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応用数学解説
文献あり

四元数とホップファイブレーション

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ホップファイブレーションは射影の一種で、三次元球面(四次元空間内の超球面)上の点を二次元球面(三次元空間内の球面)上に射影します。四元数による計算方法を確認して、パウリ行列を求めます。

シリーズ: ホップファイブレーション

改訂履歴:

  • 2025.01.24 符号調整を行わずに内積・外積と対応付けるよう修正

概要

単位四元数qについて、四元数共役をqとすれば、純虚四元数pに対してqpqは回転を表します。回転軸をn、回転角をθとすれば、パラメーターは以下の通りです。7shi

単位四元数による回転子

n=nxi+nyj+nzk(nx2+ny2+nz2=1, n2=1)q=cosθ2+nsinθ2=enθ/2

Wikipedia からホップファイブレーションと四元数の関係を引用します。wikipedia

In fact, this identifies the group of versors with the group of rotations of R3, modulo the fact that the versors q and q determine the same rotation. As noted above, the rotations act transitively on S2, and the set of versors q which fix a given right versor p have the form q=u+vp, where u and v are real numbers with u2+v2=1. This is a circle subgroup. For concreteness, one can take p=k, and then the Hopf fibration can be defined as the map sending a versor ω to ωkω. All the quaternions ωq, where q is one of the circle of versors that fix k, get mapped to the same thing (which happens to be one of the two 180° rotations rotating k to the same place as ω does).

日本語訳

実際、単位四元数qqが同じ回転を決定するという事実を除いて、これは単位四元数の群をR3の回転群と同一視している。上記のように、回転はS2に推移的に作用し、与えられた純虚単位四元数pを固定する単位四元数qの集合はq=u+vpの形をしている。ここでuvu2+v2=1を満たす実数である。これは円周部分群である。具体的にはp=kとすることができ、そうするとホップファイブレーションは、単位四元数ωωkωに送る写像として定義できる。qkを固定する単位四元数の円周の1つであれば、すべての四元数ωqは同じもの(kωと同じ場所に回転させる 2 つの180°回転のうちの 1 つ)に写される。

2 点に絞って説明します。

  1. 回転: 始点をkに固定すれば、単位四元数ωでの回転により、ホップファイブレーションが定義できます。
  2. ファイバー: ホップファイブレーションは単射ではなく、ある一点の逆像は円周となります。

回転

始点をkに固定すれば、単位四元数ωでの回転により、ホップファイブレーションが定義できます。

ホップファイブレーションは、単位四元数ωωkωに送る写像として定義できる。wikipedia

回転子 ω

ω=ω0+ω1i+ω2j+ω3k(ω02+ω12+ω22+ω32=1)

ωによって虚数単位kを回転させます。

ωkω=(ω0+ω1i+ω2j+ω3k)k(ω0+ω1i+ω2j+ω3k)=(ω0kω1j+ω2iω3)(ω0ω1iω2jω3k)=ω0k(ω0ω1iω2jω3k) ω1j(ω0ω1iω2jω3k) +ω2i(ω0ω1iω2jω3k) ω3(ω0ω1iω2jω3k)=ω02kω0ω1j+ω0ω2i+ω0ω3 ω0ω1jω12kω1ω2+ω1ω3i +ω0ω2i+ω1ω2ω22k+ω2ω3j ω0ω3+ω1ω3i+ω2ω3j+ω32k=(ω0ω3ω1ω2+ω1ω2ω0ω3) +(ω0ω2+ω1ω3+ω0ω2+ω1ω3)i +(ω0ω1ω0ω1+ω2ω3+ω2ω3)j +(ω02ω12ω22+ω32)k=2(ω0ω2+ω1ω3)i+2(ω2ω3ω0ω1)j+{(ω02+ω32)(ω12+ω22)}k

ωkωは実部を持たない純虚四元数です。係数の 2 乗和を確認します。

{2(ω0ω2+ω1ω3)}2+{2(ω2ω3ω0ω1)}2+{(ω02+ω32)(ω12+ω22)}2=4ω02ω22+8ω0ω1ω2ω3+4ω12ω32+4ω22ω328ω0ω1ω2ω3+4ω02ω12+ω04+2ω02ω32+ω342(ω02ω12+ω02ω22+ω32ω12+ω32ω22)+ω14+2ω12ω22+ω24=ω04+ω14+ω24+ω34+2ω02ω12+2ω02ω22+2ω02ω32+2ω12ω22+2ω12ω32+2ω22ω32=(ω02+ω12+ω22+ω32)2=1

よってωkωは純虚単位四元数であり、単位球面上の一点を指すことが確認できました。

内積・外積

ここで、2次元ベクトル間の内積と外積(ウェッジ積)を思い出してみます。

内積:(α0α1)(β0β1)=α0β0+α1β1

外積:(α0α1)(β0β1)=(α0β1α1β0)

ωkωi,jの係数が内積・外積と対応付けられるように並べ替えます。

ωkω=2(ω0ω2+ω1ω3)i+2(ω2ω3ω0ω1)j+{(ω02+ω32)(ω12+ω22)}k=2(ω3ω1+ω0ω2)i+2(ω3ω2ω0ω1)j+{(ω32+ω02)(ω12+ω22)}k

ここで以下のように対応付ければ、

(α0α1)=(ω3ω0),(β0β1)=(ω1ω2)

ωkωの係数に内積と外積の2倍が含まれることが分かります。

ωkω=2(α0β0+α1β1)i+2(α0β1α1β0)j+{(α02+α12)(β02+β12)}k

複素数への分割

内積・外積を求めるのに使用したベクトルを複素数で表現することで、ωを2つの複素数へ分割します。これらをα,βとします。

単位四元数の複素数への分割

α=α0+α1i=ω3+ω0iβ=β0+β1i=ω1+ω2i

左因子を複素共役にして積を求めれば、内積と外積が得られます。

αβ=(α0α1i)(β0+β1i)=(α0β0+α1β1)+(α0β1α1β0)i

ωkωを書き換えます。

ωkω=2Re(αβ)i+2Im(αβ)j+(|α|2|β|2)k

よく使われる形のホップファイブレーションの表式が四元数によって得られました。

まとめ

ここまでの結果をまとめます。

複素数ペアと四元数の対応関係

α=α0+α1iβ=β0+β1iω=α0k+α1+β0i+β1j=(α0k+α1)+j(β0k+β1)

複素数ペアの四元数への埋め込み

αω=α0k+α1βω=β0k+β1ω=αω+jβω

ωkを回転させます。

ωkω=(αω+jβω)k(αω+jβω)=(αω+βωj)k(αωjβω)=(αωk+βωi)(αωjβω)=αωkαωαωkjβω+βωiαωβωijβω=αωkαω+αωiβω+βωiαωβωkβω=αωαωk+αωβωi+βωαωiβωβωk=2αωβωi+(|α|2|β|2)k=2(α0k+α1)(β0k+β1)i+(|α|2|β|2)k=2(α0β0+α0β1kα1β0k+α1β1)i+(|α|2|β|2)k=2(α0β0+α1β1)i+2(α0β1α1β0)j+(|α|2|β|2)k=2Re(αβ)i+2Im(αβ)j+(|α|2|β|2)k

実部と虚部の分離

複素共役での虚部の符号反転によって、実部と虚部が分離できます。分離した虚部にiを掛けることで実数化します。

2Re(αβ)=αβ+(αβ)=αβ+βα2Im(αβ)=i(αβ(αβ))=i(αββα)

これを ωkω に適用します。

ωkω=2Re(αβ)i+2Im(αβ)j+(|α|2|β|2)k=(αβ+βα)ii(αββα)j+(ααββ)k

虚数単位 i の区別

複素数のiと四元数のiを表記上区別しています。i(αββα)は実数となるため、得られる結果に複素数と四元数が混在することはありません。

パウリ行列

複素数α,βを成分とする複素ベクトルΨとそのエルミート共役(成分の複素共役を取る転置)を定義します。

複素ベクトル Ψ とそのエルミート共役

Ψ=(αβ), Ψ=(αβ)

ωkωi,j,kの係数をx,y,zとします。

ωkω=(αβ+βαx)ii(αββα)yj+(ααββz)k

各項に含まれる複素共役をΨに対応させ、ベクトルの内積で表現します。内積の右因子は、Ψから変換するための行列σx,σy,σzを作って挟みます。

x=αβ+βα=(αβ)(βα)=(αβ)(0110)(αβ)=ΨσxΨy=i(αββα)=(αβ)(iβiα)=(αβ)(0ii0)(αβ)=ΨσyΨz=ααββ=(αβ)(αβ)=(αβ)(1001)(αβ)=ΨσzΨ

これらの変換行列がパウリ行列です。

パウリ行列

σx=(0110), σy=(0ii0), σz=(1001)

パウリ行列による計算は、ωkωと同等の計算を形式的かつ簡潔にまとめます。

パウリ行列による座標変換

Ψ(ΨσxΨΨσyΨΨσzΨ)

量子情報では、Ψ状態ベクトル、パウリ行列による座標変換によって構成される単位球をブロッホ球と呼びます。

ファイバー

ホップファイブレーションは単射ではなく、ある一点の逆像は円周となります。この円周はファイバーと呼ばれます。

与えられた純虚単位四元数pを固定する単位四元数qの集合はq=u+vpの形をしている。ここでuvu2+v2=1を満たす実数である。これは円周部分群である。wikipedia

純虚単位四元数の 2 乗は -1 となります。

p2=1

qによってpを回転させます。

qpq=(u+vp)p(u+vp)=(u+vp)p(uvp)=(u+vp)(uvp)p=(u2+v2)p=p

p が固定されていることが確認できました。

qkを固定する単位四元数の円周の1つであれば、すべての四元数ωqは同じもの(kωと同じ場所に回転させる 2 つの180°回転のうちの 1 つ)に写される。wikipedia

q=u+vk (u2+v2=1) のとき (ωq)k(ωq)=ωkω となることを確認します。

(ωq)k(ωq)=ω(qkq)ω=ωkω

ωqの軌跡がωkωの逆像で、円周となります。ホップファイブレーションにより超球面は球面と円周に分解されます。

参考文献

投稿日:2024514
更新日:123
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  1. 概要
  2. 回転
  3. 内積・外積
  4. 複素数への分割
  5. まとめ
  6. 実部と虚部の分離
  7. パウリ行列
  8. ファイバー
  9. 参考文献