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大学数学基礎解説
文献あり

コンパクト性を保つ写像2 連結性を保つ写像

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引き続き 前回 と同様コンパクト性を保つ写像の連続性について考えます.今回は連結性に関する条件を課したものを考えます.
連続性は中間値の定理が成立することから「大雑把に言って関数のグラフが繋がっていること」だと説明されることがあります.これは的を得た説明だと思え,中間値の定理の逆が正しくないことは興味深い事実です.連結集合の連続像は連結である,という形で中間値の定理は一般の位相空間に一般化されることを踏まえると,この逆がどうなるかということもまた興味深いと思います.

コンパクト集合をコンパクト集合に写す写像をcompact preservingであるというのでした.連結の場合はconnectedと言います.

connected

$f:X\to Y$を位相空間$X$から位相空間$Y$への写像とする.$X$の連結部分集合$A$$f$による像$f(A)$が常に連結であるとき,$f$はconnectedであるという.

完全不連結な場合など連結成分が小さくなってしまう場合は意味が薄くなるので,connectedな写像を考える上で局所連結性を課すことは自然だと言えるでしょう.

今回考える空間は次の性質を満たすものです.

フレシェ・ウリゾーン空間

$X$を位相空間とする.$A\subseteq X$に対し閉包$\text{Cl}(X)$$A$の点からなる収束列の極限の全体が一致するとき,$X$はフレシェ・ウリゾーン空間であるという.

例えば第一可算公理を満たす空間はフレシェ・ウリゾーン空間です.この性質により様々な場面で点列を用いた議論が可能になります.
より使いやすい形に言い換えます.

$X$$T_1$空間とする.$X$がフレシェ・ウリゾーン空間であることと次の性質(E)を満たすこととは同値である.
(E) $x_0$を無限集合$A\subseteq X$の極限点とすると,異なる点からなる無限列$\{x_n\}_n$,$x_n\in A$$x_0$に収束するものが存在する.

まず$X$が(E)を満たすとする.$A\subseteq X$とする.$A$が有限集合なら$X$$T_1$であることから$A$は閉であり,$\text{Cl}(A)$の点に収束する点列として定数列をとることができる.$A$が無限集合のとき,$x\in A$なら$x$に収束する列として定数列を,$A$が極限点なら仮定から$x$に収束する点列をとることができる.

逆に$X$がフレシェ・ウリゾーン空間であるとする.$A\subseteq X$が無限集合で$x_0\in \text{Cl}(A)$がその極限点であるとする.仮定から$x_0$に収束する$A\backslash \{x_0\}$の点列が存在する.これが有限個の元のみからなれば,$T_1$であることからその極限は点列に現れるどれかとなる.これは極限が$x_0$であることと矛盾する.$\Box$

ここで性質(E)の下で連続性が点列を用いて記述できることを見ましょう.

$X$を性質(E)をもつ位相空間,$f:X\to Y$を写像とする.このとき$f$$x_0$で連続であることと,$x_0$に収束する任意の点列$\{x_n\}_n$に対し$\{f(x_n)\}_n$$f(x_0)$に収束することとは同値である.

逆は明らかなので,$x_0$に収束する任意の点列に対して$x_n\to x_0$なら$f(x_n)\to f(x_0)$であるとして連続性を示す.$A\subseteq X$として$f(\text{Cl}(A))\subseteq \text{Cl}(f(A))$を示せばよい.$x\in \text{Cl}(A)$とする.$x$$A$の点なら明らかに成立する.$x$$A$の極限点であるとする.$A$が無限集合なら仮定から$x_n\in A$,$x_n\to x$なる$A$の点列が存在するので$f(x_n)\to f(x)$となり$f(x)\in \text{Cl}(f(A))$.$A$が有限集合なら$x$に収束する点列の存在を次のように示すことができる.
$x$$A$の極限点だから$x$のある近傍$U$$U\cap A\neq\emptyset$を満たすものが存在する.よって$|U\cap A|$が最小となるような近傍$U$をとることができる.この$U$に対し$y\in U\cap A$とおく.任意の$n$に対し$x_n=y$とすると$x_n\to x$である.実際,もし$x$のある近傍$U'$$y\notin A\cap U'$となるものがあれば$A\cap U\cap U'$$A\cap U$より元が少なくなり,最小性に反するからである.$\Box$

次にcompact preservingな写像が極限に関するよい性質を持つことを見ます.

$X$を位相空間,$Y$$T_2$空間,写像$f:X\to Y$はcompact preservingであるとする.$x_0\in X$に収束する点列$\{x_n\}_n$,$x_n\in X$$f(x_i)\neq f(x_j)$($i\neq j$)を満たすとき,$\{f(x_n)\}_n$$f(x_0)$に収束する.

$\{f(x_n)\}_n$$f(x_0)$に収束しないとし,$V$$f(x_0)$の開近傍で,その補集合が無限に多くの$\{f(x_n)\}_n$の点を含むものとする.この$V$に入らない項のみからなる部分列を$\{y_n\}_n$とする.つまり任意の$n$に対し$f(y_n)\in Y\backslash V$が成り立つ.今,$\{y_n:n\in \mathbb{N}\}\cup \{x_0\}$はコンパクトだから$f$がcompact preservingであることから
$\{f(y_n):n\in\mathbb{N}\}=f(\{y_n:n\in\mathbb{N}\}\cup\{x_0\})\cap(Y\backslash V)$はコンパクト.よって,ある$f(y_j)$$\{f(y_n):n\in\mathbb{N}\}$の極限点である.

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そうでなければ,各$f(y_i)$はある近傍で$\{f(y_n):n\in\mathbb{N}\}\backslash\{f(y_i)\}$と交わらないものを持つ.つまり$\{f(y_j)\}$のみを含む開集合からなる開被覆を取れる.仮定からこれは無限個ある.

$\{z_n\}_n$を任意の$n$に対して$f(z_n)\neq f(y_j)$を満たす部分列とする.今$\{z_n:n\in\mathbb{N}\}\cup\{x_0\}$はコンパクトだが
$\{f(z_n):n\in\mathbb{N}\}=f(\{z_n:\in\mathbb{N}\}\cup\{x_0\})\cap (Y\backslash V)$は閉ではないからコンパクトではない.$f$はcompact preservingで$Y\backslash V$は閉だからこれは矛盾である.よって$\{f(x_n)\}_n$$f(x_0)$に収束する.$\Box$

次が最後の補題になります.

$f:X\to Y$を局所連結空間$X$から$T_1$空間$Y$へのconnectedな写像とする.$F\subseteq Y$を閉集合とし,$x\in X$$f^{-1}(F)$の極限点とする.もし$x$の開近傍$U$$U\cap f^{-1}(F)$$X$で開であるようなものが存在すれば,$x\in f^{-1}(F)$である.

$f$が連続であれば$f^{-1}(F)$は閉集合なので$x$は当然$f^{-1}(F)$の元となります.$f$の連続性を証明する文脈では$f^{-1}(F)$が閉であることを言いたい場合に,補題のような開集合が存在する極限点については$f^{-1}(F)$に含まれることがわかるということですね.

$X$は局所連結だから$U$は連結であるとしてよい.$x\notin f^{-1}(F)$であるとすると,$U\cap f^{-1}(F)$は非連結である.実際,連結であれば極限点を加えた$(U\cap f^{-1}(F))\cap \{x\} $は連結であり,その$f$による像は不連結なので矛盾する.

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$(X\backslash F)\cap (X\backslash\{x\})\cap (F\cap \{x\})=\emptyset$なのでこの$2$つの開集合の直和に分けられる


$U\cap f^{-1}(F)$の成分$C$を考える.$X$は局所連結だから$C$$U\cap f^{-1}(F)$で,従って仮定から$X$で開である.$U$は連結だから
$(\text{Cl}(C)\backslash C)\cap U\neq \emptyset$

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$C$が開かつ閉だと$U$でも同様であり$U$の連結性に反する.

$t\in (\text{Cl}(C)\backslash C)\cap U$とする.$t\notin f^{-1}(F)$だから連結集合$C\cup\{t\}$$f$による像が連結でない.これは$f$がconnectedであるという仮定に反する.$\Box$

次回はこれらの補題を用いてcompact preservingかつconnectedな写像の連続性を導きます!

参考文献

[1]
EVELYN R. MCMILLAN, ON CONTINUITY CONDITIONS FOR FUNCTIONS, PACIFIC JOURNAL OF MATHEMATICS
投稿日:620
OptHub AI Competition

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