第六回目の今日は
古典的直交多項式列の他の2つ、
Laguerre(ラゲール)多項式・Hermite(エルミート)多項式
についての記事を書こうと思う。
これらとJacobi多項式は、それぞれ独立して紹介されることが一般的には多いが
密接した関係があることがわかる。
従って、今回はそのモチベーションを基軸に話そうと思う。
(筆者注:この流れで書いてある文献がなく、かつ計算ミス多発で書くの時間かかった...)
さて、簡単に前回の復習で
Jacobi多項式の定義をおさらいする。
Jacobi多項式は区間
適当に
では、Jacobi多項式を
方針は次のとおりである。
ではやってみようと思う。
Jacobi多項式に関するRodriguesの公式は
で与えられていたことを思いだす。
さてまずは区間
すなわち
これをJacobi多項式の式に代入し、
ここで微分の変換を行わなければならない。
次の等式が成り立つ:
また、
ものすごく「それらしい」形が出現した。最後に
最初の係数のところは
次に微分の中身のところは
となることから、次のことが従う。[ここは微分と極限の交換ができることを仮定する]
次のように関数の列を定める。
このように定めた関数を、一般化されたLaguerre多項式(以下GLPと適宜略す)と呼ぶ。
上の議論から、Rodrigues形の表示として
を得ることができた。この表示からも特にGLP
まずはGLPの一般項について。
そもそも
上で定められたGLP
ここで
合流という言葉は、実は上で行った極限操作と関係があるのだが、それも後の回で。
Jacobi多項式の
その意味でJacobi多項式の超幾何関数表示からはすぐに示される。
Jacobi多項式の超幾何関数表示は次のようであった。
ここで
最後に
となり非常に計算がしやすい多項式になっている。最高次係数は
なお、上の計算例は次のような表示式として一般化可能である:
次に、GLPが満たす微分方程式について述べる。これもRodriguesの公式と関係が深かった。
GLPは次の微分方程式を満たす:
Rodriguesの公式からも導けるが、あえてJacobi多項式に戻ろうと思う。
Jacobi多項式が満たす微分方程式は
のように書き表されていた。
ここに
以下
最後の行は
という題意の微分方程式を得た。(証明終わり)
note: ここで(まだ示してないが実は)重さ関数
となり、演算子
GLP
これも同様にJacobi多項式の三項間漸化式を使う。次のように書けていた。
さて
そこだけ計算すると
[ここで
さらに
となるので、また同様に
初項の値については上で計算したとおりである。(証明終わり)
次に、GLPに関する直交性及びノルムの値を計算する。
GLP
を満たしている。
この定理もJacobi多項式から示すことも不可能ではないが、積分の極限操作(積分範囲も動く)が必要。
(必要ならば追記予定)
直交性はRodriguesの公式からも従うが、Bessel多項式のときの証明にならって証明する。
またGLPの一階微分を計算できるのでそれも主張として掲載する。
これもJacobi多項式における一階微分の式
しかしここから証明するにはJacobi多項式の
こちらも前記事の証明をならって証明をする。
前記事同様に添え字を1つずらして
任意の
ただし
ゆえに
その比例定数は-1であることがわかり示された。(証明終わり)
以上よりGLPの性質を見ることができた。
Laguerre多項式
その重さ関数は
以下は全て上の議論に
Laguerre陪多項式
実はLaguerre陪多項式もGLPで書き表すことができる。
すなわち
さて、半無限区間にJacobi多項式を実現することがLaguerreとして実現されたのであれば
全実数においてJacobi多項式を実現することは可能なのであろうか。
例えば区間
・・・実はこれもまた一工夫必要である。
例によってRodriguesの公式に沿って見ていこうと思う。
まずはJacobi多項式の公式
において、
前記事において名前は述べたがGegenbaur多項式と呼ばれるものである。すなわち
さてこの状態で、区間の長さを
すなわち、
となる。こうすると
なお、微分
また極限の値は
となる。すなわち次の定義を得る。
Hermite多項式
またこのときRodriguesの公式
が成り立っている。特に
Hermite多項式の定義は大きく2つの流派がある。
上で定めたものは「物理学者の」Hermite多項式と呼ばれることがある。
それに対して、「確率論者の」Hermite多項式は
と冪の
と書けていることに注意する。以下では上の定義のHermite多項式
正規分布の確率密度関数がちょうどこの形なのよね。ガウス積分。
その話は数回後で書く予定。
以下に示すべき性質をまとめておく。
これは先ほど同様に、Jacobi多項式の微分方程式から求める。
まずここで
を満たしている。次に
そして最後に
の式を得ることができた。(証明終わり)
Jacobi多項式の三項間漸化式は
のようであった。ここで
のように書くことができた。さらに
次に
となる。
となり三項間漸化式を満たすことが示された。(証明終わり)
直交性と微分は、上のLaguerreの場合同様に微分作用素
一般項に関しては、Chebyshev同様に微分方程式を係数に関する漸化式とみなすのが一番いいかもしれない。
以上で、Hermite多項式にも同様の性質が成り立つことがわかった。
note: Hermiteの場合は、超幾何型で書こうとすると
今回はJacobi多項式を基準に、
適当な1次式による変換と極限操作を行うことで、
一般化されたLaguerre多項式・Hermite多項式と呼ばれる
古典的直交多項式が得られることを見た。
実は古典的直交多項式と呼ばれる、その「古典的」の言葉にも
2つ指すものがあって、紛らわしいのだが
今呼んでいる古典的な直交多項式は
この4つで全てである。
次からはここをもう少し掘り下げてみよう。