私は定義をおろそかにするタイプの人間なので不備があるかもしれませんが, 見つけたら指摘をしてください.
超微分が初耳の方向けにここのリンクから相関図が見られます.
https://mathlog.info/articles/Q7KACeNr9oiYUEvORNSI
, 7777777
7777777さんの記事 超微分に関する先行研究 で超微分の図形的意味として, 「両対数グラフの傾きである」とありました. ここで言う両対数グラフは$10^x,\,10^y$を軸のスケールに取ったものではなく$e^x,\,e^y$を軸のスケールに取った平面における微分になります. この記事では, 2関数$X(x), Y(y)$を軸のスケールに取った平面における微分を定義することが目的です.
平面のグラフにおいて
横の軸は右から左に$\cdots,\,f(-2),\,f(-1),\,f(0),\,f(1),\,f(2),\,\cdots$
縦の軸は下から上に$\cdots,\,g(-2),\,g(-1),\,g(0),\,g(1),\,g(2),\,\cdots$
を等間隔で刻み, 原点を$(f(0),\,g(0))$とします.
グラフの点の取り方
この記事でやるのは, この新しく置いた平面について, $xy$平面の関数を変換してこの平面上に関数を表す方法とその変換した関数の微分を考えることです.
(仮置きで)この操作の名前を「再スケール」と呼び, スケールの元になる関数の組をスケール(Scale)の頭文字を取って, $\rsc(f,\,g)$または$\rsc(f(x), \,g(y))$とします.
マクロは\newcommand{rsc}{\mathrm{Rsc}}
とします.
打つときは\rsc
と打てば, $\rsc$と表示されます.
$f(t)=(x(t),\,y(t))$を$\rsc(X,\,Y)$で再スケールした関数を$f_{\rsc(X,\,Y)}$とする.
このとき, 再スケール後の$f$を
$$
f_{\rsc(X,\,Y)} (t):=\left\{\begin{array}{l}
X^{-1}(x(t))\\
Y^{-1}(y(t))
\end{array}\right.
$$
と定めます.
集合っぽい見た目をしているのでスケールの対象の関数を元または要素と言うことにします.
$X,\,Y$の逆関数を元に取ったスケール$\rsc(X^{-1},\,Y^{-1})$で$f_{\rsc(X,\,Y)}$を再スケールすると, $f$に戻るので, これを逆スケールと言い, $\rsc(X^{-1},\,Y^{-1})=\rsc(X,\,Y)^{-1}$と表すことにします.
定義に逆関数を使うので, 関数は逆関数を一意に取れるもの, つまり定義域内で連続かつ全単射である必要がある.
$\mathbb{R}$上の関数を$X:A_X\to B_X,\,Y:A_Y\to B_Y,\,f:C\to D\times F$とすると, $D\subseteq B_X,\,F\subseteq B_X$のとき, $f_{\rsc(X,\,Y)}:C\to A_X\times A_Y$がスケール$\rsc(X,\,Y)$の平面上全体で表せる.
各集合は$\mathbb{R}$の部分集合とする.
$X:A_X\to B_X,\,Y:A_Y\to B_Y$は定義域内で連続かつ全単射な2関数とする.
関数$f: C\to D\times F\subseteq B_X\times B_Y,\,t\mapsto(x(t),\,y(t))$に対して, $f_{\rsc(X,\,Y)}$を
$$
f_{\rsc(X,\,Y)} (t):=\left\{\begin{array}{l}
X^{-1}(x(t))\\
Y^{-1}(y(t))
\end{array}\right.
$$
と定め, この操作を再スケールと言い, $\rsc$をスケール, スケールの対象になる関数を元または要素と言う.
また, $X,\,Y$の逆関数を元に取るスケール$\rsc(X^{-1},\,Y^{-1})$を逆スケールと言い, $\rsc(X^{-1},\,Y^{-1})=\rsc(X,\,Y)^{-1}$と表します.
陽関数$y=f(x)$で再スケールすることを考えます.
定義域内連続かつ全単射の2関数を$X:A_X\to B_X,\,Y:A_Y\to B_Y$とする.
関数$f$を$f:C\to D,\,x\mapsto f(x)\quad(C\subseteq B_X,\,D\subseteq B_Y)$とする.
$(x,\,y)=(t,\,f(t))$を再スケールすると, $(x,\,y)=(X^{-1}(t), Y^{-1}(f(t)))$
$x=X^{-1}(t)\Leftrightarrow t=X(x)$より, $y=Y^{-1}(f(X(x))=(Y^{-1}\circ f\,\circ X)(x)$
陽関数$y=f(x)$の場合では$f_{\rsc(X,\,Y)}(x):=(Y^{-1}\circ f\,\circ X)(x)$と定義することにします.
定義域内連続かつ全単射の2関数を$X:A_X\to B_X,\,Y:A_Y\to B_Y$とする.
関数$f$は定義域内の端点を除いた任意の点で微分可能な関数$f:C\to D,\,x\mapsto f(x)\quad(C\subseteq B_X,\,D\subseteq B_Y)$とする.
$f_{\rsc(X,\,Y)}(x):=(Y^{-1}\circ f\,\circ X)(x)$
定義域内連続かつ全単射かつ微分可能な2関数を$X:A_X\to B_X,\,Y:A_Y\to B_Y$とする.
定義域内の端点を除いた任意の点で微分可能な関数$f:C\to D\times F,\,t\mapsto(x(t),\,y(t))\quad(D\subseteq B_X,\,F\subseteq B_Y)$を考えます.
スケール$\rsc(X,\,Y)$で$f$を再スケールすると
$$
f_{\rsc(X,\,Y)}(t)=\left\{\begin{array}{l}
X^{-1}(x(t))\\
Y^{-1}(y(t))
\end{array}\right.
$$
となる. それぞれを$t$で微分して, 接ベクトル
$$
\nabla f_{\rsc(X,\,Y)}(t)=\left\{\begin{array}{l}
\dfrac{d}{dt}(X^{-1}\circ x)(t)\\
\dfrac{d}{dt}(Y^{-1}\circ y)(t)
\end{array}\right.
$$
を得る.
微分の性質より, $\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{\frac{d}{dt}(Y^{-1}\circ y)(t)}{\frac{d}{dt}(X^{-1}\circ x)(t)}$なので
$$
f_{\nabla\rsc(X,\,Y)}(t):=\dfrac{\frac{d}{dt}(Y^{-1}\circ y)(t)}{\frac{d}{dt}(X^{-1}\circ x)(t)}
$$
ただこれは再スケール微分の定義というよりも変換公式なので下の定義には書きません.
定義域内の端点を除いた任意の点で微分可能な陽関数$f:A\to B\times C,\,t\mapsto(t,\,f(t))\quad(B,\,C\subseteq(0,\,\infty))$を考えます.
$e^x:\mathbb{R}\to(0,\,\infty),\,e^y:\mathbb{R}\to(0,\,\infty)$を元に取ったスケール$\rsc(e^x,\,e^y)$で$f$を再スケールすると
$$
f_{\rsc(e^x,\,e^y)}(t)=\left\{\begin{array}{l}
\log t\\
\log f(t)
\end{array}\right.
$$
となる.
この関数$f_{\rsc(e^x,\,e^y)}$の微分から
$\dfrac{dx}{dt}=\dfrac{1}{t},\,\dfrac{dy}{dt}=\dfrac{f'(t)}{f(t)}$より, $\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{\frac{dy}{dt}}{\frac{dx}{dt}}=\dfrac{t f'(t)}{f(t)}$
よって, 超微分の超導関数を求められました.
定義域内連続かつ全単射かつ微分可能な2関数を$X:A_X\to B_X,\,Y:A_Y\to B_Y$とする.
関数$f:C\to D,\,x\mapsto f(x)\quad(C\subseteq B_X,\,D\subseteq B_Y)$は定義域内の端点を除いた任意の点で微分可能とする.
スケール$\rsc(X,\,Y)$の平面上での微分を
$$
f_{\nabla\rsc(X,\,Y)}(x):=\lim_{h\to 0} \frac{(Y^{-1}\circ f\,\circ X)(X^{-1}(x)+h)-(Y^{-1}\circ f\,\circ X)(X^{-1}(x))}{h}=\frac{d}{dx}(Y^{-1}\circ f\,\circ X)\bigg|_{t=X^{-1}(x)}=\frac{f'(x)(\frac{d}{dx}Y^{-1}\circ f)(x)}{\frac{d}{dx}X^{-1}(x)}
$$
と定める.
$$ f_{\nabla\rsc(\exp,\,\exp)}(x)=\lim_{h\to 0} \frac{(\log \circ\,f\circ \exp)(\log x+h)-(\log\circ\,f\circ \exp)(\log x)}{h}=\frac{x f'(x)}{f(x)}=f^`(x) $$
$X\equiv Y\equiv\log:(0,\,\infty)\to\mathbb{R},\,f:\mathbb{R}\to\mathbb{R},\,t\mapsto f(t)$とする.
このとき, スケール$\rsc(\log,\,\log)$における再スケール微分は
$$
f_{\nabla\rsc(\log,\,\log)}(x)=\frac{f'(x)(\exp\circ f)(x)}{e^x}=\frac{f'(x)e^{f(x)}}{e^x}
$$
目的の微分を定義できたのでこの記事はこれで終わりです. 活用方法は思いつかないですけど, まあなんか使い道あるでしょ!!
2024年12月21日: 記事投稿
2024年12月24日: 媒介変数表示の関数における再スケール微分の定義が接ベクトルを求めるものから, 接線の方程式を求めるものに変更された.
2024年12月27日: 媒介変数表示の関数における再スケール微分の定義は定義と言うよりも変換公式に近いものだったので削除した.