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ベルヌーイ数と偶数ゼータ値とニュートンの恒等式

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ベルヌーイ数

ベルヌーイ数

ベルヌーイ数$B_k$ は以下のように定義される。
$$ \frac{x}{e^x-1} = \sum_{k=0} \frac{B_k}{k!} x^k \tag{1} \label{bel} $$

列挙すると
\begin{eqnarray} B_0 &=& 1\\ B_1 &=& -1/2 \\ B_2 &=& 1/6 \\ B_3 &=& 0 \\ B_4 &=& -1/30 \\ B_5 &=& 0\\ B_6 &=& 5/66 \\ B_7 &=& 0 \\ B_8 &=& -691/2730 \\ B_9 &=& 0 \\ B_{10} &=& 7/6 \\ .. \end{eqnarray}

ベルヌーイ数の漸化式

\eqref{bel}より
\begin{eqnarray} x &=& (e^x -1) \left(\sum_{k=0} B_k x^k /k!\right) \\ &=& (x + x^2/2! + x^3/3! + x^4/4! + ~..) (B_0 + B_1x + B_2x^2/2! + B_3x^3/3! + ~..) \end{eqnarray}

係数比較から漸化式が求まります。以下のような表の斜めのラインが同じ次数です。

\begin{array}{c|cccccc} & B_0 & B_1 & B_2/2! & B_3/3! & B_4/4! \\\hline 1 & B_0 & B_1 & B_2/2! & B_3/3! & B_4/4! & \\ 1/2! & B_0/2! & B_1/2! & B_2/(2!2!) & B_3/(2!3!) & B_4/(2!4!) \\ 1/3! & B_0/3! & B_1/3! & B_2/(3!2!) & B_3/(3!3!) & B_4/(3!4!) \\ 1/4! & B_0/4! & B_1/4! & B_2/(4!2!) & B_3/(4!3!) & B_4/(4!4!) \\ 1/5! & B_0/5! & B_1/5! & B_2/(5!2!) & B_3/(5!3!) & B_4/(5!4!) \\ \end{array}
これから以下の漸化式が求まります。
\begin{eqnarray} 1 &=& B_0 \\ 0 &=& B_0/2! &+& B_1 \\ 0 &=& B_0/3! &+& B_1/2! &+& B_2/2! \\ 0 &=& B_0/4! &+& B_1/3! &+& B_2/(2!2!) &+& B_3/3! \\ 0 &=& B_0/5! &+& B_1/(4!) &+& B_2/(3!2!) &+& B_3/(2!3!) &+& B_4/4! \\ &\dots& \end{eqnarray}
n段目にn!をかけると
\begin{eqnarray} 1 &=& B_0 \\ 0 &=& B_0 &+& \dbinom{2}{1} B_1 \\ 0 &=& B_0 &+& \dbinom{3}{1} B_1 &+& \dbinom{3}{2} B_2 \\ 0 &=& B_0 &+& \dbinom{4}{1} B_1 &+& \dbinom{4}{2} B_2 &+& \dbinom{4}{3} B_3\\ 0 &=& B_0 &+& \dbinom{5}{1} B_1 &+& \dbinom{5}{2} B_2 &+& \dbinom{5}{3} B_3 &+& \dbinom{5}{4} B_4 \\ \end{eqnarray}
というシンプルな漸化式が現れます。$B_k$の添字を一つ進める演算子$T$
$$T B_k =B_{k+1} $$ を使うと
\begin{eqnarray} B_0 &=& 1 \\ ((T+1)^n - T^n )B_0 &=& 0 ~~ (n>1) \end{eqnarray}
と書けます。

冪乗和の公式

ベルヌーイ数はもともとベルヌーイと関孝和が冪乗和の公式を探す過程で発見した数列です。冪乗和の公式は
$$\sum_{k=0}^{n-1} ((k+1)^m - k^m) =n^m $$
という関係式から導くことができ、$$ S_m = \sum_{k=0}^{n-1} k^m $$ と置くと$S_m$ はベルヌーイ数と同様の関係式を満たすことが分かります。ただしこの場合は多項式となります。
\begin{eqnarray} n &=& S_0 \\ n^2 &=& S_0 &+& \dbinom{2}{1} S_1 \\ n^3 &=& S_0 &+& \dbinom{3}{1} S_1 &+& \dbinom{3}{2} S_2 \\ n^4 &=& S_0 &+& \dbinom{4}{1} S_1 &+& \dbinom{4}{2} S_2 &+& \dbinom{4}{3} S_3\\ n^5 &=& S_0 &+& \dbinom{5}{1} S_1 &+& \dbinom{5}{2} S_2 &+& \dbinom{5}{3} S_3 &+& \dbinom{5}{4} S_4 \\ \end{eqnarray}
以下のような行列$B$を使うと
$$ B = \left( \begin{array} & 1 & & &\\ 1 & 2 & &\\ 1 & 3 & 3 & & &..\\ 1 & 4 & 6 & 4\\ 1 & 5 & 10 & 10 & 5 \\ .. \end{array} \right) $$

$$ B \left( \begin{array}{c} B_0 \\ B_1 \\ B_2 \\ \vdots \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} 1 \\ 0 \\ 0 \\ \vdots \end{array} \right) $$

$$ B \left( \begin{array}{c} S_0 \\ S_1 \\ S_2 \\ \vdots \end{array} \right) = \left( \begin{array}{c} n \\ n^2 \\ n^3 \\ \vdots \end{array} \right) $$
と表せます。ベルヌーイ数はこの行列の逆行列$B^{-1}$の最初の列の数字です。$B^{-1}$の各成分は冪乗和の公式の各係数となります。
$$ B^{-1} = \left( \begin{array} & 1 & & &\\ -1/2 & 1/2 & &\\ 1/6 & -1/2 & 1/3 & & &..\\ 0 & 1/4 & -1/2 & 1/4\\ -1/30 & 0& 1/3 & 1/2 & 1/5 \\ .. \end{array} \right) $$
冪乗和の公式に関しては ベルヌーイの公式 もご覧ください。

ゼータ関数の正の偶数の値

ベルヌーイ数は自然数の偶数乗の逆数和を表す式にも現れます。

偶数ゼータ値

$$ \zeta(2n) = 1 + \frac{1}{2^{2n}} + \frac{1}{3^{2n}} + \frac{1}{4^{2n}} + ~.. = \frac{(-1)^{n+1} (2 \pi)^{2n}B_{2n}}{2 (2n)!} $$

列挙すると
\begin{eqnarray} 1 + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + \frac{1}{4^2} + ~.. &=& \frac{\pi^2}{6} \\ 1 + \frac{1}{2^4} + \frac{1}{3^4} + \frac{1}{4^4} + ~.. &=& \frac{\pi^4}{90} \\ 1 + \frac{1}{2^6} + \frac{1}{3^6} + \frac{1}{4^6} + ~.. &=& \frac{\pi^4}{945} \\ 1 + \frac{1}{2^8} + \frac{1}{3^8} + \frac{1}{4^8} + ~.. &=& \frac{\pi^4}{9450} \\ 1 + \frac{1}{2^{10}} + \frac{1}{3^{10}} + \frac{1}{4^{10}} + .. &=& \frac{\pi^4}{93555}\\ .. \end{eqnarray}

$\sinh x $の無限積表示

オイラーは $\sin x$ の無限級数表示と無限積表示の比較によってこの問題を解きました。$\sinh x $を使っても本質的に同じ導出ができます。
\begin{eqnarray} \sinh x &=& \frac{e^x - e^{-x}}{2} = x + \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} + \frac{x^7}{7!} + ~..\\ &=& x \left(1+\frac{x^2}{\pi^2}\right) \left(1+\frac{x^2}{4\pi^2}\right) \left(1+\frac{x^2}{9\pi^2}\right) ~ .. \end{eqnarray}

$x^n -a^n $ の因数は以下のように表されます。

$x^n -a^n $ の因数

$x^n - a^n$ の因数は
\begin{eqnarray} \left(x^2-2 a x \cos (2 k\pi/n) + a^2\right) \end{eqnarray}
ここで $k$$0 \le 2k/n \le 1 $ を満たす整数である。ただし$2k/n=0,1$のときルートをとる。
このことから必ず$(x-a)$を因数として持ち、$n$が偶数のとき$(x+a)$を因数として持つことがわかる。

また$$e^x = \lim_{n\to \infty} (1+x/n)^n\\ $$
と表せるので
$(1+x/n)^n - (1-x/n)^n$
という式の因数を考え、$n\to\infty$の極限を考えます。因数は
\begin{eqnarray} && (1+x/n)^2 - 2(1+x/n)(1-x/n) \cos \varphi_k + (1-x/n)^2 \\ &=& 2 (1+x^2/n^2 - (1-x^2/n^2)\cos \varphi_k) \end{eqnarray}

です。ここで$\varphi_k=2k\pi/n$です。ここで
$$ \cos \varphi_k = 1 - \varphi_k^2/2 + \varphi_k^4/4! - .. $$
なので因数は
\begin{eqnarray} &&2(1+x^2/n^2 - (1-x^2/n^2)(1-\varphi_k^2/2 + \varphi_k^4/4! - ..)\\ &=&\varphi_k^2 \left(1 + \frac{x^2}{k^2 \pi^2} - \frac{x^2}{n^2} - \frac{2 \varphi_k^2}{4!}\left(1-\frac{x^2}{n^2}\right) +\frac{2 \varphi_k^4}{6!}\left(1-\frac{x^2}{n^2}\right) - ..\right) \end{eqnarray}
$n\to\infty$のとき、$x^2/n^2 $$\varphi_k=2 k \pi /n$$k$にどんな大きな数を入れても$0$です。よって因数は
$$ \left(1+\frac{x^2}{k^2 \pi^2}\right) $$
になります。また$\varphi_k=0,\pi$のときの因数はそれぞれ
\begin{eqnarray} (1+x/n) - (1-x/n) &=& 2x/n \\ (1+x/n) + (1-x/n) &=& 2 \end{eqnarray}
であり、このうち$2x/n$ は必ず因数となります。
$2/n$$\varphi_k^2$のことは忘れて、これらの因数をかけあわせ、$\sinh x = x(1+x^3/3!+x^5/5!+..)$と先頭の係数をあわせれば
$$ \sinh x = x \prod_{k=1}^{\infty} \left(1+\frac{x^2}{k^2 \pi^2}\right) $$
という表現が得られます。

怪しい議論の釈明

上の議論では$2/n$$\varphi_k^2$の効果を無視してしまいました。まずこれらの積は
$$ \frac{2}{n}\cdot \left(\frac{2\pi}{n}\right)^2 \cdot \left(\frac{4\pi}{n}\right)^2 \cdot \left(\frac{6\pi}{n}\right)^2 ..= \frac{1}{N}\left(\frac{ \pi}{N}\right)^{2N}\left(N!\right)^2 $$
となります。ここで$N=n/2$です。この式は何故かスターリングの公式を使うのに都合のよい形になっていて
$$ \frac{1}{N}\left(\frac{ \pi}{N}\right)^{2N}\left(N!\right)^2 \sim 2\pi \left(\frac{\pi}{e}\right)^n $$
となり$n\to\infty$で無限大に発散します。なので先頭の係数が発散してだめなんじゃないかということですが、詳しく考えると次のようなことが分かります。
$2(1+x^2/n^2 - (1-x^2/n^2)\cos \varphi_k)$ という因数は$k$が小さいとき$x$の関数としての役割が大きいですが、$k$が大きいときほぼ定数項です。因数が $(1+x^2/k^2\pi^2)$とした近似は$k$が小さいときの近似で、$k$が大きくなると因数は定数$(1-\cos \varphi_k)/\varphi_k^2$に近くなり、$\varphi_k^2$の発散を食い止める効果をします。$\varphi_k^2$でくくると「定数項の重み」が2つに分離されてしまい、片方だけ考えるとおかしくなります。そこで定数項の重みが分離されない変形を考えます。
\begin{eqnarray} &&2(1+x^2/n^2 - (1-x^2/n^2)\cos \varphi_k)\\ &=&2(1-\cos \varphi_k)\left(1 + \frac{x^2}{n^2}\left(\frac{1+\cos \varphi_k}{1-\cos \varphi_k}\right)\right)\\ &=&2(1-\cos \varphi_k)\left(1 + \frac{x^2}{n^2} \cot^2 (\varphi_k/2)\right)\\ \end{eqnarray}
ここで$\cot x$の級数展開を求めます。
$$ \cot x = \frac{\cos x}{\sin x} = \frac{1 - x^2/2! + x^4/4! -x^6/6! + ~..}{x - x^3/3! + x^5/5! - x^7/7! + ~..} $$

$$ x \cot x = \frac{1 - x^2/2! + x^4/4! -x^6/6! + ~..}{1 - x^2/3! + x^4/5! - x^6/7! + ~..} = 1 + a x^2 + b x^4 + c x^6 + ~.. $$
よって
$$ 1 - x^2/2! + x^4/4! -x^6/6! + ~.. = (1 + a x^2 + b x^4 + c x^6 + ~..)(1 - x^2/3! + x^4/5! - x^6/7! + ~..) $$
表をつくり
\begin{array}{c|cccccc} & 1 & a & b & c & d \\\hline 1 & 1 & a & b & c & d & \\ -1/3! & -1/3! & -a/3! & -b/3! & -c/3! & -d/3! \\ 1/5! & 1/5! & a/5! & b/5! & c/5! & d/5! \\ -1/7! & -1/7! & -a/7! & -b/7! & -c/7! & -d/7! \\ \end{array}
斜めラインが同じ係数なので
\begin{eqnarray} 1 &=& 1 \\ -1/2! &=& -1/3! &+& a \\ 1/4! &=& 1/5! &-& a/3! &+& b \\ -1/6! &=& -1/7! &+& a/5! &-& b/3! &+& c \\ &\dots& \end{eqnarray}
この漸化式より
\begin{eqnarray} a &=& -1/3\\ b &=& -1/45 \\ c &=& -2/945 \\ .. \end{eqnarray}
と求まります。よって
$$ \cot x = \frac{1}{x} - \frac{x}{3} - \frac{x^3}{45} - \frac{2x^5}{945} -.. $$
これを先程の式に代入すると
\begin{eqnarray} &&2(1-\cos \varphi_k)\left(1 + \frac{x^2}{n^2} \cot^2 (\varphi_k/2)\right)\\ &=&2(1-\cos \varphi_k) \left(1 - \frac{x^2}{n^2}\left(\frac{2}{\varphi_k} -\frac{\varphi_k}{6}-\frac{\varphi_k^3}{90}-\frac{\varphi_k^5}{945} -~..\right)^2\right)\\ &=&2(1-\cos \varphi_k)\left(1 + \frac{x^2}{n^2}\left(\frac{4}{\varphi_k^2} −\frac{2}{3}+\frac{\varphi_k^2}{60}-~..\right)\right)\\ &=&2(1-\cos \varphi_k)\left(1 + \frac{x^2}{k^2 \pi^2} - \frac{x^2}{n^2}\left(\frac{2}{3}-\frac{k^2 \pi^2}{15n^2}+ \frac{2k^4 \pi^4}{189n^4} -~..\right)\right) \end{eqnarray}
途中$1/6,1/90,1/945,..$がネタバレしてますが気にしないでください。
これが「定数項の重み」を分離しない変形をした因数です。$n\to\infty$で因数はやはり
$$ \left(1+\frac{x^2}{k^2 \pi^2}\right) $$
となります。また今回の先頭の係数$2(1-\cos \varphi_k)$は積をとると$n$となり、はじめの因数の係数$2/n$をかけると$2$となり、$(1+x/n)^n - (1-x/n)^n$のはじめの係数と一致します。
このことは
$$ \prod_{k=1}^{n-1}\sin (k\pi/n) = n/2^{n-1} $$
という等式から分かります。ただしこの証明は本質的に今の議論を逆にたどっているだけなので、「だから」というわけではないです。

今度は係数も発散しないので
$$ \sinh x = x \prod_{k=1}^\infty \left(1+\frac{x^2}{k^2\pi^2}\right)$$
であることに自信がつきました。

バーゼル問題

$\sinh x$の級数展開と無限積表示を比べます。
\begin{eqnarray} \frac{\sinh x}{x} &=& 1 + \frac{x^2}{3!} + \frac{x^3}{5!} + \frac{x^5}{7!} + ~..\\ &=& \left(1+\frac{x^2}{\pi^2}\right) \left(1+\frac{x^2}{4\pi^2}\right) \left(1+\frac{x^2}{9\pi^2}\right) ~ .. \end{eqnarray}
$x^2$の係数の比較より
$$ \frac{1}{3!} = \frac{1}{\pi^2} \left(1 + \frac{1}{4} + \frac{1}{9} + ~.. \right) $$
よって
$$ 1 + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + ~.. = \frac{\pi^2}{6} $$
が分かります。

ニュートンの恒等式

この調子で$x^4$,$x^6$,..の係数を比較していきたいですが、$x^4$の係数に対応するのは
$$ \frac{1}{\pi^2}\left(1 + \frac{1}{2^4} + \frac{1}{3^4} + ~.. \right) $$
ではなく
$$ \frac{1}{\pi^2}\left(1 + \frac{1}{2^2\cdot 3^2} + \frac{1}{3^2 \cdot 4^2} + ~.. \right) $$
です。これは$ 1,1/2^2,1/3^2,.. $ の2次の基本対称式です。同様に$x^6$の係数は3次の基本対称式になります。k次の基本対称式とk次の冪乗和の関係はニュートンの恒等式により求まります。

ニュートンの恒等式

\begin{eqnarray} e_0 &=& 1 \\ e_1 &=& a + b + c + d + ~.. \\ e_2 &=& ab + bc + cd + ~ .. \\ e_3 &=& abc + bcd + cde + ~ .. \\ .. \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} p_1 &=& a + b + c + d + ~.. \\ p_2 &=& a^2 + b^2 + c^2 + d^2 + ~.. \\ p_3 &=& a^3 + b^3 + c^3 + d^3 + ~ .. \\ .. \end{eqnarray}

とします。以下のような多項式$f(x)$を考ます。
$$ f(x) = e_0 + e_1 x + e_2 x^2 + e_3 x^3 + ~.. = (1+ax)(1+bx)(1+cx)~.. $$
因数分解された右式を微分すると
$$ f'(x) = f(x) \left(\frac{a}{1+ax} + \frac{b}{1+bx} + \frac{c}{1+c x} + ~..\right) $$
となります。カッコの中のそれぞれの項を級数展開すると
$$ f'(x) = f(x) \left( \begin{array} &&a - a^2 x + a^3x^2 - a^4x^3 + ~..\\ +&b -b^2x + b^3 x^2 - b^4 x^3 + ~ .. \\ +&c -c^2x + c^3 x^2 - c^4 x^3 + ~ .. \\ +&.. \end{array} \right) ) $$
となります。これを縦にたせば
$$ f'(x) = f(x) (p_1 - p_2 x + p_3 x^2 - p_4 x^3 + ~..) $$
となります。一方で級数表示のほうを微分すると
$$ f'(x) = e_1 + 2 e_2 x + 3 e_3 x^2 + ~.. $$
この2つが等しいので
\begin{eqnarray} &&(e_0 + e_1 x + e_2 x^2 + e_3 x^3 + ~..)(p_1 - p_2 x + p_3 x^2 - p_4 x^3 + ~..) \\ &=&e_1 + 2 e_2 x + 3 e_3 x^2 + ~.. \end{eqnarray}
表を作ります。
\begin{array}{c|cccccc} & 1 & e_1 & e_2 & e_3 & e_4 \\\hline p_1 & p_1 & e_1p_1 & e_2p_1 & e_3p_1 & e_4 p_1 & \\ -p_2 & -p_2 & -e_1p_2 & -e_2p_2 & -e_3p_2 & -e_4p_2 \\ p_3 & p_3 & e_1p_3 & e_2p_3 & e_3p_3 & e_4p_3 \\ -p_4 & -p_4 & -e_1 p_4 & -e_2 p_4 & -e_3 p_4 & -e_4 p_4 \\ \end{array}
斜めが同じ係数なので
\begin{eqnarray} e_1 &=& p_1 \\ 2 e_2 &=& e_1 p_1 - p_2 \\ 3 e_3 &=& e_2 p_1 - e_1 p_2 + p_3 \\ 4 e_4 &=& e_3 p_1 - e_2 p_2 + e_1 p_3 -p_4 \\ ..&& \end{eqnarray}
という漸化式が求まります。これがニュートンの恒等式です。これを
$$ \frac{\sinh x}{x} = 1 + x^2/3! + x^5/5! + x^6/7! + ~.. = \left(1+\frac{x^2}{\pi^2}\right) \left(1+\frac{x^2}{4\pi^2}\right) \left(1+\frac{x^2}{9\pi^2}\right) $$
に適用します。上式を$x^2$の多項式と考えると
\begin{eqnarray} e_1 = 1/3!,e_2=1/5!,e_3=1/7!,~.. \end{eqnarray}
\begin{eqnarray} p_1 &=& \frac{1}{\pi^2}\left(1 + \frac{1}{2^2} + \frac{1}{3^2} + ~..\right) \\ p_2 &=& \frac{1}{\pi^4}\left(1 + \frac{1}{2^4} + \frac{1}{3^4} + ~..\right) \\ p_3 &=& \frac{1}{\pi^6}\left(1 + \frac{1}{2^6} + \frac{1}{3^6} + ~..\right) \end{eqnarray}
となります。漸化式は
\begin{eqnarray} 1/3! &=& p_1 \\ 2/5! &=& e_1/3! - p_2 \\ 3/7! &=& e_2/5! - p_2/3! + p_3 \\ 4/9! &=& e_3/7! - e_2/5! + p_3/3! -p_4 \\ ..&& \end{eqnarray}
これを解くと
\begin{eqnarray} p_1 &=& 1/6 \\ p_2 &=& 1/90 \\ p_3 &=& 1/945\\ &&.. \end{eqnarray}
と求まります。

ベルヌーイ数との関係

先程の漸化式はベルヌーイ数の漸化式と似ています。さらに似せるには
$$ p_1=a_1/2!,p_2=a_2/4!,p_3=a_4/6!,~.. $$
とし各段にそれぞれ$3!,5!,7!,~..$をかけます。すると
\begin{eqnarray} 1 &=& \dbinom{3}{2} a_1 \\ 2 &=& \dbinom{5}{2} a_1 - \dbinom{5}{4} a_2 \\ 3 &=& \dbinom{7}{2} a_1 - \dbinom{7}{4} a_2 + \dbinom{7}{6} a_3 \\ 4 &=& \dbinom{9}{2} a_1 - \dbinom{9}{4} a_2 + \dbinom{9}{6} a_3 - \dbinom{9}{8} a_4\\ ..&& \end{eqnarray}
さらに似せるためベルヌーイ数の漸化式を以下のように変形します。まずベルヌーイ数の$B_1$以外の奇数項は0となるので、はじめから0をいれます。次に$B_1$$B_0$はまとめて定数項として左辺にもっていきます。するとベルヌーイ数の漸化式は
\begin{eqnarray} 1/2 &=& \dbinom{3}{2} B_2 \\ 3/2 &=& \dbinom{5}{2} B_2 + \dbinom{5}{4} B_4 \\ 5/2 &=& \dbinom{7}{2} B_2 + \dbinom{7}{4} B_4 + \dbinom{7}{6} B_6 \\ 7/2 &=& \dbinom{9}{2} B_2 + \dbinom{9}{4} B_4 + \dbinom{9}{6} B_6 + \dbinom{9}{8} B_8\\ ..&& \end{eqnarray}
となり非常に近い形になります。ただここから$a_k$$B_k$の関係がぱっとわかるわけでありません。(分かるでしょうか?)
そこで$B_k$の母関数について考えます。いま漸化式に対して行った操作と同じように、$B_{2k+1}=0$$B_1=-1/2$を折り込みにした表現を考えます。
$$ V=\frac{x}{e^x-1} = 1 -\frac{x}{2} + \frac{B_2 x^2}{2!} + \frac{B_4 x^4}{4!} + .. $$
$x/2$を足します。
\begin{eqnarray} V+x/2 &=& \frac{x(e^x+1)}{2(e^x-1)} = \frac{x}{2} \coth(x/2)\\ &=& 1 + \frac{B_2 x^2}{2!} + \frac{B_4 x^4}{4!} + ~.. \end{eqnarray}
$x/2=t$とし
$$ V+t =t \coth t = 1 + \frac{B_2 2^2 t^2}{2!} + \frac{B_4 2^4 t^4}{4!} + ~.. $$
これから$t \coth t$の級数展開がこのベルヌーイ数で表されることがわかります。級数を求める漸化式はどのようになるでしょうか。
$$ t\coth t = \frac{1 + \frac{t^2}{2!} + \frac{t^4}{4!} + \frac{t^6}{6!} + ~..}{1 + \frac{t^2}{3!} + \frac{t^4}{5!} + \frac{t^6}{7!} + ~..} = 1 + c_1 t^2 + c_2 t^4 + c_3 t^6 + ~.. $$
表を作って斜めを見るやつをやります。
\begin{array}{c|cccccc} & 1 & c_1 & c_2 & c_3 & c_4 \\\hline 1 & 1 & c_1 & c_2 & c_3 & c_4 & \\ 1/3! & 1/3! & c_1/3! & c_2/3! & c_3/3! & c_4/3! & \\ 1/5! & 1/5! & c_1/5! & c_2/5! & c_3/5! & c_4/5! \\ 1/7! & 1/7! & c_1/7! & c_2/7! & c_3/7! & c_4/7! \\ \end{array}

\begin{eqnarray} 1/2! &=& 1/3! + c_1 \\ 1/4! &=& 1/5! + c_1/3! + c_2 \\ 1/6! &=& 1/7! + c_1/5! + c_2/3! + c_3 \\ 1/8! &=& 1/9! + c_1/7! + c_2/5! + c_3/3! + c_4\\ ..&& \end{eqnarray}
定数項を左にもっていく、$c_1=d_1/2!,c_2=d_2/4!,c_3=d_3/6!,~..$とおく、格段にそれぞれ$3!,5!,7!,~..$をかけると
\begin{eqnarray} 2 &=& \dbinom{3}{2} d_1 \\ 4 &=& \dbinom{5}{2} d_1 + \dbinom{5}{4} d_2 \\ 6 &=& \dbinom{7}{2} d_1 + \dbinom{7}{4} d_2 + \dbinom{7}{6} d_3 \\ 8 &=& \dbinom{9}{2} d_1 + \dbinom{9}{4} d_2 + \dbinom{9}{6} d_3 + \dbinom{9}{8} d_4\\ ..&& \end{eqnarray}
これは$d_k=2(-1)^{k+1} a_k$とおけば、$a_k$の漸化式と同じであることがわかります。そして$p_k=a_k/(2k)!$であり、$p_k=\zeta(2k)/\pi^{2k}$なので
$$ \zeta(2n) = \frac{(-1)^{n+1}\pi^{2n}}{2(2n)!}d_n $$
です。
\begin{eqnarray} t \coth t &=& 1 + \frac{d_1t^2}{2!} + \frac{d_2t^4}{4!} + \frac{d_3t^6}{6!} +~.. \\ &=& 1 + \frac{B_2 2^2 t^2}{2!} + \frac{B_4 2^4 t^4}{4!} + ~.. \end{eqnarray}
なので$d_n = 2^{2n}B_{2n}$よって
$$ \zeta(2n) = \frac{(-1)^{n+1}(2\pi)^{2n}B_{2n}}{2(2n)!} $$

ニュートンの恒等式の導出を逆にたどる

$$ f(x)=\zeta(2) x^2 + \zeta(4)x^4 + \zeta(6)x^6 + ~.. $$
とおきます。
\begin{eqnarray} f(x)=\left( \begin{array} &&\left(1 + 1/2^2 + 1/3^2 + 1/4^2 + ~..\right)x^2\\ +&\left(1 + 1/2^4 + 1/3^4 + 1/4^4 + ~..\right)x^4\\ +&\left(1 + 1/2^6 + 1/3^6 + 1/4^6 + ~..\right)x^6\\ +&.. \end{array} \right) \end{eqnarray}
これを縦に足すと
\begin{eqnarray} f(x)&=&\left( \begin{array} &&\left(x^2 + x^4 + x^6 + ~..\right)\\ +&\left(x^2/2^2 + x^4/2^4 + x^6/2^6 + ~..\right)\\ +&\left(x^2/3^2 + x^4/3^4 + x^6/3^6 + ~.. \right)\\ +&.. \end{array} \right) \\ &=&\frac{x^2}{1-x^2} + \frac{x^2/2^2}{1-x^2/2^2} + \frac{x^2/3^2}{1-x^2/3^2} + ~.. \\\ &=& -\frac{x}{2} \frac{d}{dx} \log((1-x^2)(1-x^2/2^2)(1-x^2/3^2)~..)\\ &=& -\frac{x}{2} \frac{d}{dx} \log \left(\frac{\sin(\pi x)}{\pi x}\right)\\ &=& -\frac{x}{2}(\pi \cot \pi x - 1/x) \\ &=& \frac{1-\pi x \cot \pi x}{2} \end{eqnarray}
よって
$$ x \cot x = 1 -2 \zeta(2) (x/\pi)^2 -2 \zeta(4) (x/\pi)^4 -2 \zeta(6) (x/\pi)^6 - ~.. $$
また
$$ f(x)=\zeta(2) x^2 - \zeta(4)x^4 + \zeta(6)x^6 - ~.. $$
として同様の議論をすれば
$$ x \coth x = 1 + 2 \zeta(2) (x/\pi)^2 - 2 \zeta(4) (x/\pi)^4 + 2\zeta(6) (x/\pi)^6 - ~..) $$
そしてさきに述べたように
$$ \frac{x}{e^x-1} + \frac{x}{2} = \frac{x}{2} \coth \left(\frac{x}{2}\right) $$
なので$\zeta(2n)$はベルヌーイ数で表せるということです。

投稿日:20231125
更新日:20231127

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