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現代数学解説
文献あり

Noetherian affine schemeのコホモロジーの消滅定理

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noetherian affine schemeのコホモロジーが消滅することを示す.
前回の §.2射影的加群と移入的加群について で移入的加群を定義した.
今回はRがNoether環のとき,移入的加群に付随するO加群の層が脆弱層になることを見て,任意の加群には移入的分解が存在することを使いnoetherian affine schemeのコホモロジーを見ていく.

準備

X=spec(R)とし,その構造層をOとする.

R加群M,Nに対し,対応uu~によって同型HomR(M,N)HomO(M~,N~)がある.

Φ:HomR(M,N)HomO(M~,N~)Φ(u)=u~で,Ψ:HomO(M~,N~)HomR(M,N)Ψ(α)=α(X)で定める.ここで,u~uから自然に誘導される準同型である.M~の大域切断はMと同型になるので,u~(X)MからNへの準同型写像となる.
また各ストーク上で,ΦΨ(α)p=α(X)~pであるが,M~の大域切断のpによる局所化はM~pのストークと同型である.なので,ΦΨ(α)pは恒等写像になる.

任意のO加群の準連接層Fは,あるR加群Mに付随するO加群の層M~と同型になる.

Fは準連接層ゆえ任意のpUに対し,pの開近傍D(f)が存在して次の完全列を得る.
(O|D(f))Iψ(O|D(f))JφF|D(f)0
さて,M(f):=Coker(RfIRfJ)Coker(ψ(D(f)))を考える.するとM(f)~F|D(f)となる.ゆえにM(f)F(D(f))となる.Xは準コンパクトなので,有限個の開被覆D(fi)で覆われて,各iΛM(fi)~F|D(fi)となっている.M=F(X)とおく.MfiM(fi)が各iΛで示せたのならば,M~|D(fi)F|D(fi)となるため題意が示せる.
補題1から,自然な準同型α:M~Fが存在するから,Rfi加群の準同型ui:=α(D(fi)):M~(D(fi))F(D(fi))が存在する.
uiが単射であること:sM~(X)Mui(s|D(fi))=0となるものとする.すると任意のpD(fi)uip(sp)=0.任意のjΛと任意のqD(fifj)=D(fi)D(fj)に対して,F|D(fifj)=(F|D(fj))|D(fifj)M(fj)~|D(fifj)となることと,αの作り方からsq=0Γ(D(fifj),M(fj)~)M(fj)fifjなので,0/1=s/(fifj)M(fj)fifj.また,Rfj上でfj/1は可逆元なので,0/1=s/fiM(fj)fiとなる.なので,iによらない正整数nが存在して0=sfinM(fj)F(D(fj)).ゆえにF(X)=Msfinは零元ゆえs/1MfiM~(D(fi))も零元.
uiが全射であること:ziF(D(fi))を取る.zi|D(fifj)F(D(fifj))M(fj)fifjから,単射の議論と同様にあるnがあってfinziM(fj)が任意のjΛで成り立つ.よってz=finziと置けば全射性が示せた.

IR加群とする.任意のRのイデアルbに対し,HomR(R,I)HomR(b,I)が全射ならば,Iは移入的加群となる.

任意にR加群の単射準同型写像f:MNR加群の準同型写像g:MIが与えられているとする.以下fを通じてMNの部分加群とみなす.
(S,)1の命題9で作った半順序集合とする.極大元を(N0,h0)とする.
N0Nと仮定する.xNN0を取り,イデアルb:={aRaxN0}と置く.準同型写像α:bIα(a)=h0(ax)と置くと,仮定から準同型写像β:RIが存在し,β|b=αを満たす.そこでh1:N0+(x)Ih1(n+ax)=h0(n)+β(a)とおくとh1|N0=h0となるがこれは(N0,h0)のに反する.ゆえにIは移入的加群となる.

Noetherian affine schemeのコホモロジー

以下RはNoether環とする.Xの閉集合とRの根基イデアル間の一対一対応によりRがNoether環ならXはNoether空間になる.

IR上の移入的加群とする.任意のfRに対し,自然な準同型θ:IIfは全射になる.

各正整数iに対し,イデアルbi:={hRhfi=0}とおくと,昇鎖列b1b2を得る.RはNoether環なので,あるrが存在し,br=br+1=br+2=となる.
さて,x/fnIfを取り固定する.R準同型写像φ:(fn+r)Ifn+rfrxとして定める.これはwell-definedである.なぜなら,afn+r=0(fn+r)の時,abn+r=brから,φ(afn+r)=afnx=0となるためである.Iは移入的加群なのでR準同型写像ψ:RIが存在して,ψ|(fn+r)=φを満たす.ここでz=ψ(1)とおくと,fn+rz=ψ(fn+r)=φ(fn+r)=frxとなるため,z/1=x/fn.故にθ(z)=x/fn

aRのイデアルとし,Iを移入的加群,J={wIanw=0,n>0}とおくと,Jは移入的加群.

定理3から任意のイデアルbに対し,HomR(R,J)HomR(b,J)が全射であることを確かめればよい.すなわち任意の準同型写像ψ:bJに対し,あるφ:RJがあって,ψ=φ|bを満たすものが存在することを確かめる.
Jの作り方から任意のbbに対し,あるn>0があってanψ(b)=0を満たす.bは有限生成イデアルゆえあるN>0が存在して,aNψ(b)=ψ(aNb)=0.Artin-Reesの補題からあるk>0が存在して,m=N+kとおくと,amb=aN(akb)aNbとなるのでψ(amb)=0.なので,ψ~:b/(amb)Jψ~(b+(amb))=ψ(b)はwell-definedな準同型写像で,自然な射影bb/(amb)との合成はψになる.Iは移入的加群なので,自然な包含写像i:b/(amb)R/amと準同型写像b/(amb)JIに対してφ~:R/amIが存在し,ψ~=φ~iを満たす.さらに,Imφ~={wRamw=0}Jゆえ射影RR/amを合成したものをφ:RJとすればψ=φ|bを満たす.
RR/amφ~bψb/(amb)ψ~JI

IR上の移入的加群とする.このとき加群に付随するO加群の層I~は脆弱層である.

I=I~とおき,Y0=supp(I)とおく.任意の開集合UXをとり,任意にξI(U)を取る.あるzI(X)が存在して,ξ=z|Uであることを示す.ξ=0のとき,明らかに成り立つので,ξ0としてよい.すなわちUY0.開集合D(f)UD(f)Y0となるように取る.ξ|D(f)Γ(D(f),I)Ifから,補題4よりs1Γ(X,I)Iで,s1|D(f)=ξ|D(f)となるものが存在する.すなわち(s1|Uξ)|D(f)=0Uは準コンパクトから,定理2のuiの単射性の議論と同様にあるn>0が存在してfn(s1|Uξ)=0I1={wI(f)nw=0,n>0}とおく.これは補題5から移入的加群である.I1=I1~とおき,Y1=supp(I1)とおくと,Y1Y0である.なぜなら,Y1D(f)=であるため.さて,s1|UξI1(U)に対しs1|Uξ0なら,開集合D(f1)UD(f1)Y0となるように取り,同様の議論であるs2Γ(X,I)が存在して0=(s2|U(s1|Uξ))|D(f1)=((s2s1)|U+ξ)|D(f1).同様にI2={wI(f1)nw=0,n>0}I2=I2~Y2=supp(I2)と置けばY2Y1となる.XはNoether空間ゆえこの操作は有限回で終わる.すなわちあるn>0s:=i=0nsiと置けばξs|U=0となる.ゆえにI~は脆弱層である.

任意のO加群の準連接層Fに対し,Hk(X,F)=0k1

M:=F(X)とおく.1の定理14からMの移入的分解
0MI0I1
が存在する.なので,定理6からM~の脆弱層分解
0M~I0~I1~
を得る.なので,2の定理3からH0(X,F)=MHk(X,F)=0k1を得る.

参考文献

[3]
R. Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer-Verlag
[4]
宮西正宜, 代数幾何学, 数学選書10
投稿日:21日前
更新日:1日前
OptHub AI Competition

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