この記事では線形微分方程式の基本事項について雑にまとめていきます。
線形微分方程式とは未知関数
のことを言います。
より一般に線形微分方程式はベクトル値関数
の形に帰着されます(下で
実際例えば上の
とおくことで
という微分方程式に書き換えることができます(逆にこれを満たすような
と表せることにも注意しましょう)。
まず定数係数の線形微分方程式を考える上で重要となる行列の指数関数というものについて解説しておきます。
正方行列
によって定める。
が成り立つ。特に
が成り立つ。
積の可換性から二項定理
が成り立つので
を得る。
上の変形は冪級数の積
と比較するとわかりやすい。
が成り立つ。
は
を得る。
行列
が成り立つので各ジョルダン細胞に対し
ジョルダン細胞
を得る。
ついで
とわかる。
まず係数
を考えましょう。
これを解くにあたっては次の事実が重要となります。
を満たす。
に注意するとわかる(項別微分の正当性については省略)。
この事実によって
と変形できるので件の方程式
は
という微分方程式に帰着でき、これを解くことで
という一般解が得られます。
また必要に応じて
このとき任意の
の解
と求まる。
ちなみにこのことから同次方程式
の解
のなす線形空間
実際
は
一般の場合も定数係数の場合と同じように
および
とできそうな気がしますが、残念ながらこれは成り立ちません。実際、行列値関数において積の微分は
となるので累乗の微分は
となります。
定数係数のときは
が成り立っていたのでした。
このように一般の場合において明示的に解を求めることは難しいですが、同次形の方程式
の基本解を構成できれば非同次形の方程式
の解も求めることはできます。
いま同次方程式
の解として
が得られたとき、これらが線形独立であるかどうかを判定する方法としてロンスキアンというものがあります。
関数
と定まる関数のことをロンスキー行列と言い、その行列式
のことをロンスキアンと言う。
通常ロンスキー行列と言えば
の場合に定まるもの
のことを言いますが、ここではより一般の方程式
の解を横に並べたものについてもロンスキー行列と言うことにします。
の解であるときそのロンスキアン
を満たす。特に
が成り立つ。
いま
を満たす。ここで
と言い換えられることに注意する。
したがって
を得る。
この記事
にて紹介したように同次方程式
は(
いま、ある基本解系のなすロンスキー行列を
より
が成り立つので
と変形できます。
したがって件の方程式
は
という微分方程式に帰着され、これを解くことで
という一般解が得られます。
最後に定数係数の
の性質について簡単に紹介しておきましょう。
の固有多項式は
と求まる。
を第
が成り立つことに注意するとわかる。
の固有値
が成り立つことからわかる。
この補題と命題4から以下の事実が得られます。
微分方程式
の特性方程式が
と因数分解されるとき、
の線型結合によって尽くされる。
なお
が取れます。
ちなみに一般に線形演算子
を考えたときにも
とおき
という方程式に帰着させることでいい感じになることがあります。
上では微分演算子
は一項間漸化式
に帰着されます。これは単純に
と解けるので以下の主張が得られます。
漸化式
の特性方程式が
と因数分解されるとき、
の線型結合によって尽くされる。
ジョルダン細胞
が成り立つこと、および
は