第三回目となる本記事では、
直交多項式が満たす重要な特徴の1つである、
三項間漸化式について書くことにする。
また、
三項間漸化式と結びつく核多項式について、
前回のモーメント法の証明内にも顔を出していたことから
この記事では併せて紹介することにする。 #長文になりすみません
前回は、直交多項式を定義した。本記事における定義は次のようであった。
適当な区間
* 任意の
という条件を満たすことを仮定する。
この時
を考えるとこれは内積の定義を満たし、この内積で内積空間になる。
シュミットの直交化法を行うことで、
を満たすものを取ってくることができる。
この多項式列
すなわち直交多項式とは、ある重み関数に関する内積を考え、その上で多項式環というベクトル空間を(次数に沿って)直交化した基底である、と定めた。
具体的な例はチェビシェフ多項式があり、
が与えられていた。しかしシュミットの直交化法に従って係数を決めるのは一般的には難しい、というところで記事が終えられていた。
今回は、チェビシェフ多項式が満たした
のような三項間漸化式が一般的に導かれることを示そうと思う。
さて、早速
本記事の主定理に入ろうと思う。
ここで記号の定義だが、多項式の空間上のモーメント作用素
これは内積の記号を用いて書くと
簡便のために以下この記号を用いることにする。
次が従う。
上で与えられた直交多項式列
すなわち、各
ただしこの時初項は
note: この三項間漸化式を扱う際には、以下モニックにしたものを中心に考える。
また、
その際の注意としては、最高次係数で割るとモーメントの値がその分ズレることである。
すなわち
などの変形により、非モニックの場合の漸化式の整合性は確かめられるだろう。
note: 結局一般項のモーメントが必要じゃねーかって苦情は、もう少し待ってほしい。
(その主張は正しい:一般項は他の手段で求める)
note: 任意の
とさらに綺麗な形の漸化式を得るが、今はここまでは仮定しない。 #正規化は強い
大事なことは、「すべての」直交多項式列に対して、
の形の三項間漸化式が成り立つ、ということである。
#
上の注意から、
多項式
そこで各
となるので、展開係数
ここで内積の定義から
と交換ができて、
したがって、次の形の三項間漸化式が従うことがわかる。
さらに展開係数の明示式から、漸化式の係数を計算できる。
さて、最後の項の分子
そのために、今求めた漸化式の
を得る。以上より
がわかり、
最後の文に関しては、
ここに関しては中括弧の中に
後半は内積の値を整理していただけなので、実質証明前半が肝であった。
直交性でズバズバ消えて、3項間だけ残った、そんな感じである。
さて、チェビシェフ多項式においては、前々回の記事(1)で
直交性を示した定理(定理3)から、長さが計算できていた。
復習すると
などとなっていた。そこで今の三項間漸化式のところに当てはめる。
面倒なので、
すると
あとは
しかし、
これらのモーメントは
そして最後に、
上の定理を使うと、たとえば
と求められることがわかる。第二種
なお、上で述べた
次のような形で定式化・概念化なされている。
対称(symmetric)という言葉がある。
この言葉は様々な場面で様々な意味に用いられるのだが、
直交多項式においては次のような定義である。
直交多項式が対称であるとは、全ての奇数次のモーメントが消えていることを指す。
式で書くならば、
任意の
すぐわかるように、上の条件は次と同値である。
チェビシェフ多項式やそれに類似する多項式列(数回後の記事の予定)などで成り立つ特徴である。
さて、今までは直交多項式から三項間漸化式を導くことを考えていたが、
逆に三項間漸化式の方から直交多項式を定義することができる。
Jean Favard (1902-1965)の名前がつけられている定理。
ただし彼以前にスティルチェスなどにより何回か発見されていたようである。
主張は以下のようである。
この時以下を満たすモーメント作用素
note: 添字はあえて1つずらした
note: 直交多項式列になるためには、任意の
一般に
の形の数列に対し、
しかもその内積は一意的なので、直交多項式を逆に三項間漸化式の方から定めることが可能というわけである。
・まず最初に
次に
が直交性から従う。ゆえに
同様に、帰納的に
が従うので、
・次はこのように定めた線形汎函数
この時
であるので、各
次に漸化式から
と書けており、この式に
がわかる。
以上より直交性
ということで、これで三項間漸化式が直交多項式そのものを表していることの証明ができたことになる。
三項間漸化式には他にも興味深い性質があるので紹介する。
まずは Christoffel–Darboux の公式。
Elwin Bruno Christoffel (1829-1900)、Jean Gaston Darboux (1842-1917) は
ともに名が他分野でよく知られているだろう。
前者は一般相対性理論などリーマン幾何のクリストッフェル記号、
後者はリーマン積分におけるダルブーの定理など。
さて定理の主張を述べる。
このとき
特に
上の定理と同じ条件で次が従う。
これが何と関連しているのかは、次の記事に回そうと思う。
とりあえず今は上の Christoffel–Darboux の公式の証明をする。
直交多項式のモニック型三項間漸化式
の両辺に
(1)式の両辺で変数
(1)から(2)式を引くと、次のようになる。
以下簡略のため
すると上の式は
と書き表せる。
である。そして和を取ることで右辺の途中項が消えていき
がわかり、Christoffel–Darboux の公式が示された。(証明終わり)
ちなみに
すると正規化された Christoffel–Darboux の公式が
などとさらに簡単な形で書き表される。
正規化されているかどうかに関わらず
左辺は大事な関数であり、前記事(2)の証明中でも出てきたので、定義しておく。
直交多項式
で定める。
note: 複素数上に定義された直交多項式だと共役が必要。(そもそも内積自体)
note: 各基底
として書くことがよくある。この記法の下では核多項式は
として(正規化仮定抜きに)綺麗に書き表すことができている。
核多項式については幾つか面白い性質が知られている。
核多項式
これは前記事(2)のモーメント法での証明内に、ほぼ似た記述がある。
多項式
とおくと(
のように変形ができる。(証明終わり)
ただし重要な仮定をおく:任意の
この時次のようにしてモニック直交多項式列
ただしこの直交多項式に関するモーメントは次のように書ける。
別の言い方をすれば、
なおこのモーメントに対する基底の長さは
のようにも表示がある。
このように定められた
重み関数
ともあれ、既存の直交多項式列から別の直交多項式列を生み出す手段が見つかった。
Question:
→多分あまり綺麗には書けなさそう
さて、上の定理の証明を述べる。
上のように定義した多項式
(因数定理を考えて分数は割れていて多項式になる、最高次係数は割って調節してある)
その次の
よって、以下示すべきことは次の2つである:
これは同時に示せる。以下
となることから、直交性が示され、
さらに長さの2乗についても値を確かめることができた。(証明終わり)
今回はややボリュームが増えてしまったが
まず1つめに
直交多項式に付随する三項間漸化式、逆に三項間漸化式から直交多項式系の内積を作れること、
これらを見ることで
直交多項式と三項間漸化式がほぼ同じものを与えていることを見た。
次に、三項間漸化式の系でChristoffel–Darboux の公式を与えた。
これは核多項式の値が綺麗に計算できる主張で
それにちなんで
核多項式に関する再生性とそこから派生する核直交多項式についての
定義と性質を与えた。
次の記事からは
この核多項式に関わる、
より大切な性質を述べていこうと思う。