はじめに
餃子n人前
さんの「
2.5=5/2みたいな数
」について考えてみました.
厳密性を欠く部分があるのですが,厳密性を補った解答や,異なるアプローチの元になるかもしれないので記事を投稿します.
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以下を満たす正の整数の組をすべて求めよ.ただし,はを超えない最大の整数とする.
解答
残念ながら以外の解はないと思われます.
とします.()
ですから,です.
したがって (式の意図からも明らかですが),となり,は以上未満の小数です.
与式の左辺を見ると,整数部分と小数部分に分かれた形になっています.
そのため,をで割った商を,余りを とすると, (つまり),となることが分かります.
だったので,も分かります.
にを代入しについて解くと (よりなので),となります.
だったので,です.
ここでとおくと,について次のことが分かります.
- なのでは整数ではない.
よりが整数ではないので,はの約数ではない. - なのでは整数.
よりが整数ではないので,はの約数である.
はの約数であることから, とかけます.
またはの約数ではないのでのいずれかはより大きい必要がありますが,の場合はとなりに矛盾するので,が分かります.
の範囲をもう少し絞っておきます.
よりです.
よって,すなわち
です.をで割ると
となります.(特に,よりは整数です)
ここでだとすると開区間内に整数が存在しないことが簡単に分かり成り立たないので,です.
さて,ここで不等式がどのくらい厳しいのか実験してみます.
簡単のため不等式の左側を緩めてとし,, とおくと不等式は
となります.
のとき不等式はとなりです.これはに対応します.
次にのときを考えます.不等式は,のとき,のときのようになり,は最高位からが個だけ並んだ桁の数になる必要があります.
ところがの最高位の数がはじめてとなるのはのときのですし,の最高位から桁がはじめてになるのはのときのですし,の最高位から桁がはじめてになるのはのときのです.
そのため「は最高位からが個だけ並んだ桁の数になる」という条件は極めて厳しく,のとき以外の解は存在しないだろうと想像できます.
より厳密な解答
が十分大きいとき不等式に解が存在しないことを,もう少し厳密に証明することに挑戦してみます.
不等式の左側について,を用い変形していくと
という形にできます.
不等式の左辺は,もちろんが大きくなるとです.
いっぽう右辺については ですからです.そしてのとき右辺となります.
がに近いというのはがに近いということなので,無理数の近似分数の理論が使えそうです.
そこでの次主近似分数をとします.これは連分数展開で求められ,次以降はと続きます.(このとき明らかにです)
証明は省略しますが,主近似分数の性質から次の定理が成り立ちます.
は単調増加列であり,フィボナッチ数列以上の速さで発散する.
また,ほぼ確実に次の予想が成り立つものと思われます.
ほとんど全ての無理数に対して,その次主近似分数をとするとが成立します.成立しないのは次無理数や,成立しないように人工的に構成した数などの「典型的ではない」無理数です.
しかしという個別の無理数が本当に「典型的な」無理数であると厳密に示すのは難しく,数値計算で確からしさを補強することしかできないと思われます.(この辺り詳しい方はコメントいただけると)
が上に有界とならないような無理数を人工的に構成することは可能ですが,は天然の(?)無理数なので,以降は予想が正しいものとして議論を進めます.
さて,もしも
が示せたとすると,なるについて,
となり,不等式が成立しないことが分かります.
が大きいとき不等式が成立することを証明しましょう.
不等式の左辺 定理2です.
が大きいときなので (この近似が気に入らない方は,が十分小さい時であることを確認し,をに置き換えて読んでください),
が示せれば目的達成です.
最後の式の左辺は「予想」より上に有界ですが,右辺は定理3よりで発散します.
よって示されました.
以上のことからが十分大きいとき,不等式に解が存在しないことが少し厳密に証明されました.
「予想」が正しかったとしても,ここから分かることは「元の問題の解は有限組しかない」ということだけです.
とはいえ不等式について数値計算をしてみたところの範囲では余裕をもって不等式が成立したので,くらいまで以外の解はないことは確認できました.
ですので,以外の解はないと考えて差し支えないと思います.
余談1
元の問題を次のように緩和すると,無限組の解が存在します.
ただし問題1のときと同様に考えることでである解はしか作れないことが分かります.
参考まで,の解を示します.ただしが解のときも解になることはすぐ分かり面白くないので,そのような解は省略してあります.
余談2
「解答」の中で,はに近いことが分かりました.
このようなの組を使ってを逆算することを考えます.(逆算の過程でを決める必要がありますが,適当にとしておきます)
このときでなければは整数になりませんし,またでなければは正になりませんが,に似た形の式を得ることができます.
の組をの中間近似分数から求めると,次のような結果が得られます.
このような式はいくらでも得ることができますが,の例から分かる通りの項が急速に大きくなっていきます.