6

放物線上を跳ねる物体とフィボナッチ数

207
0

はじめに

 この記事では apu_yokai さんの記事
放物線の上をはね続けるボールの研究①フィボナッチ数が生えた話
放物線の上をはね続けるボールの研究②はね続ける条件の話
の結果を元に個人的に考察したことについてまとめていきます。
 かなり色々な説明を端折ると思うので先に上記の記事に目を通しておくことをおすすめします。

問題設定

 放物線y=x2の上を跳ねるボールの挙動について考える。
 ただし重力加速度は1、反発係数は1(つまり弾性衝突)とする。また簡単のためボールの質量も1とする。

ボールの描く放物線と不変量

 いま時刻t=0におけるボールの位置と速度がそれぞれ(x0,y0),(u0,v0)であったとき、時刻tにおけるボールの位置は
(x,y)=(x0+u0t, y0+v0t12t2)
と表せることに注意しましょう。
 まずボールがある時刻tの前後で描く放物線の方程式を
y=ax2+bx+c
とおき、上の媒介変数表示をこの陽関数表示に置き換えることを考えてみましょう。

 位置(x,y)におけるボールの速度は
(u,v)=(12a,2ax+b2a)
と表せる。ただしu>0とした。

y=12t2+v0t+y0=12(xx0u0)2+v0xx0u0+y0
より最高次の係数を比較することで
12u02=a
がわかる。したがって
u=u0=12av=dydt=dydxdxdt=2ax+b2a
を得る。

 ボールの持つ力学的エネルギーE
E=b24ac+14a
と表せる。

 上の結果から
E=u2+v22+y=1+(2ax+b)24a+(ax2+bx+c)=b24ac+14a
とわかる。

 ボールが放物線y=x2に衝突し、その軌道の方程式が
y=ax2+bx+c
に変化したとする。このとき
acacaa=14
が成り立つ。

 ボールがy=x2と位置(p,p2)において衝突したとする。このとき三つの放物線
y=x2y=ax2+bx+cy=ax2+bx+c
の接ベクトル
(1,2p), (1,2ap+b), (1,2ap+b)
のなす角を考えると
(1,2p)(1,2ap+b)1+(2ap+b)2=(1,2p)(1,2ap+b)1+(2ap+b)2
が成り立たなければならない。
 また位置(p,p2)における力学的エネルギーを考えると
E+p2=u2+v22=1+(2ap+b)24a=u2+v22=1+(2ap+b)24a
が成り立つので結局
12p(2ap+b)4a=12p(2ap+b)4a
を得る。
 これを二乗すると
14p(2ap+b)+4p2(2ap+b)24a=4bp+4p214a+2p2+4p2(E+p2)
が成り立つので
4bp+4p214a=4bp+4p214a
つまり
ababaap=p214
を得る。
 ここで
p2=ap2+bp+cp=ap2+bp+cp
より
(aa)p2=(abab)p+(acac)
が成り立つことに注意すると
acacaa=ababaapp2=14
を得る。

 ボールが描く二つの放物線
y=ax2+bx+cy=ax2+bx+c
の二交点と点F:(0,1/4)は一直線上に存在する。
 特に一方の放物線がFを通ればもう一方の放物線もFを通る。

f(x)=ax2+bx+c
とおくと二点(p,f(p)),(q,f(q))を通る直線の方程式は
y=f(p)f(q)pq(xq)+f(q)=f(p)f(q)pqxf(p)qpf(q)pq
と表せるのでこの直線はx=0において
y=f(p)qpf(q)pq=apq+c
を通る。
 いまp,qを二次方程式
ax2+bx+c=ax2+bx+c
の解とすると、解と係数の関係から
pq=ccaa
が成り立つので上の結果より
apq+c=acacaa=14
を得る。

 放物線の方程式を決定するためには通常三つの独立した情報が必要となります。素朴にはボールの衝突前の挙動から衝突後の挙動を決定するのに

  • 衝突点の座標
  • 入射角・反射角の対称性
  • 力学的エネルギーの保存

という情報を用いることとなりますが、衝突前の軌道から衝突後の軌道を決定するには

  • 衝突点の座標
  • y=x2の焦点Fとの関係性(補題3 or 4)
  • 力学的エネルギーの保存(補題1 or 2)

という情報に置き換えることができます。
 これにより今回考えている問題に対して代数的な議論がかなりしやすくなります。では具体的にどのような結果が導けるのかを以下で見ていくこととしましょう。

衝突点の漸化式

 ボールと放物線y=x2n回目に衝突するときのx座標をxn0、その後にボールが描く放物線の方程式を
y=anx2+bnx+cn
とおき、このxn,an,bn,cnがどのような性質を持つのか考察していきましょう。
 一般の場合について考えるのは難しいので各放物線が(0,1/4)を通る場合について考察します。

an+1=14xnxn+1,bn=xn+xn+14xnxn+1,cn=14
が成り立つ。

 xnの取り方から二次方程式
x2=anx2+bnx+cn
x=xn,xn+1を解に持つので
(an+1)x2+bnx+cn=(an+1)(xxn)(xxn+1)
と因数分解できる。
 また
y=anx2+bnx+cn
は点(0,1/4)を通ることから
cn=(an+1)xnxn+1=14
を得る。あとは
bn=(an+1)(xn+xn+1)
に注意するとわかる。

 Xn=1/xnとし、ボールの持つエネルギーをEとおくと
E=116(XnXn+1)2XnXn+1+4
が成り立つ。

 上の結果は
an=XnXn+1+44,bn=Xn+Xn+14,cn=14
と表せるので補題2より
E=bn24ancn+14an=116(Xn+Xn+1)24(XnXn+1+4)+16XnXn+1+4=116(XnXn+1)2XnXn+1+4
を得る。

 三項間漸化式
Xn+2=(16E+2)Xn+1Xn
が成り立つ。

 上の補題より
Xn2+Xn+12(16E+2)XnXn+164E=0
が成り立つので、これを一項ずらした式
Xn+22+Xn+12(16E+2)Xn+2Xn+164E=0
との差を取ることで
(Xn+2Xn)(Xn+2+Xn(16E+2)Xn+1)=0
つまり
Xn+2=(16E+2)Xn+1Xn
が得られる。

 n回目の衝突直後のボールの速度は
(u,v)=32EXnXn+1(1,XnXn+142Xn)
であり、n+1回目の衝突直前のボールの速度は
(u,v)=32EXnXn+1(1,Xn+1Xn42Xn+1)
と表せる。

 補題1
(u,v)=12an(1, 2anx+bn)
においてx=xn, xn+1とすると
2an=XnXn+1+42=(XnXn+1)232E=XnXn+132E2anxn+bn=XnXn+1+42Xn+Xn+Xn+14=XnXn+142Xn
のようにしてわかる。

フィボナッチ数・リュカ数との関係

 上の漸化式
Xn+2=(16E+2)Xn+1Xn
からはEを恣意的に調整することで様々な数列を出現させることができ、その最たる例としてフィボナッチ数やリュカ数が挙げられます。

F0=0, F1=1, Fn+2=Fn+1+FnL0=2, L1=1, Ln+2=Ln+1+Ln
によって定まる数列Fn,Lnをそれぞれフィボナッチ数、リュカ数と言う。
 これらは黄金比ϕ=1+52を用いて
Fn=ϕn(ϕ)n5,Ln=ϕn+(ϕ)n
と表せる。

 三項間漸化式
an+2=L2kan+1an

an=αϕ2kn+βϕ2kn
と解ける(α,βは任意)。

 いま漸化式
an+2=L2kan+1an
の特性方程式
x2L2kx+1=x2(ϕ2k+ϕ2k)x+1=0
x=ϕ2k,ϕ2kと解けるので線形漸化式の一般論により主張を得る。

 以下ボールのエネルギーは
E=L2k216
を満たすものとし
Ek=ϕk+ϕk25={Fk/2(kが奇数のとき)Lk/25(kが偶数のとき)
とおきます。

 最初の衝突点x0=1/X0
X0=F2aEk,L2a+15Ek
を満たすとき、それぞれ
Xn=F2kn+2aEk,L2kn+2a+15Ek
が成り立つ。

 X0=F2a/Ekのときのみ証明する。
 Xnの満たす漸化式
Xn+2=L2kXn+1Xn
に注意して
X0=F2acX1=F2k+2ac
が成り立つような定数c、特に
16E=L2k2=(F2aF2k+2a)2F2aF2k+2a+4c2
が成り立つようなものを考える。
 いま
L2k2=(ϕkϕk)2F2k+2aF2a=15(ϕ2a(ϕ2k1)+ϕ2a(1ϕ2k))=15(ϕk+2a+ϕ(k+2a))(ϕkϕk)F2aF2k+2a=15(ϕ2k+4a+ϕ2k4aϕ2kϕ2k)
に注意すると
4c2=(F2aF2k+2a)2L2k2F2aF2k+a=15(ϕ2k+ϕ2k+2)=(ϕk+ϕk5)2=4Ek2
つまりc=±Ekを得る。

 どのような定数Cおよび初期値X0を取っても
Xn=CF2kn+2a+1, CL2kn+2a
は成り立たない。

 上と同様に
X0=F2a+1cX1=F2k+2a+1c
つまり
L2k2=(F2a+1F2k+2a+1)2F2a+1F2k+2a+1+4c2
が成り立つような定数cを考えると
4c2=(ϕk+ϕk5)2<0
を満たさなければならず、そのようなcは存在しないことがわかる。

Xn=FNEk(N=2kn+2a)
において、n回目の衝突直後の速度とn+1回目の衝突直前の速度をそれぞれ(un,vn),(un,vn)とおくと
un=un=12EkEN+k
および
vn=122L2N+2kL2N+L2k+610FNEN+kvn=122L2N+2kL2N+4k+L2k+610FN+2kEN+k
が成り立つ。

16E=L2k2=(ϕkϕk)2XnXn+1=FN+2kFNEk=15EN(ϕN(ϕ2k1)+ϕN(1ϕ2k))=2EN+kEN(ϕkϕk)
が成り立つので
32EXnXn+1=12EkEN+k
を得る。
 またN=N+2kとおくと
32EXnXn+1(XnXn+142Xn)=ϕkϕk22+12ϕk+ϕkϕN+k+ϕNkϕk+ϕkϕNϕN32EXnXn+1(Xn+1Xn42Xn+1)=ϕkϕk22+12ϕk+ϕkϕNk+ϕN+kϕk+ϕkϕNϕN
が成り立つので、これを整理することで
vn=122ϕ2N+2k+ϕ2N2kϕ2Nϕ2N+ϕ2k+ϕ2k+6(ϕNϕN)(ϕN+k+ϕNk)vn=122ϕ2N2k+ϕ2N+2kϕ2Nϕ2N+ϕ2k+ϕ2k+6(ϕNϕN)(ϕNk+ϕN+k)
を得る。

 ちなみに上の式は次のようにも表せます(証明略)。

  • kが奇数のとき
    (un,vn)=12(FkFN+k,FNFN+kLk+2Fk22FNFN+k)(un,vn)=12(FkFN+k,FN+kFN+2kLk+2Fk22FN+kFN+2k)
  • kが偶数のとき
    (un,vn)=12(LkLN+k,5FNLN+kFk+2Lk225FNLN+k)(un,vn)=12(LkLN+k,5FN+2kLN+kFk+2Lk225FN+2kLN+k)

が成り立つ。

 また例えば apu_yokaiさんの記事 にて提示されていたN=6n2における公式
vn=F6n1F6n+1F6n1F6n12
を包含する式
vn=122FN+1FN+k1Lk+L2k1+95FN+1FN+k1Lk2+Lk5
などもありますが、このようにフィボナッチ数・リュカ数の変形の仕方は無数にあるのでとりあえずはこの程度にしておきましょう。

おわりに

 以上が簡単に考察したことのまとめとなります。
 個人的に物理学的な現象を放物線の方程式
y=ax2+bx+c
の係数a,b,cに関する主張に還元できたことや
Xn+2=(16E+2)Xn+1Xn
という興味深い漸化式が得られるなど中々綺麗な結果が出せて満足しています。
 ただ上で導出した結果はゴリ押し計算でどうにかした部分も多く、この問題の本質的な部分には迫れていないような気もします。まだ気になることも少なくないですが、とりあえず今回の記事はこんなところで。では。

投稿日:2024227
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

子葉
子葉
1065
259812
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. ボールの描く放物線と不変量
  3. 衝突点の漸化式
  4. フィボナッチ数・リュカ数との関係
  5. おわりに