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距離空間4 長さ空間の例

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さて,本題に戻りましょう.距離があるときに道のりの長さを考えたいのでした.そこで,距離が定義されているときに長さ構造を構成する方法を考えましょう. 前回 は長さ構造から距離空間を構成しましたが,逆に距離空間から自然に長さ構造を得る方法として,次の構成があります.

曲線の長さ

(X,d)を距離空間,γ:[a,b]Xを道とする.[a,b]の分割Y={y0,y1,,yN},a=y0y1y2yN=bを考える.
i=1Nd(γ(yi1),γ(yi))のすべての分割Yに渡る上限をγの長さといいLd(γ)で表す.長さが有限である曲線を有限長という.

maxi{|yiyi+1|}0のとき(Y)Ld(γ)であることがリーマン積分のときと同様に示されます.また,ユークリッド空間に対しては通常の曲線の長さと一致します.この曲線の長さを長さ関数として長さ構造が定ります.

距離dに誘導された長さ構造

すべての道を認容的道とし,長さをLdとする長さ構造を,距離dから誘導された長さ構造という.

距離dが明らかなときは省略することがあります.それでは実際に長さ構造となることや他の性質を見ていきましょう.

距離dから誘導された長さ構造L=Ldに対し次が成り立つ.
(1)(一般化三角不等式)
L(γ)d(γ(a),γ(b)).
(2)(加法性)
a<c<bのとき
L(γ)=L(γ,a,c)+L(γ,c,b),特にL(γ,a,c)cの非減少関数.
(3)(連続依存性)
γが有限長なら関数L(γ|[c,d])=L(γ,c,d)c,dに関して連続.
(4)(下半連続性)
γi,γ:[a,b]Xが任意のt[a,b]に対してγi(t)γ(t)を満たすとき
lim infL(γi)L(γ).

  1. 任意の分割Yに対し(Y)d(γ(a),γ(b))だからd(γ(a),γ(b))は下界であり,infの最小性から成り立つ.
  2. リーマン積分の区間の分割のときと同様.
  3. a<dbとし,任意にϵ>0をとる.分割Yであって,L(γ)(Y)<ϵとなるものを考える.yj1<dyjとしてよい.このとき単調性からL(γ,yj1,d)d(γ(yj1),γ(d))<ϵが成り立つ.よってyj<t<dに対しL(γ,t,d)L(γ,yi1,d)<ϵ+d(γ(yj),γ(d)).必要なら分割を細かくしてd(γ(yj),γ(d))<ϵとしてよい.よって連続である.cについても加法性からわかる.
  4. γjが道γに各点収束するとし,任意にϵ>0をとる.分割YL(γ)(Y)<ϵを満たすようにとる.このYに対しγjに対する和j(Y)を考える.jを任意のyjYに対してd(γj(yi),γ(yj))<ϵを満たすように大きくとる.このとき
    L(γ)(Y)+ϵj(Y)+ϵ+(N+1)ϵ.よって成立.

ここでLが連続になるとは限らないことに注意しましょう.それは次の図のような状況を考えればわかります.

では具体的な距離空間からこの方法で構成した長さ空間をみてみましょう.

単位円にR2のユークリッド距離を制限したものから誘導される内在的距離は角度による距離である.

R2d((x1,y1),(x2,y2))=|x1x2|+|y1y2|で距離を定める.この距離から誘導される内在的距離を考えたR2は位相的にR|R|個の直和に等しい.

距離は平行移動と1倍で不変なので(x1,y1)=(0,0),y2>0として示す.nNとする.分割Y={z0,,zN}を十分細かくとって|γ(zj)γ(zj+1)|<1nが任意のjに対して成り立つようにすることができる.一般に実数a,b|ab|1nを満たすものに対しn|ab||ab|が成り立つので
j|γ(zj)γ(zj+1)|jn|γ(zj)γ(zj+1)|n|y2|.よって
d={|x2| (y2=0)    (y20)であり示された.

これらの距離は長さ構造から得られた距離ということになり,それは内在的な距離といわれるのでした.

投稿日:20241217
更新日:20241218
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