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多重ゼータ値の漸近挙動2

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問題

前記事 で周期的なインデックスにたいしての多重ゼータ値の漸近挙動を調べました。周期的でないインデックスも似た漸近挙動を持つか?という問いが発生します。例えば、

固定されたweightとdepth k,rを持つ一様ランダムな許容インデックスkについて
ζ(k)1k!B(rk,1rk)k、つまり(k!ζ(k))1kB(rk,1rk) as k
がほとんどのkで成り立つか?

などのように。この記事では上の問題を肯定的に解決します。より強い次の定理を示します。

前記事の定理 と問題1より強い)

Iを許容インデックス全体の集合とする。この離散空間Iの適当なコンパクト化I¯が存在し、F:Ik(k!ζ(k))1k[0,]という写像FI¯上に連続に延びる。
I¯は具体的には
Ik1ki=1kεiδikM[0,1]+1,e:=(ε1,,εk):=(1,{0}k11,1,{0}k21,,{0}kr1)
というコンパクト空間への埋め込みの閉包として得られる。ここでM[0,1]とは[0,1]上の測度全体の空間であり、そのうち非負で全測度が1以下なものは弱収束の位相に関してコンパクトである。δxxだけに値を持つ点測度である。そのコンパクト化の剰余I¯I
{μM[0,1]A[0,1] μ(A)|A|}=L[0,1]+1
Lebesgue測度に絶対連続かつそのRadon-Nicodym微分が0以上1以下である測度全体になる。

この定理は前記事の定理と問題1を導く。何故なら周期的なインデックスや一様ランダムなインデックスはこのコンパクト化内で同じ点(L[0,1]+1内のある定数関数)に(後者はa.s.)収束するからだ。
I¯I上でのFは次のようになる。

pI¯I=L[0,1]+1に対しF(p)
F(p):=sup{m(i=1mw1(ti1)piw0(ti)1pi(titi1))1m:m, 0=t0tm=1}
ここで、pi:=mi1mimp である。

分割を取ってpの平均で有限近似して極限を飛ばすのである。すぐに分かることとしてこのmは無限に飛んでいる。実際、上の定義でmを固定したものを考えると、それを2mにしたものは各ti1,tiに中点を挿入することで大きくなることが分かる。

pが定数関数の場合はB(p,1p)

F(p)=sup{m(i=1mw1(ti1)pw0(ti)1p(titi1))1m:m, 0=t0tm=1}
である。この総積の中身はti1tiw1(t)pw0(t)1pdt以下であり、ほとんど近いと期待できる。中身をこの積分に変えたものは
sup{m(i=1m(XiXi1))1m:m, 0=X0Xm=01w1(t)pw0(t)1pdt=B(p,1p)}
であり、これは相加相乗不等式でB(p,1p)である。このmaximizerではtiti1が非常に小さくなるから、元の総積とほとんど変わらず、F(p)=B(p,1p)となる。

下からの評価

下からの評価

kpIのとき、lim infkp(k!ζ(k))1kF(p)となる。

反復積分表示にLaplaceの原理を使うとsupの形が出てくる。
ζ(k)=0t1tk1wε1(t1)wεk(tk)dt1dtk
にてkm等分する。ti:=t[km]i,tm:=tkとおく。上の反復積分を小さくしてtiだけが登場するようにしたい。それはw0,w1の単調性を使う:w0の中身は少し大きいtiに、w1の中身は少し小さいtiに変える。そう変えると
titNi+1tNi+N1ti+1dtNi+1dtNi+N1=(ti+1ti)N1(N1)!
により、k!ζ(k)k!0t1tm1hogeにStirlingの近似とLaplaceの原理を使うと所望の評価を得る。

上からの評価

似たようなことをするのだが、w0,w1の単調性で積分を大きくしたときに今度はsupの中身が暴れてしまう。それはw0(x),w1(y)x=0,y=1で無限になることが原因だが、この両端を甘く見積もると上手くいく。

e=(ε1,,εn), ε1=10,1の有限列であり、1l回現れるとする。このとき次の評価を得る。
0t1tnxwε1(t1)wεn(tn)dt1dtn(11x)nlxll!

これは右辺の単調性に気を付ければ帰納法からすぐ分かる。
yt1tn1wε1(t1)wεn(tn)dt1dtn(1y)nl(1y)ll!
εn=0に対してl:=(0の個数)について成立する。

上からの評価

kpIのとき、lim supkp(k!ζ(k))1kF(p)となる。

同じように反復積分表示にLaplaceの原理を使う。
ζ(k)=0t1tk1wε1(t1)wεk(tk)dt1dtk
kのうち両側割合εを捨てて[εk,(1ε)k]m等分する。ti:=tεk+(12ε)kmi,tm:=t(1ε)kとおく。上の反復積分を大きくしてtiだけが登場するようにしたい。それはw0,w1の単調性を使う:w0の中身は少し小さいtiに、w1の中身は少し大きいtiに変える。そう変えると
[εk,(1ε)k]の部分では似たような式が出てくるが、x=t0,y=tmについてw0(x)O((12ε)km),w1(y)O((12ε)km)が出てくる。それ以外の部分についてはw1,w0,,w1,w0の順に出てくるから下からの評価の時と似たような形である。

  • ε p=0 on [0,ε]の場合
    F(p)=が先の注意と同様にして分かる。定数関数p=0の場合B(0,1)=だが、似たような議論を[0,ε]上ですればいい。
  • ε p=0 on [1ε,1]の場合
    同じ理由でF(p)=
  • ε 0εp,1ε1p0の場合
    捨てた両側割合εで補題を使うと、xm0εpが稼げてこれはw0(x)O((12ε)km)を打ち消す。その代わりw1(x)がたくさん出てくるが、これは下からの評価のときにも表れていたので怖くない。
投稿日:514
更新日:514
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