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応用数学解説
文献あり

四元数とホップファイブレーション 1 四元数からの生成

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四元数の回転操作を通して3次元球面から2次元球面への射影であるホップファイブレーションを構成し、複素数表示を経てパウリ行列を導出します。

シリーズ: ホップファイブレーション

改訂履歴
  • 2026.10.04 全射性と逆像の一致を補い、像をブロッホ球面と呼ぶ
  • 2026.09.28 複素数ホップ写像を$2α^*β$の形で定義し、パウリ行列による座標と一致させる
  • 2026.07.15 複素数ホップ写像を定義、まとめを追加
  • 2026.07.13 ノルムの乗法性の注記を追加、ファイバーの行間を補完
  • 2025.01.24 符号調整を行わずに内積・外積と対応付けるよう修正

概要

3次元球面$S^3$から2次元球面$S^2$への非自明な写像であるホップファイブレーションは、幾何学だけでなく量子力学のスピンやブロッホ球の記述においても中心的な役割を果たします。原論文における同次座標と立体射影による初等的な構成に対して、現代では四元数を用いた定式化が広く知られています。四元数の回転を用いることで、幾何学的な意味を直観的に捉えながら、初等的な代数計算だけでホップファイブレーションを具体的に構成できます。

本記事では、単位四元数$ω$による特定の純虚四元数(始点$\mathbf{k}$)の回転$ω\mathbf{k}ω^*$を出発点とします。回転結果の純虚四元数を各虚数単位の成分に展開し、2次元ベクトルの内積と外積(ウェッジ積)の構造を見出すことで、四元数を2つの複素数のペア$(α, β)$へと分割します。これにより複素数ホップ写像を定義し、さらに複素ベクトルとエルミート共役を用いてパウリ行列を自然に導出します。最後に、ある1点を固定する四元数の円周部分群に着目し、各点の逆像が円周(ファイバー$S^1$)となることを確かめます。

高校数学レベルの複素数と初等幾何、および四元数の基本的な演算(虚数単位の積則・共役・ノルム)を前提とします。本記事では四元数によるホップファイブレーションの構成とパウリ行列の導出に集中し、一般次元への拡張やホップ不変量などのトポロジー的な発展は扱いません。

回転

単位四元数$q$について、四元数共役を$q^*$とすれば、純虚四元数$p$に対して$qpq^*$は3次元空間の回転を表します。回転軸を単位純虚四元数$n$、回転角を$θ$とすれば、回転子は次のように表されます。7shi-qrot

単位四元数による回転子

$$ \begin{aligned} n&=n_x\,\mathbf{i}+n_y\,\mathbf{j}+n_z\,\mathbf{k}\quad(n_x^2+n_y^2+n_z^2=1,\ n^2=-1) \\ q&=\cos\frac\theta2+n\sin\frac\theta2=e^{nθ/2} \end{aligned} $$

3次元球面$S^3$の点である単位四元数から、2次元球面$S^2$の点である単位純虚四元数への写像を作るため、回転を作用させる特定の始点を1つ固定します。ここでは始点として$\mathbf{k}$を選びます。単位四元数$ω$によって$\mathbf{k}$を回転させる写像$ω\mapsto ω\mathbf{k}ω^*$が、四元数によるホップファイブレーションの定義です。wiki-hopf

回転子 ω

$$ ω=ω_0+ω_1\mathbf{i}+ω_2\mathbf{j}+ω_3\mathbf{k}\quad(ω_0^2+ω_1^2+ω_2^2+ω_3^2=1) $$

$ω$によって虚数単位$\mathbf{k}$を回転させます。

$$ \begin{aligned} ω\mathbf{k}ω^* &=(ω_0+ω_1\mathbf{i}+ω_2\mathbf{j}+ω_3\mathbf{k})\mathbf{k}(ω_0+ω_1\mathbf{i}+ω_2\mathbf{j}+ω_3\mathbf{k})^* \\ &=(ω_0\mathbf{k}-ω_1\mathbf{j}+ω_2\mathbf{i}-ω_3)(ω_0-ω_1\mathbf{i}-ω_2\mathbf{j}-ω_3\mathbf{k}) \\ &=  ω_0\mathbf{k}(ω_0-ω_1\mathbf{i}-ω_2\mathbf{j}-ω_3\mathbf{k}) \\ &\ -ω_1\mathbf{j}(ω_0-ω_1\mathbf{i}-ω_2\mathbf{j}-ω_3\mathbf{k}) \\ &\ +ω_2\mathbf{i}(ω_0-ω_1\mathbf{i}-ω_2\mathbf{j}-ω_3\mathbf{k}) \\ &\ -ω_3          (ω_0-ω_1\mathbf{i}-ω_2\mathbf{j}-ω_3\mathbf{k}) \\ &=  ω_0^2\mathbf{k} -ω_0ω_1\mathbf{j} +ω_0ω_2\mathbf{i} +ω_0ω_3 \\ &\ -ω_0ω_1\mathbf{j} -ω_1^2\mathbf{k} -ω_1ω_2 +ω_1ω_3\mathbf{i} \\ &\ +ω_0ω_2\mathbf{i} +ω_1ω_2 -ω_2^2\mathbf{k} +ω_2ω_3\mathbf{j} \\ &\ -ω_0ω_3 +ω_1ω_3\mathbf{i} +ω_2ω_3\mathbf{j} +ω_3^2\mathbf{k} \\ &=  ( ω_0ω_3 -ω_1ω_2 +ω_1ω_2 -ω_0ω_3) \\ &\ +( ω_0ω_2 +ω_1ω_3 +ω_0ω_2 +ω_1ω_3)\mathbf{i} \\ &\ +(-ω_0ω_1 -ω_0ω_1 +ω_2ω_3 +ω_2ω_3)\mathbf{j} \\ &\ +( ω_0^2  -ω_1^2  -ω_2^2  +ω_3^2 )\mathbf{k} \\ &= 2(ω_0ω_2+ω_1ω_3)\mathbf{i} +2(ω_2ω_3-ω_0ω_1)\mathbf{j} +\{(ω_0^2+ω_3^2)-(ω_1^2+ω_2^2)\}\mathbf{k} \end{aligned} $$

$ω\mathbf{k}ω^*$は実部を持たない純虚四元数です。係数の2乗和を確認します。

$$ \begin{aligned} &\{2(ω_0ω_2+ω_1ω_3)\}^2+\{2(ω_2ω_3-ω_0ω_1)\}^2+\{(ω_0^2+ω_3^2)-(ω_1^2+ω_2^2)\}^2 \\ =&4ω_0^2ω_2^2+8ω_0ω_1ω_2ω_3+4ω_1^2ω_3^2+4ω_2^2ω_3^2-8ω_0ω_1ω_2ω_3+4ω_0^2ω_1^2 \\ &+ω_0^4+2ω_0^2ω_3^2+ω_3^4-2(ω_0^2ω_1^2+ω_0^2ω_2^2+ω_3^2ω_1^2+ω_3^2ω_2^2)+ω_1^4+2ω_1^2ω_2^2+ω_2^4 \\ =&ω_0^4+ω_1^4+ω_2^4+ω_3^4+2ω_0^2ω_1^2+2ω_0^2ω_2^2+2ω_0^2ω_3^2+2ω_1^2ω_2^2+2ω_1^2ω_3^2+2ω_2^2ω_3^2 \\ =&(ω_0^2+ω_1^2+ω_2^2+ω_3^2)^2 \\ =&1 \end{aligned} $$

よって$ω\mathbf{k}ω^*$は単位純虚四元数であり、単位球面上の一点を指すことが確認できました。

ノルムの乗法性

四元数のノルムは乗法的$|pq|=|p||q|$であるため、展開しなくても$|ω\mathbf{k}ω^*|=|ω||\mathbf{k}||ω^*|=1$が直ちに得られます。

内積・外積

ここで、2次元ベクトル間の内積と外積(ウェッジ積)を思い出してみます。

内積:$\begin{pmatrix}α_0\\α_1\end{pmatrix}\cdot\begin{pmatrix}β_0\\β_1\end{pmatrix}=α_0β_0+α_1β_1$

外積:$\begin{pmatrix}α_0\\α_1\end{pmatrix}\wedge\begin{pmatrix}β_0\\β_1\end{pmatrix}=\star(α_0β_1-α_1β_0)$

ここで$\star$はホッジ双対で、2次元ではスカラーを、向き付き平面の単位面積要素$\star1$のスカラー倍に写します。係数$α_0β_1-α_1β_0$は符号付き面積を表します。

$ω\mathbf{k}ω^*$の$\mathbf{i},\mathbf{j}$の係数が内積・外積の係数と対応付けられるように並べ替えます。

$$ \begin{aligned} ω\mathbf{k}ω^* &= 2(ω_0ω_2+ω_1ω_3)\mathbf{i} +2(ω_2ω_3-ω_0ω_1)\mathbf{j} +\{(ω_0^2+ω_3^2)-(ω_1^2+ω_2^2)\}\mathbf{k} \\ &= 2(ω_3ω_1+ω_0ω_2)\mathbf{i} +2(ω_3ω_2-ω_0ω_1)\mathbf{j} +\{(ω_3^2+ω_0^2)-(ω_1^2+ω_2^2)\}\mathbf{k} \\ \end{aligned} $$

ここで次のように対応付けます。

$$ \begin{pmatrix}α_0\\α_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}ω_3\\ω_0\end{pmatrix} ,\quad \begin{pmatrix}β_0\\β_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}ω_1\\ω_2\end{pmatrix} $$

すると、$ω\mathbf{k}ω^*$の係数に内積と外積の係数の2倍が含まれることが分かります。

$$ ω\mathbf{k}ω^* = 2(α_0β_0+α_1β_1)\mathbf{i} +2(α_0β_1-α_1β_0)\mathbf{j} +\{(α_0^2+α_1^2)-(β_0^2+β_1^2)\}\mathbf{k} $$

複素数への分割

内積・外積を求めるのに使用したベクトルを複素数で表現することで、$ω$を2つの複素数へ分割します。これらを$α,β$とします。

単位四元数の複素数への分割

$$ \begin{alignedat}{3} α&=&α_0&+α_1i&&=ω_3+ω_0i \\ β&=&β_0&+β_1i&&=ω_1+ω_2i \end{alignedat} $$

この対応は、四元数を実4次元ベクトルとして見たときの座標の対応です。部分代数$\mathbb R+\mathbb R\mathbf k$を複素数に置き換えたものではなく、回転結果の$\mathbf i,\mathbf j$成分がそれぞれ$2\mathrm{Re}(α^*β),\ 2\mathrm{Im}(α^*β)$となるように選んでいます。

左因子を複素共役にして積を求めれば、内積と外積の係数が得られます。

$$ \begin{aligned} α^*β &=(α_0-α_1i)(β_0+β_1i) \\ &=(α_0β_0+α_1β_1)+(α_0β_1-α_1β_0)i \end{aligned} $$

$ω\mathbf{k}ω^*$を書き換えます。

$$ ω\mathbf{k}ω^*=2\mathrm{Re}(α^*β)\mathbf{i}+2\mathrm{Im}(α^*β)\mathbf{j}+(|α|^2-|β|^2)\mathbf{k} $$

複素数によるホップファイブレーションの表式が四元数から得られました。

複素数ホップ写像

前節の結果では、複素数$α^*β$の実部と虚部が、そのまま$\mathbf{i},\mathbf{j}$の係数になっています。

$$ ω\mathbf{k}ω^*=2\mathrm{Re}(α^*β)\mathbf{i}+2\mathrm{Im}(α^*β)\mathbf{j}+(|α|^2-|β|^2)\mathbf{k} $$

そこで複素数$c$と実数$z$のペア$(c,z)$を純虚四元数$\mathrm{Re}(c)\mathbf{i}+\mathrm{Im}(c)\mathbf{j}+z\mathbf{k}$と対応させれば、$ω\mathbf{k}ω^*$は複素数のペア$(α,β)$から、複素数$2α^*β$と実数$|α|^2-|β|^2$のペアへの写像として表せます。

複素数ホップ写像

単位球面上の点 $|α|^2 + |β|^2 = 1$ は、以下の写像によって2次元球面上の点に射影される。
$$ H(α, β) = \left(2α^* β, |α|^2 - |β|^2\right) $$

原論文の形との関係

Hopfの原論文の実座標による式を複素数$α,β$でまとめると、$(2αβ^*,|α|^2-|β|^2)$の形になります。7shi-homog

$2αβ^*$は$2α^*β$の複素共役なので、両者の像は$\mathbf{j}$成分の符号だけが異なります。本記事では、後述するパウリ行列による座標と一致する$2α^*β$の形を採ります。

実部と虚部の分離

複素共役での虚部の符号反転によって、実部と虚部が分離できます。また、分離した虚部に$-i$を掛けることで実数化できます。

実部と虚部の分離

$$ \begin{alignedat}{4} 2\mathrm{Re}(α^*β)&=&&α^*β+(α^*β)^*&&=&&α^*β+β^*α \\ 2\mathrm{Im}(α^*β)&=-i(&&α^*β-(α^*β)^*)&&=-i(&&α^*β-β^*α) \end{alignedat} $$

これを$ω\mathbf{k}ω^*$に適用します。

$$ \begin{aligned} ω\mathbf{k}ω^* &=2\mathrm{Re}(α^*β)\mathbf{i}+2\mathrm{Im}(α^*β)\mathbf{j}+(|α|^2-|β|^2)\mathbf{k} \\ &=(α^*β+β^*α)\mathbf{i}-i(α^*β-β^*α)\mathbf{j}+(α^*α-β^*β)\mathbf{k} \end{aligned} $$

虚数単位 i の区別

複素数の$i$と四元数の$\mathbf i$を表記上区別しています。$-i(α^*β-β^*α)$は実数となるため、得られる結果に複素数と四元数が混在することはありません。

パウリ行列

複素数$α,β$を成分とする複素ベクトル$\Psi$とそのエルミート共役(成分の複素共役を取る転置)を定義します。

複素ベクトル Ψ とそのエルミート共役

$$ \Psi=\begin{pmatrix}α\\β\end{pmatrix},\ \Psi^\dagger=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix} $$

$ω\mathbf{k}ω^*$の$\mathbf{i},\mathbf{j},\mathbf{k}$の係数を$x,y,z$とします。

$$ ω\mathbf{k}ω^* =(\underbrace{α^*β+β^*α}_{x})\mathbf{i}\underbrace{-i(α^*β-β^*α)}_{y}\mathbf{j}+(\underbrace{α^*α-β^*β}_{z})\mathbf{k} $$

各項に含まれる複素共役を$\Psi^\dagger$に対応させ、ベクトルの内積で表現します。内積の右因子は、$\Psi$から変換するための行列$\sigma_x,\sigma_y,\sigma_z$を作って挟みます。

$$ \begin{alignedat}{5} x  &=&&α^*β+β^*α &  &=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix}\begin{pmatrix}β\\α\end{pmatrix} &  &=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}α\\β\end{pmatrix} &  &=\Psi^\dagger\sigma_x\Psi \\ y&=-i(&&α^*β-β^*α) &  &=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\begin{array}{r}-iβ\\iα\end{array}\end{pmatrix} &  &=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}α\\β\end{pmatrix} &  &=\Psi^\dagger\sigma_y\Psi \\ z&=&&α^*α-β^*β &  &=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\begin{array}{r}α\\-β\end{array}\end{pmatrix} &  &=\begin{pmatrix}α^*&β^*\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}α\\β\end{pmatrix} &  &=\Psi^\dagger\sigma_z\Psi \\ \end{alignedat} $$

これらの変換行列がパウリ行列です。

パウリ行列

$$ \sigma_x=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix} ,\ \sigma_y=\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix} ,\ \sigma_z=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix} $$

パウリ行列による計算は、$ω\mathbf{k}ω^*$と同等の計算を形式的かつ簡潔にまとめます。

パウリ行列による座標変換

$$\Psi\mapsto\begin{pmatrix}   \Psi^\dagger\sigma_x\Psi \\   \Psi^\dagger\sigma_y\Psi \\   \Psi^\dagger\sigma_z\Psi\end{pmatrix}$$

$x=2\mathrm{Re}(α^*β),\ y=2\mathrm{Im}(α^*β)$より$x+iy=2α^*β$であり、座標$(x+iy,z)$は複素数ホップ写像$H(α,β)$と一致します。

量子情報では、$\Psi$を状態ベクトル、パウリ行列による座標変換の像である単位球面をブロッホ球面と呼びます。ブロッホ球面は、正規化された$\Psi$が表す純粋状態に対応します。

ファイバー

ホップファイブレーションは全射です。任意の単位純虚四元数$p$に対して$\mathbf k$を$p$へ移す回転が存在するため、その回転を表す単位四元数$ω$を取れば$ω\mathbf kω^*=p$となります。一方で単射ではなく、ある一点の逆像は円周となります。この円周はファイバーと呼ばれます。

与えられた単位純虚四元数$p$を固定する単位四元数$q$の集合は$q = u + vp$の形をしている。ここで$u$と$v$は$u^2 + v^2 = 1$を満たす実数である。これは円周部分群である。wiki-hopf

単位純虚四元数の2乗は$-1$となります。

$$ p^2=-1 $$

$q$によって$p$を回転させます。

$$ \begin{aligned} qpq^* &=(u+vp)p(u+vp)^* \\ &=(u+vp)p(u-vp) \\ &=(u+vp)(u-vp)p \\ &=(u^2+v^2)p \\ &=p \end{aligned} $$

$p$が固定されていることが確認できました。

具体的には$p = \mathbf k$とすることができ、そうするとホップファイブレーションは、単位四元数$ω$を$ω\mathbf kω^*$に送る写像として定義できる。$q$が$\mathbf k$を固定する単位四元数の円周の1つであれば、すべての四元数$ωq$は同じものに写される。wiki-hopf

$p=\mathbf{k}$とおけば、$q\mathbf{k}q^*=\mathbf{k}$より次が成り立ちます。

$$ (ωq)\mathbf{k}(ωq)^*=ω(q\mathbf{k}q^*)ω^*=ω\mathbf{k}ω^* $$

したがって$ωq$は$ω$と同じ点$ω\mathbf{k}ω^*$に写されます。逆に、同じ点に写される単位四元数はこの形に限られます。

逆像の一致

単位四元数$η$が$η\mathbf kη^*=ω\mathbf kω^*$を満たすならば、$\mathbf k$を固定する単位四元数$q=u+v\mathbf k\ (u^2+v^2=1)$によって$η=ωq$と表される。

$q=ω^*η$とおくと、$ωω^*=1$より$η=ωq$であり、$q$は単位四元数である。$η\mathbf kη^*=ω\mathbf kω^*$の両辺に左から$ω^*$、右から$ω$を掛けると$q\mathbf kq^*=\mathbf k$となり、さらに右から$q$を掛けると$q\mathbf k=\mathbf kq$を得る。$q=a+b\mathbf i+c\mathbf j+d\mathbf k$とおけば、次のようになる。
$$ q\mathbf k=-d+c\mathbf i-b\mathbf j+a\mathbf k,\quad \mathbf kq=-d-c\mathbf i+b\mathbf j+a\mathbf k $$
両辺を比較すると$b=c=0$となる。よって$q=a+d\mathbf k$であり、$|q|=1$より$a^2+d^2=1$である。

以上より、点$ω\mathbf{k}ω^*$の逆像は$ωq$の軌跡そのものであり、円周となります。ホップファイブレーションは、3次元球面$S^3$を2次元球面$S^2$上に円周$S^1$を貼り付けたファイバー束をなします。ただし、各点の近くで局所的に直積として表せること(局所自明性)の証明は本記事では扱いません。

$$ \underbrace{S^{1}}_{q} \hookrightarrow \underbrace{S^{3}}_{ω} \xrightarrow{H} \underbrace{S^{2}}_{ω\mathbf{k}ω^*} $$

直積との違い

この束は自明束ではありません。すなわち、射影と整合する形で、3次元球面$S^3$を直積$S^2\times S^1$と大域的かつ連続的に同一視することはできません。この証明は本記事では扱いません。

まとめ

本記事では、単位四元数$ω$で始点$\mathbf{k}$を回転させる写像$ω\mapsto ω\mathbf{k}ω^*$として、3次元球面$S^3$から2次元球面$S^2$へのホップファイブレーションを構成しました。$ω$の成分から作った2つの複素数$α,β$を用いると、回転結果の係数には内積と外積の係数が現れ、複素数と実数のペアとして読むことで複素数ホップ写像が定義されます。さらに、複素ベクトル$\Psi=(α,β)^T$とそのエルミート共役$\Psi^\dagger$で挟む形に整理すると、パウリ行列$\sigma_x,\sigma_y,\sigma_z$が現れます。また、$\mathbf{k}$を固定する単位四元数$q$は円周をなし、$ωq$はすべて$ω$と同じ点に写されることから、各点の逆像が円周となることを確認しました。

四元数の回転による表示

$$ ω\mathbf{k}ω^* =2\,\underbrace{\mathrm{Re}(α^*β)}_{\text{内積}}\,\mathbf{i}+2\,\underbrace{\mathrm{Im}(α^*β)}_{\text{外積の係数}}\,\mathbf{j}+(|α|^2-|β|^2)\mathbf{k} $$

複素数ホップ写像

$$ H(α, β) = \left(2α^* β, |α|^2 - |β|^2\right) $$

パウリ行列による座標

$$ \begin{pmatrix}x\\y\\z\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\Psi^\dagger\sigma_x\Psi\\\Psi^\dagger\sigma_y\Psi\\\Psi^\dagger\sigma_z\Psi\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}α^*β+β^*α\\-i(α^*β-β^*α)\\α^*α-β^*β\end{pmatrix} $$

ファイバー束の構造

$\mathbf k$を固定する単位四元数$q=u+v\mathbf k\ (u^2+v^2=1)$は円周をなし、$ωq$はすべて$ω$と同じ点$ω\mathbf kω^*$に写される。
$$ \underbrace{S^{1}}_{q} \hookrightarrow \underbrace{S^{3}}_{ω} \xrightarrow{H} \underbrace{S^{2}}_{ω\mathbf{k}ω^*} $$

射影直線による定式化

ホップファイブレーションの定式化はいくつかあり、射影直線によるものが一般的です。dim7-8

同次座標と立体射影を用いた初等的な導出については以前の記事を参照してください。7shi-homog

参考文献

投稿日:2024年5月14日
更新日:14時間前
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