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Fermatの小定理とℤ/pℤの関係と、その一般化について①

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はじめに

今回は、Fermatの小定理と、$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}(p$は素数$)$の関係と、その一般化について話していこうと思います。
これはその①です。

扱う命題

早速ですが、次の命題が成り立ちます。

$p$を素数とする。この時、次は同値である。
1.$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は体である。
2.任意の整数$a$に対して$\mathrm{gcd}(a,p)=1$ならば、$a^{p-1}\equiv 1\pmod{p}$

1.$\Rightarrow$2.
$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$の単元全体の成す乗法群を$ U_p$と書くことにする。
$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は体であるから、$U_p=(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})\backslash\lbrace \bar0\rbrace$となる。
よって、$U_p$は位数が$p-1$である。
また、$p$は素数なので、$\mathrm{gcd}(a,p)=1$$a\notin\bar 0$と同等である。つまり、$\bar a\neq\bar0$となるから、$\bar a\in U_p$ここで、$ U_p$の位数が$p-1$なので、$\bar a^{p-1}=\bar 1$ここで、$\bar a^{p-1}=\overline{a^{p-1}}$なので、
$$a^{p-1}\equiv 1\pmod p$$
を得る。
2.$\Rightarrow$1.
$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は剰余環の定義から、可換環なので、$\bar a\in\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\backslash\lbrace\bar0\rbrace$に対して乗法逆元が存在する事を言えば良い。
$p$は素数なので、$1\leq a\leq p-1$を満たす全ての整数$a$$p$と互いに素である。また、$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\backslash\lbrace\bar0\rbrace$の任意の元は$1\leq a\leq p-1$なる整数$a$を用いて$a$と書けることに注意しておく。
よって、仮定より$a^{p-1}\equiv1$なので、
$\overline{a^{p-1}}=\bar1$となるから、
$\bar a^{p-1}=\overline{a^{p-1}}=\bar1$となる。
ここで、$p$は素数であるから、$p-2\geq0$よって、
$\bar a^{p-2}$$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\backslash\lbrace\bar0\rbrace$の元として存在する
これより、
$\bar a^{p-1}=\bar a^{p-2}\bar a=\bar1$となるから、$\bar a$の乗法逆元は$\bar a^{p-2}$であり、存在する(終)

ここで、「$p$が素数ならば」を「$p$が2以上の整数ならば」に変えると同値性が崩れてしまいます。いつか話すかもしれませんが、ここでは話さないので、「カーマイケル数」又は、「フェルマー擬素数」と調べてみてください
これからはこの命題を一般化することを考えます。
ここで、次の命題を証明します

素数の特徴付け

$p\geq2$を任意の正整数とする。次は同値である。
1.$p$は素数
2.$p|ab\Rightarrow \ p|a \ \mathrm{or} \ p|b\quad(a,b\in\mathbb{Z})$

1.$\Rightarrow$2.はEuclidの補題と呼ばれる命題ですね。早速証明していきましょう。

1.$\Rightarrow$2.
$p\mid a$なら証明が終わるので、$p\nmid a$とする。
$p$は素数なので、$\mathrm{gcd}(p,a)=1$である。
これより、整数$n,m$が存在して、$pn+am=1$となる。
両辺に$b$を掛けて、
$pbn+abm=b$となる。
ここで仮定から、$p\mid ab$より、ある整数$k$が存在して、$ab=pk$となる。
故に、
$pbn+abm=pbn+pkm=p(bn+km)=b$となるから、
$b,n,k,m$は整数なので、$bn+km$は整数である。
よって、$p\mid b$を得る
1.$\Rightarrow$2.
$p$が素数でない。つまり、合成数とする。
すると、$1\lt c,d\lt p$なる整数$c,d$が存在して、$p=cd$と書ける。
ここで、明らかに$p\mid cd$であるが、$1\lt c\lt p$なので、$p\nmid c$である。同様に$1\lt d\lt p$なので、$p\nmid d$である。
これは仮定に矛盾する(終)

これは素数の特徴付けになっています。

命題の書き換え

これを踏まえて命題1を書き換えましょう。

正整数$p\geq2$が次を満たすものとする。
任意の整数$a,b$に対して$p|ab\Rightarrow p|a\ \mathrm{or}\ p|b$
この時、次は同値である
$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$は体である。
任意の整数$a$に対して$\mathrm{gcd}(a,p)=1$なら次が成り立つ
$$ a^{p-1}\equiv1\pmod p $$

ここで、次の概念を定義したいと思います。

素数の一般化

素元

$ R$を可換環とする。$p\in R$が素元(prime element)であるとは、$p$$0$でも単元でもなく、かつ次が成り立つ事である
任意の$a,b\in R$に対してある整数$k\in R$が存在して、$ab=pk$が成り立つならば、ある$n\in R$が存在して、$a=pn$または、$b=pn$が成り立つ

これは$n,m\in R$に対して
$n|m$を「ある$k\in R$が存在して$m=nk$」と定義すると、$p\in R$が素元であるとは、任意の$a,b\in R$に対して、$p|ab\Rightarrow\ p|a\ \mathrm{or}\ p|b$が成り立つという事である。
命題2を踏まえると、素元というのは整数環$\mathbb{Z}$における素数の一般化になっている事がわかります。

終わりに

次回②ではこれを用いて命題3をより多くの可換環について成り立つようにしたいと思います。
お疲れ様でした。

投稿日:23時間前
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