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現代数学解説
文献あり

Dijksma-Koornwinderの積分公式

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前の記事 において, Gegenbauerの加法定理を示した. それは積分
11Cn(a)(st+x(1s2)(1t2))Cm(a12)(x)(1x2)a1dx=πΓ(a)Γ(a+12)(2a1)m(nm)!(a)m2m!(2a)n+m(4(1s2)(1t2))mCnm(a+m)(s)Cnm(a+m)(t)
として表される. 特にm=0の場合
11Cn(a)(st+x(1s2)(1t2))(1x2)a1dx=πΓ(a)Γ(a+12)n!(2a)nCn(a)(s)Cn(a)(t)
となって, これは右辺の積の積分表示と考えられる. 前の記事においてもその積分をJacobi多項式に拡張したが, それは積の形にはならなかった. 今回は二重積分によってJacobi多項式の積を表す公式を示す. まずJacobi多項式は, 以下のように定義される.
Pn(a,b)(x)=(a+1)nn!2F1[n,a+b+n+1a+1;1x2]
すると, 次が成り立つ.

Dijksma-Koornwinder(1971)

非負整数nに対し,
Pn(a,b)(12s2)Pn(a,b)(12t2)=Γ(n+a+1)Γ(n+b+1)πn!(a+b+1)nΓ(a+12)Γ(b+12)1111C2n(a+b+1)(stu+v(1s2)(1t2))(1u2)a12(1v2)b12dudv
が成り立つ.

C2n(a)(x)=(1)n(a)nn!k=0n(n,a+n)kk!(12)kx2k
と表されるので, 右辺の積分の部分は
1111C2n(a+b+1)(stu+v(1s2)(1t2))(1u2)a12(1v2)b12dudv=(1)n(a+b+1)nn!k=0n(n,a+b+n+1)kk!(12)k1111(stu+v(1s2)(1t2))2k(1u2)a12(1v2)b12dudv=(1)n(a+b+1)nn!0i,j(2i+2j)!(n,a+b+n+1)i+j(i+j)!(2i)!(2j)!(12)i+j(st)2i((1s2)(1t2))j1111u2iv2j(1u2)a12(1v2)b12dudv=(1)n(a+b+1)nn!0i,j(2i+2j)!(n,a+b+n+1)i+j(i+j)!(2i)!(2j)!(12)i+j(st)2i((1s2)(1t2))jΓ(12+i)Γ(a+12)Γ(a+i+1)Γ(12+j)Γ(b+12)Γ(b+j+1)=(1)n(a+b+1)nn!0i,j(n,a+b+n+1)i+ji!j!(12)i(12)j(st)2i((1s2)(1t2))jΓ(12+i)Γ(a+12)Γ(a+i+1)Γ(12+j)Γ(b+12)Γ(b+j+1)=(1)n(a+b+1)nn!πΓ(a+12)Γ(b+12)Γ(a+1)Γ(b+1)0i,j(n,a+b+n+1)i+ji!j!(a+1)i(b+1)j(st)2i((1s2)(1t2))j
ここで, Watsonの積公式 より
0i,j(n,a+b+n+1)i+ji!j!(a+1)i(b+1)j(st)2i((1s2)(1t2))j=(1)n(a+1)n(b+1)n2F1[n,a+b+n+1a+1;s2]2F1[n,a+b+n+1b+1;t2]=(1)nn!2(a+1,b+1)nPn(a,b)(12s2)Pn(a,b)(12t2)
となるから, これを代入して定理を得る.

これは, Gegenbauerの加法定理と似ているが, a=bとしてもそれに一致するわけではないようである. 証明から, 定理1はある意味でWatsonの積公式と同値であると言える.

参考文献

[1]
A. Dijksma, T. H. Koornwinder, Spherical harmonics and the product of two Jacobi polynomials., Indag. Math. , 1971, 191-196
投稿日:419
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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