では
前回
の補題たちから定理を錬成していきます.
前回示した(命題1つと)補題は次の$3$つです.
$X$を$T_1$空間とする.$X$がフレシェ・ウリゾーン空間であることと次の性質(E)を満たすこととは同値である.
(E) $x_0$を無限集合$A\subseteq X$の極限点とすると,異なる点からなる無限列$\{x_n\}_n$,$x_n\in A$で$x_0$に収束するものが存在する.
$X$を性質(E)をもつ位相空間,$f:X\to Y$を写像とする.このとき$f$が$x_0$で連続であることと,$x_0$に収束する任意の点列$\{x_n\}_n$に対し$\{f(x_n)\}_n$が$f(x_0)$に収束することとは同値である.
$X$を位相空間,$Y$を$T_2$空間,写像$f:X\to Y$はcompact preservingであるとする.$x_0\in X$に収束する点列$\{x_n\}_n$,$x_n\in X$が$f(x_i)\neq f(x_j)$($i\neq j$)を満たすとき,$\{f(x_n)\}_n$は$f(x_0)$に収束する.
$f:X\to Y$を局所連結空間$X$から$T_1$空間$Y$へのconnectedな写像とする.$F\subseteq Y$を閉集合とし,$x\in X$を$f^{-1}(F)$の極限点とする.もし$x$の開近傍$U$で$U\cap f^{-1}(F)$が$X$で開であるようなものが存在すれば,$x\in f^{-1}(F)$である.
フレシェ・ウリゾーン空間であることを仮定しますが,性質(E)を持つので補題2が使えます.
$X$を局所連結でハウスドルフなフレシェ・ウリゾーン空間,$Y$をハウスドルフ空間,$f:X\to Y$をcompact preservingかつconnectedな写像とする.このとき$f$は連続である.
弱い仮定からコンパクト性と連結性を保つ写像の連続性が出てきたと思います!
$f$が$x\in X$で連続でないとする.補題2から$x$に収束する無限列$\{x_n\}_n$,$x_n\in X$で$\{f(x_n)\}_n$が$f(x)$に収束しないものが存在する.補題3によりある$y\in Y$であって$y\neq f(x)$,無限に多くの$n$に対して$f(x_n)=y$が成り立つようなものが存在する.従って
$x\in \text{Cl}(f^{-1}(y))\backslash f^{-1}(y)$.
$U,V$をそれぞれ$f(x),y$の近傍で互いに素なものとする.$f^{-1}(y)$を互いに素な3つの集合$Y_1,Y_2,Y_3$に分割する.$Y_1$は$f^{-1}(y)$の内点全体とする.
$Y_2=\{z\in f^{-1}(y):z\notin Y_1,\text{互いに異なる点}w_n(n=1,2,...)$
$\text{たちによる逆像}f^{-1}(w_n)\text{の点からなる}z\text{に収束する点列}$
$\{z_n\}_n,z_n\in f^{-1}(w_n)\text{が存在する}\}$
$Y_3=\{z\in f^{-1}(y):z\notin Y_1,z\text{に収束する任意の点列}$
$ \{z_n\}_n,z_n\in X\backslash f^{-1}(y)\text{に対し}\{f(z_n):n\in\mathbb{N}\}\text{は有限}\}$
$x$は$f^{-1}(y)$の極限点だから$\text{Cl}(Y_i)$($ i=1,2,3$)のどれかに含まれる.
$x\in \text{Cl}(Y_2)$とする.このとき列$\{z_n\}_n,z_n\in Y_2$で$x$に収束するものが存在する.任意の$n$に対し点列$\{z_{nm}\}_{m}$で
$z_{nm}\in f^{-1}(w_{nm})$,$w_{nm_1}\neq w_{nm_2}$($m_1\neq m_2$),
$z_{nm}\to z_n$($m\to \infty$)を満たすものが存在する.任意の$n$に対して$f(z_n)=y$だから補題3により$w_{nm}\to y$($m\to\infty$).
| X | Y |
|---|---|
| $z_{nm}\mapsto$ | $w_{nm}$ |
| $\downarrow$($m\to\infty$) | $\downarrow$($m\to\infty$) |
| $z_n\mapsto$ | $y$ |
従って$V$を$y$のある開近傍とするとき$w_{nm}$たちは全て$V$に含まれるとしてよい.列$\{z_{nm}\}_{n,m=1}^{\infty}$を一点の逆像$f^{-1}(w_{nm})$に含まれる項がどれも有限集合からなるようにとることができることを示す.
$z_{11}\in f^{-1}(w_{11})$について考える.$z_{nm}\in f^{-1}(w_{11})$,$n>1$となる$z_{nm}$を列から除く.同様に任意の$i$に対し$f^{-1}(w_{1i})$に含まれる$z_{nm}$($n>i$)を列から除く.今,1つ目の列に含まれる点は列の中に有限個しかない.
$j$番目の列に残っている最初の元を考え$z_{jm}$とする.$j$番目の列より後に$f^{-1}(w_{jm})$に属する元があれば列から除く.$j$番目の列に残っている次の元を$z_{jm'}$とする.同様に$j+1$番目の列より後に$f^{-1}(w_{jm'})$に属する元があれば除く.この操作を$j$番目の列の残りの元に対しても繰り返す.
このプロセスが終わり,$z_{nm}\in f^{-1}(w_{nm})$とすると,$f^{-1}(w_{nm})$に含まれる元は列の中に高々$n+m$個である.
一方,高々$\dfrac{n(n-1)}{2}$元が第$n$列から除かれている.
可算個の列の残りを$\{z_{nm}\}$とかくと$x$は
$\{z_{nm}:n,m\in\mathbb{N}\}$の極限点である.従って,ある列$\{s_n\}\subseteq \{z_{nm}:n,m\in\mathbb{N}\}$で$x$に収束するものが存在する.今$\{f(s_n)\}_n$は無限列であることが各一点の逆像$f^{-1}(w_{nm})$が有限集合であることからわかる.しかし,任意の$n$に対し$f(s_n)$は$y$の開近傍$V$に含まれる.従って$\{f(s_n)\}_n$は$f(x)$に収束しない.これは補題3に矛盾する.よって$x\notin \text{Cl}(Y_2)$.
次に$x$が$Y_3$の極限点とならないことを示す.まず$Y_3$の有用な性質をみる.$z\in Y_3$とすると$z$は集合
$W_z=\bigcup\{f^{-1}(w):z\in \text{Cl}(f^{-1}(w))\}$の内点である.$z\in f^{-1}(y)$だから$f^{-1}(y)\subseteq W_z$であることに注意する.よって$z\in W_z$である.$Y_3$の定義から$z$は$X\backslash W_z$の極限点にならない.
もしなるとすれば$z_n\to z$,$z_n\in X\backslash W_z$として有限個の$\{f(z_n)\}$のうちどれかは無限回現れることになりそれを$w$とすると$z\in\text{Cl}(f^{-1}(w))$なので
ある$z_n$は$W_z$に含まれることになり矛盾
従って$z$は開近傍$U_z'$で$W_z$に含まれるものを持つ.
また,ある$q\in Y$に対し$U_z'\cap f^{-1}(q)\neq \emptyset$であるとき$f^{-1}(q)\subseteq W_z$であることを注意しておく.
$x\in \text{Cl}(Y_3)$とすると,点列$\{z_n\}_n$,$z_n\in Y_3$で$x$に収束するものが存在する.任意の$n$に対しある$w_n\in Y$で$z_n$が$f^{-1}(w_n)$の点の極限となるものが存在する.$w_n$たちが互いに異なるように取れることを示す.
$f(x),y$と異なるある$w_1\in Y$で$z_1$が$f^{-1}(w_1)$の極限点であるものが存在する.もし存在しないとすれば,上で存在を証明した$z_1$の連結な近傍$U_{z_1}'$の像は$\{f(x),y\}$となり連結ではないので矛盾する.
像が$y$の1点のみからならないことは$z_2$が$f^{-1}(y)$の内点にならないことからわかる
$K_0$,$K_1$をそれぞれ$f(x)$,$w_1$の互いに素な開近傍の閉包で,$y\notin K_0\cup K_1$となるものとする.$U_{z_2}'$を上で存在を証明した$z_2$の近傍とする.$f(U_{z_2}')$は$y$とある$w\neq y$を含む.従って$f(U_{z_2}')$は$K_0\cup K_1\cup \{y_0\}$に含まれない元$w_2$をもつ.そうでなければ連結性に反するからである.このとき$z_2$は$f^{-1}(w_2)$の極限点である.
| $K_0$ | $K_1$ | $f(U_{z_2})$ | ||
|---|---|---|---|---|
| $f(x)$ | $w_1$ | $w_2,y$ |
$K_2$を$y$を含まない$w_2$の閉近傍とする.同様に
$w_3\in Y\backslash (K_0\cup K_1\cup K_2\cup \{y\})$を$z_3$が$f^{-1}(w_3)$の極限点になるように取る.このように続けることで$z_n$を$n\neq m$のとき$w_n\neq w_m$を満たすような$f^{-1}(w_n)$の点列の極限として得る.これらの列の和から$x$に収束する列$\{t_n\}_n$を取る.
今,$\{f(t_n)\}_n$は無限だが,$\{f(t_n):n\in\mathbb{N}\}\subseteq Y\backslash K_0$,
$f(x)\in \text{Int}(K_0)$.よって$\{f(t_n)\}_n$は$f(x)$に収束しない.これは補題3に矛盾する.よって$x\notin \text{Cl}(Y_3)$.
$x$は$Y_2\cup Y_3$の極限点ではないので,$x$のある開近傍$U$が存在して$U\cap (Y_2\cup Y_3)=\emptyset$を満たす.つまり$U\cap f^{-1}(y)$は開集合である.補題4から$x\in f^{-1}(y)$となり仮定に反する.よって$f$は$x$で連続である.$\Box$
すごかった.$\{f(x_n)\}_n$のあり得る収束先の一つ$y$をとり$f^{-1}(y)$を$3$つに分けて...補題4が使えない場所が上手く補題3が使える2箇所に分かれるし,$W_z$の置き方など至る所自分では思いつきそうにありません.
興味があったので調べた記録として書いてみました.特に位相空間を勉強しているというわけではないので悪しからず.