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大学数学基礎解説
文献あり

【スピン幾何】4次元Minkowski時空のnull直線とTwistor空間

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 Penroseが考案したTwistor理論というものがあります。簡単に言うとある時空に対応したTwistor空間というものを用意して、色々な場や方程式などをTwistor空間の言葉に焼き直すという理論です。結果として物理の問題が複素多様体や代数多様体の問題として解釈されます。また可積分系とも非常に深い関係にあります。Twistor理論は結構難しく私には到底解説することはできません。この記事ではTwistor理論の入門の入門として、4次元Minkowski時空のnull直線とTwistor空間の関係を説明します。この関係は4次元twistor理論全般において重要な役割を果たします。

 この記事では Weylスピノルとnullベクトル のconventionや事実を使います。またWeylスピノル$\lambda\in W\simeq\mathbb{C}^2$を適宜$\mathbb{C}^4$に埋め込んで使います。すなわち、$\mu,\lambda\in W$に対して、Diracスピノルを$\psi=\mu+\lambda^c\in S=W\oplus\overline{W}^c$などと表します。$\psi,\phi\in S$に対して、Dirac-fromを
$$ \langle\psi,\phi\rangle=\psi^\dagger\gamma_0\phi $$
とします。

Twistor空間とnull直線の関係

 $(M,g)$を4次元Minkowski時空とします。このとき、$M$を複素化した$\mathbb{C}^4$twistor空間、さらにその射影空間$\mathbb{C}P^3$射影的twistor空間と呼びます。また$\xi\in\mathbb{C}^4$をDiracスピノルとみなして、$\mathbb{C}P^3$の部分集合
$$ PN:=\{[\xi]\in CP^3:\langle\xi,\xi\rangle=0\} $$
を定義します。$PN$の元をnull twistorと呼びます。

 この記事の目的は次の命題を示すことです。

4次元Minkowski時空$(M,g)$のnull直線の全体とnull twistorの全体は1対1に対応する。

 つまりPNは$M$のnull直線のモジュライ空間になっているということです。まずはnull直線からnull twistorを構成します。

$M$のnull直線$l=\{x+kt;\ x\in M,\ t\in\mathbb{R},\ k:{\rm null\ vector}\}$に対して、スピノル$\lambda,\mu\in W,\ \xi\in S=W\oplus \overline{W}^*$
$$ k=\sum_a(\lambda^c,\gamma^a\lambda)e_a,\ \mu=ip\lambda^c,\ \xi=\mu+\lambda^c $$
として定めると、$[\xi]\in CP^3$$k,p$の取り方に依らずに$l$のみによって定まる。またこのとき$\langle\xi,\xi\rangle=0$を満たす。

null直線を$l=\{x+kt;\ x\in M,\ t\in\mathbb{R},\ k:{\rm null\ vector}\}$とする。適当なWeylスピノル$\lambda\in W$を用いて、
$$ k=\sum_a(\lambda^c,\gamma^a\lambda)e_a $$
と表される。スピノル$\psi$に対して、$M\ni p=\sum_a p^ae_a$$p\cdot\psi=\sum_a p^a\gamma_a\psi$として作用させるとすると、$k\cdot\lambda^c=2(\lambda\otimes\widetilde\lambda^c)\lambda^c=0$であることに注意すると、$p,p'\in l$に対して、
$$ (p-p')\lambda^c=\mathbb{R}k\lambda^c=0 $$
が成り立つので、
$$ \mu:=ip\lambda^c\in W $$
$p\in l$の取り方に依らずに定まる。よってnull直線$l$からDiracスピノル
$$ \xi:=\mu+\lambda^c \in W\oplus\overline{W}^*=\mathbb{C}^4 $$
が定まる。$ \lambda\mapsto\alpha\lambda$の変換で$ l$は不変であり、このとき$ \xi\mapsto\alpha^*\xi$となるから、$ l$
$$ [\xi]\in CP^3 $$
を定める。またこのとき、
$$ \langle\xi,\xi\rangle=\langle\lambda^c,\mu\rangle+\langle\mu,\lambda^c\rangle=i\langle\lambda^c,p\lambda^c\rangle-i\langle p\lambda^c,\lambda^c\rangle=0 $$
が満たされる

 また逆にnull twistorからnull lineを構成できます。

null twistorは$M$のnull nullをただ一つ定める。

null twistorを$[\xi]\in CP^3$$\langle\xi,\xi\rangle=0$とする。$\xi=\mu+\lambda^c$とするとき、集合
$$ l:=\{p\in M;\ \mu=ip\lambda^c\} $$
を考える。もし$ l\ne\emptyset$ならば、$ l\subset M$は線形部分多様体であり、$ l$の接ベクトルは上の議論と同様に$ T_\lambda$の元であることが分かる。$ T_\lambda$は全NullでMの部分空間であるからnullベクトル$ k$により張られる。よって$ l$はNull 直線である。

以下、$ l\ne\emptyset$を示す。$\langle\xi,\xi\rangle=\langle\lambda^c,\mu\rangle+\langle\mu,\lambda^c\rangle=0$であるから、以下の2つの場合分けを考える。
(i) $\langle\mu,\lambda^c\rangle\ne0$のとき、
$$ p_0:=\frac{1}{i\langle\mu,\lambda^c\rangle}\mu\otimes\widetilde\mu^c $$
とする。$\mu\otimes\widetilde\mu^c=\frac{1}{2}\sum_a(\mu^c,\gamma^a\mu)e_a$は実ベクトルであるし、$\langle\mu,\lambda^c\rangle^*=\langle\lambda^c,\mu\rangle=-\langle\mu,\lambda^c\rangle$であるから、$i\langle\mu,\lambda^c\rangle\in\mathbb{R}$である。よって$p_0\in M$である。またこのとき
$$ ip_0\lambda^c=\frac{(\mu^c,\lambda^c)}{i\langle\mu,\lambda^c\rangle}\mu=\mu $$
となるから、$p_0\in M$は方程式$\mu=ip\lambda^c$の解である。よって$p=p_0+\mathbb{R}\sum_a(\lambda^c,\gamma^a\lambda)e_a$$l$である。

(ii) $\langle\mu,\lambda^c\rangle=0$のとき、$\langle\lambda^c,\mu\rangle=(\lambda^c,\mu^c)=0$であるから、$\mu=\alpha\lambda$となる。ここで$(\kappa^c,\lambda^c)=-i\alpha$を満たす$\kappa\in W$が存在するから、
$$ p_0:=\lambda\otimes\widetilde\kappa^c-\kappa\otimes\widetilde\lambda^c $$
と置くと、$ip_0\lambda^c=c\lambda=\mu$となる。また$p=2\sum_a((\kappa^c,\gamma^a\lambda)-(\lambda^c,\gamma^a\kappa))e_a$であり$(\kappa^c,\gamma^a\lambda)^*=-(\lambda^c,\gamma^a\kappa)$であるから$p\in M$である。

参考文献

[1]
高崎 金久, ツイスターの世界: 時空・ツイスター空間・可積分系
投稿日:2023827
OptHub AI Competition

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投稿者

Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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