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現代数学解説
文献あり

束の素元と既約元と原子元と直既約元とコンパクト元

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$$\newcommand{atom}[0]{\mathrm{Atom}} \newcommand{card}[1]{|#1|} \newcommand{comp}[0]{\mathrm{Comp}} \newcommand{directedsubset}[0]{\underset{\mathrm{directed}}{\subset}} \newcommand{dotge}[0]{\dot\ge} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{i}[0]{\ \ \ \ \ \ } \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{ii}[0]{\i\i} \newcommand{iii}[0]{\i\i\i} \newcommand{im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{mapsdown}[0]{\overline{\downarrow}} \newcommand{mapsup}[0]{\underline{\uparrow}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{setmid}[0]{\middle|} \newcommand{simeqw}[1]{\simeq_{\mathrm{#1}}} \newcommand{subsetfin}[0]{\underset{\mathrm{fin}}{\subset}} \newcommand{subsetw}[1]{\underset{\mathrm{#1}}{\subset}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

自分用のノート

Boole代数について: https://mathlog.info/articles/D2eYWclDN66J4HYRKzW8
イデアルとフィルターについて: https://mathlog.info/articles/H7Q7ouWo9xmHpkVt1dEp

前提

半順序集合$P$$x \in P$$Q \subset P$に対し、$↓^Q x = \set{y \in Q \mid y \le x}$とする。

$0$は最小元を意味し、$1$は最大元を意味する。

完備束$L$上の二項関係を以下で定める。
$x \preceq y :⇔ x \le y$かつ$(x \le z \le y ⇒ z = x$または$z = y)$
$x \prec y :⇔ x \preceq y$かつ$x \not= y$

半順序集合$P$に対し、$D \subsetw{directed} P$と書くと、$D$$P$の有向部分集合であることを意味する。
半順序集合$P$に対し、$F \subsetw{finite} P$と書くと、$F$$P$の有限部分集合であることを意味する。
半順序集合$P$に対し、$T \subsetw{total} P$と書くと、$T$$P$の全順序部分集合であることを意味する。

完備束$L$上の二項関係を以下で定める。
$x \ll y :⇔ \forall D \subsetw{directed} L, y \le \bigvee D \implies \exists d \in D; x \le d$

$⇓^Lx := \set{y \in L \mid y \ll x}$と定める。

定義

$0$を持つ上半束$L$において、

$p \in L$結び素元(join-prime element)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $p\not=0$
  • $\forall x,y \in L\ (p \le x \vee y),\ p \le x$または$p \le y$

$1$を持つ下半束$L$において、

$q \in L$交わり素元(meet-prime element)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $q\not=1$
  • $\forall x,y \in L\ (x \wedge y \le q),\ x \le q$または$y \le q$

$0$を持つ上半束$L$において、

$a \in L$結び既約元(join-irreducible element)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $a \not= 0$
  • $\forall x,y \in L\ (a = x \vee y),\ x = a$または$y=a$

$1$を持つ下半束$L$において、

$b \in L$交わり既約元(meet-irreducible element)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $b \not=1$
  • $\forall x,y \in L\ (b = x \wedge y),\ x = b$または$y=b$

$0$を持つ半順序集合$L$において、
$a \in L$原子元(atom)であるとは、$0 \prec a$であることを言う。


$1$を持つ半順序集合$L$において、
$b \in L$余原子元(coatom)であるとは、$b \prec 1$であることを言う。

$0$を持つ束$L$において、

$a \in L$結び直既約元(join-direct-irreducible element)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $a \not= 0$
  • $\forall x,y \in L\ (a = x \vee y$かつ$0 = x \wedge y),\ x = 0$または$y=0$

$1$を持つ束$L$において、

$b \in L$交わり直既約元(meet-direct-irreducible element)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $b \not=1$
  • $\forall x,y \in L\ (b = x \wedge y$かつ$1 = x \vee y),\ x = 1$または$y=1$

完備束$L$$a \in L$に対し、$a$コンパクト元とは、以下を満たすことを言う。

$$\forall S \subset L, a \le \bigvee S \implies \exists T \subsetw{finite} S;\ a \le \bigvee T$$

$L$を完備束とする。次が成り立つとき$x \in L$有限であると言われる。

$x \ll x$

$x$が有限であることと$x$がコンパクト元であることは同値である。

[コンパクト元ならば有限]
$D \subsetw{directed} L$を取る。
$x \le \bigvee D$とする。

$x$のコンパクト性より、$x \le \bigvee T$なる有限集合$T \subsetw{finite} D$が存在する。
$D$の有向性より、$T$の上界$d \in D$が存在し、$x \le d$となる。

[有限ならばコンパクト元]
$S \subset L$を取る。
$x \le \bigvee S$とする。

$D = \set{\bigvee T \mid T \subsetw{finite} S}$と置く。
このとき、$D$は有向集合であり、$x \le \bigvee S = \bigvee D$である。
$x$は有限だから、ある$d \in D$が存在して$x \le d$である。
$d \in D$だから、$d = \bigvee T$と表せる。($T \subsetw{finite} S$)
$x \le \bigvee T$だから、$x$はコンパクト元であった。

完備束$L$$a \in L$に対し、$a$有限生成とは、以下を満たすことを言う。

$$\forall S \subset L, a = \bigvee S ⇒ \exists T \subsetw{finite} S; a = \bigvee T$$

完備束$L$のコンパクト元全体を$\comp(L)$と書くことにする。
有界半順序集合$L$の原子元全体を$\atom(L)$と書くことにする。

完備束$L$の元$a \in L$に対し、以下は同値。

  1. $a = \bigvee↓^{\atom(L)}a$
  2. $\exists (a_i)_{i \in I} \subset \atom(L); a = \bigvee_{i \in I}a_i$

これが成り立つとき、$a$原子論的(atomistic)であるという。

任意の元が原子論的であるとき、$L$原子論的(atomistic)であるという。

[1 ⇒ 2]
明らか。

[2 ⇒ 1]
$a = \bigvee_{i \in I}a_i$となる$(a_i)_{i \in I} \subset \atom(L)$を取る。

両辺に$↓^{\atom(L)}a$との結びを取ると、

$a = \bigvee↓^{\atom(L)}a$

有界束$L$原子根的(atomic)であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $0$でない任意の元は原子元の上にある。
    ($\forall x \in L\setminus\set{0}, \exists a \in \atom(L); a \le x$)
原子元を持つが原子根的でない例

$P = \N \times \Q_{\ge0}$と置く。
$P$の原子元は$(1,0)$のみ。しかし$(1,0) \not\le (0,1)$である。

完備束$L$コンパクト根的であるとは、以下を満たすことを言う。

  • $0$でない任意の元は$0$でないコンパクト元の上にある。
    ($\forall x \in L\setminus\set{0},\ \exists a \in \comp(L)\setminus\set{0};\ a \le x$)

ここだけの用語

それぞれが一致する条件

完備束$L$において、コンパクト元は有限生成である。

$a \in L$:コンパクト元
$a = \bigvee_{i \in I}c_i$ とする。

$a = \bigvee_{i \in I}c_i$ であるため、当然 $a \le \bigvee_{i \in I}c_i$ が成り立つ。

$a$はコンパクト元であるから、$J \subsetw{finite} I$ が存在して $a \le \bigvee_{i \in J}c_i$ となる。

一方で、任意の $i \in I$ について $c_i \le \bigvee_{i \in I}c_i = a$ だから、
その有限部分集合の結びをとっても $\bigvee_{i \in J}c_i \le a$ となる。

$a \le \bigvee_{i \in J}c_i$ かつ $\bigvee_{i \in J}c_i \le a$ だから、$a = \bigvee_{i \in J}c_i$ となる。

逆は成り立たない。

$L = \set{F \subset \N \mid \card{F} < \infty }$ と置く。
$L$は包含関係を順序として束となり、最小元$0 = \varnothing$を持つ。

特別な元$a,1$$L$の外から取る。

$L' = L \cup \set{a,1}$と置く。
すべての $F \in L$ について $0 \le F \le 1$ とする。
$0 \le a \le 1$ であり、$a$ は空でない任意の有限部分集合と比較不能とする。

このとき、$L'$は完備束になる。

[$a$は有限生成]
$a = \bigvee_{k \in I} d_k$ となったとする。

$a$ の下には $0$ しか存在しないから、結びが $a$ になるためには、$(d_k)_{k \in I}$ の中に必ず $a$ 自身が含まれていなければならない。
したがって、$a = \bigvee\set{a}$($\set{a} \subsetw{finite} (d_k)_{k \in I}$)と表せるから、$a$は有限生成である。

[$a$はコンパクト元でない]
$n \in \N$に対し、$c_n = \set{n}$とする。

$\bigvee_{n \in \N} c_n = 1$ となる。

よって $a \le 1 = \bigvee_{x \in X} c_x$ が成り立つ。

しかし、任意の有限部分集合 $F \subset \N$ に対して、結びは $\bigvee_{n \in F} c_n = F$ (有限部分集合)となる。
定義上、$a$$0$ 以外の有限部分集合とは比較不能だから、$a \le \bigvee_{n \in F} c_n$ は成り立たない。

$0$を持つ上半束において、
結び素元 ⇒ 結び既約元 ⇐ 原子元

$0$を持つ束において、
結び既約元 ⇒ 結び直既約元


$1$を持つ下半束において、
交わり素元 ⇒ 交わり既約元 ⇐ 余原子元

$1$を持つ束において、
交わり既約元 ⇒ 交わり直既約元

双対的であるから交わりの方だけ示す。


[交わり素元 ⇒ 交わり既約元]
$L$$1$を持つ下半束、
$p \in L$を交わり素元とする。

$x \wedge y = p$と仮定する。
$x=p$または$y=p$を示す。

$x \wedge y = p$であるから、当然$x \wedge y \le p$である。

$p$は素元であるため、定義より$x \le p$または$y \le p$となる。
ここで、$x \wedge y = p$$x,y$の下界であるから、$p \le x$かつ$p \le y$
したがって、

  • $x \le p$の場合、$p \le x$と合わせて$x = p$となる。
  • $y \le p$の場合、$p \le y$と合わせて$y = p$となる。

よって、$x=p$または$y=p$である。


[交わり既約元 ⇐ 余原子元]
$L$$1$を持つ下半束、
$p \in L$を余原子元とする。

$x \wedge y = p$と仮定する。
$x=p$または$y=p$を示す。

$p = x \wedge y \le x$であり、$p$は余原子元であるから、$x=p$または$x = 1$
同様に$y=p$または$y = 1$

$x = y = 1$と仮定すると、$p = x \wedge y = 1$となり、$p$が余原子元であることに矛盾。

よって、$x=p$または$y=p$である。


[交わり既約元 ⇒ 交わり直既約元]
$L$$1$を持つ束、
$p \in L$を交わり既約元とする。

$a,b \in L\ (p = a \wedge b $かつ$ a \vee b = 1)$を取る。

$p$は交わり既約元であるから、$a = p$または$b=p$

[$a = p$の場合]
$p = a \wedge b$であるから、$p \le b$である。
$a = p$であるから、$a \le b$である。
よって、$a \vee b = b$である。
$a \vee b = 1$だから、$b = 1$である。

[$b = p$の場合]
同様にして$a = 1$が分かる。

従って、$a = 1$または$b = 1$である。

既約元 ⇒ 素元は成り立たない。

例えば、5つの元$\{0, a, b, c, 1\}$からなる「非分配的」な束(ダイヤモンド束$M_3$)において、元$a$を考える。

$$ \xymatrix{ & & 1 & & \\ & & & & \\ a \ar@{-}[rruu] & & b \ar@{-}[uu] & & c \ar@{-}[lluu] \\ & & & & \\ & & 0 \ar@{-}[lluu] \ar@{-}[uu] \ar@{-}[rruu] & & } $$

$x \wedge y = a$となるのは$x=a$または$y=a$のみ($1 \wedge a = a$など)なので、$a$は既約元である。

しかし、$b \wedge c = 0 \le a$であるにもかかわらず、$b \not\le a$かつ$c \not\le a$であるため、$a$は素元ではない。

しかし、束が「分配束」であれば、この2つは完全に一致する。

既約元 ⇒ 原子元も成り立たない。

$L = \N$とする。

$2 \in \N$は結び既約元であるが、原子元ではない。

直既約元 ⇒ 既約元も成り立たない。

$$ \xymatrix{ & a & \\ b \ar@{-}[ru] & & c \ar@{-}[lu] \\ & d \ar@{-}[lu] \ar@{-}[ru] & \\ & 0 \ar@{-}[u] & } $$
$a$は結び既約でないが、結び直既約ではある。

$0$を持つ分配束$D$において、
結び既約元 ⇒ 結び素元


$1$を持つ分配束$D$において、
交わり既約元 ⇒ 交わり素元

双対的であるから交わりの方だけ示す。

$p$$1$を持つ分配束$D$の交わり既約元とする。

$x \wedge y \le p$と仮定する。
$x \le p$または$y \le p$を示す。

両辺と$p$の結びをとると、
$(x \wedge y) \vee p \le p$

$(x \wedge y) \vee p \ge p$であるから、$(x \wedge y) \vee p = p$となる。

ここで左辺に分配律を適用すると、
(左辺)$= (x \vee p) \wedge (y \vee p)$
従って、$(x \vee p) \wedge (y \vee p) = p$

仮定より$p$は交わり既約元だから、$x \vee p = p$または$y \vee p = p$となる。

$x \vee p = p$$x \le p$と同値であり、$y \vee p = p$$y \le p$と同値である。

よって、$x \le p$または$y \le p$

$0$を持つ分配束$D$において、
原子元 ⇒ 結び素元


$1$を持つ分配束$D$において、
余原子元 ⇒ 交わり素元

双対的であるから交わりの方だけ示す。

$c$を余原子元とする。
$x \wedge y \le c$と仮定する。
$x \le c$ならばそれで証明完了。そうでない($x \not\le c$)と仮定する。

$c \le c \vee x$である。
$x \not\le c$だから$c \vee x$$c$より真に大きい($c < c \vee x$)。

$c$は余原子元だから、$c$より真に大きい元は$1$しか存在しない。
よって$c \vee x = 1$

ここで、$y$を次のように変形し、分配律を適用する。
$y = 1 \wedge y = (c \vee x) \wedge y = (c \wedge y) \vee (x \wedge y)$

右辺の2つの項について考える。

  • $c \wedge y \le c$である。
  • 仮定より$x \wedge y \le c$である。

よって、その結びである$y = (c \wedge y) \vee (x \wedge y)$$c$以下となる($y \le c$)。

従って、$x \le c$または$y \le c$

$0$を持つ分配束においても素元 ⇒ 原子元は成り立たない。

$L = \N$とする。

$2 \in \N$は結び既約元であり結び素元であるが、原子元ではない。

Boole代数$B$において以下が成り立つ。

結び素元 ⇒ 原子元
交わり素元⇒ 余原子元

結び直既約元 ⇒ 結び既約元
交わり直既約元 ⇒ 交わり既約元

双対的であるから交わりの方だけ示す。


[交わり素元⇒ 余原子元]
$c \in B$を交わり素元とする。

$c \lt x \le 1$となる$x \in B$を取る。
$x=1$を示す。

Boole代数の性質から、$x \wedge \neg x = 0$である。
$x \wedge \neg x = 0 \le c$である。
$c$は交わり素元なので、$x \le c$または$\neg x \le c$となる。

しかし、今$c < x$と仮定しているため$x \le c$は成り立たない。よって、$\neg x \le c$である。

$c < x$であるから推移律より$\neg x \le x$となる。
従って、$x = x \vee \neg x = 1$となる。

よって$c$$1$の間に真にある元は存在せず、$c$は余原子である。


[交わり直既約元 ⇒ 交わり既約元]
[$B = \set{0}$の場合]
$b\not=1$となる元が存在しないので空虚に真。

[$B = \set{0,1}$の場合]
$0$は交わり直既約であり既約である。

[$B$が3元以上持つ場合]
$0$は交わり直既約でない。

$p \in B$を交わり直既約元とする。

$a,b \in B\ (a \wedge b = p)$を取る。

分配性より$a \wedge (b \vee \neg a) = a \wedge b = p$である。
また、$a \vee (b \vee \neg a) = 1$である。
$p$は交わり直既約元だから、$a = 1$または$b \vee \neg a = 1$である。

[$a=1$の場合]
$a \wedge b = p$であるから、$b=p$である。

[$b \vee \neg a = 1$の場合]
両辺に$a$の交わりを取ると、
$a \wedge (b \vee \neg a) = a$
分配性より$a \wedge b = a$
即ち$p = a$

従って、$p=a$または$p=b$であるから、$p$は既約元であった。

完備束$L$において、全ての原子元はコンパクト元である。

$a \in L$を原子元とする。

$a = \bigvee C$と表す。($C \subset L$)

$a \not= 0$だから、ある$c \in C$が存在して$0 < c$

この時、$0 < c \le a$であり、$a$は原子元だから$c = a$

よって、$a = \bigvee \set{a}$

従って、Boole代数において、結び既約元と結び素元と原子元と結び直既約元、交わり既約元と交わり素元と余原子元と交わり直既約元は一致する。

$$ \xymatrix{ & & 直既約 \ar@/^/@{->}[dd]^{Boole代数} & & & & & & \\ & & & & & & & & \\ & & 既約 \ar@/^/@{->}[uu]^{一般} \ar@/_1pc/@{->}[lldd]_{有界分配束} \ar@/^1pc/@{->}[rrdd]^{Boole代数} & & & & & & \\ & & & & & & & & \\ 素 \ar@{->}[rruu]_{一般} \ar@/_1pc/@{->}[rrrr]_{Boole代数} & & & & 原子 \ar@{->}[lluu]^{一般} \ar@{->}[llll]_{有界分配束} \ar@{->}[rr]^{完備束} & & コンパクト \ar@{->}[rr]^{一般} & & 有限生成 } $$

イデアル・フィルターについて

$1$を持つ束$L$$p \in L$について、以下は同値である。

  1. 単項イデアル$↓^Lp$が素イデアルである。
  2. $p$が交わり素元である。

$0$を持つ束$L$$p \in L$について、以下は同値である。

  1. 単項フィルター$↑^Lp$が素フィルターである。
  2. $p$が結び素元である。

イデアルの方だけ示す。

[1 ⇒ 2]
$\i$$↓^Lp$は素イデアルであるから、$L$ではない。
$\i$$p=1$と仮定すると、$↓^Lp = L$となり矛盾。従って、$p\not=1$

$\i$$x \wedge y \le p$とする。
$\i$$↓^Lp$はイデアルであり、下方集合だから、$x \wedge y \in ↓^Lp$である。
$\i$$↓^Lp$は素イデアルであるから、定義より$x \in ↓^Lp$または$y \in ↓^Lp$となる。
$\i$即ち、$x \le p$または$y \le p$であり、$p$は交わり素元である。

[2 ⇒ 1]
$\i$$p\not=1$であるから、$↓^Lp \subsetneq L$

$\i$$x \wedge y \in ↓^Lp$とする。
$\i$$x \wedge y \le p$である。
$\i$$p$は交わり素元であるから、$x \le p$または$y \le p$となる。
$\i$即ち、$x \in ↓^Lp$または$y \in ↓^Lp$であり、$↓^Lp$は素イデアルである。

原子根的・原子論的・コンパクト根的

$0$を持つ有限順序集合は原子根的。

$P$$0$を持つ有限順序集合とする。

$a \in P\setminus\set{0}$を取る。

$S = \set{y \in P \mid 0 < y \le a}$と置く。
$a \in S$だから$S$は空でない。

$S$は有限集合だからその極小元が取れる。
極小元の一つを$s$とする。

$0 < y \le s$なる$y$を取ると、$y \in S$であり、$s$$S$の極小元だから、$y \not< s$
従って、$y = s$

即ち、$0 \prec s$である。

有限Boole代数は原子論的。[1:Lemma5.4]

$B$を有限Boole代数とする。
$a \in B \setminus\set{0}$を取り、$S = ↓^{\atom(B)}a$と置く。
$B$は有限集合だから原子根的であり、$S$は空でない。

$a$$S$の上界である。
$S$の上界$b$を取る。

$a \not\le b$と仮定する。

この時、$0 < a \wedge \neg b$
$B$は原子根的であるから$0 \prec x \le a \wedge \neg b$なる$x$が取れる。

この時、$0 \prec x \le a \wedge \neg b \le a$であるから$x \in S$であり、従って、$x \le b$

また、$0 \prec x \le a \wedge \neg b \le \neg b$だから、$x \le \neg b$

この時、$x \le b \wedge \neg b = 0$

これは$0 \prec x$に矛盾。

従って、$a \le b$

即ち$a$$S$の最小上界であった。

完備束$L$において、$c \in \comp(L)$$c > 0$なるコンパクト元とする。
このとき、$m \prec c$となる$m \in L$が存在する。

$P = \{ u \in L \mid u < c \}$ と置く。
$c > 0$ なので $0 \in P$ となり非空。

$T$$P$ の任意の全順序部分集合とし、$v = \bigvee T$ と置く。

$v = c$ と仮定すると、$c$ はコンパクト元だから、有限生成であり、ある有限部分集合$F \subsetw{finite} T$ が存在して $c = \bigvee F$ となる。
$T$は全順序だから、$F$の最大元$u_0 \in T$が存在し、$c = u_0$
しかし $u_0 \in P$ より $u_0 < c$ であるため矛盾。

従って$v < c$、即ち $v \in P$ である。
$v$$T$ の上界であるから、Zornの補題より$P$は極大元$m$を持つ。

極大性の定義より、$m < x \le c$ となる $x$$x = c$ しか存在しないため、$m \prec c$ が成り立つ。

代数的束$L$はコンパクト根的である。

$x \in L\setminus \set{0}$を取る。

$x = \bigvee C$と表す。($C \subset \comp(L)$)

任意の$c \in C$に対し、$c \le x$である。

全ての$c \in C$$0$だと仮定すると、$x=0$となり、$x\not=0$に矛盾。

可補代数的モジュラー束$L$は原子根的である。

$z > 0$を満たす$z \in L$を取る。

$L$は代数的束だから、コンパクト根的であり、$0< c \le z$となるコンパクト元$c$が取れる。
$L$は完備束だから、$m \prec c$となる$m$が取れる。
$L$は可補だから、$m$の補元$m'$が取れる。
$p = c \wedge m'$と置く。

$m \le c$だから、モジュラー律より、
$m \vee p = m \vee (m' \wedge c) = (m \vee m') \wedge c = 1 \wedge c = c$

また、
$m \wedge p = m \wedge (m' \wedge c) = (m \wedge m') \wedge c = 0 \wedge c = 0$

モジュラー束のダイヤモンド同型定理より、$[m \wedge p,p]$$[m,m \vee p]$は順序同型となる。
すなわち、$[0,p] \simeqw{Ord} [m,c]$
$m \prec c$だったから、$p$は原子であった。

このとき、$p = c \wedge m' \le c \le z$ であるから、$p \le z$ となる原子元 $p$ が存在する。

参考文献

[1]
Davey, B. A., Priestley, H. A., Introduction to Lattices and Order, Cambridge University Press
投稿日:613
更新日:7日前
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