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虚数の階乗の絶対値と、偏角の積分表示

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|i!|とかを求めます。
|i!|、虚数解単位iの、階乗の絶対値のことです。
縦棒ばっかり、という面白さだけの動機。

準備

実数xに対し、
(1)|eix|=1
(2)arg(eix)=x(mod2π)

証明

(1)オイラーの公式から
eix=cosx+isinx
これの絶対値は
|eix|=cos2x+sin2x
なので三平方の定理から
|eix|=1

(2)もはや定義

複素数z1,z2に対し、
(1)|z1z2|=|z1||z2|
(2)arg(z1z2)=arg(z1)+arg(z2)

証明

非負の実数r1,θ1,r2,θ2を用いて複素数を極座標表示する
z1=r1eiθ1z2=r2eiθ2

もう自明だが
|z1z2|=|r1r2ei(θ1+θ2)|=|r1r2|=r1r2=|z1||z2|
また、arg(ei(θ1+θ2))=θ1+θ2=arg(z1)+arg(z2)

(別解)直交座標ゴリ押し
実数a,b,c,dを用いて
z1=a+biz2=c+di と表すと
|z1z2|=|(a+bi)(c+di)|
=|(acbd)+i(ad+bc)|
=(acbd)2+(ad+bc)2
=a2c22abcd+b2d2+a2d2+2abcd+b2c2
=a2c2+a2d2+b2c2+b2d2
=(a2+b2)(c2+d2)
=|a+bi||c+di|
=|z1||z2|

Wierstraβの乗積表示

x!=Γ(x+1)=eγxk=1exk(1+xk)1

証明

こちら の記事参照。
2通りで証明しています。

sinの無限乗積

sin(πx)=πxk=1(1x2k2)

証明


(概要)
cotは整数で一位の極を持ち、そこから部分分数分解が導かれ、それを積分して指数関数に入れれば得られます。(雑)
長くてかけない。

(追記)
別解ですが、とっても簡単。
ガンマ関数の相反公式
Γ(x)Γ(1x)=πsin(πx)
を認めれば、Wierstraβの乗積表示より、
(1xeγxk=1exk(1+xk)1)(eγxk=1exk(1xk)1)=πsin(πx)
約分がいっぱいできて、和と差の積をまとめると
1xk=1(1x2k2)1=πsin(πx)
sinについて解けば公式を得る。
-証明終-

本題

Wierstraβの乗積表示より、求めたいのは
|i!|=|eγik=1eik(1+ik)1|
公式2から、
=|eγi|k=1|eik||(1+ik)1|
公式1から
=k=1|(1+ik)1|

=k=111+1k2

これは公式4のsinの無限乗積をπxで割ってx=iを代入したものの平方根の逆数となっているので

=πisin(πi)=πsinh(π)=2πeπeπ

よって、
|i!| =2πeπeπ

やっぱり、e,i,πは繋がっている様。

一般の純虚数の場合の絶対値

実数xに対し、
|(ix)!|=|Γ(ix+1)|=πxcsch(πx)

特殊関数であるガンマ関数が、純虚数の絶対値だけに注目すると、初等関数となった。

偏角は?

複素数a+biの偏角はtan1(ba)
で与えられます。
同様、Wierstraβの乗積表示を使って
arg(i!)=limN{logNk=1Ntan1(1k)}
となる。

見た目はオイラーマスケローニ定数っぽい、が、残念ながら私はこれの閉じた形式を知らない。
しかし積分表示は発見しました。
以下、arctanのマクローリン展開とゼータ関数の積分表示を使っています。

arg(i!)=limN{logNk=1Ntan1(1k)}
=γ+k=1{1ktan1(1k)}
=γ+k=1{1k(j=0(1)jk(2j+1)2j+1)}
=γ+k=1{j=1(1)1+jk(2j+1)2j+1}
=γ+j=1(1)1+jζ(2j+1)2j+1
=γ+j=1(1)1+j2j+1(1Γ(2j+1)0t2jet1dt)
=γ+0j=1(1)1+j2j+11Γ(2j+1)t2jet1dt
=γ0j=1(1)jt2j(2j+1)!1et1dt
=γ0sin(t)t1et1dt
=γ0sin(t)tt(et1)dt

積分やシグマの順序入れ替えがありますが、arctanとゼータ関数なんで、多分いける(はず)
純虚数に一般化すると
arg((ix)!)=γx0sin(xt)xtt(et1)dt(mod2π)
結局これが計算できる訳でもないので、何も分からない。

一般の複素数に対するガンマ関数の偏角の積分表示

z=a+biに対し、z¯=abiは複素共役

arg(Γ(a+bi))=0etbtsin(bt)teat1etdt

もしくは、
arg(Γ(z))=12i0et(zz¯)t+eztez¯tt(1et)dt

ただし0a

証明の流れはほぼ一緒なので省略。
Hurwitzのゼータ関数、ディガンマ関数を使います。

一般の絶対値の方はむずそう。
 
 
間違い等あれば指摘ください

投稿日:20241030
更新日:2024116
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数学者でもなければ大学生でも無い一般人

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  4. 偏角は?
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