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三重q超幾何級数とq超幾何級数の間の関係式

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前の記事 でSharmaによる公式のq類似を示したが, その三重類似も同じようにできることに気づいたので, それについて書く.

0k1,k2,k3(i=13(bi,ci,qni;q)ki(q,biciqni/a;q)kiqki)(aq;q)k1+k2+k3(aq;q)k1+k2(aq;q)k1+k3(aq;q)k2+k3=i=13(aq/bi,aq/ci;q)ni(aq,aq/bici;q)ni12ϕ11[a,aq,aq,b1,c1,qn1,b2,c2,qn2,b3,c3,qn3a,a,aq/b1,aq/c1,aqn1+1,aq/b2,aq/c2,aqn2+1,aq/b3,aq/c3,aqn3+1;a4qn1+n2+n3+4b1b2b3c1c2c3]

Rogersの6ϕ5和公式 より,
(aq;q)k1(aq;q)k2(aq;q)k3(aq;q)k1+k2+k3(aq;q)k1+k2(aq;q)k1+k3(aq;q)k2+k3=6ϕ5[a,aq,aq,qk1,qk2,qk3a,a,aqk1+1,aqk2+1,aqk3+1;aqk1+k2+k3+1]
であるから, 二重の場合と全く同様に,
0k(b,c,qn;q)k(q,aq,bcqn;q)kqk(qk;q)j(aqk+1;q)jqjk=(aq/b,aq/c;q)n(aq,aq/bc;q)n(b,c,qn;q)j(aq/b,aq/c,aqn+1;q)j(aqn+1bc)j
を用いて定理を得る.

特別な場合として, 積で表される場合についても考えてみる.

b1,b2,b3,c1,c2,c3を適切に並び替えたときaq/b1,aq/b2,aq/b3,aq/c1,aq/c2,aq/c3に一致し, b1b2b3c1c2c3=a3q3であるとき,
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci,qni;q)ki(q,biciqni/a;q)kiqki)(aq;q)k1+k2+k3(aq;q)k1+k2(aq;q)k1+k3(aq;q)k2+k3=(i=13(aq/bi,aq/ci;q)ni(aq/bici;q)ni)(aq;q)n1+n2+n3(aq;q)n1+n2(aq;q)n1+n3(aq;q)n2+n3
が成り立つ.

定理1と Rogersの6ϕ5和公式 より,
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci,qni;q)ki(q,biciqni/a;q)kiqki)(aq;q)k1+k2+k3(aq;q)k1+k2(aq;q)k1+k3(aq;q)k2+k3=(i=13(aq/bi,aq/ci;q)ni(aq,aq/bici;q)ni)6ϕ5[a,aq,aq,qn1,qn2,qn3a,a,aqn1+1,aqn2+1,aqn3+1;aqn1+n2+n3+1]=(i=13(aq/bi,aq/ci;q)ni(aq/bici;q)ni)(aq;q)n1+n2+n3(aq;q)n1+n2(aq;q)n1+n3(aq;q)n2+n3

例えば, aq=b1c2=b2c3=b3c1のとき, 上の条件が満たされる.

系1において, さらに, n1,n2,n3とすると, 以下を得る.

b1,b2,b3,c1,c2,c3を適切に並び替えたときaq/b1,aq/b2,aq/b3,aq/c1,aq/c2,aq/c3に一致し, b1b2b3c1c2c3=a3q3であるとき,
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci;q)ki(q;q)ki(aqbici)ki)(aq;q)k1+k2+k3(aq;q)k1+k2(aq;q)k1+k3(aq;q)k2+k3=(b1,b2,b3,c1,c2,c3;q)(aq,aq,aq/b1c1,aq/b2c2,aq/b3c3;q)
が成り立つ.

定理1において, n1,n2,n3とすると以下を得る.

0k1,k2,k3(i=13(bi,ci;q)ki(q;q)ki(aqbici)ki)(aq;q)k1+k2+k3(aq;q)k1+k2(aq;q)k1+k3(aq;q)k2+k3=i=13(aq/bi,aq/ci;q)(aq,aq/bici;q)9ϕ11[a,aq,aq,b1,c1,b2,c2,b3,c3a,a,aq/b1,aq/c1,aq/b2,aq/c2,aq/b3,aq/c3,0,0,0;a4q4b1b2b3c1c2c3]

q類似においては, これをさらに特殊化して積で表される場合を見つけるのは難しそうである.

古典極限

定理1の古典極限を考えると以下を得る.

0k1,k2,k3(i=13(bi,ci,ni)ki(1,bi+cinia)ki)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=i=13(1+abi,1+aci)ni(1+a,1+abici)ni11F10[a,1+a2,b1,c1,n1,b2,c2,n2,b3,c3,n3a2,1+ab1,1+ac1,1+a+n1,1+ab2,1+ac2,1+a+n2,1+ab3,1+ac3,1+a+n3;1]

先ほどと同様に次の系が得られる.

b1,b2,b3,c1,c2,c3を適切に並び替えたとき1+ab1,1+ab2,1+ab3,1+ac1,1+ac2,1+ac3に一致するとき,
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci,ni)ki(1,bi+cinia)ki)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=(i=13(1+abi,1+aci)ni(1+abici)ni)(1+a)n1+n2+n3(1+a)n1+n2(1+a)n1+n3(1+a)n2+n3
が成り立つ.

Re(1+abici)>0(1i3)とする. b1,b2,b3,c1,c2,c3を適切に並び替えたとき1+ab1,1+ab2,1+ab3,1+ac1,1+ac2,1+ac3に一致するとき,
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci)kiki!)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=Γ(1+a)2Γ(1+ab1c1)Γ(1+ab2c2)Γ(1+ab3c3)Γ(b1)Γ(b2)Γ(b3)Γ(c1)Γ(c2)Γ(c3)
が成り立つ.

定理2において, n1,n2,n3とすると以下を得る.

0k1,k2,k3(i=13(bi,ci)kiki!)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=i=13Γ(1+a)Γ(1+abici)Γ(1+abi)Γ(1+aci)8F7[a,1+a2,b1,c1,b2,c2,b3,c3a2,1+ab1,1+ac1,1+ab2,1+ac2,1+ab3,1+ac3;1]

この左辺が4F3になる場合に積で表されることから, 以下の系が得られる.

Re(1+abici)>0(1i3)とする. b1,b2,b3,c1,c2,c3の中から4つの数を取り出して1+ab1,1+ab2,1+ab3,1+ac1,1+ac2,1+ac3のうち4つの数に一致させることができるとき, 取り出されなかった2つの数をd1,d2とすると
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci)kiki!)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=(i=13Γ(1+a)Γ(1+abici)Γ(1+abi)Γ(1+aci))Γ(1+ad1)Γ(1+ad2)Γ(1+a)Γ(1+ad1d2)
が成り立つ.

これは系5の一般化である.

特別な場合として, 以下を得る.

b2+b3=c1+c3=1+aまたはb3+c1=b2+c3=1+aのとき,
0k1,k2,k3(i=13(bi,ci)kiki!)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=(i=13Γ(1+a)Γ(1+abici)Γ(1+abi)Γ(1+aci))Γ(1+ab1)Γ(1+ac2)Γ(1+a)Γ(1+ab1c2)
が成り立つ.

上の証明の過程で, n:=n1だけ極限を飛ばさずに残すと, Dougallの5F4和公式によって総和できるので, 上の和公式はもう少しだけ一般化される.

b1,b2,b3,c1,c2,c3の中から4つの数を取り出して1+ab1,1+ab2,1+ab3,1+ac1,1+ac2,1+ac3のうち4つの数に一致させることができるとき, 取り出されなかった2つの数をd1,d2とすると
0k1,k2,k3(b1,c1,n)k1(1,b1+c1na)k1(i=23(bi,ci)kiki!)(1+a)k1+k2+k3(1+a)k1+k2(1+a)k1+k3(1+a)k2+k3=(1+ab1,1+ac1)n(1+a,1+ab1c1)n(i=23Γ(1+a)Γ(1+abici)Γ(1+abi)Γ(1+aci))(1+a,1+ad1d2)n(1+ad1,1+ad2)n
が成り立つ.

特殊化によって, 他にも様々な和公式や変換公式を得ることができると思われる. 二重超幾何級数の和公式や変換公式の研究と比べて, 三重超幾何級数の和公式や変換公式の研究はかなり少ないので, まだ研究されていないところが多そうだと思っている.

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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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