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大学数学基礎解説
文献あり

積位相と Borel 集合族

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Ref. [Ø]を参考に、以下のような問題を考える。

Tを適当な集合とし、TからRnへの函数の集合

X:=(Rn)T={f:TRn}

を考える。Rnの Borel 集合FtiB(Rn), 1ikを用いて{fX; f(ti)Fti,1ik}と書けるような集合から生成されるσ-加法族Bが、Tの適当な条件のもとで、Xのある位相についての Borel 集合族となることを以下で見たい。具体的には以下を示したい。(この内容は Ref. [Ø]の主張より弱いが、とりあえず今回はこの弱い主張を確認したい)

tTに対して射影πt:(Rn)TRnff(t)で定める時、この射影を用いてXに積位相を入れる。Tが可算濃度の時、σ-加法族Bは積位相に関する Borel 集合族になる。

函数の集合Xの積位相

tTに対して射影πt:(Rn)TRnff(t)で定める。この射影を用いてXに積位相を入れる。よって、tTに対して、準開基はUtO(Rn)に対する “シリンダー” となる。f(t)が属するRnに目印をつけてRtnと書くことにすると、イメージとしては以下のような感じのものになる。

πt1(Ut)=(t<tRtn)×Ut×(t>tRtn)

積位相の開基はこれらの有限交叉となる。例えば 2 個の準開基の交叉は以下のようになる。

i=12πti1(Uti)=(t<t1Rtn)×Ut1×(t1<t<t2Rtn)×Ut2×(t>t2Rtn)

もう少し一般的な書き方をすると、以下のようなものである:

(1)N(Ut1,,Utk):=i=1k{πti1(Uti);UtiO(Rn)}

位相の(準)開基の可視化 位相の(準)開基の可視化

よって、X=(Rn)Tの積位相における開集合は一般にO=N(Ut1,,Utk)の形で表現される。この位相は各πt, tTを連続にする最弱の位相である。

また、この積位相はXの函数について「各点収束の位相」とも呼ばれる。つまり、fnf in X fn(t)f(t), tTである。(Ref. [F] Prop 4.12)

σ-加法族

Xに次のようなσ-加法族を導入する。Rnの Borel 集合FtiB(Rn), 1ikを用いて

(2){fX;f(ti)Fti,1ik}

と表される集合から生成されるX上のσ-加法族をBとする。Tが第 2 可算公理を満たす時、このBXの積位相についての Borel 集合族になることを見たい。

定理の証明

Eq. (2) を書き換えよう。これはfXt1, t2, t3U1, U2, U3を通るようなものである。これを踏まえると、

(3)i=1k{πti1(Fti); FtiB(Rn)}

と書き直すことができることが分かる。特にFti=UtiO(Rn)B(Rn)をとると、Eq. (1) よりN(Ut1,,Utk)に等しい。よって、BXの積位相における開基を含むことが分かった。

ここで、B¯を開基N(U1,,Uk)の集合から生成される最小のσ-加法族とする。この開基が定める位相が第 2 可算公理を満たす時(後述)、開基の可算個の合併N(U1,,Uk)で表現される開集合がすべてB¯に含まれる。つまりB¯Xの位相についての Borel 集合族となる。  
ところで、O(Rn)B(Rn)なので、B¯Bである。  
また、Ref. [F] Prop 2.1 よりO(Rn)πt, tTによる逆像はπtの連続性により開集合であり、故にB¯に含まれるので、πt(B¯,B(Rn))-可測である。よって、Eq. (3) またはそれと等価な Eq. (2) のような集合はすべてB¯に含まれる。よって、Eq. (2) の集合から生成されるσ-加法族BBB¯ということになる。以上より、B=B¯である。

最後に、Xの積位相が第 2 加算公理を満たすことが示されればBは Borel 集合であることが分かる。これについては、Rnは第 2 加算公理を満たす(c.f. Ref. [U] 例 17.5)ことから、仮定よりTは可算濃度なのでX=(Rn)Tもまた第 2 加算公理を満たすことから従う(c.f. Ref. [F] Section 4.2 Exercise 20, Ref. [K] Chapter 3 Theorem 6 & Problems M)。

例えば、T=[0,)Qの時、定理が成立する。

まとめ

本の主張よりは弱い形での証明だが、一般的な(?) 開集合に対する Borel 集合族を考えるということをしてこなかったので、良い題材になった。第 2 可算公理も “おまじない” としてしか使っていなかったので、今回比較的ちゃんと向き合うことができて良かった。

参考文献

[1]
[Ø] B. エクセンダール, 確率微分方程式, 丸善出版, 2012
[2]
[F] G. Folland, Real Analysis (Second Edition), John Wiley& Sons, Inc., 1999
[3]
[U] 内田伏一, 集合と位相, 裳華房, 1985
[4]
[K] John L. Kelley, General Topology, Springer, 1955
投稿日:2024416
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derwind
derwind
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数学を専攻してたはずのに気がついたら道を踏み外しちゃったよ的なー。プログラムでの検証等々は https://zenn.dev/derwind でうにょうにょ。

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  3. 定理の証明
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