黄金数で遊んでいた($\varphi=e^{\frac{\pi i}{5}}+e^{-\frac{\pi i}{5}}$なので...)とき、双曲線関数の級数について、次の予想を見つけました。
とくに、$x=4k+1(k\in\mathbb{N})$のとき、ほとんど整数(almost integer)が得られることがわかります。
$\lim_{n\to\infty}=\frac{x-1}{4}$のような挙動をせず、$x=20$付近で精度が最大になっているようですが、部分和を計算してみると少し疑わしいような気もします。部分和$\sum_{k=1}^n \frac{1}{e^{\frac{k\pi}{x}}+e^{-\frac{k\pi}{x}}}$について、WolframAlphaで計算した結果が以下の表です。
x\n | n=100 | n=10000 | n→∞ |
---|---|---|---|
x=5 | $1+7.5×10^{-7}$ | $1+7.5×10^{-7}$ | $1+7.5×10^{-7}$ |
x=21 | $5-8.0×10^{-6}$ | $5+4.7×10^{-28}$ | $5-6.3×10^{-26}$ |
x=41 | $10-5.9×10^{-3}$ | $10$ | $10-6.1×10^{-13}$ |
x=101 | $23.5899\cdots$ | $25$ | $24.9371\cdots$ |
部分和の負荷が大きいのか、それともWolframAlphaの無限和がおかしいのかは分かりませんが、$x$が小さい場合を除き部分和の極限と級数の挙動に差が出てしまっています。部分和だけを見れば$n\to\infty$のとき$\frac{x-1}{4}$に収束するように見え、また$x\to\infty$のときも$\frac{x-1}{4}$に収束するように見えます。(WolframAlphaの級数ってどういう仕組みで軽量に計算しているんでしょうか)
一方で、$x$が小さい時は収束が速く、$f(5)\approx 1$くらいの予想なら確実に成り立ちそうです。
ポリガンマ関数(ここではディガンマ関数)のq-類似であるq-ポリガンマ関数を用いると、次のように変形することができます。
$$\psi_q^{(0)}(x) = -\log{(1-q)}+\log{q}\sum_{n=0}^\infty\frac{q^{n+x}}{1-q^{n+x}}$$
を用いる。
$$
\frac{i}{2\pi}x\left(\psi_{e^{\frac{\pi}{x}}}^{(0)}\left(-\frac{ix}{2}\right)-\psi_{e^{\frac{\pi}{x}}}^{(0)}\left(\frac{ix}{2}\right)\right)-\frac{1}{2}
$$
$$
=\frac{xi}{2\pi}\left( \left(\log{\frac{1}{1-e^{\frac{\pi}{x}}}}\right) + \frac{\pi}{x}\sum_{n=0}^\infty\frac{e^{\frac{n\pi}{x}}e^{-\frac{ix}{2}}}{1-e^{\frac{n\pi}{x}}e^{-\frac{ix}{2}}} - \left(\log{\frac{1}{1-e^{\frac{\pi}{x}}}}\right) - \frac{\pi}{x}\sum_{n=0}^\infty\frac{e^{\frac{n\pi}{x}}e^{\frac{ix}{2}}}{1-e^{\frac{n\pi}{x}}e^{\frac{ix}{2}}}\right)-\frac{1}{2}
$$
$$
=\frac{i}{2}\left( \sum_{n=0}^\infty\left( \frac{-ie^{\frac{n\pi}{x}}}{1+ie^{\frac{n\pi}{x}}} - \frac{ie^{\frac{n\pi}{x}}}{1-ie^{\frac{n\pi}{x}}} \right) \right)-\frac{1}{2}
$$
$$
=\frac{1}{2}\sum_{n=0}^\infty\left( \frac{e^{\frac{n\pi}{x}}}{1+ie^{\frac{n\pi}{x}}} + \frac{e^{\frac{n\pi}{x}}}{1-ie^{\frac{n\pi}{x}}} \right)-\frac{1}{2}
$$
$$
=\frac{1}{2}e^{\frac{n\pi}{x}}\sum_{n=0}^\infty\frac{2}{1+e^{\frac{2n\pi}{x}}}-\frac{1}{2}
$$
$$
=\sum_{n=0}^\infty\frac{e^{\frac{n\pi}{x}}}{1+e^{\frac{2n\pi}{x}}}-\frac{1}{2}
$$
$$
=\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{e^{\frac{n\pi}{x}}+e^{-\frac{n\pi}{x}}}-\frac{1}{2}
$$
$$
=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{e^{\frac{n\pi}{x}}+e^{-\frac{n\pi}{x}}}=f(x)
$$
しかし、WolframAlphaで計算すると、この変形は正しいという一方で、微妙に値がズレていたり(正確に$\frac{x+1}{2}$だけ大きくなる)$x$が大きくなればなるほど近似精度が上がっていったり(前述の$\lim_{x \to \infty}f(x)=\frac{x-1}{4}$が成り立ってしまう)としていたので、どこかに間違いがある可能性も否めません。
f(x)\x | x=5 | x=21 | x=41 | x=101 |
---|---|---|---|---|
双曲線関数の級数 | $1+7.5×10^{-7}$ | $5-6.3×10^{-26}$ | $10-6.1×10^{-13}$ | $24.9371...$ |
q-ポリガンマ関数 | $3.5+7.5×10^{-7}$ | $15.5+4.7×10^{-30}$ | $30.5+4.7×10^{-56}$ | 計算不可 |
うーん。
証明を試みる(解決済)正確には双曲線正割関数$\sech$の級数であり、例えば$n$倍角の性質を使おうにも、あらゆる式が分母に来てしまうのが非常に厄介です。
また、ほとんど整数といえばゲルフォント定数の近似$e^\pi \approx \pi + 20$が有名で、式中にも出てきますが、近似精度からみて今回の予想には関わらなさそうです。
有効な方法、緒を見つけたら追記しようと思います。(2/11編集)
有り難く、御二方から証明を示していただきました。コメント欄をぜひご覧ください。ポアソン和公式を用いる方法はとてもエレガントで、オイラー・マクローリンの和公式を用いる方法はさらに剰余項まで導出することができるようです。ありがとうございました!(2/13追記)
続き Wataruさんの記事q超幾何級数によるJacobiの二平方和定理, 四平方和定理の証明,q超幾何級数によるJacobiの六平方和定理, 八平方和定理の証明から、
$$\sum_{n=-\infty}^\infty \frac{1}{e^{\frac{n^2\pi}{x}}} \approx \sqrt{x}$$
という近似を思いつき(ポアソン和公式やオイラー・マクローリンの和公式を用いて同様に証明できる)、これと二平方和定理~八平方和定理を用いることで様々な近似級数を作れることに気づきました。新しく記事を書こうと思います。(2/24追記)
続きの記事です。(2/26追記)
Jacobiの平方和定理による指数関数を含む級数の近似