このシリーズでは局所コンパクトアーベル群
に関する話について簡単にまとめていきます。
なお筆者がまだ今回扱う内容に関する詳しい議論を追えていないのもあって、所々の説明に不正確な部分があるかもしれませんので、ほんの参考程度に眺めてもらえればと思います。
良く知られているように(いい感じの漸近挙動を持つ)
と定められる関数
という逆変換公式(反転公式)が成り立つのでした。
またこのような現象の類似として次のような変換・逆変換公式が成り立つことが知られています。
以下ではこのようなフーリエ変換およびその類似物を統一的に記述できる理論として局所コンパクトアーベル群上のフーリエ変換というものについて簡単に紹介していこうと思います。
やりたいこととしては適当な空間
という感じの積分変換としてフーリエ変換を定め、その性質について考えていくことになります。
ただ今回の記事ではまだフーリエ変換の定義には入らず、その前準備として局所コンパクト群
というものの定義と性質について簡単にまとめていきます。
まず積分を考える関数
位相空間
群
をそれぞれ連続とするような位相構造を持つものを位相群と言う。
局所コンパクトかつハウスドルフな位相群のことを局所コンパクト群、その中でも可換なものを局所コンパクトアーベル群と言う。
しれっとハウスドルフという条件が組み込まれていることに注意しましょう。
以下では
例えば上で紹介したフーリエ変換たちにおいて
上の関数とみなせるが、これらは通常の位相(
ところで以下では局所コンパクト群上の積分を考えていくわけですが、となると微分もセットで考えたくなります。しかし関数の微分を考えるには位相構造だけでなく微分構造、つまり実または複素多様体としての構造が必要になります。実際そのような構造を持つ群のことをリー群と言い、リー群上の積分やフーリエ変換にもいろいろ面白そうな話があるようです。が、このシリーズではそこら辺の話は特に扱いません。
次に
位相空間
を満たすような
特にハウスドルフ空間において、そのコンパクト集合
局所コンパクトハウスドルフ空間
を満たすものを
局所コンパクト群
を満たすものを
まあ何かごちゃごちゃとした条件を書き連ねましたが、ハール測度とは要するに
を満たすもの、くらいの理解をしておけば十分だと思います。
ユークリッド空間
によるルベーグ測度
離散群(離散位相の入った群)
またラドン測度には「線形汎関数とラドン測度が一対一に対応する」という偉い定理(リース・マルコフ・角谷の表現定理)があり、左不変な線形汎関数を頑張って作ってその定理を使ったりなんだりすることで、ハール測度には存在と一意性が成り立つことがわかります。
局所コンパクト群
一般に集合
そしてその
複素値関数
を任意に取ったとき、
によって定める。
より正確には
ついでに可積分な関数の集合
を満たす関数全体
なお正確にはノルム空間としての構造が入るように
という同値関係で割ってたりしますが、説明上便利な記号くらいにしか使わないのであまり気にしないこととします。
に等しい。
正確にはルベーグ積分の方がより多くの関数を扱えるが、あまり気にしないこととする。
と表せる。
離散群
として表せる。また
が成り立つことを意味する。
以上が局所コンパクト群上の積分に関する概説となります。
次回の記事
では今回定義した積分を用いてフーリエ変換を定義していきます。
また今回の記事はこれで終わりですが、以下に何かの役に立つかもしれないメモを置いておきます。
コンパクトでない局所コンパクトハウスドルフ空間は一点コンパクト化可能である。
離散かつコンパクトな空間は有限集合である。
局所コンパクト群
このとき
局所コンパクト群
によって定まる写像
が成り立つ。
これによって定まる
ハール測度による積分について
が成り立つ。