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ロバチェフスキーの積分公式

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はじめに

 この記事では周期関数の広義積分に関する公式
0sin2xx2f(x)dx=0sinxxf(x)dx=0π2f(x)dx
について簡単に考察していきます。

ロバチェフスキーの公式

 とりあえずまずは上の公式を示しておこう。

1sinx=n=(1)nx+πn1sin2x=n=1(x+πn)2

 なお総和の取り方については
n==limNn=NN
と定めるものとした。

 部分分数展開により
1sinx=1x+n=n0(1)n(1xπn+1πn)cotx=1x+n=n0(1xπn+1πn)
が成り立つので、この前者を適当に整理することで第一式が、後者を微分することで第二式が得られる。

Lobachevsky Integral Formula

f(x)=f(x+π)=f(πx)
を満たすR0上の連続関数fに対し
0sin2xx2f(x)dx=0sinxxf(x)dx=0π2f(x)dx
が成り立つ。

 周期性よりf(x)R上で定義されるものとしてよい。このとき仮定から
f(x)=f(x)
特に
0sin2xx2f(x)dx=12sin2xx2f(x)dx0sinxxf(x)dx=12sinxxf(x)dx0π2f(x)dx=120πf(x)dx
が成り立つので
sin2xx2f(x)dx=sinxxf(x)dx=0πf(x)dx
を示せばよい。
 これは積分区間を
=n=πnπn+π
と分割することで
sin2xx2f(x)dx=0πsin2x(n=1(x+πn)2)f(x)dx=0πf(x)dx sinxxf(x)dx=0πsinx(n=(1)nx+πn)f(x)dx=0πf(x)dx
とわかる。

考察

 この証明において重要なのは周期Tの関数fに対し
f(x)g(x)dx=0Tf(x)(n=g(x+nT))dx
が成り立つという、ごく基本的な変形である。

 f(x+T)=f(x)なる関数fに対し
f(x)g(x)dx=0Tf(x)(n=g(x+nT))dx
が成り立ち、またf(x+T)=f(x)なる関数fに対し
f(x)g(x)dx=0Tf(x)(n=(1)ng(x+nT))dx
が成り立つ。

 また
G(x)=n=g(x+nT)H(x)=n=(1)ng(x+nT)
とおくとこれらは
G(x+T)=G(x),H(x+T)=H(x)
を満たすので次のような主張が得られる。

 周期Tの関数fに対し
f(x)g(x)G(x)dx=f(x)g(x)H(x)dx=0Tf(x)dx
が成り立つ。

 gが偶関数あるいは奇関数であり、またfが偶関数であるとき
0f(x)g(x)G(x)dx=0f(x)g(x)H(x)dx=0T2f(x)dx
が成り立つ。

 ただロバチェフスキーの公式ではG(x)H(x)が明示的に求まることも重要であったので、結局以下のような例くらいにしか使いどころはないかもしれない。

具体例

 f(x+π)=f(x)なる関数fに対し
f(x)xm+1dx=(1)mm!0π(dmdxmcotx)f(x)dx
が成り立ち、またf(x+π)=f(x)なる関数fに対し
f(x)xm+1dx=(1)mm!0π(dmdxm1sinx)f(x)dx
が成り立つ。

 ただしm=0のときは条件収束性から
=limRRR
と定める必要がある。

 補題1の証明から
dmdxmcotx=(1)mm!n=1(xπn)m+1dmdxm1sinx=(1)mm!n=(1)n(xπn)m+1
が成り立つことに注意するとわかる。

(計算例)

cotx=cosxsinxddxcotx=1sin2x12d2dx2cotx=cosxsin3x16d3dx3cotx=1sin4x231sin2x1sinx=1sinxddx1sinx=cosxsin2x12d2dx21sinx=1sin3x121sinx16d3dx31sinx=cosxsin4x16cosxsin2x

 少し考察してみたところ一般の高階微分は次のように求められることがわかった。

nk1=2(2k)!j=0k(1)kj(2kkj)j2nnk2=1(2k+1)!j=0k(1)kj(2k+1kj)(2j+1)2n+1
とおくと
d2n2dx2n21sin2x=k=1n(4)nknk1(2k1)!sin2kxd2ndx2n1sinx=k=0n(1)nk4knk2(2k)!sin2k+1x
が成り立つ。

d2n2dx2n21sin2x=k=1n(1)nkS1(n,k)(2k1)!sin2kxd2ndx2n1sinx=k=0n(1)nkS2(n,k)(2k)!sin2k+1x
とおくとこれらは
S1(n+1,k)=(2k)2S1(n,k)+S1(n,k1)S2(n+1,k)=(2k+1)2S2(n,k)+S2(n,k1)
という漸化式を満たすことがわかるので
(1)ji=0ijk((2i)2(2j)2)=4k(kj)!(k+j)!2(1)ji=0ijk((2i+1)2(2j+1)2)=4k(kj)!(k+j+1)!2j+1
に注意すると この記事 の定理9から
S1(n,k)=24kj=0k(1)kj(2j)2n(kj)!(k+j)!=4nknk1S2(n,k)=14kj=0k(1)kj(2j+1)2n+1(kj)!(k+j+1)!=14knk2
を得る。

投稿日:2024420
更新日:2024421
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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