2
現代数学解説
文献あり

五角数定理に関するRamanujanの恒等式

65
0

Eulerの五角数定理
(q;q)=nZ(1)nqn(3n1)2
によって与えられる恒等式である. 五角数は, 整数nを用いてn(3n1)2で表される数のことであり, それはmod 5で0,1,2のいずれかと合同であるという性質を持つ. よって,

(q;q)=a(q5)+b(q5)q+c(q5)q2
のように, べき級数a,b,cを用いて表されるので, このそれぞれに積表示があるかという問題が考えられる. それを与えるのが次の公式である.

Ramanujanの恒等式

(q;q)=(q10,q15,q25;q25)(q5,q20;q25)q(q25;q25)q2(q5,q20,q25;q25)(q10,q15;q25)

Jacobiの三重積 より,
0<n(12qncos2θ+q2n)(1qn)=0n(1)nsin(2n+1)θsinθqn(n+1)2
であるから, これにθ=2π5を代入すると, α=1+52,β=152として,
0<n(1+αqn+q2n)(1qn)=0m(1)5msin2π(10m+1)5sin2π5q(25m2+5m)/2+0<m(1)5m1sin2π(10m1)5sin2π5q((5m1)2+(5m1))/2+0m(1)5m+1sin2π(10m+3)5sin2π5q((5m+1)2+(5m+1))/2+0<m(1)5m2sin2π(10m3)5sin2π5q((5m2)2+(5m2))/2=0m(1)mq(25m2+5m)/2+0<m(1)mq(25m25m)/2β(0m(1)mq((5m+1)2+(5m+1))/2+0m(1)mq((5m1)2(5m1))/2)=mZ(1)mq(25m2+5m)/2βmZ(1)mq((5m+1)2+(5m+1))/2=(q10,q15,q25;q25)βq(q5,q20,q25;q25)
ここで, 最後の等号はJacobiの三重積による. 係数の55に置き換えたものと合わせて,
0<n(1+αqn+q2n)(1qn)=(q10,q15,q25;q25)βq(q5,q20,q25;q25)0<n(1+βqn+q2n)(1qn)=(q10,q15,q25;q25)αq(q5,q20,q25;q25)
が成り立つ. この2つを掛け合わせると, (1+αqn+q2n)(1+βqn+q2n)=1q5n1qnより,
(q;q)(q5;q5)=((q10,q15,q25;q25)βq(q5,q20,q25;q25))((q10,q15,q25;q25)αq(q5,q20,q25;q25))=(q10,q15,q25;q25)2q(q5,q10,q15,q20,q25,q25;q25)q2(q5,q20,q25;q25)2=(q10,q15,q25;q25)2q(q5;q5)(q25;q25)q2(q5,q20,q25;q25)2
両辺を(q5;q5)で割って, 定理を得る.

Hirschhornの論文においては, 定理1の応用として, Ramanujanによる恒等式
0np(5n+4)qn=5(q5;q5)5(q;q)6
が導かれている.

参考文献

[1]
Michael D. Hirschhorn, Ramanujan's "Most Beautiful Identity", The American Mathematical Monthly, 2011, 839-845
投稿日:22日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Wataru
Wataru
772
51258
超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中