0$のとき、同様の変数変換で
\begin{align*}
P_n(x)= C_ne^{-x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{x^2}
\end{align*}
と指数部の正負がひっくり返った多項式が出てくる。
これは$\underline{\text{Twisted Hermite 多項式}}$などと呼ばれるものである。
Hermite多項式とどう違うのだろうか?それは次の章に任せる。
結果として(1)の場合は、HermiteまたはTwisted Hermiteが出てきたことになる。
$\phi(x)$は1次式、$\tau(x)$は定数のとき
この場合は$\phi'(x)=ax+b-\tau(x)$の式で左辺が定数、右辺が1次式となり矛盾。
$\phi(x),\, \tau(x)$ともに1次式のとき
この場合は$\phi(x)=c(x-\alpha)$及び$\tau(x)=d(x-\alpha)+e$などとおくと
\begin{align*}
\frac{w'(x)}{w(x)}=\frac{d(x-\alpha)+e}{c(x-\alpha)}
=:A+\frac{B}{x-\alpha} \quad (A\neq0)
\end{align*}
という微分方程式が導かれる。この場合は
\begin{align*}
w(x)=Ce^{Ax}(x-\alpha)^B
\end{align*}
と解くことができるので、求める多項式$P_n(x)$は
\begin{align*}
P_n(x)
&=C^{-1}e^{-Ax}(x-\alpha)^{-B}\frac{d^n}{dx^n}\left\{
c^n(x-\alpha)^nCe^{Ax}(x-\alpha)^B\right\} \\
&=c^ne^{-Ax}(x-\alpha)^{-B}\frac{d^n}{dx^n}\left\{
e^{Ax}(x-\alpha)^{n+B}\right\} \\
&=c^ne^{-A(x+\alpha)}x^{-B}\frac{d^n}{dx^n}\left\{
e^{A(x+\alpha)}x^{n+B}\right\} \quad (x\mapsto x+\alpha) \\
&=c^ne^{-Ax}x^{-B}\frac{d^n}{dx^n}\left\{e^{Ax}x^{n+B}\right\} \\
&=c^ne^x(-A^{-1}x)^{-B}(-A^{-1})^{n}\frac{d^n}{dx^n}
\left\{e^{-x}(-A^{-1}x)^{n+B}\right\}
\quad (x\mapsto -A^{-1}x) \\
&=C_ne^xx^{-B}\frac{d^n}{dx^n}\left\{e^{-x}x^{n+B}\right\}
\end{align*}
となる。すなわちこの多項式はLaguerre多項式(LGP)になることがわかる。
$\phi(x)$が2次式のとき - 特に完全平方式の場合
$\phi$は$\mathbb{R}$上で、「完全平方式」「異なる2つの1次式の積」「$\mathbb{R}$上既約多項式」の3つの選択肢がある。
結論から述べると、それぞれBessel多項式及び多項式列$\{x^n\}_{n=0}^\infty$、Jacobi多項式、そしてTwisted Jacobi多項式に対応する。
まずは完全平方式の場合。
$\phi(x)=A(x-B)^2$とし、また高々1次の多項式$\tau(x)$を$w(x)=p(x-B)+q$とおく。すると
\begin{align*}
\frac{w'(x)}{w(x)}
=\frac{p(x-B)+q}{A(x-B)^2}
=\frac{c_1}{x-B}+\frac{c_2}{(x-B)^2}
\end{align*}
となるので、この微分方程式を解くと
\begin{align*}
w(x)=C(x-B)^{c_1}\exp\left(-\frac{c_2}{x-B}\right)
\end{align*}
となることがわかる。($c_1=c_2=0$などの場合も排除していないことに注意する)
$c_2=0$のとき、$w(x)=C(x-B)^{c_1}$であることから
\begin{align*}
P_n(x)
&=C^{-1}(x-B)^{-c_1}\frac{d^n}{dx^n}\left\{A^n(x-B)^{2n}C(x-B)^{c_1}\right\} \\
&=A^n(2n+c_1)^{\underline{n}}(x-B)^n
\end{align*}
であり、$x\mapsto x+B$の一次変換で多項式列$\{x^n\}_{n=0}^\infty$と一致する。
次に$c_2\neq0$のとき。この時はRodriguesの公式より
\begin{align*}
P_n(x)
&=C^{-1}(x-B)^{-c_1}\exp\left(\frac{c_2}{x-B}\right)\frac{d^n}{dx^n}
\left\{A^n(x-B)^{2n}C(x-B)^{c_1}\exp\left(-\frac{c_2}{x-B}\right)\right\} \\
&=C_nx^{-c_1}e^{c_2/x}\frac{d^n}{dx^n}
\left\{(x-B)^{2n+c_1}e^{-c_2/x}\right\}
\quad (x\mapsto x+B)\\
\end{align*}
と書けるが、これはBessel多項式になることがわかる。
$\phi(x)$が2次式のとき - 特に異なる2つの1次式の積の場合
この場合、$\phi(x)=A(x-\alpha)(x-\beta)$とおく。ただし$\alpha<\beta$としておく。
また分子の1次式$\tau(x)$は$p(x-\alpha)+q(x-\beta)$と分解する。
すると重さ関数$w(x)$の満たす微分方程式は
\begin{align*}
\frac{w'(x)}{w(x)}=\frac{p(x-\alpha)+q(x-\beta)}{A(x-\alpha)(x-\beta)}
=\frac{c_1}{x-\alpha}+\frac{c_2}{x-\beta}
\end{align*}
のように書き表すことができる。すなわち重さ関数$w(x)$としては
\begin{align*}
w(x)=C(x-\alpha)^{c_1}(x-\beta)^{c_2}
\end{align*}
のようなものに限られることがわかる。さて同様にRodriguesの公式に代入すると
\begin{align*}
P_n(x)
&=C^{-1}(x-\alpha)^{-c_1}(x-\beta)^{-c_2}\frac{d^n}{dx^n}
\left\{A^n(x-\alpha)^n(x-\beta)^nC(x-\alpha)^{c_1}(x-\beta)^{c_2}\right\} \\
&=A^n(x-\alpha)^{-c_1}(x-\beta)^{-c_2}\frac{d^n}{dx^n}
\left\{(x-\alpha)^{n+c_1}(x-\beta)^{n+c_2}\right\}
\end{align*}
となりこれはJacobi多項式そのものである。
$\phi(x)$が2次式のとき - 特に$\mathbb{R}$上既約多項式の場合
この場合$\phi(x)=A\{(x-a)^2+b^2\}$などとおくことができる。
重さ関数の満たす微分方程式は
\begin{align*}
\frac{w'(x)}{w(x)}
=\frac{p(x-a)+q}{A\{(x-a)^2+b^2\}}
=\frac{2c_1(x-a)}{(x-a)^2+b^2}+\frac{c_2(-b)}{(x-a)^2+b^2}
\end{align*}
と書くことができる。ここで不定積分
\begin{align*}
\int\frac{2(x-a)}{(x-a)^2+b^2}dx&=\log\{(x-a)^2+b^2\}+C \\
\int\frac{-b}{(x-a)^2+b^2}dx&=\tan^{-1}\left(\frac{a-x}{b}\right)+C
\end{align*}
には三角関数(正接関数)の逆関数が出てきてしまう。困ったものだ。
ともあれ、計算を続ける。重さ関数は
\begin{align*}
w(x)=C\{(x-a)^2+b^2\}^{c_1}\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{a-x}{b}\right)\right\}^{c_2}
\end{align*}
の形であることがわかり。Rodriguesの公式に当てはめることで
\begin{align*}
P_n(x)
&=C^{-1}\{(x-a)^2+b^2\}^{-c_1}
\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{a-x}{b}\right)\right\}^{-c_2}\frac{d^n}{dx^n}
\left[
A^n\{(x-a)^2+b^2\}^nC\{(x-a)^2+b^2\}^{c_1}\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{a-x}{b}\right)\right\}^{c_2}
\right] \\
&=A^n\{(x-a)^2+b^2\}^{-c_1}
\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{a-x}{b}\right)\right\}^{-c_2}\frac{d^n}{dx^n}
\left[
\{(x-a)^2+b^2\}^{n+c_1}\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{a-x}{b}\right)\right\}^{c_2}
\right] \\
&=A^n(x^2+b^2)^{-c_1}
\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{-x}{b}\right)\right\}^{-c_2}\frac{d^n}{dx^n}
\left[(x^2+b^2)^{n+c_1}\left\{\exp\tan^{-1}\left(\frac{-x}{b}\right)\right\}^{c_2}
\right] \quad (x\mapsto x+a)\\
&=C_n(x^2+1)^{-c_1}(\exp\tan^{-1}x)^{-c_2}\frac{d^n}{dx^n}
\left\{(x^2+1)^{n+c_1}(\exp\tan^{-1}x)^{c_2}\right\} \quad (x\mapsto -bx)
\end{align*}
となり明らかに見慣れない式が出てきた。
これは$\underline{\text{Twisted Jacobi多項式}}$と呼ばれるものである。
普通のJacobi多項式とはどう違うのであろうか。
以上より
Jacobi、Laguerre、Hermite、Besselに加え
単項式列$\{x^n\}_{n=0}^\infty$、Twisted Jacobi、Twisted Hermiteの合計7種類が出てきた。
ちなみに"Twisted Laguerre/Bessel"と呼ばれる多項式はない。その理由も後でわかる。
前者4つと後者3つの違いは何なのだろう。
我々は今まで、直交多項式とはという定義における重要な区分を明文化していなかった。
(以上からもわかるように、満たすものしか扱ってこなかった)
直交多項式の定義上の分類を行う。一部復習事項もあり。
多項式の空間$\mathcal{P}$上の線形作用素をモーメント作用素と呼ぶ。
多項式系$\{P_n(x)\}_{n=0}^\infty$が 弱直交多項式系 (weak orthogonal polynomial)であるとは、ある非自明なモーメント作用素$\mu$が存在して、任意の$m< n$に対し
\begin{align*}
\mu[P_m(x)P_n(x)]=0
\end{align*}
を満たすことである。ここでさらに二乗モーメント$\mu[P_n(x)^2]$が$0$にならないとき、$\{P_n(x)\}$は 直交多項式系 であると言う。
さらに、$\mu[P_n(x)^2]>0$の条件を科すとき、この$\{P_n(x)\}$は 正定値 であると言う。
次に、モーメント行列$\Delta_n(\mu)$を$\Delta_n(\mu)=\det(\mu[x^{m+n}])_{m, n}$で定める。
モーメント作用素が準定値(quasi-definite)及び正定値であるとは、それぞれ、任意の$n$に対し$\Delta_n(\mu)$が$0$ではない及び正である、こととして定める。
モーメント作用素が準定値/正定値であることは、付随する多項式系が直交多項式/正定値直交多項式であることと同値である。
わかりにくくなってしまったが、ざっくり書くと
\begin{align*}
\{\text{正定値直交多項式}\}\subset \{\text{直交多項式}\}\subset \{\text{弱直交多項式}\}
\end{align*}
のような包含関係になっているということである。
そして、上の議論に出てきた7種類の多項式系、以下のように分類される。(以下証明略)
例えばGLPなら、任意の$\alpha$で弱直交多項式、$-\alpha\notin\mathbb{N}$で直交多項式、など他にも緩い添え字の条件は知られているが、とりあえず必要ないので割愛する。
これらのことを考えると、正定値性というのは仮定しても特に問題はなさそうである。
実際Twisted Hermite/Jacobi多項式は、複素数係数の変換を許すことでHermite/Jacobi多項式と一致してしまう。
なので、今後は考えないことにする。
次のようにRodriguesの公式から定められていた。
\begin{align*}
\widetilde{H}_n(x)=e^{-x^2}\frac{d^n}{dx^n}e^{x^2}
\end{align*}
数値例は次のようになっている。
\begin{align*}
\widetilde{H}_0(x)&=1 \\
\widetilde{H}_1(x)&=2x \\
\widetilde{H}_2(x)&=4x^2+2 \\
\widetilde{H}_3(x)&=8x^3+12x \\
\widetilde{H}_4(x)&=16x^4+48x^2+12 \\
\widetilde{H}_5(x)&=32x^5+160x^3+120x \\
\widetilde{H}_6(x)&=64x^6+480x^4+720x^2+120 \\
\widetilde{H}_7(x)&=128x^7+1344x^5+3360x^3+1680x \\
\widetilde{H}_8(x)&=256x^8+3584x^6+13440x^4+13440x^2+1680 \\
\widetilde{H}_9(x)&=512x^9+9216x^7+48384x^5+80640x^3+30240x
\end{align*}
また、各モーメントの値は
\begin{align*}
(\mu[x^i])_{i=0}^9
=\left(1,0,-\frac{1}{2},0,\frac{3}{4},0,-\frac{15}{8},0,\frac{105}{16},0\right)
\end{align*}
となり、一般的には$i$:偶数に対し$\displaystyle\mu[x^i]=(-1)^{i/2}\frac{(i-1)!!}{2^{i/2}}$と書けている。このとき二乗モーメントが
\begin{align*}
\mu[\widetilde{H}_n(x)^2]=(-1)^n(2n)!!
\end{align*}
の式が従う。特に二乗モーメントに関する正定値性は従わない。
正定値でないと、内積空間にはならない(内積が距離を誘導しない)。
この記事はここで終わるのは良くない気しかしない。
大事な性質を述べておく。
多項式列$\{P_n(x)\}_{n=0}^\infty$について、次の条件は同値である。
証明はやや長いので、どうしよう。文献をとりあえず載せておくAlvarezが
必要になったら加筆する可能性大。
今回は、Rodriguesの公式について、それを満たす直交多項式は
Jacobi・Laugerre・Hermite・Bessel
(及びtwisted Hermite/Jacobi多項式)の4つに限ることを証明した。
これ以外に直交多項式はないのか、と言われたら
決してそんなことはない。
では、それ以外の直交多項式はどのような性質で特徴づけられるのか?
今後はそこをメインに話そうと思う。