1
大学数学基礎解説
文献あり

NBG集合論について

67
0

はじめに

こんにちは。
突然ですがクラスって知ってますか? 学級のことではないです。
集合論でのクラスとはざっくり言えば「集合とはいいたくないものを含む、集まり」です。
例えば集合全体や順序数全体など、集合と呼んでしまったら矛盾する(しそう)なものも含みます。

よく数学の土台となっているZFC集合論ではすべての概念が集合なので、対象としてのクラスを扱うことができません。そのため、「クラスとは論理式のことである」などと言って扱うことも多いです。

しかし、クラスをも対象として扱う集合論が存在します。その一つがNBG集合論(Von Neumann–Bernays–Gödel set theory)です。
NBGの主な特徴として有限公理化可能で、ZFCの保存拡大というのがあります。(保存拡大については詳しくないので聞いた話になります…)

この記事では、公理の紹介、クラス存在定理の概要、およびいくつかのクラスの例示をします。

NBGの公理

NBGにおいて対象はすべてクラスと呼ばれる。
その中で、集合は以下のように定義される。

集合

set(x)C(xC)の略記とする
またset(x)が成り立つとき「xは集合である」という。

以下、
setx()x(set(x)⇒∼)の略記
setx()x(set(x))の略記
とする.(独自の表記)

基本的な公理

・外延性の公理
A B [x(xAxB)A=B ]
・対の公理
seta setb setp [x(xp(x=ax=b))]

ここで、集合a,bについて唯一存在する、
x(xp(x=ax=b))を満たす集合p{a,b}と表し、
{a,a}{a}{{a},{a,b}}(a,b)と表すことにする。

ZFCのときと同様に(a,b)=(c,d)a=cb=dが成り立つ(証明は省略)

クラス存在公理

NBGでは量化の束縛範囲を集合に限定した内包公理が成立する。
これをクラス存在定理と呼ぶ。これの証明のために必要な外延性と対以外の以下の公理をクラス存在公理という。

述語の公理

・帰属
E setx sety [(x,y)Exy]
・共通部分
A B C x[xCxAxB]
・補集合
A B setx[xBxA]
・領域
A B setx [xBy(x,y)A]

これらの公理のうち帰属の公理以外は、外延性の公理からそれ以前の全称された変数に対し一意に定まる。
それらを順にAB,Ac,Dom(A)と表す。
このとき、帰属の公理で存在が言えるEについて、
Dom(E),(EEc)cは同じクラスを表し、任意の集合を元にして持つ。これをVと書く。

組の公理

(x,y,z)((x,y),z)のこととする
Vとの直積
A B setu[uBsetx sety (u=(x,y)xA)]
・巡回
A B setx sety setz[(x,y,z)B(y,z,x)A]
・転置
A B setx sety setz[(x,y,z)B(x,z,y)A]

Vとの直積のBAに対し一意に決まるのでこれをA×Vと表す。
上のEや組の公理のBについてE(V×V)B(V×(V×V))は、(BAに対して)一意に決まる。これらをそれぞれE0,Circ(A),Trans(A)と書くことにする(独自)

集合公理

外延性の公理と対の公理以外の集合を扱うために必要な公理。

Function(F)setx sety setz [(x,y)F(x,z)Fy=z]の略記とする
またFunction(F)が成り立つとき、Fは関数であるという

・正則性公理
seta [b(ba)u(uax(xuxa))]
・置換公理
seta F [ Function(F)setb y(ybsetx ((x,y)Fxa))]
・和集合の公理
seta setb x [y(xyya)xb]
・冪集合の公理
seta setb x [y(yxya)xb]
・無限公理
setax[xay(yaz(zxzy)w(wxwy))]
・大域選択公理
F [Function(F)seta (c(ca)setb (ba(b,a)F))]

・関数をクラスで表せるから、置換公理は一つの公理である
・和集合の公理、冪集合の公理は少し弱いものとなっているが、置換公理から元の公理を導ける
・無限公理も弱い形だが、これから元の形を導くには(おそらく)選択公理も必要
・大域選択公理は選択公理より真に強い

クラス存在定理

クラス存在公理から、任意の個数の組の置換、拡張ができることがわかる。特に二組の置換はDom(Circ2(Trans(Circ(A×V))))で与えられる。

また、外延性の公理からA=Bx(xAxB)と等価であり、
xを要素にもつ集合全体のクラスは({x}×V)E0と表せる。

また、量化を集合に制限した論理式は,,¬,setのみの等価な論理式で表せ、
後三つは,c,Domに対応する。詳しくは Wikipedia を参照してほしい。
ここでは、それに加えて{xxx}を構成することで、正則性公理が不要だと主張しておく

A={(x,x)xV}はWikipediaと同じように構成できる。
AE0が求めていたクラスである

クラスの例など

ここからより非形式的になります。
集合でないクラスを真のクラスといいます

真のクラス

・集合全体V
・順序数全体Ord={x|yx,zx,yzy=zzy}
・群全体Grp
・位相空間全体Top
・超現実数全体No

集合(ZFCと構成できるものは変わらない)

・自然数全体N
・実数全体R

また、以下の命題が成立する(本質的に同値である)

・任意の真のクラスA,Aについて全単射AAが存在する。
・任意のクラスは整列可能である。
・クラスxが集合である必要十分条件は全射xVが存在しないことである
・クラスxが集合である必要十分条件は単射Vxが存在しないことである
・任意の真のクラスAに対し、単調増大でAに収束する関数OrdVが存在する

おわりに

今回はNBGの紹介をしましたが、詳しいクラスの構成や命題の証明は省略したので、最後の命題の証明や、クラス存在定理のプログラム、超現実数などの普遍的なクラスの構成をしてみたいです。

参考文献

投稿日:8日前
更新日:8日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

AAG
AAG
33
8449
抽象代数学とか好きな高校3年生。気分屋です。 (元の名前:AGA) 厳密にテキトーにやってます。 基本検算しません。 間違いがあったら容赦なく指摘してください。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. はじめに
  2. NBGの公理
  3. 基本的な公理
  4. クラス存在公理
  5. 集合公理
  6. クラス存在定理
  7. クラスの例など
  8. おわりに
  9. 参考文献