この記事では級数の収束判定法について雑にまとめていきます。
なお級数の収束に関する基本事項に関しては
前回の記事
を参照してください。
単調に$0$に収束する数列$a_n$と部分和$\sum^n_{k=0}b_k$が有界なる数列$b_n$に対し
$$\sum^\infty_{n=0}a_nb_n$$
は収束する。
適当に符号を取り換えることで$a_n\geq0$は単調減少であるものとしてよい。いま
$$B_n=\sum^n_{k=0}b_k$$
とおくと仮定よりある$K>0$が存在して$|B_n|< K$が成り立つので部分和分により
\begin{align}
\l|\sum^n_{k=m+1}a_kb_k\r|
&=\l|a_nB_n-a_mB_m+\sum^{n-1}_{k=m}B_k(a_k-a_{k+1})\r|\\
&\leq K\l(a_n+a_m+\sum^{n-1}_{k=m}(a_k-a_{k+1})\r)\\
&=K(a_n+a_m+(a_m-a_n))
=2Ka_m\to0\quad(m,n\to\infty)
\end{align}
を得る。
単調に$0$に収束する数列$a_n$と$|z|=1\;(z\neq1)$なる複素数$z$に対し
$$\sum^\infty_{n=0}a_nz^n$$
は収束する。特に交代級数
$$\sum^\infty_{n=0}(-1)^na_n$$
は収束する。
$b_n=z^n$の部分和は
$$\l|\sum^n_{k=0}z^k\r|=\l|\frac{1-z^{n+1}}{1-z}\r|\leq\frac2{|1-z|}$$
と有界であることからわかる。
有界単調列$a_n$と収束級数$\sum^\infty_{n=0}b_n$に対して
$$\sum^\infty_{n=0}a_nb_n$$
は収束する。
$a_n$は極限値$a$を持ち、$\sum^\infty_{n=0}b_n$の収束性からその部分和$\sum^n_{k=0}b_k$は有界なので
$$\sum^\infty_{n=0}a_nb_n=\sum^\infty_{n=0}(a_n-a)b_n+a\sum^\infty_{n=0}b_n$$
は収束することがわかる。
単調列$f(n)$とある$K>0$に対し
$$\frac{u_{n+2}-u_{n+1}}{u_{n+1}-u_n}< K$$
を満たす狭義単調増加な非負整数列$u_n$について
$$\sum^\infty_{n=0}f(n),\quad\sum^\infty_{n=0}f(u_n)(u_{n+1}-u_n)$$
は同時に収束・発散する。
適当に符号を取り換えることで$f$は減少列としてよい。いま$\D u_n=u_{n+1}-u_n$とおいたとき仮定は
$$\D u_{n+1}< K\D u_n$$
と表せることに注意すると
\begin{align}
K^{-1}f(u_{n+1})\D u_{n+1}
&< f(u_{n+1})\D u_n\\
&=\sum^{u_{n+1}-1}_{k=u_n}f(u_{n+1})\\
&\leq\sum^{u_{n+1}-1}_{k=u_n}f(k)\\
\sum^{u_{n+1}-1}_{k=u_n}f(k)
&\leq\sum^{u_{n+1}-1}_{k=u_n}f(u_n)\\
&=f(u_n)\D u_n
\end{align}
が成り立つのでこれを足し合わせることで
$$K^{-1}\sum^\infty_{n=1}f(u_n)\D u_n<\sum^\infty_{n=0}f(n)\leq\sum^\infty_{n=0}f(u_n)\D u_n$$
を得る。
単調列$f(n)$に対し
$$\sum^\infty_{n=0}f(n),\quad\sum^\infty_{n=0}2^nf(2^n)$$
は同時に収束・発散する。
$u_n=2^n$とおくと$\D u_n=2^n$が成り立つことからわかる。
本節において$a_n,b_n$は正数列とする。
ある$c>0$に対し$a_n\leq cb_n$が成り立つとき、$\dis\sum^\infty_{n=0}b_n$が収束すれば$\dis\sum^\infty_{n=0}a_n$も収束する。
前回の記事
の命題5からわかる。または
$$\sum^n_{k=m}a_k\leq c\sum^n_{k=m}b_k\to0\quad(m,n\to\infty)$$
とわかる。
$\dis\frac{a_{n+1}}{a_n}\leq\frac{b_{n+1}}{b_n}$が成り立つとき、$\dis\sum^\infty_{n=0}b_n$が収束すれば$\dis\sum^\infty_{n=0}a_n$も収束する。
$$\frac{a_n}{b_n}\leq\frac{a_{n-1}}{b_{n-1}}\leq\cdots\frac{a_0}{b_0}$$
より第一種比較判定法が適用できる。
$a_n/b_n$が$0$でない値に収束するとき
$$\sum^\infty_{n=0}a_n,\quad\sum^\infty_{n=0}b_n$$
は同時に収束・発散する。
$a_n/b_n\to c$とおくと十分大きい任意の$n$に対し
$$(c-\e)b_n\< a_n<(c+\e)b_n$$
が成り立つことからわかる。
積分可能な単調減少関数$f(x)\geq0$に対し
$$\sum^\infty_{n=0}f(n),\quad\int^\infty_0f(x)dx$$
は同時に収束・発散する。
$$\int^{n+1}_nf(x)dx\leq f(n)\leq\int^n_{n-1}f(x)dx$$
より
$$\int^\infty_0f(x)dx\leq\sum^\infty_{n=0}f(n)\leq f(0)+\int^\infty_0f(x)dx$$
を得る。
本節において$a_n$は正数列とする。
$$\rho=\limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{a_n}$$
とおいたとき
$$\sum^\infty_{n=0}a_n$$
は$\rho<1$ならば収束し、$\rho>1$ならば発散する。
$\rho<1$ならば十分大きい任意の$n$に対して$a_n<(\rho+\e)^n$が成り立つので
$$\sum^\infty_{n=N}a_n<\sum^\infty_{n=N}(\rho+\e)^n=\frac{(\rho+\e)^N}{1-(\rho+\e)}<\infty$$
を得る。
また$\rho>1$ならば
$$\limsup_{n\to\infty}a_n\geq1$$
より明らかに発散する。
正数列$\z_n$に対し
$$\lim_{n\to\infty}\l(\z_n\frac{a_n}{a_{n+1}}-\z_{n+1}\r)$$
とおく。このとき
$$\sum^\infty_{n=0}a_n$$
は$\rho>0$ならば収束し、$\rho<0$かつ$\sum^\infty_{n=0}1/\z_n=\infty$ならば発散する。
$\rho>0$ならば十分大きい任意の$n$に対し
$$(\rho-\e)a_{n+1}<(\z_na_n-\z_{n+1}a_{n+1})$$
が成り立つので$\z_na_n$はある項から単調減少、つまり極限値$\g$を持つ。したがって
$$(\rho-\e)\sum^\infty_{n=N}a_{n+1}<\sum^\infty_{n=N}(\z_na_n-\z_{n+1}a_{n+1})=\z_Na_N-\g<\infty$$
を得る。
また$\rho<0$のとき十分大きい任意の$n$に対し
$$(\z_na_n-\z_{n+1}a_{n+1})<(\rho+\e)a_n$$
が成り立つので$\z_na_n$はある項から単調増加、特に$\z_Na_N\leq\z_na_n$より
$$\sum^\infty_{n=N}a_n\geq\z_Na_N\sum^\infty_{n=N}\frac1{\z_n}$$
を得る。
以下の3つはKummerの判定法においてそれぞれ$\z_n=1,n,n\log n$とすることで得られる。
$$\rho=\lim_{n\to\infty}\frac{a_{n+1}}{a_n}$$
とおいたとき
$$\sum^\infty_{n=0}a_n$$
は$\rho<1$ならば収束し、$\rho>1$ならば発散する。
$$\rho=\lim_{n\to\infty}n\l(\frac{a_n}{a_{n+1}}-1\r)$$
とおいたとき
$$\sum^\infty_{n=0}a_n$$
は$\rho>1$ならば収束し、$\rho<1$ならば発散する。
$$\rho=\lim_{n\to\infty}\log n\l(n\l(\frac{a_n}{a_{n+1}}-1\r)-1\r)$$
とおいたとき
$$\sum^\infty_{n=0}a_n$$
は$\rho>1$ならば収束し、$\rho<1$ならば発散する。