素数は無限に存在する.
紀元前に証明され, 現在これには様々な証明方法があります. 今回は, これを証明したいと思います.
まずは, 今回の証明で使うJacobson根基について説明します.
$R$を可換環とする. $R$のすべての極大イデアルの交わりをJacobson根基という. 以下, それを$\mathrm{J}(R)$と書く.
Jacobson根基について, 次が成り立ちます.
$J = \mathrm{J}(R)$とおく. $a \in J$であるための必要十分条件は, $\forall x \in R$に対し$1 - a x$が$R$内に逆元をもつことである.
(必要) $\exists x \in R$に対し$1 - a x$が単元でないとすると, $1 - a x$を含む極大イデアル$\mathfrak{m}$が存在する. $x \in \mathfrak{m}$であるから, $1 = 1 - a x + a x \in \mathfrak{m}$となり, $\mathfrak{m}$が極大イデアルであることに矛盾.
(十分) $a \notin J$であるとする. したがって, $a$を含まない極大イデアル$\mathfrak{m}$が存在する. $\mathfrak{m} \subsetneq \mathfrak{m} + (a) = R$だから$\exists u \in \mathfrak{m}, \exists x \in R$が存在して$u - a x = 1$である. よって$1 - a x = u \in \mathfrak{m}$となるから, $1 - a x$が単元でないことが従う.
それでは, 実際に証明に移りたいとおもいます.
$J = \mathrm{J}(\mathbb{Z})$とおく. $J = (0)$である. 実際, 命題2により$a \in J$ならば$\forall x \in \mathbb{Z}; 1 - a x \in \mathrm{U}(\mathbb{Z}) = \set{\pm 1}$であることから任意の整数$x$に対し$a x$は$0$または$2$であることが従うが, 任意の$x$に対し$a x = 2$となることはあり得ないため, $a x = 0$, ゆえに$a = 0$である. 素数が$n < \infty$個しかないと仮定し, そのすべてを$p_1, p_2, \ldots, p_n$とする. すると$J = \bigcap\limits_{i = 1}^{n} p_i \mathbb{Z}$は$p_1 p_2 \ldots p_n \neq 0$を含むから$J \neq (0)$であることが従い, 矛盾である. ゆえに素数は無限個存在する.