指数付値の定義を思い出しておきましょう.
$K$から$\mathbb{R}\cup\{\infty\}$への写像$\nu$が以下の条件を満たすとき$\nu$を$K$の指数付値という.
さてdiscreteな指数付値の定義です.以下ではdiscreteな指数付値のみ考えます.
指数付値が「$x\neq0$ならば$\nu(x)\in\mathbb{Z}$」を満たすとき,discreteな指数付値と呼ばれる.
ここで,正規付値というものを考えるために,以下では自明な付値($x\neq 0$ならば$\nu(x)=0$という付値)を除外して考えることにします.
$\nu(K^\times)$は加法について群をなす.
定義1の一つ目の条件が$K^\times$から$\mathbb{Z}$への準同型を表していることからほぼ自明ですが,ここでは練習がてら証明してみましょう.任意の$a,b\in\nu(K^*)$について,$x,y\in K^*$が存在して$a=\nu(x),b=\nu(y)$と書けます.すると,$a-b=\nu(x)-\nu(y)=\nu(x/y)\in\nu(K^\times)$が成り立ちます.よって群を成します.
ここで,$\mathbb{Z}$の任意の部分群はある$n\in\mathbb{Z}_{\ge0}$を用いて$n\mathbb{Z}$と書けることより$\nu(K^\times)=n\mathbb{Z}$と書けます.自明な付値は考えないことにしていたから,$n\neq0$です.これで正規付値を定義する準備が整いました.
$\nu(K^\times)=\mathbb{Z}$を満たす付値を正規付値という.
上の議論から以下の補題は明らかだと思います.
$\nu$を任意の付値とし,$\nu(K^\times)=n\mathbb{Z}$とする.このとき,$\nu^*(x)=\dfrac{1}{n}\nu(x)$と置けば,これは正規付値である.
$K$上の付値全体に対して同値関係を入れます.$\nu_1\sim\nu_2\Longleftrightarrow\nu_1^*=\nu_2^*$で関係を入れればこれは明らかに同値関係です.この同値関係によって類別された各々の類のことを素因子と呼びます.同値関係の入れ方から次の補題も明らかでしょう.
Kの各素因子は正規付値をただ1つ含む