この記事では
前回の記事
に引き続きラマヌジャンの総和法について勉強していきます。
さて
前回の記事
では
によって定めたのでした。特にラマヌジャン和を特徴付ける関数
は正則関数
今回の記事ではラマヌジャン和の解析的・代数的な性質から導かれる様々な定理について紹介し、次回の記事でその応用例について解説していこうと思います。
以下
と定める(これを
が成り立つ。
推移性
に注意して
の両辺のラマヌジャン和を取ることでわかる。
整関数
によって定める。
任意の
が成り立つ。
推移性
に注意すると
とわかる。
とわかる。
および
に注意すると
と表せる。よって
を得る。
特に
が成り立つ。
とおくと
が成り立つので
に注意すると
と表せる。
また上の補題より
が成り立つことに注意すると
を得る。またこれを
を得る。
なる
と表せる。この関数のことを
が成り立つ。
上の証明より
が成り立っていたのでこれを
を得る。
を満たすものとする。
このとき
は
が成り立つ。
仮定より任意のコンパクト集合
と優関数によって抑えられるので積分記号下微分が正当化でき
を得る。
また
に注意するとこれは再び上の仮定を満たすことがわかるので繰り返し項別微分することができ
を得る。
ある点
とテイラー展開したとき
とテイラー展開できる。
が成り立つ。特に
が成り立つ。
仮定より
を得る。
が成り立つ。ただし
についてラマヌジャン和を取ることでわかる。
が成り立つとする。
このとき
が成り立つ。
が成り立つのでフビニの定理より積分の順序交換が正当化でき
を得る。
を満たすとき
なる関数
が成り立つことに注意する。
ここで
とおくと
および
が成り立つので
とおくことで
を得る。
さらに仮定より項別積分が適用でき
と求まるので
を得る。
さて最後に交代級数の総和法について簡単に触れておきましょう。
いま級数
そこで交代級数に対してはラマヌジャン和とは少し異なる総和法を考えることにします。具体的にはラマヌジャン和がオイラー・マクローリンの和公式
に着想を得ていたように、交代級数にはオイラー・ブールの和公式
(ただし
を基点とした次のような総和法が考えられます。
ある
が収束するとき
は
と表す。
これは方程式
によって特徴づけられる関数
によって
を満たすような
が成り立つ。
ラマヌジャン和とは違ってフーリエ級数の定数項が存在しないため
さてこれによりオイラー和は次のように定められます。
交代級数
によって一意に定まる関数
と定まる値のことをオイラー和と言う。
こうして交代級数の和が定まったわけですが、実のところ
が成り立つ。
補題4から
が成り立つことに注意すると
を得る。
倍数公式
に注意するとわかる。
ちなみに
とおくと
が成り立つので上の関係は次のようにも表せます。
を得る。
が成り立つ。
を満たすとき
が成り立つ。ただし
いくつかの議論については省略して説明する。
仮定から
を持つことが知られている(Nörlund)。
いま
とおくと
が成り立つので
に注意してこの両辺の
つまり
と求まる(これが
したがって
を得る。
またこれと同様にしてラマヌジャン和は次のような収束級数表示があることが示せます。
を満たすとき
が成り立つ。ただし
とおいた。
に注意すると
つまり
および
を得る。
ちなみにこの
という母関数を持ちます。
の性質
から
つまり
と求まる。なお下に示すようにこれは
ちなみに
より
とも表せる。
と求まる。
また
と収束級数表示でき、これによりゼータ関数の解析接続
が与えられる(このことは
この記事
でも紹介している)。
ちなみにラマヌジャンのノートブックには次のような記述が見られる。
Notebook 2より
この変形の正当性を考えてみよう。いま
とおくと
が成り立つ。また
が成り立つのでこれを
つまり
を得る。
ラマヌジャンはこんなことまで考えてはなかったと思いますが、このような議論も実はちゃんと正当化できるというのは面白いですね。