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現代数学解説
文献あり

Burchnall-ChaundyによるF4の展開公式

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Appellの超幾何関数F4
F4(a;bc1,c2;x,y):=0n,m(a,b)n+m(c1)n(c2)mn!m!xnym
によって定義される. 今回は, 前回の記事( Burchnall-Chaundyの展開公式 )で示した等式のうちの1つである,
F4(a;bc1,c2;x(1y),y(1x))=0n(a,b,a+bc1c2+1)nn!(c1,c2)n(xy)nF(a+n,b+nc1+n;x)F(a+n,b+nc2+n;y)

Clausenの公式

まず, c1=c,c2=1+a+bcとすることによって, 以下が得られる.

Baileyの公式

F4(a;bc,1+a+bc;x(1y),y(1x))=F(a,bc;x)F(a,b1+a+bc;y)

特に, x=yとすると, 以下を得る.

F4(a;bc,1+a+bc;x(1x),x(1x))=F(a,bc;x)F(a,b1+a+bc;x)

さて, ここで

F4(a;bc1,c2;x,x)=0n(a,b)nn!(c1)nxnF(1nc1,nc2;1)=0n(a,b)n(c1+c2)2nn!(c1,c2,c1+c21)nxn=4F3[a,b,c1+c212,c1+c22c1,c2,c1+c21;4x]
であることから以下を得る.

4F3[a,b,a+b2,a+b+12c,1+a+bc,a+b;4x(1x)]=F(a,bc;x)F(a,b1+a+bc;x)

これはx=0の周りで成り立つ式であることに注意する必要がある. (例えば, そのままx=1を代入しても正しくない). さらにc=a+b+12とすると, 以下を得る.

3F2[a,b,a+b2a+b+12,a+b;4x(1x)]=F(a,ba+b+12;x)2

これはClausenの公式と呼ばれる重要な公式である.

F4の積分表示

前の記事( Appellの超幾何級数の積分表示 )で証明を与えなかった公式
F4(a;bc1,c2;x(1y),y(1x))=Γ(c1)Γ(c2)Γ(a)Γ(b)Γ(c1a)Γ(c2b)0101sa1(1s)c1a1tb1(1t)c2b1(1xs)c1+c2a1(1yt)c1+c2b1(1xsyt)a+bc1c2+1dsdt
(1xsyt)c1+c2ab1
(1xsyt)c1+c2ab1=(1xs)c1+c2ab1(1yt)c1+c2ab1(1xyst(1xs)(1yt))c1+c2ab1=(1xs)c1+c2ab1(1yt)c1+c2ab10n(a+bc1c2+1)nn!(xyst(1xs)(1yt))n
と展開して項別積分することによって, Burchnall-Chaundyの展開公式
F4(a;bc1,c2;x(1y),y(1x))=0n(a,b,a+bc1c2+1)nn!(c1,c2)n(xy)nF(a+n,b+nc1+n;x)F(a+n,b+nc2+n;y)
と同値であることが分かる.

(c1,c2)=(a,b)の場合

(c1,c2)=(a,b)の場合は, Burchnall-Chaundyの展開公式は
F4(a;ba,b;x,y)=0n(xy)n(1x)bn(1y)an=(1x)1b(1y)1a1xy
と簡単に表すことができる.

参考文献

[1]
J. L. BURCHNALL, T. W. CHAUNDY, XPANSIONS OF APPELL'S DOUBLE HYPERGEOMETRIC FUNCTIONS, The Quarterly Journal of Mathematics, 1940
投稿日:2024419
更新日:2024420
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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  1. Clausenの公式
  2. F4の積分表示
  3. (c1,c2)=(a,b)の場合
  4. 参考文献