以前出した線形部分空間の続きになります。今回のテーマは直和です。直和の定義をしたあと、本題となる命題2の証明をしたいと思います。
命題2の証明をするための準備として、過去の記事に書いているものを一応、書いておきたいと思います。
$W_1,W_2$が$ V$の部分空間であるとき、次元に関するつぎの等式が成り立つ。
$$ \dim W_1 + \dim W_2 = \dim (W_1 + W_2) + \dim (W_1 \cap W_2)$$
この定理の証明は過去の『線形部分空間』という記事に書いてあります。良ければどうぞ。
リンク: 線形部分空間
ここから、直和の定義をして、本題となる命題2を示していきたいと思います。
線形空間$V$が2つの部分空間$W_1,W_2$の和空間で、$V$のベクトルを$W_1,W_2$のベクトルの和として表し方が一意的であるとき、$V$は$W_1$と$W_2$との直和であるという。これを$V = W_1 \dotplus W_2$と表す。
(本によっては、$V = W_1 \oplus W_2$と書いてあったりしますが、自分は上の書き方で慣れてしまっているため、こっちで書きます。しかし、記号の意味はどちらも同じものとして扱います)
$V = W_1 + W_2$であるとき、次の3条件は同値である。
(i) $V = W_1 \dotplus W_2$
(ii) $W_1 \cap W_2 = \{0\}$
(iii) $\dim V = \dim W_1 + \dim W_2$
証明
(ii)と(iii)が同値であることは、定理1からわかる。
実際、$W_1 \cap W_2 = \{0\}$とすると、$\dim (W_1 \cap W_2) = 0$となるので、(iii)が得られ、$\dim V = \dim W_1 + \dim W_2$とすると、$\dim (W_1 \cap W_2) = 0$が分かり、これはつまり$W_1 \cap W_2 = \{0\}$である。
(i)と(ii)が同値であることを示す。
$(\text{i}) \rightarrow (\text{ii})$ $ V = W_1 \dotplus W_2$とする。
定義から、任意のVのベクトルはベクトルの和として一意的に表すことができる。
$\forall x \in W_1 \cap W_2$とする。($x \in W_1 , W_2 $)
このとき、$x = x+ 0 = 0 + x$と表すことができる。($x,0 \in W_1 \hspace{2mm},\hspace{2mm}0,x \in W_2$)
$V$は直和であるので、$x + 0 = 0 + x$が成り立つ。よって、$x = 0$.
$x$は任意に取ったので、$W_1 \cap W_2 = \{0\}$である。
$(\text{ii}) \rightarrow (\text{i})$ $W_1 \cap W_2 = \{0\}$とする。
$V$の元$x$が二通りに表せたとすると、
$$ x = x_1 + x_2 = x'_1 + x'_2\hspace{5mm}(x_1 ,x'_1 \in W_1 \hspace{2mm},\hspace{2mm}x_2,x'_2 \in W_2)$$
つまり、$x_1 - x'_1 = x'_2 - x_2$.
左辺は$W_1$の元、右辺は$W_2$の元であるから、どちらも$W_1 \cap W_2$の元である。よって、$x_1 - x'_1 = 0 \hspace{2mm},\hspace{2mm} x'_2 - x_2 = 0 \Leftrightarrow x_1 = x'_1 \hspace{2mm},\hspace{2mm}x_2 = x'_2$
したがって、$V$は$W_1,W_2$の直和である。□
もし、$W_1 \cap W_2$が0でない元$a$を持っていたとすると、
$$ 0 = 0 + 0 = a + (-a)$$
と二通りの表し方ができてしまうため、$V$は$W_1,W_2$の直和ではなくなります。
一般の直和についても同様に定義することができます。
$V$の部分空間$W_1,\cdots,W_k$があり、$V$の任意の元が$W_1,\cdots,W_k$の元の和として表されるとき、$V$を$W_1,\cdots,W_k$の和空間といい、
$$ V = W_1 + \cdots + W_k$$
と書く。このとき、$\dim V \leqq \dim W_1 + \cdots + \dim W_k$が成り立つ。
特に、$V$のベクトルの和の表し方が一意的であるとき、$V$は$W_1,\cdots,W_k$の直和であるといい、
$$ V = W_1 \dotplus \cdots \dotplus W_k$$
と書く。
$V = W_1 + \cdots + W_k$であるとき、次の3条件は同値である。
(i) $ V = W_1 \dotplus \cdots \dotplus W_k$
(ii) $W_i \cap(W_1 + \cdots + W_{i-1}+W_{i+1} + \cdots + W_k) = \{0\}\hspace{5mm}(i = 1,2 ,\cdots,k)$
(iii) $\dim V = \dim W_1 + \cdots + \dim W_k$
証明は帰納法を使って示します。気が向いたら、書き足そうと思います。
今回は以上です。