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ベルヌーイ数と偶数ゼータ値とニュートンの恒等式

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ベルヌーイ数

ベルヌーイ数

ベルヌーイ数Bk は以下のように定義される。
(1)xex1=k=0Bkk!xk

列挙すると
B0=1B1=1/2B2=1/6B3=0B4=1/30B5=0B6=5/66B7=0B8=691/2730B9=0B10=7/6..

ベルヌーイ数の漸化式

(1)より
x=(ex1)(k=0Bkxk/k!)=(x+x2/2!+x3/3!+x4/4!+ ..)(B0+B1x+B2x2/2!+B3x3/3!+ ..)

係数比較から漸化式が求まります。以下のような表の斜めのラインが同じ次数です。

B0B1B2/2!B3/3!B4/4!1B0B1B2/2!B3/3!B4/4!1/2!B0/2!B1/2!B2/(2!2!)B3/(2!3!)B4/(2!4!)1/3!B0/3!B1/3!B2/(3!2!)B3/(3!3!)B4/(3!4!)1/4!B0/4!B1/4!B2/(4!2!)B3/(4!3!)B4/(4!4!)1/5!B0/5!B1/5!B2/(5!2!)B3/(5!3!)B4/(5!4!)
これから以下の漸化式が求まります。
1=B00=B0/2!+B10=B0/3!+B1/2!+B2/2!0=B0/4!+B1/3!+B2/(2!2!)+B3/3!0=B0/5!+B1/(4!)+B2/(3!2!)+B3/(2!3!)+B4/4!
n段目にn!をかけると
1=B00=B0+(21)B10=B0+(31)B1+(32)B20=B0+(41)B1+(42)B2+(43)B30=B0+(51)B1+(52)B2+(53)B3+(54)B4
というシンプルな漸化式が現れます。Bkの添字を一つ進める演算子T
TBkBk+1 を使うと
B0=1((T+1)nTn)B0=0  (n>1)
と書けます。

冪乗和の公式

ベルヌーイ数はもともとベルヌーイと関孝和が冪乗和の公式を探す過程で発見した数列です。冪乗和の公式は
k=0n1((k+1)mkm)=nm
という関係式から導くことができ、Sm=k=0n1km と置くとSm はベルヌーイ数と同様の関係式を満たすことが分かります。ただしこの場合は多項式となります。
n=S0n2=S0+(21)S1n3=S0+(31)S1+(32)S2n4=S0+(41)S1+(42)S2+(43)S3n5=S0+(51)S1+(52)S2+(53)S3+(54)S4
以下のような行列Bを使うと
B=(112133..14641510105..)

B(B0B1B2)=(100)

B(S0S1S2)=(nn2n3)
と表せます。ベルヌーイ数はこの行列の逆行列B1の最初の列の数字です。B1の各成分は冪乗和の公式の各係数となります。
B1=(11/21/21/61/21/3..01/41/21/41/3001/31/21/5..)
冪乗和の公式に関しては ベルヌーイの公式 もご覧ください。

ゼータ関数の正の偶数の値

ベルヌーイ数は自然数の偶数乗の逆数和を表す式にも現れます。

偶数ゼータ値

ζ(2n)=1+122n+132n+142n+ ..=(1)n+1(2π)2nB2n2(2n)!

列挙すると
1+122+132+142+ ..=π261+124+134+144+ ..=π4901+126+136+146+ ..=π49451+128+138+148+ ..=π494501+1210+1310+1410+..=π493555..

sinhxの無限積表示

オイラーは sinx の無限級数表示と無限積表示の比較によってこの問題を解きました。sinhxを使っても本質的に同じ導出ができます。
sinhx=exex2=x+x33!+x55!+x77!+ ..=x(1+x2π2)(1+x24π2)(1+x29π2) ..

xnan の因数は以下のように表されます。

xnan の因数

xnan の因数は
(x22axcos(2kπ/n)+a2)
ここで k02k/n1 を満たす整数である。ただし2k/n=0,1のときルートをとる。
このことから必ず(xa)を因数として持ち、nが偶数のとき(x+a)を因数として持つことがわかる。

またex=limn(1+x/n)n
と表せるので
(1+x/n)n(1x/n)n
という式の因数を考え、nの極限を考えます。因数は
(1+x/n)22(1+x/n)(1x/n)cosφk+(1x/n)2=2(1+x2/n2(1x2/n2)cosφk)

です。ここでφk=2kπ/nです。ここで
cosφk=1φk2/2+φk4/4!..
なので因数は
2(1+x2/n2(1x2/n2)(1φk2/2+φk4/4!..)=φk2(1+x2k2π2x2n22φk24!(1x2n2)+2φk46!(1x2n2)..)
nのとき、x2/n2φk=2kπ/nkにどんな大きな数を入れても0です。よって因数は
(1+x2k2π2)
になります。またφk=0,πのときの因数はそれぞれ
(1+x/n)(1x/n)=2x/n(1+x/n)+(1x/n)=2
であり、このうち2x/n は必ず因数となります。
2/nφk2のことは忘れて、これらの因数をかけあわせ、sinhx=x(1+x3/3!+x5/5!+..)と先頭の係数をあわせれば
sinhx=xk=1(1+x2k2π2)
という表現が得られます。

怪しい議論の釈明

上の議論では2/nφk2の効果を無視してしまいました。まずこれらの積は
2n(2πn)2(4πn)2(6πn)2..=1N(πN)2N(N!)2
となります。ここでN=n/2です。この式は何故かスターリングの公式を使うのに都合のよい形になっていて
1N(πN)2N(N!)22π(πe)n
となりnで無限大に発散します。なので先頭の係数が発散してだめなんじゃないかということですが、詳しく考えると次のようなことが分かります。
2(1+x2/n2(1x2/n2)cosφk) という因数はkが小さいときxの関数としての役割が大きいですが、kが大きいときほぼ定数項です。因数が (1+x2/k2π2)とした近似はkが小さいときの近似で、kが大きくなると因数は定数(1cosφk)/φk2に近くなり、φk2の発散を食い止める効果をします。φk2でくくると「定数項の重み」が2つに分離されてしまい、片方だけ考えるとおかしくなります。そこで定数項の重みが分離されない変形を考えます。
2(1+x2/n2(1x2/n2)cosφk)=2(1cosφk)(1+x2n2(1+cosφk1cosφk))=2(1cosφk)(1+x2n2cot2(φk/2))
ここでcotxの級数展開を求めます。
cotx=cosxsinx=1x2/2!+x4/4!x6/6!+ ..xx3/3!+x5/5!x7/7!+ ..

xcotx=1x2/2!+x4/4!x6/6!+ ..1x2/3!+x4/5!x6/7!+ ..=1+ax2+bx4+cx6+ ..
よって
1x2/2!+x4/4!x6/6!+ ..=(1+ax2+bx4+cx6+ ..)(1x2/3!+x4/5!x6/7!+ ..)
表をつくり
1abcd11abcd1/3!1/3!a/3!b/3!c/3!d/3!1/5!1/5!a/5!b/5!c/5!d/5!1/7!1/7!a/7!b/7!c/7!d/7!
斜めラインが同じ係数なので
1=11/2!=1/3!+a1/4!=1/5!a/3!+b1/6!=1/7!+a/5!b/3!+c
この漸化式より
a=1/3b=1/45c=2/945..
と求まります。よって
cotx=1xx3x3452x5945..
これを先程の式に代入すると
2(1cosφk)(1+x2n2cot2(φk/2))=2(1cosφk)(1x2n2(2φkφk6φk390φk5945 ..)2)=2(1cosφk)(1+x2n2(4φk223+φk260 ..))=2(1cosφk)(1+x2k2π2x2n2(23k2π215n2+2k4π4189n4 ..))
途中1/6,1/90,1/945,..がネタバレしてますが気にしないでください。
これが「定数項の重み」を分離しない変形をした因数です。nで因数はやはり
(1+x2k2π2)
となります。また今回の先頭の係数2(1cosφk)は積をとるとnとなり、はじめの因数の係数2/nをかけると2となり、(1+x/n)n(1x/n)nのはじめの係数と一致します。
このことは
k=1n1sin(kπ/n)=n/2n1
という等式から分かります。ただしこの証明は本質的に今の議論を逆にたどっているだけなので、「だから」というわけではないです。

今度は係数も発散しないので
sinhx=xk=1(1+x2k2π2)
であることに自信がつきました。

バーゼル問題

sinhxの級数展開と無限積表示を比べます。
sinhxx=1+x23!+x35!+x57!+ ..=(1+x2π2)(1+x24π2)(1+x29π2) ..
x2の係数の比較より
13!=1π2(1+14+19+ ..)
よって
1+122+132+ ..=π26
が分かります。

ニュートンの恒等式

この調子でx4,x6,..の係数を比較していきたいですが、x4の係数に対応するのは
1π2(1+124+134+ ..)
ではなく
1π2(1+12232+13242+ ..)
です。これは1,1/22,1/32,.. の2次の基本対称式です。同様にx6の係数は3次の基本対称式になります。k次の基本対称式とk次の冪乗和の関係はニュートンの恒等式により求まります。

ニュートンの恒等式

e0=1e1=a+b+c+d+ ..e2=ab+bc+cd+ ..e3=abc+bcd+cde+ ....
p1=a+b+c+d+ ..p2=a2+b2+c2+d2+ ..p3=a3+b3+c3+d3+ ....

とします。以下のような多項式f(x)を考ます。
f(x)=e0+e1x+e2x2+e3x3+ ..=(1+ax)(1+bx)(1+cx) ..
因数分解された右式を微分すると
f(x)=f(x)(a1+ax+b1+bx+c1+cx+ ..)
となります。カッコの中のそれぞれの項を級数展開すると
f(x)=f(x)(aa2x+a3x2a4x3+ ..+bb2x+b3x2b4x3+ ..+cc2x+c3x2c4x3+ ..+..))
となります。これを縦にたせば
f(x)=f(x)(p1p2x+p3x2p4x3+ ..)
となります。一方で級数表示のほうを微分すると
f(x)=e1+2e2x+3e3x2+ ..
この2つが等しいので
(e0+e1x+e2x2+e3x3+ ..)(p1p2x+p3x2p4x3+ ..)=e1+2e2x+3e3x2+ ..
表を作ります。
1e1e2e3e4p1p1e1p1e2p1e3p1e4p1p2p2e1p2e2p2e3p2e4p2p3p3e1p3e2p3e3p3e4p3p4p4e1p4e2p4e3p4e4p4
斜めが同じ係数なので
e1=p12e2=e1p1p23e3=e2p1e1p2+p34e4=e3p1e2p2+e1p3p4..
という漸化式が求まります。これがニュートンの恒等式です。これを
sinhxx=1+x2/3!+x5/5!+x6/7!+ ..=(1+x2π2)(1+x24π2)(1+x29π2)
に適用します。上式をx2の多項式と考えると
e1=1/3!,e2=1/5!,e3=1/7!, ..
p1=1π2(1+122+132+ ..)p2=1π4(1+124+134+ ..)p3=1π6(1+126+136+ ..)
となります。漸化式は
1/3!=p12/5!=e1/3!p23/7!=e2/5!p2/3!+p34/9!=e3/7!e2/5!+p3/3!p4..
これを解くと
p1=1/6p2=1/90p3=1/945..
と求まります。

ベルヌーイ数との関係

先程の漸化式はベルヌーイ数の漸化式と似ています。さらに似せるには
p1=a1/2!,p2=a2/4!,p3=a4/6!, ..
とし各段にそれぞれ3!,5!,7!, ..をかけます。すると
1=(32)a12=(52)a1(54)a23=(72)a1(74)a2+(76)a34=(92)a1(94)a2+(96)a3(98)a4..
さらに似せるためベルヌーイ数の漸化式を以下のように変形します。まずベルヌーイ数のB1以外の奇数項は0となるので、はじめから0をいれます。次にB1B0はまとめて定数項として左辺にもっていきます。するとベルヌーイ数の漸化式は
1/2=(32)B23/2=(52)B2+(54)B45/2=(72)B2+(74)B4+(76)B67/2=(92)B2+(94)B4+(96)B6+(98)B8..
となり非常に近い形になります。ただここからakBkの関係がぱっとわかるわけでありません。(分かるでしょうか?)
そこでBkの母関数について考えます。いま漸化式に対して行った操作と同じように、B2k+1=0B1=1/2を折り込みにした表現を考えます。
V=xex1=1x2+B2x22!+B4x44!+..
x/2を足します。
V+x/2=x(ex+1)2(ex1)=x2coth(x/2)=1+B2x22!+B4x44!+ ..
x/2=tとし
V+t=tcotht=1+B222t22!+B424t44!+ ..
これからtcothtの級数展開がこのベルヌーイ数で表されることがわかります。級数を求める漸化式はどのようになるでしょうか。
tcotht=1+t22!+t44!+t66!+ ..1+t23!+t45!+t67!+ ..=1+c1t2+c2t4+c3t6+ ..
表を作って斜めを見るやつをやります。
1c1c2c3c411c1c2c3c41/3!1/3!c1/3!c2/3!c3/3!c4/3!1/5!1/5!c1/5!c2/5!c3/5!c4/5!1/7!1/7!c1/7!c2/7!c3/7!c4/7!

1/2!=1/3!+c11/4!=1/5!+c1/3!+c21/6!=1/7!+c1/5!+c2/3!+c31/8!=1/9!+c1/7!+c2/5!+c3/3!+c4..
定数項を左にもっていく、c1=d1/2!,c2=d2/4!,c3=d3/6!, ..とおく、格段にそれぞれ3!,5!,7!, ..をかけると
2=(32)d14=(52)d1+(54)d26=(72)d1+(74)d2+(76)d38=(92)d1+(94)d2+(96)d3+(98)d4..
これはdk=2(1)k+1akとおけば、akの漸化式と同じであることがわかります。そしてpk=ak/(2k)!であり、pk=ζ(2k)/π2kなので
ζ(2n)=(1)n+1π2n2(2n)!dn
です。
tcotht=1+d1t22!+d2t44!+d3t66!+ ..=1+B222t22!+B424t44!+ ..
なのでdn=22nB2nよって
ζ(2n)=(1)n+1(2π)2nB2n2(2n)!

ニュートンの恒等式の導出を逆にたどる

f(x)=ζ(2)x2+ζ(4)x4+ζ(6)x6+ ..
とおきます。
f(x)=((1+1/22+1/32+1/42+ ..)x2+(1+1/24+1/34+1/44+ ..)x4+(1+1/26+1/36+1/46+ ..)x6+..)
これを縦に足すと
f(x)=((x2+x4+x6+ ..)+(x2/22+x4/24+x6/26+ ..)+(x2/32+x4/34+x6/36+ ..)+..)=x21x2+x2/221x2/22+x2/321x2/32+ .. =x2ddxlog((1x2)(1x2/22)(1x2/32) ..)=x2ddxlog(sin(πx)πx)=x2(πcotπx1/x)=1πxcotπx2
よって
xcotx=12ζ(2)(x/π)22ζ(4)(x/π)42ζ(6)(x/π)6 ..
また
f(x)=ζ(2)x2ζ(4)x4+ζ(6)x6 ..
として同様の議論をすれば
xcothx=1+2ζ(2)(x/π)22ζ(4)(x/π)4+2ζ(6)(x/π)6 ..)
そしてさきに述べたように
xex1+x2=x2coth(x2)
なのでζ(2n)はベルヌーイ数で表せるということです。

投稿日:20231125
更新日:20231127
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