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大学数学基礎解説
文献あり

直交多項式と超幾何関数(4)〜直交多項式の零点・ガウス求積法〜

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第四回目の今回は、
直交多項式の零点と、それに付随した話題であるガウス求積法について述べようと思う。

残念ながら現在のところ与えている直交多項式の例が、チェビシェフ多項式しかなく
(ここの順番はすごく迷うところではあったが)
でも他の直交多項式は零点の計算ができる方が珍しく、
これでいっか。そんな感じである。

チェビシェフ多項式の零点

第一種・第二種チェビシェフ多項式は、次の形で与えられるものであった。

チェビシェフ多項式 (復習)

第一種・第二種チェビシェフ多項式{Tn(x)},{Un(x)}は次で特徴づけられている。
cosnθ=Tn(cosθ),sin(n+1)θ=Un(cosθ)sinθ

多項式の零点を調べるにあたり、この式が1番使いやすい。
例えば第一種の場合は
Tn(x)=0cosnθ=0θ=π2n,3π2n,,(2n1)π2nx=cosπ2n,cos3π2n,,cos(2n1)π2n
などと、三角関数の表示を用いることで零点が書き表せた。
同様に第二種の場合も調べておくと
Un(x)=0sin(n+1)θ=0,sinθ0θ=πn+1,2πn+1,,nπn+1x=cosπn+1,cos2πn+1,,cosnπn+1
と書き下すことができた。
すなわち、因数定理により、次の積表示を持つと言い換えることができる。

チェビシェフ多項式の三角関数による積表示

第一種・第二種チェビシェフ多項式{Tn(x)},{Un(x)}は次のように実係数で因数分解できる。
Tn(x)=2n1k=1n(xcos(2k1)π2n),Un(x)=2nk=1n(xcoskπn+1)

さてこの積表示が大事、と言うよりかは、各n番目の多項式の零点分布が大事である。

n番目の多項式Tn(x),Un(x)の零点のうち、小さい方からi番目の値をxn,iT,xn,iUとおく。
すなわち、上の議論からそれぞれの値は明示的に
xn,iT=cos(2n+12i)π2n,xn,iU=cos(n+1i)πn+1
と書くことができる。
(関数cosは単調減少なので、添え字が逆転することに注意)

これらの零点分布は、ともに重要な性質 xn+1,i<xn,i<xn+1,i+1 を満たす。

チェビシェフ不等式の場合は、全ての零点の値が求まっているので、具体的に計算で示せる。
(その際に関数cosの単調減少性から、偏角の逆向きの不等号を示すことに注意)
まずは第一種のとき。xn+1,i<xn,i<xn+1,i+1を示すために偏角の逆向きの不等式
(2n+12i)π2(n+1)<(2n+12i)π2n<(2n+32i)π2(n+1)
を示せば良い。左側の不等式は明らかなので、右側の不等式を示す。
(2n+32i)π2(n+1)(2n+12i)π2n=(2i1)π2n(n+1)>0(i は 1 以上の自然数なので)
となり、示すことができた。第二種についてもほぼ同じ。(証明終わり)

この性質が言うことは、n+1番目の多項式の零点n+1個の間に
n番目の多項式の零点n個がちょうど一つずつ入ることである。

あと、この零点の分布の幅についても考えてみる。
すなわち、小さい方から1番目の零点xn,1と、大きい方から1番目の零点xn,nについて
例えば第一種の場合は
xn,1T=cos(2n1)π2n,xn,nT=cosπ2n
となるので、左端xn,1Tnに関して単調減少、cosπ=1に収束、
右端xn,nTnに関して単調増加、cos0=1に収束、となることがわかる。
この区間[1,1]は、重み関数w(x)=11x2の定義域と一致することに注意。

一般的な直交多項式の零点

さて、以上見た性質が、一般的な直交多項式に対して成立することを示す。
まずはじめに、先は当たり前すぎて触れなかったが、次のことを示さねばならない。

{Pn(x)}を直交多項式とする。
このとき、全てのnに対してPn(x)は重解を持たない。

チェビシェフ多項式の場合は、全ての解が明示的に書き表されていたが、
そのような直交多項式は特別なもので
一般的には解くことさえままならない。より一般的に示すしかない。

実は一般には成り立たない。言葉を導入する。

正定値モーメント関数

Eは実数の部分集合とする。(±を含めても良い)
モーメント関数LE上で正定値(positive-definite)であるとは
任意の「① E全体で0以上で ② 恒等的に0と等しくはない」実多項式f(x)に対し
L[f(x)]>0となることである。

例えばチェビシェフ多項式の場合、重み関数 w(x)=11x2もしくは1x2は区間(1,1)の上で正であることを思うと、この区間の上で非負な非零多項式f(x)のモーメントが正になることは明らかであろう。
ここで注意すべきは、n1に対する基底Tn(x)Un(x)はそのモーメントが0になるように作られている:これら関数は区間内で常に0以上などとはならない。

さて重要な定理をいくつか述べる。

直交多項式の分離性

Lを区間I上で正定値なモーメント関数、{Pn(x)}をそれに付随する直交多項式とする。
この時n1に対しPn(x)の零点はn個全てが実数かつ互いに異なり、そしてn個全てが区間Iの内部に入る。

これは一般的に零点の値を求められない直交多項式に対して、その存在を言っている。

まず各々の基底Pn(x)のモーメントL[Pn(x)]は(n1で)0になるようにしていたことから、必ずこの区間内で正負が入れ替わる点が存在する。すなわち零点は一つ以上存在する。
次にx1,x2,,xmを区間Iに属する重複度奇数の零点全てとする。
このとき
ρ(x)=(xx1)(xx2)(xxm)
とおき、多項式ρ(x)Pn(x)を考える。
この多項式は重複度奇数の零点がなく、区間Iで符号が同じである。
非負か非正だが、非正ならばρ(x)の係数を1倍することでρ(x)Pn(x)0とできる。
するとモーメント関数の正定値性の仮定からL[ρ(x)Pn(x)]>0となる。
しかし仮にρの次数mn未満だとこれは直交多項式の仮定に反する。
以上よりPn(x)n個の重複度1の零点をIの中に持つことがわかった。(証明終わり)

以下n次直交多項式Pn(x)の零点n個を、小さい順にxn,1P<xn,2P<<xn,nPとおく。
このとき上のチェビシェフ多項式の例にあったように、次が成り立つ。

直交多項式の零点の分離定理

直交多項式Pn(x)の零点xn,iP(ただし1in)に対し
不等式xn+1,iP<xn,iP<xn+1,i+1Pが満たされている。

これの証明には、三項間漸化式から導いた合流型Christoffel–Darbouxの公式を使う。

合流型Christoffel–Darbouxの公式は次のようなものであった。
k=0nPk(x)2λ0λ1λk=Pn+1(x)Pn(x)Pn(x)Pn+1(x)λ0λ1λn
特にここから不等式Pn+1(x)Pn(x)Pn(x)Pn+1(x)>0が従う。
(λiは正であり、かつP0=1なので左辺は0にはならない。)
今の不等式にPn+1(x)i番目の零点xn+1,iPを代入すると
Pn+1(xn+1,iP)Pn(xn+1,iP)>0がわかる。
同様にしてPn+1(xn+1,i+1P)Pn(xn+1,i+1P)>0も従う。
隣接する単根であることからPn+1(xn+1,iP)Pn+1(xn+1,i+1P)の符号は異なり
そのことからPn(xn+1,iP)Pn(xn+1,i+1P)の符号も異なる。
以上からxn+1,iPxn+1,i+1Pの間に少なくとも1つPn(x)の零点があり
零点の個数を比較することでxn+1,iP<xn,iP<xn+1,i+1Pを得る。(証明終わり)

ということで、この分離定理が一般の場合にも証明できたことになる。

さて上の定理より
数列{xn,iP}n=iは単調減少列であり、逆に数列{xn,ni+1P}n=iは単調増加列である。
次の2つの数を定める。(±の可能性も含めて存在)
ξi=limnxn,iP,ηi=limnxn,ni+1P
それぞれ小さい方からi番目の零点の極限、大きい方からi番目の零点の極限を表している。
区間(ξ1,η1)は(全ての零点を含む最小区間だが)大事な概念となってくる。

ガウス求積法

(心の声:本当はルジャンドル多項式を定義するのが先の気もするがまぁいいや)
必要ならばその時に説明をつけるスタンスで。

何をしたいかと言えば、区間[a,b]上の関数の積分
abf(x)dxを少ない回数の計算で近似したい、というモチベーションがある。

そもそも

そもそも、実関数の積分なんぞできる方がかなり少ないものである。
それに加えて、電卓を含めた数値計算では実際に被積分関数を求める、というのは比較的高度なので
うまく近似して定積分の値を求めたい。そういう感じである。

零点を求めたい(二分法、ニュートン法、その他高速アルゴリズム)ときの例はよく知られているだろう。
それと似たような動機には違いない。

ラグランジュの補間多項式

ある関数を多項式で近似(補間=interpolate)するのもまた重要な数値計算の研究課題である。
以下t1,t2,,tnを互いに異なるn個の実数とし、
(ti,yi)というn個の点を通るn1次以下の多項式を計算することを考える。(yiは任意実数)
例えば二次関数の問題で

Question: そのグラフが(x,y)=(1,7),(2,4),(3,11)の3点を通る二次関数を求めよ。

などといった問題は高校数学の基礎でよく現れるものであるが、より次数の高い場合だと思えばよい。
上の例の問題だと、例えば
y=ax2+bx+cとおくのが主流です、と教わるに違いない。
すると3点を通る情報から
(111421931)(abc)=(7411)
といった三変数の連立一次方程式を解く必要が出てくる。
この方法は、まだ3変数だからマシだけど、逆行列をかける(=連立方程式を解く)のがかなり面倒。
一般的に(ti,yi)というn個の点を通る、という状況ならば、出てくるn次正方行列は
(t1n1t1n21t2n1t2n21tnn1tnn21)
のような行列(いわゆるVandermondeの行列)の逆行列を考える必要があるわけで。

実はこのVandermondeの行列の逆行列はそれなりに綺麗に書けるのです!

という話をするのが、まさにラグランジュ補間多項式に他ならない。
ではラグランジュ補間多項式とはどのようなものであるのか。

上の{ti}に対し、まずこれら全てを零点に持つ多項式
F(x)=i=1n(xti)を考える。これはn次多項式。
ここで示すべきは、任意のk(1kn)に対し、F(tk)の値が消えていないことである。
実際、積の微分法を使うことで
ddxi=1n(xti)=j=1ni=1ijn(xti)
となっているので、ここにx=tkを代入するとj=kのところの和だけが残りik(tkti)が微分係数F(tk)である。
{ti}たちは互いに異なる数としていたので、このF(tk)0ではないことが従う。

そこで
lk(x):=F(x)F(tk)(xtk)=F(x)ik(tkti)(xtk)
とおく。これはn1次の多項式であり、tkでの値が1で、それ以外のtiでは消えている。
この関数を線型結合させることで、
Ln(x)=i=1nyili(x)
関数Ln(x)Ln(ti)=yiを満たすように作ってくることができた。

先の二次関数の例だと
f(x)=7(x2)(x3)(12)(13)+4(x+1)(x3)(2+1)(23)+11(x+1)(x2)(3+1)(32)=2x23x+2
と計算ができるわけである。 #こっちの方が計算しんどい?笑

・・・それで
このラグランジュ補間多項式が直交多項式の零点とどう関わってくるかについて。

ガウスの求積法 (Gauss quadrature formula)

Lを直交多項式{Pn(x)}の正定値モーメントとする。
また各Pn(x)の零点を上と同様にxn,1P,xn,2P,,xn,nPとおく。(n1)
このときある定数{An,kP}1knが存在して、
任意の2n1次以下の多項式f(x)に対して次のことが成り立つようにできる。

  • L[f(x)]=k=1nAn,kPf(xn,kP)と書くことができる。
  • {An,kP}1knは全て正で、足すとμ0=L[1]に等しい。

なかなか恐ろしい定理がやってきた。
零点の情報と、高々n個の定数で、2n1次多項式までのモーメントを表せてしまう。

note: この定数{An,kP}1knは実は一意的であり、Christoffel数と呼ぶことにする。

ラグランジュの補間多項式を用いて、
任意の1knL(xn,kP)=f(xn,kP)となるようなn1次以下の多項式Lを構成できる。
Q(x)=f(x)L(x)とおくと、このQ(x)は全てのxn,kPで消える2n1次以下の多項式である。
すなわち、このQ(x)Pn(x)を因子に持つことがわかり
Q(x)=R(x)Pn(x)なる多項式Rが存在する。(R0かもしれない)
Rの次数は高々(2n1)n=n1以下であることに注意する。
するとf(x)のモーメントは
L[f(x)]=L[L(x)+Q(x)]=L[L(x)]+L[R(x)Pn(x)]=L[L(x)](直交性より)=L[k=1nf(xn,kP)lk(x)](ラグランジュ補間多項式の定義)=k=1nf(xn,kP)L[lk(x)]
したがって題意の式に合うようにAn,kPAn,kP:=L[lk(x)]とおく。
なお、ここで注意としてlk(x)は当然(n1次式だし)nに依存している。式で書くと
lk(x)=Pn(x)ik(xn,iPxn,kP)(xxn,kP)
のように定められたものであった。
作り方からk=1nlk(x)=1である。実際任意の零点で1を返す多項式であるからである。
このことよりk=1nAn,kP=L[1]が従う。
さらに、各An,kPが正であることは次のように示される。

以下m1mnを満たす任意の数とする。
多項式f(x)f(x)=lm(x)2として定める。
これは上で書いたとおり2(n1)次式で、すなわちこの定理の仮定を満たす。
また、正定値性の仮定からL[f(x)]=L[lm(x)2]>0であることに注意する。
ゆえに
0<L[lm(x)2]=k=1nAn,kPlm(xn,kP)2=An,mP
が従い、全てのモーメントが正であることが示された。(証明終わり)

このChristoffel数については以下のようにも書けることがわかる;

上の定理で定めたAn,kPに対して、次の2式が成立する。
なお三項間漸化式の係数λiと、核多項式に付随する正規化直交多項式pn(x)は前回の記事の通りとする。

  1. An,kP=λ0λ1λnPn+1(xn,kP)Pn(xn,kP)
  2. An,kP=(i=0npi2(xn,kP))1

まず(1)を示す。すなわち、上の定理4で書き下した
An,kP=L[Pn(x)ik(xn,iPxn,kP)(xxn,kP)]
が(1)の右辺と等しいことを主張する必要がある。
これを変形していくと
An,kP=L[Pn(x)ik(xn,iPxn,kP)(xxn,kP)]=1ik(xn,iPxn,kP)L[Pn(x)xxn,kP](1)=1Pn(xn,kP)L[Pn(x)xxn,kP]
となる。
ここでChristoffel–Darbouxの公式を、y=xn,kPとして用いると
i=0nPi(x)Pi(xn,kP)λ0λ1λi=1λ0λ1λnPn+1(x)Pn(xn,kP)Pn(x)Pn+1(xn,kP)xxn,kP=Pn+1(xn,kP)λ0λ1λnPn(x)xxn,kP
の式が得られる。このことから
L[Pn(x)xxn,kP]=L[λ0λ1λnPn+1(xn,kP)i=0nPi(x)Pi(xn,kP)λ0λ1λi](2)=λ0λ1λnPn+1(xn,kP)i=0nPi(xn,kP)λ0λ1λiL[Pi(x)]
がわかる。
さらに直交性から
L[Pi(x)]=L[1Pi(x)]=0
が任意のi1に対して成立していることに注意すると
(3)i=0nPi(xn,kP)λ0λ1λiL[Pi(x)]=P0(xn,kP)λ0L[P0(x)]=1λ0μ0=1
が従う。
以上式番号(1)から(3)の式を組み合わせることで
An,kP=1Pn(xn,kP)λ0λ1λnPn+1(xn,kP)
を得る。これで一つ目が示された。

(2)は(1)から簡単に示される。
前回の記事で示した、合流型Christoffel–Darbouxの公式(の左辺)をpn(x)で書き直すと
k=0npk(x)2=Pn+1(x)Pn(x)Pn(x)Pn+1(x)λ0λ1λn
がわかる。この式にx=xn,kPを代入すると
i=0npi(xn,kP)2=Pn+1(xn,kP)Pn(xn,kP)λ0λ1λn
となることから、(1)と(2)の式は等価であることが分かった。(証明終わり)

チェビシェフ多項式における計算例

ここで安定の流れではあるが、Christoffel数An,kPをチェビシェフ多項式において計算してみる。
上の系を含めると、3通りの同値な式で計算できることがわかったが
一番explicitに計算できると思われる
An,kP=λ0λ1λnPn+1(xn,kP)Pn(xn,kP)の式を使って計算することを考える。

・・・としたいが、ややこしいのはチェビシェフ多項式はモニック化されていないことで
最高次係数の分の寄与を考慮する必要がある。
となるが、
L[f(x)]=k=1nAn,kPf(xn,kP)
の式を見ると、Pn(x)の最高次係数はChristoffel数に影響しない。
チェビシェフ多項式の方をモニック化しても同じ結論を得る。

第一チェビシェフ多項式の場合

さてモニック化された第一種チェビシェフ多項式T~n(x)=2n+1Tn(x) (この式はn1、初項は変えない) は
三項間漸化式
T~n+2(x)={xT~n+1(x)12T~n(x)(n=0)xT~n+1(x)14T~n(x)(n1),T~0(x)=1,T~1(x)=x
によって定められる数列となっている。

この場合i2λi=14であり、λ1=12に注意する。
また、0次モーメントはλ0=πであった。
以上より分子はλ0λ1λn=π4n12と計算できる。
次に分母の計算であるが、三角関数の形に帰着させて計算するのも恐ろしいので
直接Tn+1(x)Tn(x)Tn(x)で割った余りを考えたい。
ここでTn(x)=nUn1(x)だったことを思い出すと
Tn+1(x)Tn(x)=nTn+1(x)Un1(x)=ncos(n+1)θsinnθsinθ(x=cosθと置換した)=n2sin(2n+1)θsinθsinθ(積和の公式)=n2sin(2n+1)θ+sinθsinθn(トリッキーな式変形)=n22sin(n+1)θcosnθsinθn(和積の公式)=nTn(x)Un(x)n(x=cosθ)
と変形ができるので(!)、これによりTn+1(x)Tn(x)Tn(x)で割った余りがnだとわかる。
よってモニック化をすると、Tn+1(x)Tn(x)の最高次係数は22n1なので
T~n+1(x)T~n(x)T~n(x)で割った余りがn22n1であることがわかる。

以上よりChristoffel数は
An,kP=λ0λ1λnPn+1(xn,kP)Pn(xn,kP)=π/(4n12)n/22n1=πn
と計算できた。特にこれはkには依存しない値である。
note: この値をn個足すとμ0=L[1]=πと一致することも確認できた。

第二チェビシェフ多項式の場合

実はこの場合は少し様子が違ってくる。
モニック化された第二チェビシェフ多項式の三項間漸化式は次のように書ける:
U~n+2(x)=xU~n+1(x)14U~n(x),U~0(x)=1,U~1(x)=x
また0次のモーメントはλ0=111x2dx=π2と書ける。
これを踏まえることで、λiたちの積である分子の項は
λ0λ1λn=π24n=π22n+1
と書くことができる。
次は上同様にして、Un+1(x)Un(x)Un(x)で割った余りを考えたいところである。
Un(x)の値は記事(1)の途中で同様に計算していたことを思い出すと
Un+1(x)Un(x)=Un+1(x)(n+1)Tn+1(x)xUn(x)x21(4)=n+1x21Un+1(x)Tn+1(x)xx21Un+1(x)Un(x)
ここでUn+1(x)Tn+1(x)に対して上と同じような変形を考えると、
Un+1(x)Tn+1(x)=sin(n+2)θsinθcos(n+1)θ(x=cosθ)={sin(n+2)θcos(n+1)θcos(n+2)θsin(n+1)θ}+cos(n+2)θsin(n+1)θsinθ=sinθ+cos(n+2)θsin(n+1)θsinθ(加法定理)(5)=1+Tn+2(x)Un(x)
のように変形することが可能であり、(4)(5)式を併せると
Un+1(x)Un(x)=n+1x21(1+Tn+2(x)Un(x))xx21Un+1(x)Un(x)=n+1x21+Un(x)(n+1)Tn+2(x)xUn+1(x)x21
を得る。さてここに代入するxn,kUは当然±1ではないことを確認し、代入すると
Un+1(xn,kU)Un(xn,kU)=n+1(xn,kU)21=n+1(coskπn+1)21(xn,kU=cosn+1kn+1π=coskπn+1より)=n+1sin2kπn+1
が従う。さらにUn+1(x)Un(x)の最高次係数2n+12n=22n+1で割ることで
U~n+1(xn,kU)U~n(xn,kU)=n+122n+1sin2kπn+1
となることがわかる。以上よりChristoffel数は
An,kU=π22n+1(n+122n+1sin2kπn+1)=πn+1sin2kπn+1
のように求めることができて、こちらはkに依存する値である。
なお、k=1nsin2kπn+1=n+12よりAn,kUの和がL[1]=π2になることも確認できる。

ガウスの求積法の応用

このガウスの求積法を用いて、直交多項式の零点に関する主張を得ることができる。

直交多項式の零点の分離定理(その2)

自然数n,Nn>N2を満たすものとする。
この時、PN(x)のどの2つの零点の間にも少なくとも1つPn(x)の零点が存在する。

note: n=N+1のときは、一つ前の分離定理(定理3)よりxN,iP<xN+1,i+1P<xN,i+1Pが従うので示されている。
ただこの定理3からは、nN+2の場合については結論を得ることができない。

背理法で、あるn>Nとある1p<Nに対し、
Pn(x)xN,pPxN,p+1Pの間に零点を持たない
ことを仮定する。
次の多項式ρ(x)を定める。
ρ(x):=PN(x)(xxN,pP)(xxN,p+1P)
このρ(x)N2次の多項式である。
また区間(xN,pP,xN,p+1P)の外ではρ(x)の分母は0以上であることから
x(xN,pP,xN,p+1P)においてはρ(x)PN(x)0が従う。
さて定理4のガウスの求積法を使うと、ρ(x)PN(x)の次数は2N2<2n1であることに注意して
L[ρ(x)PN(x)]=k=1nAn,kPρ(xn,kP)PN(xn,kP)
となる。
上で示した事実:x(xN,pP,xN,p+1P)においてρ(x)PN(x)0であること、から
この区間の外においてPn(x)の零点は存在しない。もしあったならば単根なので符号が変わるはずである。
また、この区間(xN,pP,xN,p+1P)においては背理法の仮定から存在しない。
以上よりPN(xn,kP)及びρ(xn,kP)0になることはなく
An,kP>0であったことから、L[ρ(x)PN(x)]>0が従う。
しかしこれはPN(x)の直交性の仮定に反する。(証明終わり)

まとめ

今回は、直交多項式の零点に焦点を当てて、
それら零点の分離性を中心に観察した。
その際にも、前回最後のChristoffel–Darbouxの公式が姿を現した。

次の回でも、Christoffel–Darbouxの公式のまた別の応用に焦点を当てたいと思う。

参考文献

[1]
T.S. Chihara, An Introduction to Orthogonal Polynomials, Mathematics and its Applications 13, Gordon and Breach Science Publisher, 1978
[2]
Géza Freud, Orthogonal Polynomials and Christoffel Functions. A Case Study, Journal of Approximation Theory, 1986, 3-167
投稿日:202457
更新日:202458
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投稿者

整数論を研究中。 本音は組合せ論がやりたい。 最近は直交多項式・超幾何級数にお熱。 だけど幾何と解析は鬼弱い。

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  1. チェビシェフ多項式の零点
  2. 一般的な直交多項式の零点
  3. ガウス求積法
  4. まとめ
  5. 参考文献