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ベルヌーイの公式

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冪乗和の計算法

$$ \sum_{k=1}^{n} k^m = 1^m + 2^m + 3^m + ... + n^m $$

を求める一般的な方法を考えます。これから$ S_m = \sum_{k=1}^{n} k^m $ と書きます。

m=0

明らかに
$$ S_0 = \sum_{k=1}^{n} 1 = \underbrace{1 + 1 + 1 + ... + 1}_n = n $$

m=1

$$ S_1 = \sum_{k=1}^{n} k = 1 + 2 + 3 + ... + n $$

以下の式を考えます。
$$(k+1)^2 - k^2 = 2k + 1$$

これの和をとると

$$ \sum_{k=1}^{n} [(k+1)^2 - k^2] = (n+1)^2 - 1 = n^2 + 2n $$

なので

$$ \sum_{k=1}^{n} (2k + 1) = 2\sum_{k=1}^{n} k + \sum_{k=1}^{n} 1 = 2S_1 + S_0= n^2 + 2 n $$

よって

$$ \begin{eqnarray} S_1 &=& \frac{1}{2} \left(n^2 + 2n - S_0\right) \\ &=& \frac{n^2}{2} + \frac{n}{2} \end{eqnarray} $$

m=2

$$(k+1)^3 - k^3 = 3k^2 + 3 k + 1$$

$$ \sum_{k=1}^{n} [(k+1)^3 - k^3] = (n+1)^3 - 1 = n^3 + 3n^2 + 3n $$

$$ 3 S_2 + 3 S_1 + S_0 = n^3 + 3 n^2 + 3 n $$

\begin{eqnarray} S_2 &=& \frac{1}{3}\left(n^3 + 3n^2 + 3n - 3S_1 - S_0\right) \\ &=& \frac{1}{3}\left(n^3 + 3n^2 + 3n - 3\left(\frac{n^2}{2}+\frac{n}{2}\right) - n\right) \\ &=& \frac{1}{3}\left(n^3 + \frac{3n^2}{2} + \frac{n}{2} \right) \\ &=& \frac{n^3}{3} + \frac{n^2}{2} + \frac{n}{6} \end{eqnarray}

m=3

$$ 4 S_3 + 6 S_2 + 4 S_1 + S_0 = n^4 + 4 n^3 + 6 n^2 + 4 n $$
$$ S_3 = \frac{n^4}{4} + \frac{n^3}{2} + \frac{n^2}{4} $$

以下同様に計算できます。この計算式はパスカルの三角形をみて作ることができます。
\begin{array}{rccccccccc} & & & & & 1\\ & & & & 1 & & 1\\ & & & 1 & & 2 & & 1\\ & & 1 & & 3 & & 3 & & 1\\ & 1 & & 4 & & 6 & & 4 & & 1\\ \end{array}

このm番目の行から先頭を抜いた数列に$S_m,S_{m-1},S_{m-2},..$をかけて足したものがのm番目の行から最後を抜いた数列に$n^m,n^{m-1},n^{m-2},..$をかけて足したものを等しいという式です。式で書くと
$$ \sum_{k=2}^m \dbinom{m}{k} S_k = \sum_{k=1}^{m-1} \dbinom{m}{k} n^k $$
となります。

この計算で以下同様に

\begin{eqnarray} S_4 &=& \frac{n^5}{5} + \frac{n^4}{2} + \frac{n^3}{3} - \frac{n}{30} \\ S_5 &=& \frac{n^6}{6} + \frac{n^5}{2} + \frac{5n^4}{12} - \frac{n^2}{12} \\ S_6 &=& \frac{n^7}{7} + \frac{n^6}{2} + \frac{n^5}{2} - \frac{n^3}{6} + \frac{n}{42} \\ S_7 &=& \frac{n^8}{8} + \frac{n^7}{2} + \frac{7n^6}{12} - \frac{7n^4}{24} + \frac{n^2}{12} \\ S_8 &=& \frac{n^9}{9} + \frac{n^8}{2} + \frac{2n^7}{3} - \frac{7n^5}{15} + \frac{2n^3}{9} - \frac{n}{30} \\ S_9 &=& \frac{n^{10}}{10} + \frac{n^9}{2} + \frac{3n^8}{4} - \frac{7n^6}{10} + \frac{n^4}{2} - \frac{3n^2}{20} \\ S_{10} &=& \frac{n^{11}}{11} + \frac{n^{10}}{2} + \frac{5n^9}{6} - n^7 + n^5 - \frac{n^3}{2} - \frac{5n}{66} \\ \end{eqnarray}

実はこの係数には規則性があり、$S_{m+1}$の係数は最後を除いて$S_{m}$の係数から求められます。それは$S_{m}$の係数に左から順に$\frac{m+1}{m+2},1,\frac{m+1}{m},\frac{m+1}{m-2},\frac{m+1}{m-4},\frac{m+1}{m-6},...$とかけていくことで、$S_{m+1}$の係数が求まります。

最後の係数はすべての係数の和が1となるように調整することで計算できます。

ベルヌーイの公式

いまで求めた冪乗和の式の法則性はベルヌーイの公式により表されます。

ベルヌーイの公式

$$ \sum_{k=0}^{n-1}~k^m = \frac{1}{m+1}\sum_{k=0}^m\dbinom{m+1}{k} B_k ~ n^{m-k+1} $$

ただし$B_k$$ x/(e^x - 1)$ の展開係数で

$$ \frac{x}{e^x-1} = \sum_{k=0}^\infty \frac{B_k}{k!}x^k $$

が成り立つ。

些細な部分ですが、k の範囲が 0 から n - 1 になっています。なので 0 から n の場合、n^m が足されます。これは、$B_1$$-1/2$ から $1/2$ にするのと同等で、慣習によっては $B_1 = 1/2$ として n までの和の公式を表すこともあります。

オイラーの和公式

ベルヌーイの公式は、和を積分によって求める オイラーの和公式 の特別な場合と言えます。オイラーの和公式は和を積分と微分で求める方法です。差分と微分を関係づける式はテイラー展開から以下のように分かります。

$$ f(k+1) - f(k) = f'(k) + f''(k)/2 + f'''(k)/6 + ... $$

この式の $k=0$から$k=n-1$までの総和をとります。

$$ \sum_{k=0}^{n-1}{(f(k+1) - f(k))} = f(n) - f(0) = \sum_{k=0}^{n-1}f'(k) + \sum_{k=0}^{n-1}f''(k)/2 + \sum_{k=0}^{n-1}f'''(k)/6 + ... $$

これから以下のような省略記法を使います。
$\sum_{k=0}^{n-1}f(k),\sum_{k=0}^{n-1}f'(k),\sum_{k=0}^{n-1}f''(k)$ を省略して $Sf,Sf',Sf''$ のように書きます。また$f(n)-f(0),f'(n)-f'(0),..$$f,f'$と書きます。また特別に$$ \int_0^n f(k)dk = \int f$$ と書きます。

この記法でまず以下が成り立ちます。
$$ f = Sf' + Sf''/2 + Sf'''/6 + .. $$

この式は、$f$$f'$ と置き換えることで全体が微分された形になります。関数は任意の形をとれるので、この式全体を微分、または積分しても同じ式が成り立ちます。よって
\begin{eqnarray} \int f &=& Sf &+& Sf'/2 &+& Sf''/6 &+& Sf^{(3)}/24 &+& .. \\ f &=& Sf' &+& Sf''/2 &+& Sf^{(3)}/6 &+& Sf^{(4)}/24 &+& .. \\ f' &=& Sf'' &+& Sf^{(3)}/2 &+& Sf^{(4)}/6 &+& Sf^{(5)}/24 &+& .. \\ .. \end{eqnarray}

ここで少し形を変えて以下のようにします。
\begin{eqnarray} Sf &=& \int f &-& Sf'/2 &-& Sf''/6 &-& Sf^{(3)}/24 &-& .. \\ Sf' &=& f &-& Sf''/2 &-& Sf^{(3)}/6 &-& Sf^{(4)}/24 &-& .. \\ Sf'' &=& f' &-& Sf^{(3)}/2 &-& Sf^{(4)}/6 &-& Sf^{(5)}/24 &-& .. \\ .. \end{eqnarray}

求めたいのは$Sf$です。$Sf$$ \int f$$Sf',Sf'',...$ に依存します。しかし$Sf',Sf'',...$に対する依存性は二行目以下の式を代入して取り除くことができ、これを続けることで$Sf$$f$の積分と微分 $\int f, f,f',f''...$により表すことができます。ただし、$f$を微分し続けるといつかゼロになるか、項を増やすごとにある値に漸近していくという条件がなければ、この操作は終わりなく続いてしまいます。

この操作が完了したときに$Sf$は以下のような形になっているはずです。

$Sf = \int f + a f + b f' + cf'' + d f^{(3)} + ..$

この係数は以下のようにして求めることができます。この式を使って$Sf',Sf'',.. $を同様に表し、これに$1/2,1/6,1/24,...$をかけて並べます。
\begin{eqnarray} Sf &=& \int f &+& af &+& bf' &+& cf'' &+& .. \\ Sf'/2 &=& f/2 &+& af'/2 &+& b f''/2 &+& c f^{(3)}/2 &+& .. \\ Sf''/6 &=& f'/6 &+& af''/6 &+& bf^{(3)}/6 &+& c f^{(4)}/6 &+& .. \\ Sf^{(3)}/24 &=& f''/24 &+& af^{(3)}/24 &+& bf^{(4)}/24 &+& c f^{(5)}/24 &+& .. \\ .. \end{eqnarray}

左辺をすべて足すと$\int f$ なので、右辺の$f,f',f'',..$ の係数から

\begin{eqnarray} a + 1/2 &=& 0 \\ b + a/2 + 1/6 &=& 0 \\ c + b/2 + a/6 + 1/24 &=& 0 \\ .. \end{eqnarray}

これから

\begin{eqnarray} a &=& -1/2 \\ b &=& 1/12 \\ c &=& 0 \\ .. \end{eqnarray}

と求めることができます。これと同じ計算を以下のような関数$V$について考えます。

$$ V = 1 + ax + bx^2 + cx^3 + dx^4 + .. $$

\begin{eqnarray} V &=& 1 &+& ax &+& bx^2 &+& cx^3 &+& .. \\ Vx/2 &=& x/2 &+& ax^2/2 &+& b x^3/2 &+& c x^4/2 &+& .. \\ Vx^2/6 &=& x^2/6 &+& ax^3/6 &+& x^4/6 &+& c x^5/6 &+& .. \\ Sx^3/24 &=& x^3/24 &+& ax^4/24 &+& bx^5/24 &+& cx^6/24 &+& .. \\ .. \end{eqnarray}

これらを足したものが$1$になるので
\begin{eqnarray} V (1 + x/2 + x^2/6 + x^3/24 + ...) &=& 1 \\ V &=& \frac{x}{e^x-1} \end{eqnarray}

つまり$a,b,c,..$$x/(e^x-1)$の展開係数です。ベルヌーイ数はこの係数にk!をかけたものとして定義されています。

$$ \frac{x}{e^x-1} = \sum_{k=0}^\infty \frac{B_k}{k!}x^k $$

これより$Sf$$\int f, f,f',f''...$ と ベルヌーイ数を使って以下のように表されることが分かります。

$$ Sf = \int f + B_1 f + B_2 f'/2 + B_3 f'' /6 + .. $$

これがオイラーの和公式です。

ベルヌーイの公式

$f(k) = k^m$ の場合を考えます。このとき $\int f,f,f',f''$ はそれぞれ$ n^{m+1}/(m+1),n^m,m n^{m-1},m (m-1)n^{m-2}...$となります。また $f^{(m)}(k)$以降の微分はゼロになります。
これを和公式に代入すると

\begin{eqnarray} Sf &=& \frac{n^{m+1}}{m+1} + B_1 n^m + B_2 \frac{m}{2} n^{m-1} + B_3 \frac{m(m-1)}{6} n^{m-2} + .. \\ &=& \frac{1}{m+1} \left(B_0 n^{m+1} +B_1 (m+1) n^m + B_2 \frac{(m+1)m}{2} n^{m-1} + B_3 \frac{(m+1)m(m-1)}{6} n^{m-2} + .. \right) \\ &=& \frac{1}{m+1}\sum_{k=0}^m\dbinom{m+1}{k} B_k ~ n^{m-k+1} \end{eqnarray}

となりベルヌーイの和公式が導けました。

微分作用素と演算子

これまでの計算で微分の階数をxの次数に読み替えることで和公式の係数と$x/(e^x-1)$の展開係数との結びつきを見出しました。この考えかたは
このページ で紹介されているように微分作用素を使い、微分という操作をDという文字で表し、Dの代数を考えることで直接的に分かります。

まず差分を微分作用素で表すと
\begin{eqnarray} f(k+1) - f(k) &=& f'(k) + f''(k)/2 + f'''(k)/6 + .. \\ &=& (D + D^2/2 + D^3/6 + ..)f \\ &=& (e^D - 1) f(k) \end{eqnarray}

微分だけでなく差分や1進む演算を使うといろいろと面白いです。

差分演算子$\Delta$を以下のように定義します。
$$ \Delta f(k) = f(k+1) - f(k) $$

並進演算子$T$を以下のように定義します。
$$ T f(k) = f(k+1) $$

これらに以下のような関係があります。
$$ T = e^D = \Delta + 1 $$

また和分演算子$S$を以下のように定義します。
$$ S f(k) = \sum_{k=0}^{n-1} f(k) $$

すると差分の和は以下のような式になります。
$$ S \Delta f(k) = f(n)-f(0) $$

関数の中を省略する記法で

$$ S \Delta f = f $$

よって

$$ S = 1/\Delta $$

とも言えます。

この演算子軍団を使ってオイラーの和公式を表してみます。
まず
$$ \Delta = e^D -1 $$
です。両辺を和分して

$$ S\Delta = 1 = S(e^D -1) $$

$$ S = \frac{1}{e^D-1} $$

$$ e^D-1 = D + \frac{D^2}{2} + \frac{D^3}{6} + .. $$

$D$でくくれるので

$$ S = \frac{1}{D} \frac{D}{e^D-1} $$

とし
$$\frac{D}{e^D-1} $$

を級数展開します。すると

$$ S = \frac{1}{D} \left(\sum_{k=0}^\infty \frac{B_kD^k}{k!}\right) $$

これが一応オイラーの和公式を演算子で表現したものになります。はじめの項だけ$1/D$が残りますが、$1/D$は積分と考えます。

演算子法まとめ

並進は
$$ T = e^D $$

差分は
$$ \Delta = T-1 = e^D -1 $$

和分は
$$ S = \frac{1}{\Delta} = \frac{1}{e^D-1} = \frac{1}{D}\left(\sum_{k=0}^\infty \frac{B_kD^k}{k!}\right) $$

投稿日:20231029

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投稿者

17世紀の数学を学び始めました。 https://www.17centurymaths.com/ このサイト素晴らしい。

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