第四回目の今回は、
直交多項式の零点と、それに付随した話題であるガウス求積法について述べようと思う。
残念ながら現在のところ与えている直交多項式の例が、チェビシェフ多項式しかなく
(ここの順番はすごく迷うところではあったが)
でも他の直交多項式は零点の計算ができる方が珍しく、
これでいっか。そんな感じである。
第一種・第二種チェビシェフ多項式は、次の形で与えられるものであった。
第一種・第二種チェビシェフ多項式
多項式の零点を調べるにあたり、この式が1番使いやすい。
例えば第一種の場合は
などと、三角関数の表示を用いることで零点が書き表せた。
同様に第二種の場合も調べておくと
と書き下すことができた。
すなわち、因数定理により、次の積表示を持つと言い換えることができる。
第一種・第二種チェビシェフ多項式
さてこの積表示が大事、と言うよりかは、各
すなわち、上の議論からそれぞれの値は明示的に
と書くことができる。
(関数
これらの零点分布は、ともに重要な性質
チェビシェフ不等式の場合は、全ての零点の値が求まっているので、具体的に計算で示せる。
(その際に関数
まずは第一種のとき。
を示せば良い。左側の不等式は明らかなので、右側の不等式を示す。
となり、示すことができた。第二種についてもほぼ同じ。(証明終わり)
この性質が言うことは、
あと、この零点の分布の幅についても考えてみる。
すなわち、小さい方から1番目の零点
例えば第一種の場合は
となるので、左端
右端
この区間
さて、以上見た性質が、一般的な直交多項式に対して成立することを示す。
まずはじめに、先は当たり前すぎて触れなかったが、次のことを示さねばならない。
このとき、全ての
チェビシェフ多項式の場合は、全ての解が明示的に書き表されていたが、
そのような直交多項式は特別なもので
一般的には解くことさえままならない。より一般的に示すしかない。
実は一般には成り立たない。言葉を導入する。
モーメント関数
任意の「①
例えばチェビシェフ多項式の場合、重み関数
ここで注意すべきは、
さて重要な定理をいくつか述べる。
この時
これは一般的に零点の値を求められない直交多項式に対して、その存在を言っている。
まず各々の基底
次に
このとき
とおき、多項式
この多項式は重複度奇数の零点がなく、区間
非負か非正だが、非正ならば
するとモーメント関数の正定値性の仮定から
しかし仮に
以上より
以下
このとき上のチェビシェフ多項式の例にあったように、次が成り立つ。
直交多項式
不等式
これの証明には、三項間漸化式から導いた合流型Christoffel–Darbouxの公式を使う。
合流型Christoffel–Darbouxの公式は次のようなものであった。
特にここから不等式
(
今の不等式に
同様にして
隣接する単根であることから
そのことから
以上から
零点の個数を比較することで
ということで、この分離定理が一般の場合にも証明できたことになる。
さて上の定理より
数列
次の2つの数を定める。(
それぞれ小さい方から
区間
(心の声:本当はルジャンドル多項式を定義するのが先の気もするがまぁいいや)
必要ならばその時に説明をつけるスタンスで。
何をしたいかと言えば、区間
そもそも、実関数の積分なんぞできる方がかなり少ないものである。
それに加えて、電卓を含めた数値計算では実際に被積分関数を求める、というのは比較的高度なので
うまく近似して定積分の値を求めたい。そういう感じである。
零点を求めたい(二分法、ニュートン法、その他高速アルゴリズム)ときの例はよく知られているだろう。
それと似たような動機には違いない。
ある関数を多項式で近似(補間=interpolate)するのもまた重要な数値計算の研究課題である。
以下
例えば二次関数の問題で
Question: そのグラフが
などといった問題は高校数学の基礎でよく現れるものであるが、より次数の高い場合だと思えばよい。
上の例の問題だと、例えば
すると3点を通る情報から
といった三変数の連立一次方程式を解く必要が出てくる。
この方法は、まだ3変数だからマシだけど、逆行列をかける(=連立方程式を解く)のがかなり面倒。
一般的に
のような行列(いわゆるVandermondeの行列)の逆行列を考える必要があるわけで。
実はこのVandermondeの行列の逆行列はそれなりに綺麗に書けるのです!
という話をするのが、まさにラグランジュ補間多項式に他ならない。
ではラグランジュ補間多項式とはどのようなものであるのか。
上の
ここで示すべきは、任意の
実際、積の微分法を使うことで
となっているので、ここに
そこで
とおく。これは
この関数を線型結合させることで、
関数
先の二次関数の例だと
と計算ができるわけである。 #こっちの方が計算しんどい?笑
・・・それで
このラグランジュ補間多項式が直交多項式の零点とどう関わってくるかについて。
また各
このときある定数
任意の
なかなか恐ろしい定理がやってきた。
零点の情報と、高々
note: この定数
ラグランジュの補間多項式を用いて、
任意の
すなわち、この
すると
したがって題意の式に合うように
なお、ここで注意として
のように定められたものであった。
作り方から
このことより
さらに、各
以下
多項式
これは上で書いたとおり
また、正定値性の仮定から
ゆえに
が従い、全てのモーメントが正であることが示された。(証明終わり)
このChristoffel数については以下のようにも書けることがわかる;
上の定理で定めた
なお三項間漸化式の係数
まず(1)を示す。すなわち、上の定理4で書き下した
が(1)の右辺と等しいことを主張する必要がある。
これを変形していくと
となる。
ここでChristoffel–Darbouxの公式を、
の式が得られる。このことから
がわかる。
さらに直交性から
が任意の
が従う。
以上式番号(1)から(3)の式を組み合わせることで
を得る。これで一つ目が示された。
(2)は(1)から簡単に示される。
前回の記事で示した、合流型Christoffel–Darbouxの公式(の左辺)を
がわかる。この式に
となることから、(1)と(2)の式は等価であることが分かった。(証明終わり)
ここで安定の流れではあるが、Christoffel数
上の系を含めると、3通りの同値な式で計算できることがわかったが
一番explicitに計算できると思われる
・・・としたいが、ややこしいのはチェビシェフ多項式はモニック化されていないことで
最高次係数の分の寄与を考慮する必要がある。
となるが、
の式を見ると、
さてモニック化された第一種チェビシェフ多項式
三項間漸化式
によって定められる数列となっている。
この場合
また、0次モーメントは
以上より分子は
次に分母の計算であるが、三角関数の形に帰着させて計算するのも恐ろしいので
直接
ここで
と変形ができるので(!)、これにより
よってモニック化をすると、
以上よりChristoffel数は
と計算できた。特にこれは
note: この値を
実はこの場合は少し様子が違ってくる。
モニック化された第二チェビシェフ多項式の三項間漸化式は次のように書ける:
また0次のモーメントは
これを踏まえることで、
と書くことができる。
次は上同様にして、
ここで
のように変形することが可能であり、(4)(5)式を併せると
を得る。さてここに代入する
が従う。さらに
となることがわかる。以上よりChristoffel数は
のように求めることができて、こちらは
なお、
このガウスの求積法を用いて、直交多項式の零点に関する主張を得ることができる。
自然数
この時、
note:
ただこの定理3からは、
背理法で、ある
ことを仮定する。
次の多項式
この
また区間
さて定理4のガウスの求積法を使うと、
となる。
上で示した事実:
この区間の外において
また、この区間
以上より
しかしこれは
今回は、直交多項式の零点に焦点を当てて、
それら零点の分離性を中心に観察した。
その際にも、前回最後のChristoffel–Darbouxの公式が姿を現した。
次の回でも、Christoffel–Darbouxの公式のまた別の応用に焦点を当てたいと思う。