この記事ではラマヌジャンの発見した以下の奇妙な関係式について簡単に解説していきます。
整数列
によって定めると
が成り立つ。
ちなみにこの等式はRamanujan's Lost Notebookにて登場しています。
Ramanujan's Lost Notebookより
以下に
例えば
が得られます。
なおこれ以降の項について知りたい場合はこれらが満たす漸化式
を用いると便利かもしれません。
例の如くラマヌジャンは証明を残していないので本人による導出を知ることはできませんが、Hirschhornらによるとラマヌジャンは次のような発想を用いて導出したのではないかと考察されています。
ラマヌジャンが発見していた等式(この記事の公式9)
において
が偶多項式であることから
が成り立つ。
また
となるので、
数列
によって定めると
が成り立つ。
漸化式から
が成り立つので、両辺の行列式を取ることで
を得る。
に対しそれぞれ
が成り立つので後は同様。
いま整数列
によって定め、
が成り立つので補題2に注意して
とおくことで
が成り立つ。
これによって良い感じの整数列
が成り立つ。
とおくと
と求まるので
が成り立つ。したがって
を得る。
以上より
を得る。
なお
が成り立つ。
と表せることに注意すると
と変形できるので
を得る。
以上がラマヌジャンの公式の解説でした。
ところで上での議論の核として
という恒等式がありました。
ラマヌジャンの公式はこの恒等式のある一項を
という形の恒等式があれば、それに合わせて適当な数列を持ってくることでラマヌジャンのような公式が作れてしまう、ということになります。
そしてその最たる例としてMcLaughlinの公式というものが知られています。
整数列
によって定めると任意の
が成り立つ。
例えば
という等式が得られます。
中々いかつい公式ですが、元となった公式は割と対称性の高いものとなっています。
とおくと
が成り立つ。
ただ見ての通りこの公式はそのままだとあまり面白くないので少し変形しておきましょう。
いま上のような
とおいても
が成り立つ(二項展開することでわかる)ことに注意して
とおくことにします。
このとき
なる整数列を持ってきて
という公式が得られることになります。
あとは
が成り立つ。
皆様も何か良い感じの恒等式を見かけたらこのような公式を作ってみてはいかがでしょうか。では。
最後におまけとしてHirschhornによる二通りのゴリ押し解法を紹介しておきます。参考までに。
方針としては
がそれぞれ八項間漸化式を満たすことと、初期値
ただ漸化式と母関数の関係を説明するのは面倒なので、下では母関数の話だけで完結するように議論していく。
ある
という形に求まる。特に
の母関数についても同様である。
とおくと
と因数分解できるので、上の母関数たちは
と展開できる。
つまり
の線型結合として表せる。
特に
の線型結合として表せ、また
に注意すると
を用いて
と表せることがわかる。
が成り立つ。
上の具体値を用いて頑張って計算すればわかる。
いま補題9から
が成り立つのであったが、補題10より左辺は
つまり
が示された。
方針としては
を頑張って計算することで、これらが
とおくと
が成り立つ。特に
が成り立つ。
母関数を部分分数分解し、頑張って計算すればわかる。