noetherian affine schemeのコホモロジーが消滅することを示す.
前回の
射影的加群と移入的加群について
で移入的加群を定義した.
今回はがNoether環のとき,移入的加群に付随する加群の層が脆弱層になることを見て,任意の加群には移入的分解が存在することを使いnoetherian affine schemeのコホモロジーを見ていく.
準備
とし,その構造層をとする.
をで,をで定める.ここで,はから自然に誘導される準同型である.の大域切断はと同型になるので,はからへの準同型写像となる.
また各ストーク上で,であるが,の大域切断のによる局所化はののストークと同型である.なので,は恒等写像になる.
任意の加群の準連接層は,ある加群に付随する加群の層と同型になる.
は準連接層ゆえ任意のに対し,の開近傍が存在して次の完全列を得る.
さて,を考える.するととなる.ゆえにとなる.は準コンパクトなので,有限個の開被覆で覆われて,各でとなっている.とおく.が各で示せたのならば,となるため題意が示せる.
補題1から,自然な準同型が存在するから,加群の準同型が存在する.
が単射であること:はとなるものとする.すると任意ので.任意のと任意のに対して,となることと,の作り方から.なので,.また,上では可逆元なので,となる.なので,によらない正整数が存在して.ゆえにでは零元ゆえも零元.
が全射であること:を取る.から,単射の議論と同様にあるがあってが任意ので成り立つ.よってと置けば全射性が示せた.
を加群とする.任意ののイデアルに対し,が全射ならば,は移入的加群となる.
任意に加群の単射準同型写像と加群の準同型写像が与えられているとする.以下を通じてをの部分加群とみなす.
を1の命題9で作った半順序集合とする.極大元をとする.
と仮定する.を取り,イデアルと置く.準同型写像をと置くと,仮定から準同型写像が存在し,を満たす.そこでをとおくととなるがこれはのに反する.ゆえには移入的加群となる.
Noetherian affine schemeのコホモロジー
以下はNoether環とする.の閉集合との根基イデアル間の一対一対応によりがNoether環ならはNoether空間になる.
を上の移入的加群とする.任意のに対し,自然な準同型は全射になる.
各正整数に対し,イデアルとおくと,昇鎖列を得る.はNoether環なので,あるが存在し,となる.
さて,を取り固定する.準同型写像をとして定める.これはwell-definedである.なぜなら,の時,から,となるためである.は移入的加群なので準同型写像が存在して,を満たす.ここでとおくと,となるため,.故に.
をのイデアルとし,を移入的加群,とおくと,は移入的加群.
定理3から任意のイデアルに対し,が全射であることを確かめればよい.すなわち任意の準同型写像に対し,あるがあって,を満たすものが存在することを確かめる.
の作り方から任意のに対し,あるがあってを満たす.は有限生成イデアルゆえあるが存在して,.Artin-Reesの補題からあるが存在して,とおくと,となるので.なので,をはwell-definedな準同型写像で,自然な射影との合成はになる.は移入的加群なので,自然な包含写像と準同型写像に対してが存在し,を満たす.さらに,ゆえ射影を合成したものをとすればを満たす.
を上の移入的加群とする.このとき加群に付随する加群の層は脆弱層である.
とおき,とおく.任意の開集合をとり,任意にを取る.あるが存在して,であることを示す.のとき,明らかに成り立つので,としてよい.すなわち.開集合をとなるように取る.から,補題4よりで,となるものが存在する.すなわち.は準コンパクトから,定理2のの単射性の議論と同様にあるが存在して.とおく.これは補題5から移入的加群である.とおき,とおくと,である.なぜなら,であるため.さて,に対しなら,開集合をとなるように取り,同様の議論であるが存在して.同様に,,と置けばとなる.はNoether空間ゆえこの操作は有限回で終わる.すなわちあるでと置けばとなる.ゆえには脆弱層である.
とおく.1の定理14からの移入的分解
が存在する.なので,定理6からの脆弱層分解
を得る.なので,2の定理3から,,を得る.