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大学数学基礎解説
文献あり

ラマヌジャンの論文24:ベルトランの仮説の証明

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はじめに

 この記事ではラマヌジャンの書いた論文"A proof of Bertrand’s postulate"を読んでいきます。
 タイトルの24という番号はハーディによる書籍"Collected Papers of Srinivasa Ramanujan"におけるナンバリングに準じています。ちなみに"Collected Papers"の全容については こちらのサイト こちらのサイト にて閲覧することができます。
 なお各命題の証明については論文で示されている式変形以外は自力で考案したものとなるので至らぬ点もあるかもしれませんがあしからず。

概説

 ベルトランの仮説とは次のような主張のことを言います。

 任意の実数x1に対しx<p2xなる素数pが存在する。

 僅か2ページのこの論文ではベルトランの仮説のシンプルな証明を与えています。
 またその証明から
π(2x)π(x)>x92x3log2x0(x162)
という不等式が得られるのでより強く以下の主張が示されます。

 任意の実数x1に対しx<p2xなる素数が少なくともx92x3log2x個存在する。

1.

 以下ϑ(x),ψ(x)をチェビシェフ関数
ϑ(x)=pxlogp,ψ(x)=n=1ϑ(x1n)
とする。
 このときベルトランの仮説は
ϑ(2x)ϑ(x)=x<p2xlogp>0
と言い換えられることに注意する。

logx!=n=1ψ(xn)

ψ(x)=n=1pnxlogp
と表せることに注意するとルジャンドルの公式から
logx!=plogpn=1xpn=plogpn=1kx/pn1=k=1n=1pnx/klogp=k=1ψ(xk)
とわかる。

logΓ(x)2logΓ(x+12)logx!2logx/2!logΓ(x+1)2logΓ(x+12)

d2dx2logΓ(x)=n=02(x+n)2>0
より
logΓ(x)2logΓ(x+12),logΓ(x+1)2logΓ(x+12)
はそれぞれ単調増加であることに注意する。
 また
n+12x2<n+32
において
logx!2logx/2!=log(2n+1)!2logn!,log(2n+2)!2log(n+1)!=log(2n+1)!2logn!,log(2n+1)!2logn!logn+12
となることに注意すると
logΓ(x)2logΓ(x+12)<logΓ(2n+3)2logΓ(n+2)logx!2logx/2!logΓ(2n+2)2logΓ(n+1)logΓ(x+1)2logΓ(x+12)
とわかる。

logx!2logx/2!<34x(x>0)logx!2logx/2!>23x(x>300)

 スターリングの公式
logΓ(x)=(x12)logxx+12log2π+O(1x)
およびΓ(x+1)=xΓ(x)から
logΓ(x)2logΓ(x+12)=xlog212logx12log2π+1+O(1x)logΓ(x+1)2logΓ(x+12)=xlog2+12logx12log2π+1+O(1x)
が成り立つのでlog2=0.6931に注意するとわかる(多分)。

ψ(x)ψ(x2)<34x(x>0)ψ(x)ψ(x2)+ψ(x3)>23x(x>300)
特に
ψ(x)<32x(x>0)

 補題3より
logx!2logx/2!=n=1(1)n1ψ(xn)=ψ(x)ψ(x2)+n=2(ψ(x2n1)ψ(x2n))=ψ(x)ψ(x2)+ψ(x3)n=2(ψ(x2n+1)ψ(x2n))
と表せることに注意すると
ψ(x)ψ(x2)logx!2logx/2!ψ(x)ψ(x2)+ψ(x3)
が成り立つので補題5より前者の不等式を得る。
 また後者の不等式については
ψ(x)=n=0(ψ(x2n)ψ(x2n+1))<34n=0x2n=32x
とわかる。

ϑ(x)ϑ(x2)>x63x(x>300)
が成り立つ。特に
ϑ(2x)ϑ(x)>0(x162)
を得る。

 上と同様にして
ψ(x)2ψ(x)=n=1(1)n1ϑ(x1n)
から
ψ(x)2ψ(x)ϑ(x)ψ(x)
が成り立つので
23x<ψ(x)ψ(x2)+ψ(x3)<ϑ(x)ϑ(x2)+2ψ(x)+ψ(x3)<ϑ(x)ϑ(x2)+3x+x2
つまり
ϑ(x)ϑ(x2)>x63x(x>300)
を得る。
 特にx182=324において
x63x0
が成り立つので
ϑ(2x)ϑ(x)>0(x162)
を得る。

2.

π(x)π(x2)>x18x6logx(x>300)
が成り立つ。

  この記事 の定理4
ϑ(x)=π(x)logx2xπ(t)tdt
から
ϑ(x)ϑ(x2)=(π(x)π(x2))logx+π(x2)log2x/2xπ(t)tdt(π(x)π(x2))logx+π(x2)(log2x/2xdtt)=(π(x)π(x2))logx
が成り立つことに注意するとわかる。

xn=2,11,17,29,41,(n=1,2,3,4,5,)
とおくとxxnにおいて
π(x)π(x2)n
が成り立つ。

参考文献

[1]
S. Ramanujan, A proof of Bertrand’s postulate, Journal of the Indian Mathematical Society, 1919, 181 - 182
投稿日:2024129
更新日:2024129
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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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