初投稿です.
高校生で習う「相加相乗平均の不等式」に代表されるように,いくつかの「平均」には特別に名前が付いている.
これらのうち,算術平均と幾何平均を組み合わせた算術幾何平均というものが存在する.
2つの正の実数
で数列
※算術調和平均・調和幾何平均も存在する
収束することの証明には,はじめに言及した相加相乗平均の不等式を用いる[1].
算術平均や幾何平均が単純な四則演算や平方根を取る操作で定まっていたことに対し,数列の極限として定まる算術幾何平均はその存在が自明ではない.
同じように2つの「平均」を組み合わせて,新たな「平均」を手に入れることはできるだろうか?
本節は主に[2]Chapter 8に基づく.
正の実数の集合を
「平均」の議論をするにあたり,まず「平均」とは何かを定義する.
平均とは,
算術平均が
このままだと抽象的すぎるので,平均に対していくつかの概念を導入する.
(1) 平均
(2) 平均
(3) 平均
(4) 平均
※ここでのstrictの適切な和訳はなんだろう……
これらの定義を満たすようなものを「平均」と定めたので,あとはこれらを満たす関数を探せば平均を新たに作り出すことができる.
事実,多様な平均が考案されている[2][3][4][5].
Wikipedia:Mean#Types_of_means
によくまとまっているので参照されたい.
次に,2つの平均の間に成り立つ関係を定義する.
平均
(1) 任意の
(2) 任意の
(3) 次の2条件をどちらも満たす:
相加相乗平均の不等式は
どちらかが対称でなく条件(3)を満たしている場合,「
算術幾何平均の類似の話に戻る.
さっそく結論を述べると,strictで比較可能な平均に対してであれば同様に共通の極限値に収束し平均となることが言える.
で定まる数列
収束することを示すためにまず次を示す:
が言える.よって
を得る.
最後に,
と書くことにすれば,
がいえる.したがって
証明の肝としては,(1)数列の単調性と有界性のために比較可能であること,(2)共通の極限値のためにstrictであることしか平均の性質を用いていないことである.そのため,少なくともcompound meanのためには算術平均や幾何平均が持つような斉次性や対称性は必要ない.
この定理により,算術平均・幾何平均の混合である算術幾何平均が,より一般の連続でstrictな平均のcompound meanに拡張される.[6]では,比較可能の条件を少し変えて斉次性を課すことで,compoundの対象となる平均を拡張している.
※[5]ではcompound meanを指して"inductive mean"と呼んでいる.決まった呼び方がない?