この記事は
simasima specialの記事の前編
をもとに作られています。まだ見ていない人は先に見ることをおすすめします(一応この記事だけ見ても理解できるようにはなっていますが)。
この記事では従来のsimasima specialを拡張し、それを用いてOMC024-Dを鮮やかに解きます!他の問題にも適用できる有用な手法なのでぜひご覧ください。
また厳密な議論には群論の知識を要しますが、この記事では高校数学の範囲内で説明していきます。高校範囲の言葉で語る以上、厳密性が損なわれている箇所があるのはご了承ください。厳密な議論は
こちら
から。
この記事で紹介する手法は、もともと群論を用いてsimasima specialを記述し直すという Lim_Rim_さん のアイディアに負の個数を持つ集合を加えてsimasima specialを拡張させるという私自身のアイディアの融合によって生まれています。simasimaさんとLim_Rim_さんに感謝申し上げます。思いついた時は去年の夏くらいだったんですが、修論が忙しかったので世に出すのがこんな時期になりました。
京大の作問サークルではこういう議論もしていたり楽しいので、ぜひ入部してね!部誌や自作模試もboothで販売しているよ!
前置きはこれくらいにして早速みていきましょう!!
まずこの記事の前提知識となる集合の演算について軽く触れておきます(知っている人は飛ばしても大丈夫です)。
集合
また要素の個数が有限個の集合を有限集合といいます。そのままですね。
と定めます。つまり
次に
と定めます。つまり
特に
議論を簡単にするために、確率の問題は扱わず、場合の数の問題だけ扱います。
確率の問題も守備範囲ではあるのですが、話が難しくなるので…
というわけで、まずは場合の数を扱った通常のsimasima specialの問題を解いていきましょう!(simasima special を使いこなしている方は飛ばしてもok)
さいころを
まず、さいころの出た目を並べた
このとき
のような感じです。
ここで
よって
この議論は
以上から
が求める答えになります。
このようにsimasima specialとは全体の集合
まず次の問題を考えます。
さいころを
先ほどと同じように対称性を作ろうとしても中々うまくいかない。
なら無理矢理作ろうということで
とします。これにより
と分解することができます。
また、求めたい場合の数は
ここで次の定理を用います。
ここで
ここでは詳細な証明は省きますが、
これを用いることを考えましょう。
次のようになります。
よって二項定理から
と答えが求められます。
従来のsimasima specialと前節のsimasima specialを統一的に扱いたいというモチベーションのもとで、負の個数を持った集合を考えます。
先ほどの問題
さいころを
を再び考えましょう。ここでは厳密性を忘れてお気持ちだけ理解してください。
先ほど考えていた集合
また仮想的な演算
この集合もどき
さいころの目を並べた
それ以外の場合は対称性から全体の
となんと先ほどの答えと一致します。
この結果は偶然ではなく、負の個数を持った集合を考える妥当性を裏付けているのです!この結果が偶然ではないことをもう少し見ていきましょう。前節までは
という式は先ほどの式
と綺麗に対応していることがわかります!
しかし負の個数を持った集合なんてどうやって正当化するんだ?と思う人もいると思います。詳細は次回にまわすとして、そういった人のためにここでは簡単な説明だけ扱っておきます。
通常の意味での集合
となる写像 (
なんすか?写像って
という方は関数みたいなものと思ってください) と対応させることができます。
この
となる写像と捉えることができます。次回はこうしたことを掘り下げていきます。
余談ですが、確率を考える際はサイコロの場合であればそれぞれ
次のような問題形式に適用することを考えます(一般にはこれにあてはまらない問題にも適用できますが、それは次回にまわすことにします)。
そのままだとわかりにくいと思うので、いくつか具体例をみてみましょう。例えば先ほどの問題であれば
また目標のOMC024-Dもこの問題形式に帰着できます。
ここで
例えば
に対応します。また積を取った数が平方数であることは
以上から
とすれば上記の問題形式に帰着できることがわかります。
このとき
ここで負の個数をもった集合の要素とは含まれている個数が0でない要素のことを表すものとします。例えば前節の
ここで各
とします。ただし
例えば
となります(第1成分は
また
と定めます。
例えば
となります。
いよいよ大詰めです!分割
追記:4つめの条件が抜けていたので修正しました。
このとき、求めたい場合の数は次のように表されます。
(ただし、
まずはこれを用いて先ほどのサイコロの問題
さいころを
を解いてみましょう。
(つまり
とし
このとき
と求められます!
それではいよいよOMC024-Dを解きましょう!
(
とすると
また
これを上の式に適用すると
となる!
説明の都合上ベクトルで表記していますが、実用上は
と表記してもなんら問題はないです。
最後に練習問題をつけたので自力で解いてみてください。
先ほどと同じように
とし
このとき
とし、
とすることで上の定理が使える形になりました。よって
と求められます。
この問題でも実用上は
として大丈夫です。
一般化simasima specialは慣れると、多項式や形式的冪級数を用いる方法より早く解けることが多いです(問題によってはトントンくらいになることもありますが、一般化simasima specialを適用できる問題であれば遅くなることはほとんどない印象)。
次回は厳密な場合について記述したいですね。わかりやすさと面白さを優先して、本来の適用範囲を多少なりとも狭めてしまっているので…
一応準同型定理くらいまでの群論の知識が最低限あれば、読み進められるようになるとは思います。
それでは、また次回。
追記: 厳密な議論を行う続編 を更新しました。